友人が大山崎町の離宮八幡宮あたりを歩いたというのを教えてくれました。そこは今も、全国の製油会社の方たちの信仰を集めているということでした。
かつて京都から少し離れたところで、西国街道沿いの京へも大坂や西国にも通じるところに、全国の食用油や灯油を取り仕切った神社があったそうです。戦国時代くらいまでは全国を支配する力が神社の人々によって守られていたそうです。けれども、江戸時代には油を管理する権限(専売権)は失われたそうです。そして、ただ油の神様として信仰されていたようですけど、そこを最近訪ねてみたよ、ということでした。
その神社は、50年以上前の大河ドラマ「国盗り物語」で、平幹二朗さんが斎藤道三役をスタートさせた地点でした。大坂と京都の境目のところ、そこは油の大事な基地となっていたようです。
油は、灯りに使うのがメインで、お料理にどれだけ使われていたんでしょうか。各地で油を商う口上があって、行商人であった平さん(伊勢新九郎だったかな?)が「とーとーたらり、とーたらり」と油を流し込む場面を見たような、見てないような。何しろ古い話ですし、当時はビデオもないし、すべてあやふやな私の記憶だのみですから、あてにはなりませんけど……。
諸国を歩く中で、自分が入り込める土地として美濃の国を見つけ、そこのお殿様たちを上手に手なずけて、そのまま大名にまでのし上がっていった。だからこそ「国盗り物語」というタイトルが生きてくるわけです。そして、見事に戦国大名になれました。
けれども、もとはといえば成り上がりものですから、裏切りや妬みもあって、やがては道三さんは滅ぼされてしまいます。その少し前、ちゃんと娘さんの濃姫(松坂慶子)さんを南隣の尾張の国のこれまた成り上がりもの二世の信長(高橋英樹)さんのところに送り込み、かたき討ちのように信長さんに美濃を占領してもらうことになります。
よくできたストーリーというのか、人間って、結局そんな風にいろんな人の気持ちをつなげるための動きをするものですから、次の世代の信長さんが美濃・近江を経て京都まで自分の領土を拡大します。
妹さんのお市(松原智恵子)さんを近江の国の浅井長政(杉良太郎)さんに嫁がせ、すべてうまくいくのかと思うと、織田家よりも縁の深い越前の朝倉家(浜畑賢吉さん)を攻めた時点で浅井家との友好関係は途切れ、やがては浅井家まで滅ぼさねばならないのですから、人の情念というのか、くっついたり離れたりのあやふやな力学を駆使して信長さんは天下統一をほぼ手にするかというところまで行きます。あとは毛利(中国地方)と北条(関東)と島津(九州)と長曾我部(四国)くらいだったのです。
ドラマは本能寺を迎えてしまい、ここで終わってしまう?
信長亡き後、信長さんを倒した明智光秀(近藤正臣)さんと、信長さんが拾い上げた木下藤吉郎(火野正平)さんが山崎の戦いで正面衝突して、明智さんは敗れ、名もなき人々に討たれてしまう。これで本当にドラマが終わったんだったかな?
この近藤さんと火野さんは、今も同じ事務所に所属していて、正平さんは、今シーズン(2024)もNHK-BSで自転車の旅をするということでした。14年目のシーズンに入るので、秋には能登を旅してくれるんでしょうか。うれしくもあり、心配でもあります。近藤さんは元気なんだろうかな。そうなのかも。
同じ事務所のお二人が、ドラマが始まったところで対決して(天王山)、そこでドラマも終わってしまう。これまたよくできた因縁です。
子役からずっとキャリアを積んできたという火野さんは、当時は役者としては新人で、はじけるような演技で「新しい秀吉」を見せてくれました。これが後の竹中直人さんの秀吉にもつながるし、西田敏行さんの重厚な秀吉とは少し違う、もっと軽くて、フットワークのいい、スタッフに慕われる秀吉像を作り上げました。火野さんも役柄とはいえ、たくさんの家臣団を見つけて、その人たちの信頼の上で秀吉役ができたので、それが今も通じている気もしたりします。
それはとても新鮮な感じだったし、これが豊臣秀吉なのか、と当時の私は感心したものでした。その秀吉さんのいた大阪城は、大戦で焼失し、今は鉄筋コンクリートだし、そもそも秀吉さんのお城は地面の下にあって、その上にあるのは、徳川幕府の大阪のお城だったんでしょうけど、そこの入場料が今度倍になるそうで、もう何十年も行ったことがなかったけれど、いよいよ私には遠いお城になってしまいました。
松坂慶子さんは、今も毎朝、日清食品を作った人のドラマ(「まんぷく」2018後半)のお母さん役で見ていますが、「国盗り物語」のころの方が、そりゃ、若くてキレイでしたけど、今は何とも言えない味で存在感があります。すべて50年前、いや、あれもこれもずっと人の流れや情念は続いているんでしようね。