キャスリーン・バトルさんに出会ったのは、30年以上前のことなんだそうです。
1986年のニッカ・ウイスキーのCMで、突然、この歌手に出会いました。
この映像を撮ったのは、凝った映像でおなじみ、そして、私たちの世代にはウルトラマンでおなじみの、実相寺昭雄さんだったそうです。
バトルさんは現在70歳だそうで、コマーシャルの時には、40手前だったんですね。その後、どんなふうに活動しておられるのか、知るチャンスがなくて、とりあえず私は、80年代末、バトルさんのレーザーディスクを買い、LDプレヤーはしばらくしたら使えなくなり、DVDに変わりましたが、もうバトルさんのことは忘れておりました。
それでも、この30年の間に、バトルさんのCDを古本市などで見つけて2枚ほど買いました。
買ったものの、当時の情熱は湧いてこなくて、そのまま聞かなくなっていました。
今朝、朝の通勤、ヘンデルのオペラ「クセルクセス」の冒頭の「何という木陰」とかいう曲がかかるということで、必死にカーブを切ろうとして耳だけ澄ませていました。
「あれ、どこかで聞いたメロディ」
なかなかボーカルが出ないけど、たぶん、オンブラマイフだ。キャスリーンさんの曲よりも、かなりオーケストラがぶ厚くて、ゴージャスな感じでした。
そして、やっと歌が聞こえてきました。まさしく、バトルさんが歌ってたあの曲でした。久しぶりに出会いなおしをした感じです。なかなかいい。でも、どれくらい聞かせてもらったんだろう。十数分だったのか、数分だったのか。
ウィキペディアによると、
「オンブラ・マイ・フ」(Ombra mai fù)は、ヘンデルの作曲したオペラ『セルセ』(Serse, Xerxes)第1幕冒頭のアリア。ペルシャ王セルセ(クセルクセス1世)によって歌われる。調性はヘ長調。詩はプラタナスの木陰への愛を歌ったもの。
そうなんですね。そこから冒頭のアリアをバトルさんは歌ったみたい。
オペラは上演されなくなり、「オンブラマイフ」だけが、ヘンデルのラルゴの名を与えられて愛唱されるようになった、ということでした。単独で歌われるアリアで、意味は以下の通り。
Ombra mai fù
di vegetabile,
cara ed amabile,
soave più
かつて、これほどまでに
愛しく、優しく、
心地の良い木々の陰はなかった
こんな何でもないことを、王様は歌ったそうです。他愛ないといえばそうです。
でも、王様がこんなことに気づいてくれるなんて、人民としてはありがたいですよね。
王様が、戦いの馬とか、美しい剣とか、広大な支配する土地とか、そういう権力欲を満足させるものばかり見ていたら、人々としてはやりきれません。
また、戦いを始めるの? それとも、国と国との連合から離脱じゃ! とか、落ち着きないのはイヤですね。
「ああ、いい木陰。のんびりしていたいなあ。なあ、みんな。」
そんなことを言っている王様なら、ハダカンボで歩いてても、頭刈り上げのおデブ坊やでも、ホッとするんだけど、現代ではそんなの無理なんだろうな。
そんなこと言っているオペラだから、ヘンデルのオペラそのものは忘れ去られたのかもしれない。
でも、この一曲と「水上の音楽」と、他にもいろいろ残っていますから、そりゃ、たいしたもんだ。