甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

雲とブラウス(干刈あがた)1983

2016年03月01日 21時23分17秒 | 干刈あがたさんを追いかけて
 3年前、日本橋(ニッポンバシ)の古本屋さんで、「ウホッホ探検隊」を買いました。掘り出し物だと喜んで、帰りの近鉄で冒頭の作品は読んだと思います。たぶん……。

 それから3年間、すっかり放置してありましたが、その割に干刈あがたさんはずっと探していて、見つけたら読んだりしたんですが、こちらは読んでませんでした。

 それが、ネットであがたさんの作品で評判がいいのが「プラネタリウム」という作品らしく、どれ、いつか読んでみたいなあと思ったのです。

 まさかうちの書棚にないだろうと見てみたら、「ウホッホ」の2番目に入っていました。なあんだ、そういうことでした。それで、早速読んでみたら、どういうんだろう、こういうハッピーエンドが世の中の人はいいの? と、ひねくれ者の私は思ってしまいました。

 しばらく、放置してみると、でも、そういう形もありなのかもと思い、もう一度読んでみようと思っています。文庫本の90から125ページなので、すぐにまた読めるでしょう。今週末、近鉄に乗ると思うので、その時に読みたいと思います。「ウホッホ」も読み直してみます。



 1985年の福武文庫には、「ウホッホ探検隊」「プラネタリウム」「雲とブラウス」「幾何学街の四日月」の4つのお話が入っています。福武書店は、このころ文芸へのあこがれを持っていたらしいです。文庫もあがたさんなど、何人も売り出そうとしていた。そのスタッフたちがどこへ行ったのか、それはわからないけれど、そういう時代があったのだなと、はるか昔が思い出されます。

 そのころ、阪神タイガースは優勝したけれど、私の結婚も決まろうとしていたけれど、私個人は社会的には不幸でした。それをなるべく感じないようにしていたけれど、バブルといわれたこの時代に、私は何を考えて生きていたのでしょう。これは個人として振り返っておかないといけないことだと思っています。いつかちゃんと振り返ります! その都度振り返ってはいるんですけどね。



 「雲とブラウス」でした。これはあがたさんのロード小説でした。失踪した兄を、高校生の妹さんは、異性の友人小林君と探し回るのです。時代は、なんと1959年頃の話らしいのです。ということは、あがたさんが高校生くらいのころにあたるのでしょうか。

 主人公の私は、小林君という頼もしい存在を得て、あぶないところに潜入したり、そこでワケのありそうな男女に出会い、いろいろ教わったり、お接待をしてもらったりします。この繁華街の裏町事情が当時の雰囲気を感じさせてくれて、歴史的資料としてはおもしろいけれど、バブルの時代に投入する小説としてどうだったのだろうと、少し不安な気持ちにもなりました。

 あがたさんにしてみれば、自分の青春時代を題材に書くのは自然なことなのだけれど、バブルで浮かれた世の中にどれくらい受け入れられたのか、21世紀初頭の私は不安になるのです。

 でも、そういう売れる、売れないはもう関係ないのだから、文学としてどういう価値があるかになるのですが、私は、それなりにおもしろいのではないかと思いました。

 次から次へと、街を案内してくれるのです。そして、当時の風俗や考え方やらが挿入されていて、トラさん以前の、社長シリーズ、駅前シリーズなど、日本の映画黄金期の人々の生活が感じられて、みんなあぶく銭に一喜一憂し、あまり先のことは考えなくて、わりと享楽的で、その場その場を楽しんでいくので、読んでいて浮遊感が味わえます。



 最後は、祭りの後で、お兄ちゃんと伊豆までドライブに出かけたら、お兄ちゃんはバイトのお金をすべて旅館の女に吸い取られて、「ハイ、それまでよ」になってしまい、ションボリ帰るのです。

 あまり救いありません。持ち慣れぬ大金を手にしたお兄ちゃんは、スッカラカンになり、家に戻り、また地道にお金を稼ぐ道へもどるのだろうことが想像されますし、妹さんは、お金はあまりないのだけれど、女だって進学しなくてはならないと思い、また高校で勉強をするはずです。そうした日常にもどることが予測されるけれど、それはもう書かれていないのです。

 そういう人々の生き方があったのだという、当時の映画を見るとよく感じる、あまり未来のことなんか考えなくて、わりとホイホイ生きていく、あの空気感を出せています。

 でも、作品としては1985年であり、それがあがたさんの不幸だったのかもしれない。あがたさんの書きたいことって、当時の人たちに受け入れる余裕がなかったろうなと私は思うのです。



 ただの感想文ですね。作品の魅力を引き出せてないです。

 これも週末にもう一度読み直してみます。



★ 福武書店さんが、文芸をがんばろうとした時代、それが80年代でした。バブリーだった。そして、路線変更して教育にシフトして大成功し、政府に取り入って新しいテストを作成する権利も手に入れた。そうした暗中模索の30年だったんですね。これから30年、この会社はどうなるのかなあ。もう教育で儲けるシフトで行くんでしょうね。

 おかげで古本業界としては、旺文社文庫・福武文庫はそれなりの値段になるのかもしれません。



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