睡眠時間が極端に短い人や長い人はうつ状 態になりやすい~。日大医学部社会医学講座 の兼板佳孝講師(公衆衛生学)が、全国二万 五千人の睡眠に関する大規模な調査の解析 から、眠りとうつとの関係の一端を明らかにし た。一方、不眠対処法の一つとされる寝酒が、 かえって不眠を誘発する可能性があることも分かった。 旧厚生省の2000年保健福祉動向調査のデ-タを分析した。同調 査は、全国の二十歳以上の二万四千六百八十六人が、一日の睡 眠時間、不眠の症状、うつ状態を調べる指標の設問などに答えた。 睡眠時間とうつ状態を調べる指標の得点(六十点満点、十六点以 上が「うつ状態」に該当)との関係をみると、睡眠7~8時間の平均 得点が最も低かった。7時間より短ければ短いほど、8時間より長け れば長いほど、平均得点は高くなる「U字形」の関連が見られ、うつ 状態と関係が深かった。この傾向は、20代から70代以上までどの 年代にも共通していた=グラフ参照。また、睡眠が十分か不足か~ という自覚的睡眠充足度 とうつとの関係では、不足感が高くなるほ ど、うつ状態に該当する確率が高くなる傾向も見られた。入眠障害= 不眠とうつ状態との間には「互いに原因にも結果にもなり得る密接な 関連がある」と言われている。不眠の一症状の寝付けないという「入 眠障害」がある人は、ない人に比べ、1・5倍以上もうつのリスクが高 くなることが分かった。このほかの不眠症状の、夜中に目が覚める 「夜間覚醒」や、朝早く目が覚める「早朝覚醒」、昼間に眠ってしまう 「日中の過眠」でもそれぞれ、うつとの間に同様の関連性が認められ たという。一方、眠りの現状について、一日の睡眠時間は、六時間未 満のいわゆる「短時間睡眠」か゛男性の13・2%、女性の14・5%上 った。短時間睡眠の割合は、男性は30代、女性は40代が最多。 また、男女ともに高齢になるほど睡眠時間は長くなる傾向があった。 不眠の症状では、入眠障害が男性14・5%、女性20・2%、夜間覚 醒が男性17・8%女性23・4%、早朝覚醒が男性26・2%、女性 19・7%がそれぞれ「ある」と答えた。夜間覚醒と早朝覚醒は年齢が 高くなるほど増えた。日中の過眠(男性3・1%、女性2・4%)は若い 人ほど多かった。
寝酒は不眠誘発も=調査は、不眠の処法 に ついても訊ねている。一週間に1回以上 の寝 酒をする習慣があるのは男性48・3%、女性 18・3%で、男性に多い。一週間に1回 以上 の睡眠薬を使っているのは男性4・3%、女性 5・9%で、女性に多かった。寝酒の割合は、 男性が50代後半、女性は40代前半がピ-ク で、その後は減少。それに代わるように、高齢になればなるほど睡 眠薬の使用者が男女ともに増えていた=グラフ参照 寝酒と不眠の 症状との関係では、解析の結果、夜間覚醒との間に関連性が認め られたと いう。寝酒習慣のある人は、ない人に比べ夜間覚性のlリス クが1・2倍高く、寝酒が夜中に目を覚まさせて不眠を誘発する可能 性がある。「精神衛生の観点から睡眠は短くても長くても好ましく ないことが示唆された。寝酒と不眠との関係は生理学的デ-タから 指摘されていたが、疫学調査(集団を対象とした調査)で明らか になったのは初めて」とのことのようです。