万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米議会演説での村山・河野談話踏襲は唯一の選択肢なのか?

2015年02月25日 15時35分37秒 | 国際政治
安倍首相の米議会演説に期待できる内容とは? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代(ニューズウィーク日本版) - goo ニュース
 ニューズウィークの日本版で、安倍首相の米議会演説について、冷泉彰彦氏が記事を掲載しておりました。歴史問題については、村山談話や河野談話の継承を前提として、選択の余地はないと言い切っております。薦めどころか、断言しているのです。

 氏は、ニューズウィークのネット版において池田信夫氏とも慰安婦問題に関する対談を行っており、この対談を読みますと、氏の基本的なスタンスがよく分かります。要約すると、”慰安婦問題は、軍事よる強制連行であっても、民間事業者による犯罪であっても、然して変わりはなく、アメリカ人も、日本人が何故、その違いに拘るのか理解に苦しんでいる。国家の名誉など意味はなく、戦前と戦後の日本は違うというスタンスさえ保っていれば、在米の日本人が不利益を被ることはない”というものです。現状でも”慰安婦問題のマイナス影響はない”と断言しておりますが、実際には、アメリカの教科書に捏造記事が掲載され、慰安婦像も全米各地で建設されております。在米日本人が慰安婦像の撤去を求め、さらに朝日新聞に対しても訴訟を起こしていることさえ、氏は知らないようなのです。ドイツとは違い、日本国では、”一億総懺悔”の掛け声のもとで、戦後にあっても国民は戦争の責任を引き受けております。そうであるからこそ、ヨーロッパ諸国や東南アジア諸国にも賠償や補償を実施し、敵国でもなかった韓国にさえ、莫大な経済支援を行ったのです。中国に対しても、今日に至るまでODAという形で巨額の経済支援を続けてきました。敗戦国として、史実とは違いながらも、戦勝国が認定した”侵略と植民地支配”の批判を甘んじて受け入れてきたのが(村山談話以前には国内的にはこの立場は認めていない…)、戦後の70年であったのではないでしょうか。しかしながら、戦後70年が経過した今、歴史の教訓を引き出し、次なる世界大戦を回避すためにも、客観的な史実に基づく第二次世界大戦の理解が必要とされる時代が到来しております。

 戦前と戦後を切り離し、名誉を捨て、嘘でも何でも戦前の”日本軍の蛮行”は何でも認め、現在の保身を図ると言う態度は、むしろ、反知性的であり、”事なかれ主義”の卑怯な態度でもあります。もっとも、仮に、安倍首相が、事実に基づく第二次世界大戦の冷静な理解をアメリカ議会で演説したとしますと、多くの議員から、確かに”けんかを売った”と見なされるかもしれません。反発を招くぐらいであるならば、歴史認識には全く触れない方がよいかもしれませんし、あるいは、反発を覚悟しても、ステレオタイプの歴史認識を過去のものとすることで、新たな時代の幕開けを印象付けることも、選択肢の一つではないかと思うのです。

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コメント (4)
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