万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

旅券返納-個人の危険行動から国民を保護する国の責任

2015年02月09日 15時14分50秒 | 国際政治
【イスラム国事件】「直ちに生命に危険が及ぶ可能性高い、邦人保護は国の責任」 カメラマン旅券返納命令で官房長官(産経新聞) - goo ニュース
 ISILによる人質事件の再発を防ぐために、日本国政府は、シリアへの渡航を計画していたカメラマンに対して旅券の返納を求める措置を採りました。取材や報道の自由、並びに、移動の自由に対する侵害ではないか、とする批判の声もあるようですが、この措置は、致し方ないのではないかと思うのです。

 北極圏探索やエベレスト登頂といった危険の伴う冒険の場合には、たとえ不運にも遭難したとしても、国や他の国民に迷惑がかかるわけではありませんし、専門のレスキュー隊も待機していますので、リスクは、およそ自己責任の範囲でとることができます。その一方で、人質事件、しかも、犯人が政治的な要求を目的として人質を取る場合には、自己では責任を取りきれない事態も想定されます。自決という選択も、最後は自分自身の身を処すことで公に対する責任をとる方法ですが、それでもなお、個人では責任を取りきれない問題が残されることもあります。今回の人質事件にあっても、人質殺害で事件が収束したわけではなく、この事件の影響は様々な分野に広がっいます。個人の責任能力を超える事態が高い確率で発生することが予測される場合、たとえ本人が行動の自由を主張したとしても、国家と国民を危険に晒す”危険行動”として政府が制止せざるを得ません。

 こうしたケースにおける国の責任とは、危険地帯に赴こうとする国民を保護する責任であると同時に、その行動によって被害を受ける可能性がある国や他の国民を保護する責任でもあります。個人には、国や無辜の人々を危険に陥れる自由は許されていないと思うのです。

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コメント (4)
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