夜の女王のアリア、というのは二つあるそうです。モーツアルトの「魔笛」というオペラの中で歌われます。
私には関係ない世界だ、と思っていたら、聞いたことがありました。
何日か前の朝のFMです。どうして聞いたことがあるんだろう?
そう思ったら、大好きな映画の「アマデウス」で月の上に乗っている女王様が
「ハーッ、ハハハハハハハハハー、ハハハハハハハハハー」と歌っていたあの曲でした。
わりと楽しそうな曲みたいなのに、歌われている内容は穏やかではありません。復讐をほのめかすような、なんだか妖しい内容です。「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」というタイトルなんだそうです。
そして、殺人をそそのかすなんて、なんというキャラなんでしょう。ああ、恐ろしい。だから、とんでもない怖い化粧をした人たちが歌っているみたいです。
そういう内容をモーツアルトさんは、あんなに明るく楽しそうな音楽にしてしまうなんて、たいしたものだし、それに応えるソプラノ歌手の皆さんも大変です。超絶技巧なんでしょうね。
オペラって、なかなかそういうのを聞くチャンスはないけど、歌劇として全体を楽しむ分にはおもしろいものだと思われます。
オペラのことを書こうと思ったのではありません。
どこかでそういうキャラ知ってたなと思ったら、ピエール瀧さんの事件がありました。彼はせっかく大河で頑張ってたのに、あんなことになってしまって……。
その時にはある程度の捜査の対象になっていたはずだけど、本人は無防備に薬物を使用してしまい(常習してた?)逮捕の直前にも使用していたそうで、もうなかなかやめられなかったようです。残念な気持ちで朝、そのニユースを聞いたものでした。その同じの日、夜の女王ともいうべき人がネットに出ていたのです。
十何年ぶりかで地上波に出たというだけでニュースになる酒井のり子さんでした。
私は、彼女がデビューしたときから、ずっと毛嫌いしてきました。なにしろあざといというのか、こうすりゃ受けるだろうという商魂が見え見えだったし、わざとらしく聖子ちゃんのマネしてみたり(聖子ちゃんが結婚した聖子ロスの時代に出てきた人だったのかな?)、変てこなノリピー語なるもので会話しようとしたり、あまりに若い人を小バカにしていた。
「ほら、かわいいでしょ。私を支持してね。」とか、「私、こんな不思議ちゃんキャラもできるのよ、おもしろいでしょ。そして、わたしって、なんてったって、かわいいでしょ、ほら、そう思うでしょ。」
そんな見え見えのことばを行動で示していたのに、何人もの若い人たちはだまされていた。
すべての活動において見え見えのことをして、それでも人々が支持している、この人々のだまされやすさが許せなかった。どうして我々って、こんなに愚かなのと思っていました。(というふうに書いて、そういうことが最近の日本の政治でもあるなあと思い当たりました。まあ、それはまだ進行中なので、彼が引退したら書くことにしましょう。)
世の中は見え見えのものに簡単にだまされるようにできているようです。
でも、ノリピーさんもずっと芸能活動をつづけるうちに、それなりに年を取り、親族は事件を起こしたり、変な男にだまされて結婚して、そのダメな男と一緒に過ごすうちに芸能生活から転落していきました。少しずつ本来持っているはすっぱな部分が拡大していきました。もとから持っていたはすっぱさは年月とともに出てきたんですね。
そうすると、私って、変なオッサンですから(簡単にはすっぱな女にだまされる、とはいっても、ただだまされてるだけで、実害はないので、喜んでだまされていたりします)、
田舎から出てきた成り上がりをめざしていた女の子が、自らの存在意義を高めようとしていろんな策を弄し、たくさんのファンに支持されて、一時期は頂点に立ったかに見えたら、いっぺんにそこから転げ落ちた。
という事実に、全く自分には関係ないし、全くどうでもいいノリピーだったのに、急にかわいそうになりました。言うなれば自業自得なのに、そういう落とし穴に自分からはまってしまう愚かな人間をいとおしい(とは少し違うような気もします)と思ううようになってしまいました。
というのも、これまた当時のFMで(たぶん十数年前)彼女の「あおいウサギ」という曲を聞いてしまったから、だったのだと思われます。
毛嫌いしていた軽薄な芸能人が、彼女の歌ってた通りの転落人生を歩いていた、その事実が怖くなりました。そして、人間の不思議みたいなのを感じたんでしょう。
それから、ブックオフでCDをかなり時間が経ってから買い、その曲だけコピーしたら、そんなのを持っていること自体が許せなくて、すぐまたブックオフに持っていきましたっけ。
嫌いなのにどこかで好きだった。でも、やはり関わりたくない。でも、曲は時々聞きたいような気分の時もある。宴会でノリピーの「あおいウサギ」歌います! と自分の芸にしたいくらい聞いてみたり、私自身もノリピーに関してはいろいろと引き裂かれていて、本音はキライなんです。でも、気になってしまう。
それで、モーツアルトの「魔笛」の夜の女王とノリピーが重なった気がしたんですけど、いつもの私のカン違いかもしれない。
でも、せっかくだから、新しいカテゴリーを作って、私のはすっぱな女の子(をキライが本音なんだけど、どこかで)好きかもしれない、という気分を書きました。
何だか言い訳している気分です。
明日、読み返して、おかしかったら、また書き直します!