万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国によるAIIBの増資提案の謎

2015年05月06日 15時35分54秒 | 国際経済
AIIB、資本金の大幅引き上げ検討 参加国急増受け(朝日新聞) - goo ニュース
 アジア開発銀行が増資に向けて踏み出した矢先、AIIBもまた、当初予定していた6兆円の倍に当たる12兆円への増資を提案したと報じられております。一体、これは、何のシグナルなのでしょうか?

 この提案、”国際金融筋”によりますと、北京に設置されているAIIB臨時事務局からの提案であったそうです。案の定、提案は、中国からの一方通行となり、参加国の賛否の意思がどれほど決定に影響されるかは分かりませんが、この提案には、謎がないわけではありません。中国側の説明は、参加国が、当初の予測を大幅に上回る57カ国に膨れ上がったためというものです。仮に、自らの出資額を変えずに参加国の増加分だけ増資するとしますと、中国の出資比率は下がります。また、中国の出資比率の方を変えないとしますと、他の加盟国の出資分も比例的に増額されることになります(*最初にアップした記事を、出資額と出資比率に分けて訂正しました。)。この場合も、57カ国の大半は借り手となる途上国ですので、外貨による出資は容易ではないでしょうし、負担増を求めれた欧州諸国も、不透明な国際投資銀行への出資増に対して国内世論が反発するかもしれません(離脱国も現れるかも…)。この不可解な行動の裏には、中国経済好調論による”元建て融資の実現によるアジア元通貨圏の形成”から、中国経済危機論による”国内市場のバブル崩壊の受け皿”まで、様々なシナリオが推測されます。

 AIIBの不透明感は、実のところ、中国経済の行く先の不透明感でもあります。中国当局が発表する統計の数字は当にならず、誰もが、中国経済の正確な実態を知らないのですから。少なくとも、行く先不明のバスには乗るべきではなく、参加を見送っている日米は、AIIBの行く先を見極めるべきと思うのです。

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コメント (2)
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