武漢における新型コロナウイルス感染症の発生報告が報じられたその時から、同ウイルスは武漢ウイルス研究所漏洩したのではないかとする説が実しやかに囁かれるようになりました。’悪事は万里を走るが’如く、同説は世界大での拡散することとなったのですが、これに危機感を抱いたのか、いち早く野生動物起源説を主張した中国政府は、頑なに同説を否定し、その打ち消しに躍起となってきました。中国の打ち消し工作が功を奏してか、同国の息のかかったWHOも、遅ればせに現地調査を実施はしたものの、同説が事実である可能性は極めて低いとする見解を示すこととなり、起源をめぐる疑惑は、一旦は、幕が下ろされそうになったのです。ところが、ここに来まして、武漢ウイルス研究所起源説は、再燃の兆しを見せています。同調査結果を不満としたアメリカ政府は、真相を究明すべく、同国の情報機関に対して徹底調査を命じたからです。果たしてこの一連の動きは、何を物語っているのでしょうか。
切っ掛けとなったのは、先日、明るみになった同国情報機関による大統領宛ての報告書です。同報告書には、未だ感染第一号が報告されていない2019年11月の時点にあって、武漢ウイルス研究所の研究員3名が体調不良で入院していたと記されていたとされます。これが事実であれば、体調不良の原因が新型コロナウイルス感染症によるものである可能性は極めて高く、最初の感染は、武漢ウイルス研究所の内部で起きたことになります。同ウイルスは無症状であったとしても感染力を有するとされていますので、自覚のないまま市中を歩き回った感染研究員3名は、スプレッダーとなったことでしょう。当初、有力であった実験用コウモリの海鮮市場への’卸売説’は否定されることとなるのですが、少なくとも、武漢ウイルス研究所起源説は、証明まであと一歩のところまで迫っているのです。
アメリカ政府が本格的に真相究明に乗り出したという事実は、陰謀の存在を誰もが認めざるを得ないことをも意味しています。武漢ウイルス研究所起源説については、日本国内のマスメディアの多くは、どちらかと言えば’どんでも説’の部類として扱っており、ネット上でも、同説を主張する人々、あるいは、中国の公式見解に異議を唱える人々は、陰謀論を信じる愚かな人々として揶揄されていました。陰謀否定論者の立場からしますと、アメリカ政府もまた、陰謀論を信じる愚者であり、情報リテラシーの低い人々ということになりましょう。しかしながら、今や、武漢ウイルス研究所起源説は、根も葉もない陰謀どころか、国際社会における公式の嫌疑であり、れっきとした国際事件です。アメリカ政府のみならず、国連の枠組みにおきまして中立・公平な調査を実施すべき事案ともいえましょう(なお、中国は、アメリカに対する反発から、米国内のウイルス研究所の調査を要求している…)。こうして明るみになった事実には、陰謀否定論を吹き飛ばす威力があるはずです。
新型コロナウイルスをめぐっては、起源に関する疑惑に加え、人工ウイルス説や生物兵器説などの様々な疑いがあります(因みに、フェイスブックは、人工ウイルス説を投稿削除対象から除外…)。今般、各国政府が接種を推進しているコロナ・ワクチンにあっても、副反応や中長期的な健康被害リスクのみならず、成分、効果、持続性、そして、目的に至るまで不透明感が漂っています。こうした謎深き事件に遭遇した場合、陰謀論、とんでも説を以って条件反射的に疑惑を否定してしまう硬直した態度こそ、最も危ういように思えます(陰謀否定論者は、最も陰謀に対して脆弱であり、騙されやすい人ということに…)。陰謀が事実である可能性が高いからです。否、陰謀の存在を否定しては、永遠に事実に行き着くことはできないかもしれません。あり得る可能性として陰謀の存在を認めてこそ初めて視界が開け、水面下に潜むリスクを警戒し、その顕在化に備えることができるようになりましょう。陰謀の存在認定こそ、リスク管理には必要にして不可欠なのではないかと思うのです。