ふだんのちゃわんは中止となったが、会場で配布を予定していた日替わりのチラシがある。以下は本日分。
ちゃわんをつくる
陶芸作品を素材で大別すると陶器と磁器があります。陶器は陶土、つまり粘土で作るものです。磁器は磁土、すなわち陶石と呼ばれる長石を主成分とする石を破砕精製したもので作ります。他に、陶器と磁器の中間的な性質を持つ炻器と呼ばれるものがあります。
素材の違いは制作方法にも反映されます。土を練って成形して焼成する、という流れは同じですが、成形に際し、陶器は土を挽くところが要となりますが、磁器は挽いた後の削りが相対的に肝要となります。私が通う教室では陶器も磁器も制作できるようになっていますが、私はまだ磁器を作ったことがありません。
作品の制作は土を練るところから始まります。陶磁器の産地では、土を作るところから始まると言うでしょう。私は土を作ったことはないので、土作りのことはわかりません。土を練る工程は、荒練りと菊練りのふたつの工程で構成されます。おおまかには、荒練りは土を均質にするための作業で、菊練りは土のなかの気泡を抜くための作業です。
陶芸教室などで使われる陶芸用の土は既にかなり均質の状態で流通しているので、荒練りは均質にするというよりも自分の欲しい柔らかさにするための練りと言えます。菊練りは土を菊の花のような模様にしながら練るのでその名があるのですが、土の動きとともに内部の気泡とか異物のようなものが外側に押し出されてきます。菊練りによって轆轤で土が暴れたり異物が引っ掛かたりせずに成形できるようにします。
成形には手捻り、手捏ね、板作り、型押し、轆轤、鋳込みなどがあります。作りたいものの形状に応じて手法を使い分けます。こうした手法で成形したものを、手に持って歪まない程度に乾燥させて箆や鉋で最終的に求める形に削ります。厚さを適切に整えることが重要です。
成形したものはゆっくりと乾燥させた上で焼成します。土質にもよりますが、一般的には、800度程度で素焼きをした後、下絵付けをしたり釉薬をかけたりして、1,200度から1,300度くらいで本焼きをします。素焼きをせずに本焼きだけというものもありますし、本焼きも800度程度の低温ということもあります。
工程の所要時間としては成型後の乾燥が最も大きな割合を占めますが、どの工程もそれぞれに大事です。イメージに沿う作品に仕上げるには、各工程での面倒や不都合を次の工程に持ち越すことなく各工程でやるべきことを可能な限りやりきることが肝要だと思います。