新型コロナウイルスについては、発生当初より、武漢に設けられているレベル4のウイルス研究所からの漏洩説が信憑性を以って語られてきました。その背景には、中国による生物兵器の研究があり、兵器のハイテク化に走る同国には、強毒、かつ、感染力の高いウイルスを開発する動機があったからです。その一方で、アメリカ、イギリス、ロシアといった諸国がいち早く新型コロナ・ワクチン開発に成功したのも、生物兵器の使用に備えた長期に亘る軍事研究があったからとも指摘されています。今般の新型コロナウイルスのパンデミック化、並びに、即応的なワクチン提供の背後には、水面下で繰り広げられてきた生物兵器をめぐる軍事大国間の攻防戦が見え隠れしているのです。
現実にあって’隠れ生物兵器’の存在が推測される一方で、国際社会にあっては、生物兵器は全面的に禁止されています。その歴史を遡りますと、第一次世界大戦後の1925年6月17日に署名された「毒ガス等禁止議定書」に行き着くことができます。同議定書の正式名称には’細菌学的手段’が明記されており、当時にあって、既に生物兵器が人道に反する兵器として認識さえていたことが分かります。第二次世界大戦後には、1972年4月10日に署名された「生物毒素兵器禁止条約」においてさらに規制が強化され、使用の禁止のみならず、兵器本体のみならず運搬手段等を含め、あらゆる生物兵器の開発、保有、並びに、拡散が禁じられることとなったのです(既存の生物兵器については、締約国は廃棄する義務を負う…)。
そして、同条約にあって重要な点は、NPT(核拡散防止条約)や核兵器禁止条約とは異なり、アメリカ、イギリス、ロシア、中国といった軍事大国が締約国として加わっていることです。しかも、一部の締約国に核保有を認めるNPTのような’不平等条約’でもなく、全ての加盟国には等しく同条約の順守義務が課せられています。いわば、核兵器以上に厳しい禁止措置が採られているのです。ところが、その監視体制を見ますと、核兵器の足元にも及びません。核拡散防止条約では、IAEAによる査察が制度化されており、厳しい監視体制の下に置かれていますが、生物兵器禁止条約には、このような査察制度が欠けているのです。いわば、締約国の順法精神任せの状況にあり、たとえ違反国が出現しても、それを外部の独立的な国際機関、あるいは、他の締約国がチェックすることもできなければ、廃棄させることもできないのです(もっとも、IAEAでさえ、十分に機能しているとは言えない…)。
こうした現状は、人類が、今なおも、生物化学兵器の脅威の許に置かれていることを意味しています。上述した新型コロナウイルス生物兵器説も中国に対する不信感の現われでもあり、WHOが懸命に否定したとしても、多くの人々が中国ならば隠れて生物兵器を開発するに違いないと見なしています。しかも、核兵器と同様に、生物兵器にも、’平和利用’という絶好の’隠れ蓑’があります。兵器用のウイルス研究であっても、’感染症予防のための研究’という表看板を掛けることができるからです。武漢のウイルス研究所にあって、アメリカでは規制されていた機能拡張研究を行ったのも、その名目上の目的は感染症対策でした(もっとも、オバマ政権下にあって、国内で実験ができないために中国を支援したとする指摘も…)。
そして、今日、ウイルス研究の平和利用、即ち、ワクチンを含む医薬品や治療法の開発目的での利用は、生物兵器の脅威をさらに拡大させています。何故ならば、先端技術としての遺伝子工学は、レベル4の政府系の研究機関のみならず、既に民間のベンチャー企業にまで広く拡散してしまっているからです。現在のテクノロジーをもってすれば、人工ウイルスの製造も自由自在であり、アメリカでは、遺伝子の配列情報に基づいて人工ウイルスの製造を請け負うベンチャー企業も登場しています。生ウイルスを入手しなくとも、技術的には中国政府が公表した新型コロナウイルスの遺伝子配列に基づいて、何処にあっても同ウイルスを再現することができますし、変異株も遺伝子配列の操作一つで簡単に造り出せるのです。核兵器に関しては、核技術がテロリストの手に渡らないよう、厳重な監視が行われていますが、生物兵器の分野では、国家のみならず、テロリスト、あるいは、何らかの私的集団が生物兵器の技術を使用するリスクは高まる一方なのです。
人類が’隠れ生物兵器’の脅威に晒されているとしますと、まずは、全世界に設けられているレベル4のウイルス研究機関に対しては、研究内容の公表を義務付けるなど、透明性を高める必要がありましょう。もっとも、中国に正直な報告を求めることには無理がありますので、独立的な国際査察機関、あるいは、査察チームを設け、査察任務を委託するという方法もありましょう(WHOでは心もとない…)。そして、同様の外部チェックは、大手製薬会社からベンチャー企業に至るまで、全ての組織に及ぼす必要もあります。「生物毒素兵器禁止条約」を根拠とする、全世界レベルでのウイルス研究に対する監視体制の強化は、少なくとも悪意による人為的なパンデミックを防ぐことになるのではないかと思うのです。