万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

大詰めを迎えるTPP-評価は発足後に

2015年10月05日 15時17分09秒 | 国際政治
大筋合意へ突破口探る=医薬、乳製品なお難航―TPP閣僚会合、1日延長
 長期にわたる交渉の末、ようやくTPP交渉も大詰めを迎え、合意間近との観測も流れております。TPPは、果たして、全ての参加国に経済的な繁栄をもたらし、”ウィン・ウィン経済圏”となるのでしょうか。

 TPPについては、全く正反対の予想があります。その一つは、TPP圏内の貿易の自由化によって域内の相互取引が活発化すると共に、比較優位に基づく国際分業も促進され、加盟各国のGDPを押し上げるとする楽観的な予測です。この予測は、TPP支持派の根拠でもあり、参加国がTPPに期待するメリットでもあります。一方、正反対の悲観的な予測もあります。域内の競争激化により、競争力に劣る自国の産業、あるいは、企業が淘汰され、結果として”敗者”になるとする悲観論です。この立場の論者は特に農業部門に見られますが、TPPに反対する人々は、主として自国の経済が劣位にあると見なしています。どちらにも一理があるのですが、事前の予測は、あまり当にはならないようです。例えば、欧州市場において市場統合のプロジェクトが開始された際には、”ウィン・ウィン経済圏論”が圧倒的に優勢であり、全ての加盟国に繁栄が約束されたかの如き状況にありました。しかしながら、欧州市場が誕生した1993年から20年以上が経過した今日では、”ドイツ一人勝ち論”も散見され、ギリシャをはじめとした南欧諸国を”敗者”とする見方も少なくありません。域内の自由化によって富の偏在が加速化されたとする指摘もあり、現在、EUは、”敗者”を”勝者”に引き上げるべく、対策を迫られています。

 欧州市場の前例は、必ずしも事前の予測通りとはならないことを示しています。実のところ、どちらの結果となるのかは、現時点で判断することは困難であり、TPP発足後における加盟国の政府、企業、農業従事者、消費者…等の対応と戦略にかかっています。TPP交渉の妥結はスタート・ラインに過ぎず、日本国を含め全ての加盟国は、TPPが”ウィン・ウィン経済圏”となるよう、TPPの仕組みをよく理解し、経済成長に資する方策の策定を急ぐべきと思うのです。

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コメント (2)
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