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夜のスケッチ
信号のみどりいろの灯りが虚ろになってしまう。
走るクルマもなく、あたりに何かが漂いだす。
歩行者は、何ものも恐れる必要もないのに、
あわてて道をわたってゆく。
静かな夜気が、彼女の目の中に入ってあばれて涙を呼んだ。
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フロヤののれんがフワフワと消えてなくなった。
学校の校舎のふとしたところから、あわれな押しつぶされたような声が、
人びとの眠りをペロペロとなめながら響いてくる。
街灯が急に明るく輝いて、
信号は点滅したり、赤・黄・青とめまぐるしく移り変わった。
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夜の使者たちは、いよいよ町を闊歩する。
ゴミバケツのふたを開けて、中をのぞいてみたり……。
怪訝そうに口を開けてポケーッとしている犬どもを横目に、
安っぽい高層マンションの階段を上ったり下りたり……。
暴走族がやってくると、どこかのもの陰に逃げ込み、
夜が明けるまで、靴音を立てず、鼻唄を歌いながら、
たくみに歩き回るのだった。……1980.3.14 2:31am
信号のみどりいろの灯りが虚ろになってしまう。
走るクルマもなく、あたりに何かが漂いだす。
歩行者は、何ものも恐れる必要もないのに、
あわてて道をわたってゆく。
静かな夜気が、彼女の目の中に入ってあばれて涙を呼んだ。
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フロヤののれんがフワフワと消えてなくなった。
学校の校舎のふとしたところから、あわれな押しつぶされたような声が、
人びとの眠りをペロペロとなめながら響いてくる。
街灯が急に明るく輝いて、
信号は点滅したり、赤・黄・青とめまぐるしく移り変わった。
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夜の使者たちは、いよいよ町を闊歩する。
ゴミバケツのふたを開けて、中をのぞいてみたり……。
怪訝そうに口を開けてポケーッとしている犬どもを横目に、
安っぽい高層マンションの階段を上ったり下りたり……。
暴走族がやってくると、どこかのもの陰に逃げ込み、
夜が明けるまで、靴音を立てず、鼻唄を歌いながら、
たくみに歩き回るのだった。……1980.3.14 2:31am
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