[9月8日20:00.宮城県柴田郡川崎町郊外 山林内にある廃倉庫 マリオ&ルイージ]
建物内の電子ロックを解除し、録画されていた監視映像を見た2体のバージョン・シリーズ5.0。
それまでのテロリズム用途のみのシリーズとは違い、愛嬌のある兄弟機はロックを解除した隣の部屋へ突入した。
「ム?コノ部屋ハ……?」
「アニキ、早クモサッキノ監視映像ノ部屋ガ見ツカリマシタネ!」
「トイウコトハ、アノ『見えない敵』ガイルカモシレナイ。常時スキャンを怠ルナ!」
「了解ッス!アニキ!」
部屋に入ると、確かに被害者の死体が転がっていた。
頭を食い潰されたか、パッと見、首無し死体に見える。
「アニキ、マルデ猛獣ニ食イ殺サレタカノヨウデス」
「室内をスキャンしテミタガ、イナサソウダナ」
「アニキ、早ク被害者サンノ落シ物ヲ回収シマショウ」
「ソウダナ」
2機の最新機が隈なくスキャンすれば、見つからないものは無い。
「アリマシタ!」
ルイージが見つける。
それは手の平サイズの外部メモリーだった。
「コイツハ、セキュリティ・トークン。件ノ事故車カラ、テロリスト達ノ目的ヲ割リ出セルカモシレマセン」
「ソリャイイ。アトハ……」
マリオは稼働しているんだかしていないんだか分からないエレベーターを見た。
だがその時、兄弟機に無線が入った。
{「平賀だ。状況報告を」}
「館内ニテ、テロリストの死体ヲ発見。身元ハ不明デスガ、テロリストのメンバーと思ワレマス」
「ソのテロリストが持ッテイタト思ワレル、セキュリティ・トークンなル物ヲ発見シマシタ」
{「でかした!それなら、そこでの捜索はもう十分だ。すぐに引き返してくれ。あと少しで警察が到着する。その後、警察が捜査することになるから、自由に探索ができなくなる」}
「了解シマシタ」
来た道を引き返す兄弟機。
しかし、狭い廊下の向こうからは、
「ムッ!?」
トラックの中から出て来た獰猛な熊のような動物が2匹、兄弟機に向かってきた。
「撃テ!」
「了解!」
明らかに敵意剥き出しのロボット熊(仮称)。
マリオ達の敵では無かったものの、やはり銃弾の1発や2発で倒れる代物でもなかった。
「アニキ!何ナンデスカネ?コノ、動物型のロボットはァ?」
「俺ニ聞クナ!完全にデータに無イ、未確認物体ダ!」
そして、建物の外に出たら出たで、
「ウウウ……!」
「アオォォォォン!」
「ガルルル!」
猛獣達が待ち構えていた。
「……マジっスカ……」
辟易するルイージ。
「ドウヤラ、簡単ニ帰シテクレル雰囲気デハ無サソウダナ」
熊型のロボットの他、狼型のロボットもいた。
いずれも目の部分は赤くボウッと鈍い光を放っており、また、兄弟機のスキャンでも生物反応が全く無かった。
で、倒してみると、爆発したり、煙や火花を散らして動かなくなる。
毛皮を被った猛獣型のロボットと見た。
それはいいのだが、出所がさっぱり分からない。
「アニキ!俺達ハ何処ノ誰ト戦ッテルンデショウネ!?」
「ダカラ俺ニ聞クナッテ!トニカク、コイツラヲ一掃シナイト、副理事達モ危ナイ!」
[同日21:00.廃倉庫に向かう林道の入口(国道との分岐点) 平賀太一&平賀奈津子]
「動物型のロボットだって!?」
マリオ達の目から送られる映像を見ていた財団関係者の平賀夫妻。
「大学で研究してるサンプルなら、いくつかあるけど……」
奈津子は首を傾げた。
「でもナツの所は、ロボット犬くらいしかいないだろ?俺の大学にもいないしなぁ……」
「どこの誰が製造したのかしら?」
太一は通信機のマイクを取った。
「マリオ、ルイージ!できれば、熊型と狼型をサンプリングしたいので、一体ずつ捕獲してくれ!」
{「無茶デスヨ!コイツラ獰猛過ギデス!」パパパパパパン!}
ルイージが先に応答した。
後ろからマシンガンの発砲音が聞こえる。
{「本物ノ動物ミタイニ麻酔銃ガ効ケバイインデスケドネ、コイツラノ場合、電撃グレネードでモ無イ限リハ……アアッ!」}
「どうした、マリオ!?マリオ!応答しろ!」
すると、車の外を警戒していたセキュリティ・ロボットがワンボックスカーのスライドドアを開けた。
「平賀副理事!コノ道ノ向コウデ、土砂崩レガ発生シタモヨウデス!」
「なにっ!?」
「マリオ、ルイージ!応答して!」
奈津子もマイクで叫ぶ。
兄弟機から常時送信されている映像も切れてしまった。
[同日23:00.宮城県仙台市泉区 アリスの研究所 敷島孝夫、鏡音リン・レン]
「こんな遅くまで仕事なんて……。人間だったら、絶対に有り得ないぞ。法律的にも」
敷島はハイブリット・カーのハンドルを握りながら言った。
「ボーカロイドの強みだよね!」
得意げに言うリン。
この姉弟機、設定年齢は14歳である。
「本当は24時間稼働が機械のメリットですもんね」
と、レン。
「お前達は細かなメンテが必要だから、24時稼働は無理だなぁ……。ただの機械じゃないんだからさ」
高台の住宅地の外れにある研究所。
その中の、更に小高い場所にそれは建っている。
研究所の真ん前に車を止めた。
「到着ぅ〜!」
「リン、きっとアリス博士寝てるから静かに入ってね」
レンの方が弟なのだが、おきゃんな姉よりしっかりしている。
「それでなくても、前にエミリーに怒られたんだから。『ドクター・アリスが・お休みなのに・何を・考えてるのだ!』ってね」
「って、ことはだ。整備は明日になるかな」
後から入った敷島が呟くように言った。
「充電して、『寝て』いいぞ」
「はーい」
リンはシンボルにもなっている、頭の大きな白いリボン型のヘッドセットを取り外した。
レンはレンで、後ろに短く束ねている髪を解く。
すると、後ろからだと見分けが付かないという。
まあ、ショートパンツの方がリンで、ハーフパンツの方がレンという服装での見分け方ができるが……。
昔はリンがレンに、レンがリンに入れ替わるというサプライズをやっていたのだが、さすがに最近はやっていない。
「敷島・さん……」
そこへ深刻な顔をしたエミリーが、ぬっと現れた。
「出たーっ!ロボットの鬼軍曹!」
双子の師弟機は、飛び上がらんばかりに驚いた。
因みにこの2人に取って、ロボットの鬼軍曹がエミリーなら、人間の鬼軍曹は平賀奈津子である。
「はあ!?マリオとルイージが!?」
「イエス。探索から・戻る途中・土砂災害に・巻き込まれたそうです」
驚愕する敷島の横には、エミリーから鉄拳制裁を受けた姉弟機が転がっていた。
「マジかよ……。いや、でも、それで壊れるロボットじゃないと思うぞ。でなかったら、とっくに4.0以前の機種は壊れてる」
「マリオ達は・ともかく・ドクター平賀ご夫妻が・心配です」
「あれ?それ、平賀先生達からの報告じゃないの?」
「ノー。SR774-18からの・報告です」
エミリーが型番の方を言うもんだから、財団事務所専属のセキュリティ・ロボットのことだと気づくのに少し時間が掛かった。
「……セキュリティ・ロボットが報告してきたってことは、逆に平賀先生達は無事だってことじゃ?」
「イエス。御無事です」
「なら、マリオ達も大丈夫だろ」
敷島は楽観的に言った。
実際日付が変わった頃、泥まみれではあるものの、件の兄弟機の無事が確認された。
無論、戦利品であるセキュリティ・トークンもだ。
何だかんだ言って、財団のロボット達は命令に忠実のようである。
但し、熊型や狼型のロボット達は原型を留めずに全滅したため、サンプルの回収は無理だったとのことだ。
建物内の電子ロックを解除し、録画されていた監視映像を見た2体のバージョン・シリーズ5.0。
それまでのテロリズム用途のみのシリーズとは違い、愛嬌のある兄弟機はロックを解除した隣の部屋へ突入した。
「ム?コノ部屋ハ……?」
「アニキ、早クモサッキノ監視映像ノ部屋ガ見ツカリマシタネ!」
「トイウコトハ、アノ『見えない敵』ガイルカモシレナイ。常時スキャンを怠ルナ!」
「了解ッス!アニキ!」
部屋に入ると、確かに被害者の死体が転がっていた。
頭を食い潰されたか、パッと見、首無し死体に見える。
「アニキ、マルデ猛獣ニ食イ殺サレタカノヨウデス」
「室内をスキャンしテミタガ、イナサソウダナ」
「アニキ、早ク被害者サンノ落シ物ヲ回収シマショウ」
「ソウダナ」
2機の最新機が隈なくスキャンすれば、見つからないものは無い。
「アリマシタ!」
ルイージが見つける。
それは手の平サイズの外部メモリーだった。
「コイツハ、セキュリティ・トークン。件ノ事故車カラ、テロリスト達ノ目的ヲ割リ出セルカモシレマセン」
「ソリャイイ。アトハ……」
マリオは稼働しているんだかしていないんだか分からないエレベーターを見た。
だがその時、兄弟機に無線が入った。
{「平賀だ。状況報告を」}
「館内ニテ、テロリストの死体ヲ発見。身元ハ不明デスガ、テロリストのメンバーと思ワレマス」
「ソのテロリストが持ッテイタト思ワレル、セキュリティ・トークンなル物ヲ発見シマシタ」
{「でかした!それなら、そこでの捜索はもう十分だ。すぐに引き返してくれ。あと少しで警察が到着する。その後、警察が捜査することになるから、自由に探索ができなくなる」}
「了解シマシタ」
来た道を引き返す兄弟機。
しかし、狭い廊下の向こうからは、
「ムッ!?」
トラックの中から出て来た獰猛な熊のような動物が2匹、兄弟機に向かってきた。
「撃テ!」
「了解!」
明らかに敵意剥き出しのロボット熊(仮称)。
マリオ達の敵では無かったものの、やはり銃弾の1発や2発で倒れる代物でもなかった。
「アニキ!何ナンデスカネ?コノ、動物型のロボットはァ?」
「俺ニ聞クナ!完全にデータに無イ、未確認物体ダ!」
そして、建物の外に出たら出たで、
「ウウウ……!」
「アオォォォォン!」
「ガルルル!」
猛獣達が待ち構えていた。
「……マジっスカ……」
辟易するルイージ。
「ドウヤラ、簡単ニ帰シテクレル雰囲気デハ無サソウダナ」
熊型のロボットの他、狼型のロボットもいた。
いずれも目の部分は赤くボウッと鈍い光を放っており、また、兄弟機のスキャンでも生物反応が全く無かった。
で、倒してみると、爆発したり、煙や火花を散らして動かなくなる。
毛皮を被った猛獣型のロボットと見た。
それはいいのだが、出所がさっぱり分からない。
「アニキ!俺達ハ何処ノ誰ト戦ッテルンデショウネ!?」
「ダカラ俺ニ聞クナッテ!トニカク、コイツラヲ一掃シナイト、副理事達モ危ナイ!」
[同日21:00.廃倉庫に向かう林道の入口(国道との分岐点) 平賀太一&平賀奈津子]
「動物型のロボットだって!?」
マリオ達の目から送られる映像を見ていた財団関係者の平賀夫妻。
「大学で研究してるサンプルなら、いくつかあるけど……」
奈津子は首を傾げた。
「でもナツの所は、ロボット犬くらいしかいないだろ?俺の大学にもいないしなぁ……」
「どこの誰が製造したのかしら?」
太一は通信機のマイクを取った。
「マリオ、ルイージ!できれば、熊型と狼型をサンプリングしたいので、一体ずつ捕獲してくれ!」
{「無茶デスヨ!コイツラ獰猛過ギデス!」パパパパパパン!}
ルイージが先に応答した。
後ろからマシンガンの発砲音が聞こえる。
{「本物ノ動物ミタイニ麻酔銃ガ効ケバイインデスケドネ、コイツラノ場合、電撃グレネードでモ無イ限リハ……アアッ!」}
「どうした、マリオ!?マリオ!応答しろ!」
すると、車の外を警戒していたセキュリティ・ロボットがワンボックスカーのスライドドアを開けた。
「平賀副理事!コノ道ノ向コウデ、土砂崩レガ発生シタモヨウデス!」
「なにっ!?」
「マリオ、ルイージ!応答して!」
奈津子もマイクで叫ぶ。
兄弟機から常時送信されている映像も切れてしまった。
[同日23:00.宮城県仙台市泉区 アリスの研究所 敷島孝夫、鏡音リン・レン]
「こんな遅くまで仕事なんて……。人間だったら、絶対に有り得ないぞ。法律的にも」
敷島はハイブリット・カーのハンドルを握りながら言った。
「ボーカロイドの強みだよね!」
得意げに言うリン。
この姉弟機、設定年齢は14歳である。
「本当は24時間稼働が機械のメリットですもんね」
と、レン。
「お前達は細かなメンテが必要だから、24時稼働は無理だなぁ……。ただの機械じゃないんだからさ」
高台の住宅地の外れにある研究所。
その中の、更に小高い場所にそれは建っている。
研究所の真ん前に車を止めた。
「到着ぅ〜!」
「リン、きっとアリス博士寝てるから静かに入ってね」
レンの方が弟なのだが、おきゃんな姉よりしっかりしている。
「それでなくても、前にエミリーに怒られたんだから。『ドクター・アリスが・お休みなのに・何を・考えてるのだ!』ってね」
「って、ことはだ。整備は明日になるかな」
後から入った敷島が呟くように言った。
「充電して、『寝て』いいぞ」
「はーい」
リンはシンボルにもなっている、頭の大きな白いリボン型のヘッドセットを取り外した。
レンはレンで、後ろに短く束ねている髪を解く。
すると、後ろからだと見分けが付かないという。
まあ、ショートパンツの方がリンで、ハーフパンツの方がレンという服装での見分け方ができるが……。
昔はリンがレンに、レンがリンに入れ替わるというサプライズをやっていたのだが、さすがに最近はやっていない。
「敷島・さん……」
そこへ深刻な顔をしたエミリーが、ぬっと現れた。
「出たーっ!ロボットの鬼軍曹!」
双子の師弟機は、飛び上がらんばかりに驚いた。
因みにこの2人に取って、ロボットの鬼軍曹がエミリーなら、人間の鬼軍曹は平賀奈津子である。
「はあ!?マリオとルイージが!?」
「イエス。探索から・戻る途中・土砂災害に・巻き込まれたそうです」
驚愕する敷島の横には、エミリーから鉄拳制裁を受けた姉弟機が転がっていた。
「マジかよ……。いや、でも、それで壊れるロボットじゃないと思うぞ。でなかったら、とっくに4.0以前の機種は壊れてる」
「マリオ達は・ともかく・ドクター平賀ご夫妻が・心配です」
「あれ?それ、平賀先生達からの報告じゃないの?」
「ノー。SR774-18からの・報告です」
エミリーが型番の方を言うもんだから、財団事務所専属のセキュリティ・ロボットのことだと気づくのに少し時間が掛かった。
「……セキュリティ・ロボットが報告してきたってことは、逆に平賀先生達は無事だってことじゃ?」
「イエス。御無事です」
「なら、マリオ達も大丈夫だろ」
敷島は楽観的に言った。
実際日付が変わった頃、泥まみれではあるものの、件の兄弟機の無事が確認された。
無論、戦利品であるセキュリティ・トークンもだ。
何だかんだ言って、財団のロボット達は命令に忠実のようである。
但し、熊型や狼型のロボット達は原型を留めずに全滅したため、サンプルの回収は無理だったとのことだ。