一度だけ、イルカと遊んだことがある。
といっても、小谷美可子さんみたいに海で一緒に泳いだわけじゃなく、
和歌山白浜のアドベンチャーワールドで。
その時は嫁さんと2人、透明の二人乗り手漕きボートに乗って、プー
ルにいるイルカ2頭に餌を与えながら飼育員さんに教えてもらった、
まぁ犬でいうお座りやお手程度の簡単な芸をさせるという感じの遊び
方をしたんやけど、ただそれだけで、俺たちはその賢さと可愛さにすっ
かりはまり込んでしまった。
まず、誰が指示しても(飼育員さんじゃなくても)教えた芸がすぐでき
る。まぁ、その程度は犬でも金欲にくらんだ政治家でもするし、そん
なに驚くことやないやろうけど、まいったのがボートのオールに自分の
体を乗っけて漕げないようにして、自分達は泳がずにちゃっかり餌だ
けもらおうとするところ。その時は自分の頭をボートの上に乗せ、俺た
ちのすぐ目の前まで顔を持ってきて、あの独特の鳴き声で鳴きなが
ら一番可愛い表情を作って見せる。それは、俺が思わず可愛さあ
まって「どあつかましいんじゃい、ボケ!」と言って頭をはたいてしまっ
たくらいやった。その時イルカはさすがにボケはしてくれんかったけど、
怒るでもなく平然としとったね。そのあたりもなんか心を見透かされて
るような気がしたな。
他にも感心するのは、ボートの底を頭でつついてボートを揺らして遊
びよるとこ。小さい手漕ぎのボートで安全上絶対にひっくり返らない
ように設計されてるボートやったけど、ちょうど俺たちが「おおっ」と驚く
くらいの力加減で船底をつついて驚かせよる。
ホンマに賢いなぁと思ったね。
そしてお互いがそうやって触れ合ってるうちに何ともいえんくらい自分
達が穏やかな気持ちになっていることに気づく。こんな小さなプール
にいるイルカ達にさえ、こんなに癒されるんやから、大きくきれいな海
で、イルカと触れ合うことができたらどんなに癒されるんやろうと思った。
イルカセラピーというのがある理由がよく分かったわ。
まぁいづれにしても後にも先にもイルカに吉本ばりのツッコミをしたの
は俺くらいのもんやろうと思うな。もっとも飼育員さんも俺に、何すん
ねん、とツッコミたかったやろなぁ。