万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

解きがたいジレンマに直面するユダヤ勢力

2023年12月22日 10時59分04秒 | 国際政治
 今般のイスラエル・ハマス戦争に見られるイスラエルの基本的なスタンスは、所謂‘無法者’なのではないでしょうか。暴力で奪った者勝ちを公言しているからであり、国際法など歯牙にもかけていないのですから。ところが、このスタンス、ユダヤ勢力を解きがたいジレンマに直面させているように思えます。

 同ジレンマとは、ウクライナ紛争との関連において発生します。何故ならば、同紛争にあっては‘無法者スタンス’にあるのは、ロシア側であるからです。ロシアが‘特別軍事作戦’の名の下で国境線を越えてウクライナ領に進軍した際、当事国のウクライナのみならずアメリカを初めとした‘西側諸国’は、即座にロシアの行動を国際法違反の侵略として認定しました。ウクライナのゼレンスキー大統領はユダヤ系ですし、アメリカも、ユダヤ勢力に支配されていると言っても過言ではないほど、ユダヤ系ロビーが絶大な影響力を振るう国です。イスラエルは中立を表明したものの、ウクライナ紛争では、アメリカやNATOを陰から動かしつつ、ユダヤ人勢力は、‘国際法秩序の維持’を根拠として全力でウクライナを支えたのです。

 日本国政府がウクライナに多額の支援金を拠出してきたのも、国際法秩序の維持という大義名分があったからです。‘今、ロシアの侵略を阻止しなければ、国際法秩序が崩壊し、全世界が弱肉強食の無法地帯と化す’、“暴力で奪った者勝ちを認めるわけにはいかない”とする主張は、正論でもありましたので、国民の多くをウクライナ支援に納得させる説得材料であったのです(もっとも、ロシアに対する侵略認定は、中立・公平な国際司法機関による検証を経たものでもない・・・)。

 ところが、冒頭で述べたように、イスラエル・ハマス戦争におけるイスラエルの基本スタンスは、ロシアと同様に‘無法者’です。国際法秩序の維持を主張するならば、今般のイスラエルの行動は違法行為であり、イスラエルは、当然に、パレスチナ領域の併合という‘大イスラエル主義’は断念せざるを得なくなります。その一方で、‘無法者’の立場を貫くならば、イスラエルは、ロシアによるウクライナ領の併合を認めざるを得ないのです。昨今、同紛争に対するアメリカのダブル・スタンダードが内外から批判を浴びていますが、同国の一貫性の欠如は、ユダヤ人が直面しているジレンマの現れとも言えましょう。

 それでは、ユダヤ勢力、あるいは、‘ユダヤ人中枢’は、このジレンマをどのように解決しようとするのでしょうか。同ジレンマについて、グローバリストでもアルユダヤ勢力が事前に予測していたか否かは定かではありませんが、仮に、カナンの地における‘大イスラエル’の実現を最優先課題として位置づけているとしますと、同勢力は、(1)ウクライナ紛争ではロシアに勝たせ、既成事実主義を浸透させる(ゼレンスキー大統領等のユダヤ系協力者には逃亡先を用意・・・)、(2)ウクライナ紛争はそもそも両国を背後から操って演出したものであるので、勝敗を有耶無耶にした形でフェードアウトさせる、(3)ウクライナを勝たせた上で、イスラエルの国際法違反については、各国政府やメディアへの圧力など、マネー・パワーで批判を封じ込める・・・といった方法を採るかも知れません。これらの何れの方法であっても、大イスラエル主義に基づく限り、ユダヤ勢力のジレンマの解消は、武力による一方的な現状の変更、即ち、侵略や反人道的行為を是認する方向に向かう可能性が高いと推測されるのです。国際法秩序の維持という根拠は、ユダヤ勢力にとりましては、自らの野望や欲望を隠すための方便に過ぎないことが露呈したのですから。

 この流れからしますと、今日、ウクライナに対する6500億円の追加支援に際して復興特需論、あるいは、日本利益論が声高に主張されるのは、あるいは、国際法秩序の維持という大義名分が、ユダヤ勢力にとりまして不都合となってきたからなのかも知れません。また、アメリカがウクライナ支援を渋るようになったのも、ロシア勝利路線の方がイスラエルにとっては望ましいからとも推測されます。

 もっとも、国際世論のイスラエル批判は高まる一方ですので、イスラエルが、大イスラエル主義を諦めるという選択もあり得ましょう。ハマスが偽旗作戦のためにイスラエルが仕立てた要員であれば、‘ハマスの敗北’をもって今般の戦争を一先ずは‘正当防衛’の範囲に収め、カナン全域のイスラエル化の夢は断念するかもしれません。何れにしましても、人類の一部でしかないユダヤ勢力のジレンマが、人類の未来に多大なる影響を与えるという事態は、本来、あってはならない事です。紛争を平和裏に解決し得る公正・公平な国際法秩序の制度的な構築こそ、全人類にとりましての最優先課題なのですから。

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