万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

人質事件の無条件政府責任論は危険では?

2015年02月03日 15時35分32秒 | 日本政治
世耕官房副長官「後藤さん守れなかったのは政府責任」 渡航見合わせ3回要請…身代金交渉「やってない」(産経新聞) - goo ニュース
 「イスラム国(ISIL)」によって引き起こされた人質事件は、湯川氏と後藤氏の二人の殺害という痛ましい結末を迎えました。湯川氏は、軍事専門家としての経験を積むためにかの地に出向いたようですが、後藤氏については、政府から三度も渡航見合わせの要請があったそうです。

 この件について、世耕官房副長官は、自己責任には当たらず、後藤氏を守れなかったのは政府の責任と述べております。しかしながら、これまでの発生してきた人質事件を考えますと、やはり、自己責任が問われることもあるのではないかと思うのです。北朝鮮による拉致事件は、被害者に全く責任がないことは言うまでのないことなのですが、本人に責任が認められるケースもないわけではありません。後藤氏の場合には、既に湯川氏が人質に取られており、拘束される可能性が非情に高いことは、政府も把握していたはずです(一人であった人質が二人になる…)。政府の渡航中止要請を振り切って渡航した以上、後藤氏に全く責任がないとは言えないように思えます(故人を責めるようで申し訳ないのですが…)。今回の事件では、身代金の支払いや死刑囚の解放という事態は避けられたものの、仮に、政府が応じたとしますと、後藤氏は、日本国政府、日本国民、並びに、テロと闘ってきた人々に対して合わせる顔がなかったはずです。また、人質事件が長期化し、救出のための自衛隊派遣が議論にされるに至ったとしますと、政府の要請を無視したことが、派遣の是非を決める判断材料となった可能性もあります。過去に発生したイラクでの日本人3人人質事件に至っては、解放のための身代金が裏で支払われたとされておりますが、被害者がテロリスト側と結託していた疑いは濃厚なそうです。つまり狂言のケースもあるのですから、無条件に”人質事件は政府責任”と断じますと、日本国政府の姿勢を利用してテロリストを利そうとする個人や組織が必ずや現れることでしょう。

 このように考えますと、「イスラム国(ISIL)」に対する戦いへの参加や支援は、国際社会の治安維持のための国際協力として実施してゆくべきであり、人質の救出そのものについては、自己責任の度合いを考慮すべきではないでしょうか。無条件の政府責任論は、あまりにもリスクが高すぎると思うのです。

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コメント (14)
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