そんなの全く知らなかった。先週、初めて知ったんだった。ショックだった。
8年間続けられた番組が終わるなんて、いろんな事情もあると思われますが、とても悲しくて、悲しくて……。
それでも今朝は、我慢して聞きながらお仕事に向かっていました。それは私にとっては、月曜の朝のお決まりだったからです。
(写真はネットからの借り物で、左側がふかわりょうさん、右側がチェリストの遠藤真理さん、真ん中はたまたまゲストの作曲家の吉松隆さんなんだそうです)
番組の冒頭は、「イントロどん」というコーナーでした。ほんの一瞬の音だけを聞いて、聴取者のみなさんは、これは何という曲の何楽章、と曲名を答える仕組みになっていました。
私も、一度だけ、これだと思ってメールしたことがありましたけど、全く違っていた。そんなこともありました。
何年も番組が続けられる中で、いつもニアピン(よく似ているけど、違う曲)として登場していたのが、山本直純さん作曲の「男はつらいよ」のテーマ曲でした。これはクラシックの曲ではないので、当然出題されることはありませんでした。
でも、ファンの間では、お決まりのように、「これは“男はつらいよ”のテーマ曲です」とわざと誤答することもありました。どういうタイミングでこの誤答を出すのか、それもファンの間では楽しみの一つになっていたのかもしれません。
みんなが待っているから、誰がその望みをかなえるのか、うまくタイミングをつかめた人がその栄誉を得られるというカタチになっていました。それくらい、クラシックの番組のイントロクイズなのに、「男はつらいよ」と、誰もが答えたがっていました。大切なのは、それをどんな曲が出されたときに出すのか、というセンスでした。
そして、今日(再放送ですけど)の問題は、出されてはいけない問題が出ていた。「男はつらいよ」のイントロを聞いて、答えねばならないカタチになっていた。ファンのみなさんは身もだえる感じだったでしょう。惜しい答えとして「男はつらいよ」と答えたいのに、正解がそれになっていた。
そうなると、人間というのは、ひねくれたもので、わざと似ているけど、違うものを探したくなってしまう。
1人目、古関裕而作曲のNHKの「昼の憩い」のテーマ曲です、と答えてくれました。なかなかおもしろいところを突いてくる人がいました。「ああ、おもしろいなあ」と私は感心していた。
2人目、佐藤勝作曲(この人は「ゴジラの逆襲」の音楽も担当していました)の「幸せの黄色いハンカチ」(1977)の中で、高倉健さんが家に帰ってきたら、ハンカチが連なっていたところを見つけるシーンの音楽です。という解答があって、実際に音を流してみることになります。
出だしの2つの音は、違うといえば違う、「男はつらいよ」は、♬チャー、チャラララララー、チャララーラララララーとなりますが、「ハンカチ」は最初は似ている、でも、すぐに間があって、いつ始まるの? という心のスキのあと、メロディが始まっていた。これはハッキリ違うんだけど、このメロディによって、私たちそれぞれの「黄色いハンカチ」体験が動き出す感じでした。音の中で健さんも、倍賞千恵子さんも浮かび上がるし、ものすごい音の力を感じたんです。
それで、いつも通り、ほんの一・二分の体験なのに、感動してしまった。たまたまティッシュは切れてて、もうそのまんま、感動したままにクルマを運転していたんでした。少し危なかった。クルマを止めて、「ハア、感動した。何か悲しい」とでもつぶやかねばならないくらい、映画と音が頭の中でグルグルしました。
音楽の力に感動し、心のスキを突かれて驚き、番組があと少しで終わってしまう悲しさもあるし、こんなカタチで、このイントロクイズが作られてしまう寂しさもありました。音楽で私たちのいろんな記憶が刺激されるんだという驚き、みたいなのもあったのかな。監督の山田洋次さんは音楽もうまく使っている人だったんですね。
そんなこんなの朝だったんですね。やっぱり悲しい。たぶん、このブログを始めたころ、父が亡くなったころ、この番組とも出会ったのかもしれません。もっと昔は、朝の時間にクラシックなんて、聞く気にもなれなかったですもん。