万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国民の多くは中立と和平を望んでいるのでは?

2023年01月27日 12時12分47秒 | 国際政治
 ウクライナに対する主力戦車の供与へと転じたアメリカとドイツの方向転換により、ウクライナ情勢は、ロシア対NATOの直接対決の様相を呈してきており、余談を許さない状況に至っています。第三次世界大戦の足音も聞こえてくるのですが、日本国の報道ぶりをみますと、ウクライナ支援に向けた世論誘導が見受けられます。

 例えば、インドネシアのスカルと大統領の夫人であっデヴィ夫人のウクライナ訪問が勇気ある行動として大々的に報じられる一方で、森善朗元首相の「ロシアは負けない」発言に関する記事は、あたかも同氏が売国奴のような批判が込められています。ウクライナが正義でロシアが悪とする構図に固執するマスメディアは、日本国民に対しても、ウクライナを応援するように誘導しているのです。

 森元首相はプーチン大統領との親交があるため、ロシア寄りと見なされがちですが、「ロシアの負けは考えられない」という言葉は、仮にNATO側の主力戦車投入によりクリミア半島を含めて占領地を奪還し、ロシアを敗戦に追い込んだとしても、‘ロシアは敗北を受け入れない’、つまり、核兵器を使う可能性を警告したのかもしれません。森元首相はしばしば無神経な発言を繰り返してきましたし、政治倫理に照らしても模範的な政治家でもなく国民からの好感度も低いのですが、仮に、戦争激化による第三次世界大戦並びに核戦争への発展を憂慮しての発言であるならば、むやみに批判すべきでもないように思えます。

 一方、デヴィ夫人につきましては、以前、1965年に起きた9月30日事件を機にスカルノ大統領が失脚した際に、ロスチャイルド家からの支援を受けたとされます。因みに9月30日事件とは、親共産主義・親中国へと傾いたスカルノ大統領に反発した軍組織が起こした軍事クーデターです。同事件からは、ロスチャイルド家と共産主義との関係も伺われるのですが、個人的にデヴィ夫人が世界権力の中枢ともされる金融・経済財閥一族と親交があった、あるいは、恩を受けたとしますと、今般のウクライナ訪問も、マスメディアが報じるような純粋に正義感に駆られた行動ではないのかもしれません(ウクライナ支援には、世界共産化への謀略があるのでは? 例えば、ウクライナへの武器供与によって軍事的に弱体化した国々は、中国共産党軍からの侵略を受けやすくなる)。

 そもそもロシアによるウクライナに対する軍事介入は、紛争の平和的解決を定めた国連憲章に反する行為であることは確かであり、この点は、批判されて然るべきと言えましょう。しかしながら、元々の原因は、ロシア国内における東西地域間の歴史や人口構成の違いによる分離・独立運動にあります。紛争勃発前より既に内戦という形で、双方による武力行使も行なわれており、仮に、ロシアが親ロ派に軍事支援したことが違法であれば、今般、NATOがウクライナ側の親欧米派に対して支援することもその合法性が問われないとも限らないのです。

 ロシア系住民に対する迫害を実行したとされるアゾフ連隊の存在に加え、法的側面にあっても、ウクライナ紛争は一方的にロシアが悪とは言い切れない側面があるのですが(しかも、双方の主張を確認するための、中立・公平な機関による厳正な調査も捜査もなされていない・・・)、メディアのみならず、不自然なまでにウクライナ側が正義であると訴えるネット上の一団も存在しているようです。果たして、これらの人々は、仮に、今般のNATO諸国による戦車供与が第三次世界大戦への導火線となった場合、あるいは、戦争の泥沼化をもたらした場合、どのように弁明するのでしょうか。ロシアが核兵器を使う可能性も高まるばかりです。

 ‘ウクライナ応援団’の人々は、他人事のように支援を語っていますが、戦車の価格は一台8億円ともされ、運用費を合わせますと相当のコストがかかります。中国の脅威を前にして自由主義国側が兵力を消耗させられると共に、国家財政も疲弊し、台湾有事に際しては、既に余力を失っているかもしれません(中国は、じっくりと自由主義諸国の弱体化を待っている・・・)。兵器を供与しないにせよ、日本国にも相応の負担が求められ、国民もさらなる増税を迫られることにもなりましょう(戦争が激化するほどに物価上昇や品薄により国民生活も窮乏化・・・)。

 こうした事態も予測されるのですから、日本国民の多くが、メディアやネット上の‘ウクライナ応援団’と同様に、ウクライナを一方的に善と見なし、同国への支援を支持しているとも思えません。諸外国からの支援を当然と見なす傲慢さのみならず、他国や人類を危険に晒すことに対して何ら良心の呵責を感じていないゼレンスキー大統領の尊大な態度も、同国に対するシンパシーを低下させる要因でもあります(戦時の指導者には相応しいとは思えないゼレンスキー大統領のラフな服装にも、政治思想上の意味があるように思える・・・)。

 日本国民の多くは、ウクライナかロシアかの二者択一の選択しかないようなマスメディアの報道には辟易しており、日本国政府に対しては、中立的な立場を求めると共に、早期の和平を願っているのではないでしょうか。先の大戦の開戦経緯に鑑みても、人類全体からすれば極少数に過ぎない世界権力が描くシナリオに巻き込まれる事態は、何としても回避したいと考えているのではないかと思うのです。

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