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「吮疽(せんそ)の仁」と呉起(ごき) 中歴-58

2017年12月26日 08時45分02秒 | 中国の歴史とことば

67【吮疽(せんそ・せんしょ)の仁】……部下の苦労をねぎらって大切にすること。

「吮(せん)」は口で直接吸い出すこと。「疽(そ または しょ)」とは、どんなもの? 《『史記』「呉起伝」より》

 戦国時代初頭の呉起(ごき ? ~BC381)さんを取り上げたいと思います。

 孫子と並んで「孫呉」と呼ばれるビッグな兵法家だそうです。『呉子』という兵法書の作者にされるくらい、兵法の世界では有名な方だそうです。でも、その人生は、何だかかわいそうなところもあります。

 実家はお金持ちだったそうで、就職活動のために財産を使い果たし、それをあざ笑う人々三十人ほどを切り殺し、国外逃亡を図ります。お母さんと別れる場面で、自分のひじをかみ切って誓ったそうです。

 「私は、大臣宰相(さいしょう)にならないかぎり、二度と帰ってきません。」と言い残しました。

★ 苦労した波乱万丈の人生とはいえ、そのエピソードの最初のところで、三十人の殺人です。どんなふうに殺したのか、だれを殺したのか、よくはわかりませんが、あまり褒められたものではありません。「オレが、オレが」という強い自尊心みたいなのを感じます。なぜ他人が笑ったのが許せないのか、自分は完璧だと思う人って、そういうところがあるのかもしれません。

 それから、母に誓う場面で、自分のひじをくいちぎるなんて、とても激しい感情と、突拍子もないことを簡単にしてしまう衝動を感じます。もし才能があったとしても、あまり一緒にはおりたくないタイプです。耳を切ったり、ひじを食いちぎったり、天才は、時々ものすごく自分を痛めつけることをしてしまうらしいのです。


 立身出世を志して、孔子さんのお弟子さんであった曽子(そうし)さんのところへ行きます。将軍・戦略家になりたいんじゃなくて、政治家志望だったらしい。実家に残してきたお母さんがなくなられると、帰郷して喪に服さなかったので、破門されます。

 まあ、当たり前ですね。どんなに上昇志向であろうとも、孔子さんの流れでやっていこうとするのなら、親に対する行いは大切です。けれども、呉起さんは行かず、破門となります。やはり無理があったのでしょう。呉起さんは過剰の人なんですから、とにかくやり過ぎて平気なんです。家族の情なんて関係ないんです。

 その後、魯(ろ)の国で兵法を使うものとして採用されていましたが、そこへ斉の国が攻め込んできた。兵法家としてはチャンスです。実力を示せば、さらに重要なポストにありつくことができます。ところが、奥さんが斉の人だったので、将軍として抜てきしてもらえなくなりました。すると呉起さんは奥さんを殺して、自分には二心がないのだということを示そうとした。

 呉起さんは将軍となり、大活躍して斉を破りました。さあ、目立つことをしたら人から足を引っ張られるのが世の中で、しかも呉起さんは目的のためには家族を殺しても何とも思わないヤツと思われてしまったし、事実そうだったんでしょう。

 まわりからあらぬうわさを流されて、結局魯の国にいられなくなって、新しい主人を求めて魏の国に行かなければならなくなりました。

 魏の文侯のもとにやってきました。文侯は魏の歴代の君主の中でも一二を争うほどの名君だったそうです。積極的に人材を集め、魏の国力を上昇させていました。

 さあ、呉起さんを任用するかどうか、家臣の李克(りこく)さんに尋ねてみました。すると、李克さんは

 「呉起は貪欲(どんよく)で好色ですが、軍事にかけては名将司馬穰苴(しばじょうしょ)もかないません。」と答えたので、採用されました。

 新天地で、呉起さんはものすごいパフォーマンスを見せます。

 軍中にある時は兵士と同じ物を食べ、同じ所に寝て、兵士の中に傷が……した者があると、その……を自分の口で吸い出してやりました。もうビックリです。こんなことは家族でもなかなかできないでしょう。

 ある時に呉起さんが兵士の……を吸い出してやると、その母が嘆き悲しんだそうです。

 「将軍様がじきじきにあんな事をやってくださっているのに、なぜ泣くのだ」とお付きの者が尋ねます。

 「あの子の父親は将軍様に……を吸っていただいて、感激して命もいらずと、敵に突撃し戦死しました。あの子もきっとそうなるだろうと嘆いていたのです。」と答えました。


★ お話としては感動的です。そして、どこかで現在でも利用されているような美談という気がします。

 今から二千四百年前の話を、21世紀の現代に使おうなんていうおバカな王様・将軍様はいないと思いますが、何となく既視感のある話です。

 でも、呉起さんが元祖なのかもしれない。もう極端に走ってしまう人なのだと思います。そういう人って、世の中にはよく見かけるような気がします。みんな何かのため、あなたのため、人のためと、サービスしまくっているけど、第三者的にいうと、そこまでしなくてもとなってしまう。

 とはいえ、世の中は過剰と不足でできているわけで、人に害を及ばさない限り、ある程度の過剰は奨励すべきかもしれない。だから呉起さんの吮疽(せんそ)も、あり得るサービスの1つなのかもしれない。

 私なんかにはできないことです。私が将軍様なら、たくさんの兵士と、たくさんの武器で、とにかく多勢だから、敵をもみつぶせ式の戦いしかできないです。陣地の後ろでふんぞりかえっていることでしょう。とても率先垂範・陣頭指揮なんて、できないですね。まあ、私を将軍にしようというおバカな王様はいませんから、大丈夫です。


★ 答え 67・うみ、できもの


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