甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

♬青葉茂れるサクライの……

2018年04月21日 06時25分23秒 | 一詩一日 できれば毎日?

 私は、NHKのドラマ「天下御免」の中で、林隆三さんが歌っていて、それで詳しくはわからないくせにインプットされました。サクライも、奈良県の桜井市だと思ったのかどうか。

 それさえ危ういくらいに何もわかっていませんでした。もちろん井上やすしさんの作品も知らず、たださわやかな感じがあった。当時の林隆三さんは豪放磊落な感じがあって、友だちのお母さんがキャーキャー言うくらいだったから、彼の魅力でさわやかに感じたのかどうか。

 私は、ドラマに出てくる中野良子さんたちが気になりましたけど、中野さんは中国で有名になってしまうんですから、世の中ってわかりません。

 『楠公の歌』というそうで、落合直文・作詞、奥山朝恭・作曲、1903・明治36年の作品。

1.青葉茂れる桜井の 里のわたりの夕まぐれ
  木(こ)の下陰に駒とめて 世の行く末をつくづくと
  忍ぶ鎧(よろい)の袖の上(え)に 散るは涙かはた露か


 桜井は奈良県ではなくて、大阪の島本町(東海道線の高槻と京都の長岡京市の間です。サントリーの山崎工場よりも大阪側かな)にあったところです。淀川の右岸にあります。このまま正成さんは尊氏さんとの戦いのために、西国街道を通って神戸方面に向かうようです。

2.正成(まさしげ)涙を打ち払い 我が子正行(まさつら)呼び寄せて
  父は兵庫に赴かん 彼方(かなた)の浦にて討ち死にせん
  汝(いまし)はここまで来つれども とくとく帰れ故郷へ


 お父さんは戦死を覚悟して、息子の正行(まさつら)さんにふるさとに帰るように指示します。子どもにはさらに後醍醐天皇を支えてもらうことを期待したのかどうか。それとも、もう愛想が尽きて、息子だけは生きてほしかったのか。

3.父上いかにのたもうも 見捨てまつりてわれ一人
  いかで帰らん帰られん この正行は年こそは
  未だ若けれ諸(もろ)ともに 御供(おんとも)仕えん死出の旅

4.汝をここより帰さんは 我が私の為ならず
  おのれ討死(うちじに)為さんには 世は尊氏の儘(まま)ならん
  早く生い立ち大君(おおきみに) 仕えまつれよ国の為




 このあたりは、少し歌が作られたときの時代を感じますね。正成さんが何と言おうとも、当時としては、帝の命令だから私はその命令に従う。そこで死ぬだろう。しかし、お前は違う。親の私が死んだとしても、子どものお前は引き続き帝を支えなさいなんて、ものすごい自己犠牲の忠臣になっています。

 そうだったのかもしれないし、そうじゃなかったのかもしれない。こういう場面そのものが存在しなかったかもしれないのに、この名場面はいつの間にか作られ、伝わってきていた。それが日露戦争を前にして歌にされる。

 このあと父と子は別れ、お父さんは戦死、息子は南朝方のリーダーとして活躍しますが、やがて戦死してしまいます。

 ああ、この歴史的事実はものすごく皇国思想を刺激します。本人たちはそんなつもりはなくて、ただ後醍醐天皇を支えたいというその気持ちだけだったろうに、いつの間にやら、すべての国民が天皇様を支え、天皇のご指示とあらば喜んで戦死する材料になってしまいました。

 普通の人々は、天皇とまったく関わりなく生きているはずなのに、無理やり関係づけられてその天皇のために命を投げ出せなんて、よくも歴史を捻じ曲げたものです。天皇様がひとりひとりにそんな指示を出しましたか。たぶん昭和天皇はそんなことは言わなかったと思うけど、まわりの取り巻き連中がそうおっしゃったということにしたんでしょう。罪深いことです。




 このあと十何番までつづく歌は、湊川で戦死するまでを描きます。敵をとにかくなぎ倒すことだけをひたすら行い、壮絶な死を遂げる。とてもつづけられるものではありません。あまりにむごいし、あまりに現実離れしていて、そんなことができるなんてとても思えない。

 それが戦場なんだろうけど、できればそういう状況には置かれたくないと思います。

 また暗くなってきました。さわやかな若葉のころを書きたいのに、すぐに陰気になります。正成さんはおもしろい人物というか、みんなから慕われる人だった気がします。尊氏さんは新田義貞さんには容赦はなかったけれど、正成さんは戦死した後、正成さんの霊の平安を祈ったということですし、それくらい懐かしい人だったのだと思います。

 そういう人なのに、軍国主義に利用され、何だか疎ましい存在にさせられてしまった。それが残念だけど、いつか復権できる日も来るかな。とりあえず私も、ゆかりの地をまた歩いてみなくてはいけません。


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