目下、ロシアのラブロフ外相のヒトラーユダヤ系説に関する発言が、波紋を広げています。もっとも、アドルフ・ヒトラーにはユダヤ人の血が流れているとする説は、ラブロフ外相が最初に言い出したことではなく、’公然の秘密’とまでは行かないまでも、近年に至り、かなり信憑性の高い説とみなされています。何故ならば、ヒトラーの父親であるアロイスは父親が不明の私生児として出生しておりますし(生物学上の父親はユダヤ系?)、高等教育を受けずに育ったものの異例の出世を遂げ、後年、オーストリア帝国の官吏にまで取り立てられているからです(有力者の後押し?)。謎多き人物なのですが、数年前にヒトラーの甥のDNA鑑定を行った結果(アロイスにはアドルフを含めて8人の子供たちがいた…)、中東系の塩基配列の存在が報告されており、医科学的にもヒトラーがセファルディ系のユダヤ血脈を引いている可能性が強く示唆されているのです。
しかも、ナチス・ドイツの幹部の多くは、ゲッペルスをはじめとして多数のユダヤ人が含まれています。たとえ、ヒトラーその人がユダヤ系ではなくとも、ナチスという組織にはユダヤ人脈が根を張っていたことは歴史的な事実であり(ヒトラー政権の80%がユダヤ人であるとも言われている)、イスラエルやウクライナのゼレンスキー大統領が激しく批判し、謝罪を求めようとも、ラブロフ外相の発言は、歴史の真実の一旦を明かしています。
そして、ラブロフ外相によるこの一種の’暴露’は、カバーストーリーの羅列のごとき教科書的な世界史の理解では、今日の政治の世界、並びに、史実としての世界史を正確に把握することができないことを示しています。例えば、ラブロフ発言を頭から否定する人々は、この世の中には’偽旗作戦’など存在していないと固く信じ込んでいます。しかしながら、古今東西を問わず、作戦の失敗を含めて、味方のふりをして敵国の権力内部に入り込み、敵国を攻撃したり、その崩壊に導いた事例は枚挙に遑はありません。歴史を学べば学ぶほど、’偽旗作戦’こそ最高の攻撃方法と思えるほど、その効果の高さに驚かされるのです。’内部に入り込んだ敵ほど怖いものはない’というのは、歴史の教訓でもあります(「トロイの木馬」の伝説も、こうした歴史の一端を伝えている?)。
しかも、ユダヤ人の思想の中には、しばしば異教徒に対する詐術を容認しているとして批判されてきたタルムードの教えのみならず、古代の邪教を引き継ぐマルクート教、さらにはフランク主義のように’隠れユダヤ教徒’を生み出してきた倒錯的な思想の流れもあります。こうした独特の思想、あるいは、思考傾向からしますと、’ユダヤ人だけは、絶対に偽旗作戦を用いることはない’とは、誰もが断言はできないことでしょう。むしろ、資金力に富み、全世界にネットワークを張り巡らしているユダヤ人であるからこそ、’偽旗作戦’は、比較的容易に実行し得る作戦であるかもしれないのです。偽旗作戦の存在を信じない人々は、何度でも同じ作戦に騙されてしまうかもしれません。
例えば、実際に、現代にあっても、強く偽旗作戦の実践が疑われるケースも少なくありません。何年か前の話になりますが、イギリスのメディアが、国粋主義者と見なされてきた日本国の極右団体のメンバーの多くが韓国・朝鮮系の人々であることを’暴露’し、ネット上で騒ぎが起きたことがありました。過激な民族主義者がその実、外国系の人々である事例は、日本国内でも見られるのです。また、今般のフランス大統領選挙にあって中盤に支持率を伸ばしたエリック・ゼムール氏も、極右候補の一人とされながらユダヤ系でした。これらの人々の活動が’偽旗作戦’であるかどうかは現状では判断できませんが、外国人によるナショナリズムの扇動は不自然であり、この漠然とした違和感、あるいは、不信感は、これらの人々を陰から操る組織の存在に由来するのかもしれないのです。
以上に述べたことから、ヒトラーユダヤ人説は全く根拠のないフェイクではなく、ナチス、並びに、ネオ・ナチ集団のバックにはユダヤ系の組織が潜んでいる可能性も否定はできなくなります。アゾフ大隊は、民間のネオ・ナチ系の組織から昇格していますので、ウクライナのゼレンスキー政権にあって、ユダヤ系ネオ・ナチ勢力が一定の地位を得ているという説は、それが信じられるだけの土壌があると言えましょう。
なお、ラブロフ発言は、ロシアにとりましてもブーメランとなるかもしれません。その理由は、プーチン大統領についても、その出自に疑惑があるからです。その疑惑とは、プーチン大統領も婚外子であり、後にプーチン家の養子となったというものです。1999年に実母を名乗る女性が登場したことで注目されるようになったのですが、プーチン大統領もヒトラーも、自らの出自を調査させないように妨害しています。また、ヒトラー自身も、父親のアロイスと同じくあれよあれよという間に権力の座に上り詰めており、’謎の出世’という点においては、KGBの諜報部員から大統領への階段を駆け上ったプーチン大統領も共通しているのです。果たしてこの共通性は、何を意味しているのでしょうか。
(*本日は、ラブロフ発言の重要性に鑑みまして、同発言を取り上げて記事といたしました。昨日掲載しました「国際社会における新たな安全保障体制とは?」の続きは、後日といたしたく存じます。大変申し訳なく、お詫び申し上げます。)