交通事故で夫と一人娘を失った主人公が、その喪失から立ち直る過程を追った作品である。家族揃って事故に遭い、主人公だけが命を取りとめるのだが、家族をいっぺんに失った主人公には、もはや生きて行く希望が持てない。自らも重傷を負い、入院中の病院で自殺を図るが果たせず、そのままひとりでいきていくことになる。ただ、彼女は、それまで家族と暮らしていた家も、夫の遺産もすべて処分してしまい、それまで暮らした事も無い未知の場所にアパートを借りて生活を始めるのである。しかし、本当に世捨て人のように暮らすことなどできるはずもない。そこで他の住民とトラブルを起こしながらも、突っ張って生活している娼婦とか、夫の仕事仲間で、自分の愛人でもある男性とか、痴呆の母とか、近くもなく遠くもない人間関係に支えられ、主人公は徐々に自分の生活を取り戻してゆく。作品は、淡々と進行する。本来、人の生活とは淡々としたものだろう。そうした静かな展開にリアリティを感じた。主人公を演じるジュリエット・ビノシュの抑えの利いた演技と美しさが光っていた。
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