世界に80種 色も味も多彩 さわやかな野外の空気の中、冷えた黄金色のビ-ルをジンギス カンとともに味わう幸せは、道産子の定番。大手メ-カ-三社の 工場と二十社を超える地ビ-ル醸造所を持つ北海道は、新鮮な ビ-ルをいつでも味わえるビ-ル好きの楽園です。しかし、ビ-ル にはいろいろな種類があることは、意外と知られていません。 ビ-ルの種類(「ピアスタイル」と言います)は、大きく分類して世 界中に八十種類もあると言われています。色は白、赤、茶、黒、緑、 青、紫、ピンクとカラフル。味も苦いもの、甘いものもあります。アル コ-ル度数も幅広く、一度未満から、日本酒より高い三十度まで あります。日本でよく飲まれている、冷やして飲む黄金色のビ-ル は「ビルスナ-」と呼ばれるピアスタイルで、世界でも最も飲まれ ています。麦芽の量を減らした節税型発泡酒や、第三のビ-ルも、 このスタイルを参考にしています。ピアスタイルが生まれる要因に は、その土地で得られる原料、その土地の人々の嗜好、二-ズ、 経済状態などが影響しています。価格が安い節税型発泡酒などが よく飲まれるのも、今の日本の状態を表しているのかもしれません。 しかし、せっかく多彩な食材がある北海道で、多彩なビ-ルを楽し まないともったいない。そこで、さまざまなビ-ルの魅力を紹介して いきたいと思います。 (にいつ・やすこ)=十勝管内足寄町生まれ。1995年に日本地ビ -ル協会ピアテスタ-(ビ-ルのソムリエ)を習得。97年から上位 資格のシニア・ピアジャッチとなり、ビ-ルコンテストの審査員や 文化センタ-講師を努めている。
地ビ-ルに多いエ-ル 八十種類以上もあるビ-ルの種類(ピアスタイル)を発酵のタイプ で大きく分けると二種類に分かれます。常温でよく発酵する「上面 発酵酵母」を用いるビ-ルを「エ-ル(上面発酵ビ-ル)」と言いま す。また、低温で発酵する「下面発酵酵母」を用いるビ-ルを「ラ ガ-(下面発酵ビ-ル)」と言います。ラガ-は、十九世紀後半に 冷蔵施設が発明されてから世界中に広がり、現在世界の主流で すが、それ以前はエ-ルが世界のビ-ルの主流でした。エ-ルの 味の特徴は、フリ-ティ-な香りと味、コクがあるなどの個性的な 味わいで、地ビ-ルでも多数の醸造所で作られています。道内の 地ビ-ルで最も有名なエ-ルは、北見市のオホ-ツクビ-ルか作 る「エ-ル」と「マイルドスタウト」でしょう。世界的に有名な英国人の ビ-ル評論家の著書でも紹介されています。また、大沼ビ-ルの 「アルト」は国内の地ビ-ル審査会で毎回受賞しています。バナナ のような香りを持つヴァイツェンは小麦を使い、エ-ル酵母の仲間 であるヴァイツェン酵母で発酵させます。苦みが少なくフル-ティ- な味わいで人気が高く、全道各地の醸造所で作られています。 北海道はドイツと食材が似ているためか、ドイツのピアスタイルと ドイツ料理を提供する地ビ-ルレストランが多いようです。ジャガイモ 料理には甘みのあるヴァイツェン、ソ-セ-ジには、モルトのコクと 苦みがあるのに後味がスッキリとしたアルトビ-ルがピッタリです。