映画『アリラン』を観に行った。
少し疲れがたまっていたので、午後休みをもらい映画館に向かった。
渋谷のシアターイメージフォーラムに来たのはいつ以来だろう。たぶん『バッシング』という映画を観たのはここだったと思う。そのほかにも何回か来ているが、足は遠のいていた。
先客は5~6人。僕の後に2人ほど入って来たが、平日午後の映画館はこんなものだろうか。いや、かなり入りは少ないだろう。正直、この場所の知名度はそれほど高くない。それ以上に、この作品の知名度が低いのだろう。
映画の登場人物は一人、キム・ギドク監督自身だ。いや、彼が三人(?)登場する。二分刈り頭にキャップを被ったスタイルが印象的だったが、スクリーンに映るその姿はぼさぼさ頭で、やや違和感を覚えた。片田舎の町はずれに建つトイレもない家に住む彼の姿に、3年間という時間が凝縮されていた。
オダギリ・ジョーさん主演の『悲夢』を撮影している際に起きた事故をきっかけに、彼は映画を撮れなくなったと言う。弱音を吐き続ける彼に対し、もう一人の彼が現れ「みんながお前の作品を待っている」と言い、また罵声を浴びせる。そして、その2人の彼の会話をモニター越しに見るもう一人の彼。 あれ、彼の影も登場していたから…
真剣に話す彼には失礼だが、その光景を見ながら思わず「クスッ」としてしまった。単なる独白が続いていたらそんなこともなかっただろう。いや、そうだったら劇場で公開されることもなかったに違いない。パンフレットにも書いてあったが、元々は誰かに見せるために撮られたものではなく、撮り続ける中で公開できるのではと思ったそうだ。
終盤になり、彼の作品ならではのバイオレンスシーンが登場する。放たれた4発の銃弾の最後の1発は彼自身を狙ったものだった。そう、それにより今までの彼は殺され、新しい彼が立ち上がったことを示すシーンだったのだろう。
彼自身を語る彼を見ながら、人生にはこんな時間が必要だと思った。失敗して落ち込んだことは何度もあった。もう駄目だと思ったことも。そんな時も、1日くらいしか休まずに仕事を続けた。仕事を辞めてしまおうかと思ったこともあったが、それは、仕事が見つからなかったという理由で叶わなかった。
それでも、僕は一人でいる時間が多いので、何となく自分自身を振り返ることはなくもないが、彼のように人間関係を断ち暮らすことは難しい。それは、人間関係や生活基盤が余りにも固定しすぎているためだと思う。それはいい面もあるが、守りに入ってしまうのは嫌だ。だから、家族を持ちたいと思えないのかもしれない…って、そこに持って行かなくてもいいが。
映画が終わり、いつものようにエンドロールを観終えてから立ち上がろうと思っていたら、「キム・ギドク」だけで終わった。そうだよな…と思いながら、映画館を後にした。
誰かに薦めたいとは思わないが、僕にとってはいい作品だった。強いて言えば、大人の男性に観て欲しい。特に、自分の弱さをさらけ出すことができない大人に。
少し疲れがたまっていたので、午後休みをもらい映画館に向かった。
渋谷のシアターイメージフォーラムに来たのはいつ以来だろう。たぶん『バッシング』という映画を観たのはここだったと思う。そのほかにも何回か来ているが、足は遠のいていた。
先客は5~6人。僕の後に2人ほど入って来たが、平日午後の映画館はこんなものだろうか。いや、かなり入りは少ないだろう。正直、この場所の知名度はそれほど高くない。それ以上に、この作品の知名度が低いのだろう。
映画の登場人物は一人、キム・ギドク監督自身だ。いや、彼が三人(?)登場する。二分刈り頭にキャップを被ったスタイルが印象的だったが、スクリーンに映るその姿はぼさぼさ頭で、やや違和感を覚えた。片田舎の町はずれに建つトイレもない家に住む彼の姿に、3年間という時間が凝縮されていた。
オダギリ・ジョーさん主演の『悲夢』を撮影している際に起きた事故をきっかけに、彼は映画を撮れなくなったと言う。弱音を吐き続ける彼に対し、もう一人の彼が現れ「みんながお前の作品を待っている」と言い、また罵声を浴びせる。そして、その2人の彼の会話をモニター越しに見るもう一人の彼。 あれ、彼の影も登場していたから…
真剣に話す彼には失礼だが、その光景を見ながら思わず「クスッ」としてしまった。単なる独白が続いていたらそんなこともなかっただろう。いや、そうだったら劇場で公開されることもなかったに違いない。パンフレットにも書いてあったが、元々は誰かに見せるために撮られたものではなく、撮り続ける中で公開できるのではと思ったそうだ。
終盤になり、彼の作品ならではのバイオレンスシーンが登場する。放たれた4発の銃弾の最後の1発は彼自身を狙ったものだった。そう、それにより今までの彼は殺され、新しい彼が立ち上がったことを示すシーンだったのだろう。
彼自身を語る彼を見ながら、人生にはこんな時間が必要だと思った。失敗して落ち込んだことは何度もあった。もう駄目だと思ったことも。そんな時も、1日くらいしか休まずに仕事を続けた。仕事を辞めてしまおうかと思ったこともあったが、それは、仕事が見つからなかったという理由で叶わなかった。
それでも、僕は一人でいる時間が多いので、何となく自分自身を振り返ることはなくもないが、彼のように人間関係を断ち暮らすことは難しい。それは、人間関係や生活基盤が余りにも固定しすぎているためだと思う。それはいい面もあるが、守りに入ってしまうのは嫌だ。だから、家族を持ちたいと思えないのかもしれない…って、そこに持って行かなくてもいいが。
映画が終わり、いつものようにエンドロールを観終えてから立ち上がろうと思っていたら、「キム・ギドク」だけで終わった。そうだよな…と思いながら、映画館を後にした。
誰かに薦めたいとは思わないが、僕にとってはいい作品だった。強いて言えば、大人の男性に観て欲しい。特に、自分の弱さをさらけ出すことができない大人に。