タイトルが『山家鳥虫歌』ですから、トリたちのことが出てきます。でも、わりと有名な形で歌われています。そりゃ、歌ですから、みんなに知られた姿を伝えなきゃいけないんですね。
キジの雌鳥(めんどり)ススキのもとで 夫(つま)を尋ねてほろろ打つ
「ほろろ打つ」とは、キジや山鳥が羽ばたきをして鳴くこと、だそうで、オスの鳴き声は聞いたことがありますが、まだ研究が足りなくてホロロが聞けていませんけど、ケンモホロロの「ほろろ」はメス、「けーん」はオスでした。
古今集に「春の野の繁き草葉の妻恋ひにとび立つきじのほろろとぞなく」(平貞文)と歌われているように、オスとメスは互いに鳴きかわすようです。なんと仲睦まじいことです。オスはいつもメスのことを心配しているし、常に自分が目立つようにしている。ものすごくジェントルマンな感じです。
たまには、べらんめえの、女なんか知らないよ的な、いいかげんなオスもいてもいいのに、みんな妻思いのようです。素直に認めてあげなきゃいけないな。
こんなトリもいるようです。
後世(ごせ)を願(ねが)やれ爺様(じさま)や婆様(ばさま) 年寄(としより)来いとの鳥が鳴く
あの世を信じなさい、おじいさん、おばあさん、お年寄りのみなさん来なさいとトリが鳴いています、という変な内容です。
そんな意地悪な鳥がいるんだろうか? 「年寄来い」は山鳩の鳴き声なんだそうです。そんな風に聞こえるものなのか。斑鳩(いかるばと)、キジバト、つちくれバトなどともいうそうで、関西では「としよりこひ」と鳴き、関東では「ててっぽう、ててっぽう」と鳴くということです。
キジバトは、うちの庭にも来るけれど、そんな声を聞かせてもらったことがありません。いつももの静かで、エサばかり探しています。恋愛の季節になると、ものすごく熱烈に愛し合うんだけど、もううちの庭には愛の巣を作る木はないし、もううちでは愛し合わないかな。残念ですけど、声だけでも聞かせてもらいたいです。