同じ本をネタにして書くことにします。いくつかノートに書き写しましたからね。とはいえ、ありふれているというのか、ポピュラーな感じです。
前にも書いたかもしれないけど、古い話を思い出しました。二十代のころ、先輩たちに連れられてキャバレーみたいなところに行きました。お金を払ったかどうか、払ったのかな。会費制だったかな? とにかく行きました。ものすごいおネエさんたちがいました。「あんたのお母さんくらいよ」とか言われたけれど、もっと行ってたと思うけど、どうだったかな。
先輩は、変てこな都都逸が好きでした。いろいろ教わった気がしますが、唯一憶えているのは、
あなたと私はオモチャの刀 切るに切られぬ仲なのよ
だなんてねえ。先輩はしつこく歌ってたけど、自分のオリジナル作品ではなかったでしょう。そういうところをはしごして、そういう道を勉強されたんでしょう。
人生って、いろいろ勉強しなきゃいけないことがありますが、私はそっちもダメでしたね。あれもこれもダメだったなあ。いけるのは何だったろうかなあ? わからないですね。
恋に焦がれて鳴くセミよりも 鳴かぬホタルが身を焦がす
ポイントは後半です。「君が好きだよ~」と大っぴらに歌う人よりも、じっと忍んでいる恋というのもある。そちらの方が、熱量がすごくて、強い気持ちを持ち続けられる。大人の恋なら、あまり物を言わないがじっと思い続けてもらう、それがホントの恋というものだ。
そういうこともあるんですね。勉強になるでしょ? いや、有名すぎて、みんながホタルの恋をしている気になっていますよ。それよりは、君に会いたかったとか、ホントにありがとうとか、素直に言える方が、もっともっとオトナだと思うな。
高い山にはカスミがかかる わしはこなたに眼がかかる
どこかで聞いた歌だなと思ったら、「鹿児島オハラ節」の
〽桜島にはカスミがかかる わたしゃおはんに オハラハア 気がかかる
あれの元歌なのか、原形なのか。「いかな山にも霧は立つ、御身(おみ)いとしにはきりがない きりがない、のうきりがない」などの形があるそうです。
「おはら節」が恋の歌だというのは、一瞬そうかもと思いましたけど、アッケラカンとしている歌なので、恋の気分を感じていませんでした。けれども、男の人から女の人へ、告白なのに、そうじゃない風情で、気を引くように声張り上げて歌うというのもアリですね。でも、ちゃんと空気を読んで歌わなきゃダメですね。それらしい告白ではなくて、一生懸命に伝わるように歌わなきゃ!
吉野川には棲むかよ鮎が わしが胸にはこひがすむ
キヤーッ、告白しちゃいましたよ。言われた方はドッキリですよ。この吉野川は大峰山とか、奈良の山奥から流れて来る川です。和歌山県に達するとそこからは紀ノ川になります。そして、面白いことに、対岸の徳島には、四国の山奥から和歌山に向かって大きな吉野川が流れてきます。どちらも吉野川で、どちらも大きいし、どちらにも鮎はいるでしょう。
「鮎」と「愛」、「恋」と「鯉」、わかりやすい掛詞でした。わかりやすいので、上手に歌ったら、相手の人も、「わしの胸にはナマズすむ」とか、「わしの胸にはゴリがすむ」とか、わけのわからん返しをしなきゃいけないですね。OKにしろ、NOにしろ、返事も歌で返さなきゃね!