愛知県美術館で岡本太郎展をやっています。来月の半ばくらいまで開催される予定です。
そこで今日、46歳の会社員が「太陽の塔 1/50」という模型に突進したか、凶器を持ってたのか、とにかく傷つけた後、逃走して、防犯カメラ等の映像から犯人をすぐに割り出して逮捕したそうです。
まあ、みんながいるところで、そのような事件を起こしたのだから、言い逃れできないのに、「いや、私ではない」「知らない」などと言っているそうです。
現行犯で取り押さえることができなかったのが、残念だけど、まさか、こんなことをする人がわざわざ入場券を買って、何かできないか、考え、太陽の塔に向かったということでした。
太陽の塔にもかわいそうなんだけど、どうして男はそんなことをしなきゃいけなかったのか、そこが私にはわかりません。パフォーマンスでもないし、自らの犯罪をなかったことにするなんて、言い逃れができると思っているのか、とりあえず「知らない」で通そうというのか、とても残念な気持ちです。
世の中には、いろんな不安を抱え、どこかにはけ口を探している人はいると思います。けれども、そんな悩みを吐き出すために、何か・誰かを傷つけずにいられない、というのが残念でなりません。
男のはけ口は、他者に向けられていた。
そういうのは、日本だけではなくて、アメリカでも、何日かの頻度で人を傷つける事件は起きています。そして、この他者が傷つくことで自らがサッパリする、本人の中で何かのつじつまが合うというのは、これからも続くことでしょう。
太郎さんは、芸術によって世の中に低迷する人々の気持ちを高めたり、何か違う次元に連れて行ってくれそうな人でした。
それを乗り越えなきゃだめだ。低迷してはいけない。同じことでいじけてはいけない。それを許される形で何かにすればいい、そう教えてくれていました。
46歳の会社員の人には、そんなメッセージは伝わらなかったんですね。何かを破壊することでストレスを発散する、その後、自分はどのような罪に問われるのか、それは考えない。
これは爆発ではないですね。暴発というんだろうか。何か間違っています。もっと違う方法があったと思うんだけど、男は事件を起こしてしまった。
幸いなことに、少し傷ついただけで、1970年に生まれたこの模型も、再び私たちの前に現れてくれるでしょう。少し人間不信になるかもしれないけど、また再び私たちの前に来てくれるかな。それを待ちたいと思います。