熊本熊的日常

日常生活についての雑記

芸の意味

2013年10月27日 | Weblog

柳家三三の独演会を聴いてきた。前座無しで三席だったが、二席目の「五貫裁き」が落語らしくて良い噺だと感じた。落語らしさとは何なのか、そもそも落語とは何なのか、というのは人それぞれだろう。私は、人としての在り様を笑いや涙に包んで人の腑に落とす話芸が落語だと考えている。社会規範をその社会で暮らす人々の腑に落とすための物語だから「落語」なのではないかと思うのである。決まり事や道徳というのは、ただ表面を語ったところで理解されるものではない。感情に訴え、感覚として納得されて初めて、物事は相手に伝わるものだ。そういう伝えるべきものが無い噺は、一時の笑いや涙を呼ぶことはできても、そこから深く情に染み入ることができないだろう。噺家は単なる媒体ではなく、その噺のなかにある核を掴んだ上で語らないことには、人を笑わせることはできても唸らせることはできないのではないかと思う。

本日の演目
 加賀の千代
 五貫裁き
 (仲入り)
 粗忽の釘

開演:13時30分頃  終演:15時30分頃

会場:小金井市民交流センター 大ホール