万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第二次世界大戦の独ロ関係-友と敵・解放と隷従の混在

2015年05月11日 14時51分01秒 | 国際政治
歴史教訓にウクライナ解決を=ロ大統領と会談、大戦に遺憾―独首相(時事通信) - goo ニュース
 昨日、ドイツのメルケル首相がロシアを訪問し、第二次世界大戦の「無名戦士の墓」に花輪を手向けたと報じられております。一方、ロシアのプーチン大統領は、第二次世界大戦を”ナチズムからドイツを解放した戦”と位置付けております。

 第二次世界大戦における独ソ関係ほど、複雑な変転を辿った事例は人類の戦争史において珍しいのではないかと思います。開戦時おいては、ナチス・ドイツと不可侵条約を結んでポーランドを両国で分割したのですから、独ソは盟友の関係にありました。その後、ヒトラーが対ソ開戦を決意することで、独ソ関係は友から敵へと180度転換します。以後、両国は、枢軸国と連合国のそれぞれの陣営に分かれ、激闘を繰り広げるのです。形勢が逆転してドイツ側の敗戦色が濃くなると、ソ連軍は、首都ベルリンを目指して軍を進め、東部からドイツ領内の占領地を拡大します。ソ連軍によるベルリン陥落を以って、ロシアは、”ナチズムからドイツを解放した”と自画自賛するのですが、それは同時に、ソ連占領地が囲い込まれ、ソ連邦の衛星国家として東ドイツが隷従状態に置かれたことを意味しました。第二次世界大戦の独ロ(ソ)関係は、友と敵、そして、解放と隷従が混在しているのです。

 ソ連邦崩壊後の今日にあっても、ロシアは、かつてはナチス・ドイツの”友”であったこと、そして、その後もおよそ半世紀にわたって東ドイツを”隷従”させた歴史をきれいさっぱりと忘れ去ろうとしています。戦勝70周年に記念日に、中ロは揃って、”歴史の改竄を許さない”と共同で声明を発表していましたが、第二次世界大戦の経緯を知れば、歴史を改竄している側はどちらなのか、誰の目にも自ずと明らかなのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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