相変わらず我が家にはテレビが無いので、世間の騒ぎというものがよくわからない。それでも、ネットで知ることのできるニュースや生活のなかで体験したり見聞することで少し気になることがある。コロナ騒動で一律にひとり10万円いただけるらしい。それで役所には人が大勢やってきてたいへんなことになっているらしい。一律に支給するなら「申請」というのは不要なのではないか、と思うのだが、一律にいただけるものを何故「申請」する必要があるのかという事情については説得力のある話を聞いたことがない。
何はともあれ、外出自粛中の連休の最終日に所定のサイトからその「申請」を行った。自分がもはや暮らしていない家のローンの返済とか、今暮らしている団地の家賃とか、クレジットカードなどの引き落としが集中する月末に近い頃、市役所から20万円(夫婦2人分)が振り込まれていた。申請したのは日曜日だったので、平日で数えると申請から13日目ということになる。突然決まった事務作業でありながら、おそらく通勤自粛で普段よりも事務能力が低下している中、わずか2週間ほどで申請から給付まで行うというのは、大したものだと思う。よく「お役所仕事」という言葉を悪い意味で使うが、役所の力というのはありがたいものだ。
それにしても、今回の騒動での国からの「支援策」というものは、後先考えたとは思えない大盤振る舞いだ。目の前の喫緊の危機に対応しなければならないのだから、少し余計目にばら撒いておくというのは、多分、為政者として正しい姿勢だ。財源は全て国債の発行らしい。その国債を消化するのは主に国内金融機関だろうから、要するに国民自身が負担することになる。この国の財政はかなり国債に依存しており、尺度によっては第二次世界大戦当時を超えている。この先、台風や大地震で復興費用が発生すれば、また国債を発行して賄わないといけない。一方で、少子高齢化で国力という漠然としたものは衰退フェーズにある。おそらく人心の方も衰退フェーズだ。だから急に困ると自分の知恵を働かせようともせずにどこからかのお恵みに縋ろうという姿勢を恥ずかしげもなく晒す。そして、緊急事態を収めようと必死で働いている人を邪険に扱ったり、「ウイルスをばら撒いている」などと凡そ人間とは思えないようなことを吐かす輩すらいる。世間にはいろいろな人がいるものなので、そういう不愉快な現象もあって当たり前ではある。自分はもう先が無いので、特に何の心配もしていないが、若い人たちは大変だ。その割に、端で見ていると呑気に見えるのは、彼等がそういう世間の間抜けな様子を目の当たりにして何事かを悟り鷹揚に構えている所為なのか、単にメデタイ所為なのか。