[9月12日11:00.宮城県柴田郡川崎町 山形自動車道上り線 敷島孝夫&初音ミク]
山形自動車道を走行する敷島の車。
その助手席には初音ミクが座っていた。
「いやあ、ミニライブもテレビの収録も順調に終わったなぁ」
「はい」
「地方ばかりじゃなく、やっぱ東京での仕事が増えないとな。まあ、昔に比べたら随分増えてはいるけど……」
「お仕事があるだけで幸せです」
「はははっ!ミクは昔から変わんないなぁ……。まあ、俺も似たようなもんか。結局、俺がフィールドテストやったの、お前だけだもんな。リンとレンは平賀奈津子先生がやったし、MEIKOもKAITOもルカもウィリーから逃げてきたようなものだしな」
「そうですね。たかおさん、本当はもう研究所にいて、稼働実験の立ち会いをしなきゃいけなかったんじゃないですか?」
「その後、すぐフィールドテストに入られちゃたまらんよ。ミクみたいな大人しい性格設定のボカロならともかく、マルチタイプだろ?生命保険にいくら入ってても割に合わないよ。あっはっはっはっ!」
そうこうしているうちに、路肩には動物注意の標識が現れる。
鹿や猿の他に熊の絵もあった。
「ん!?」
何と、道路の上に熊がいた。
「危ねぇっ!」
敷島、やや急ハンドル気味で避ける。
「あー、ビックリした……。マジで熊いるんだなぁ……」
「今の……」
「ん?」
「生物反応がありませんでした」
「はあ?スキャンに失敗したのか?」
「違います。動物ではないようです」
「はははっ!ディズニーランドのアトラクションにある熊のロボットかぁ?……うあっ!?」
今度は大きな犬みたいなのが追い越し車線にいた。これも急いで避ける。
「何だ何だ何だ!?いくら山深い場所だからって、動物多過ぎだろ?!」
「今のも……生物反応が……」
「ミクのスキャン、調子悪いのか?」
「そんなはずは……」
すると、目の前を走っていたトラックが何も無い所で突然何かにぶつかった。
「ああ!?」
敷島が変な顔をしていると、
「たかおさん!右車線に入って!」
「は?え!?」
「早く!」
「お、おう!」
ミクは片目を緑色に光らせていた。
前方をスキャンしている。
敷島はミクに言われた通り、再び追い越し車線に入る。
すると、今度は敷島の後ろ(左の走行車線)を走っていた車が何も無い所でぶつかった。
「な、何が起きてるんだ!?」
「人間の視覚……いえ、特殊なスキャンが無いと見えない何かがいます」
「全部、生物反応無し?機械の反応?つまりロボット?」
「はい!」
「何が起きてるんだか知らんが……」
敷島はハンズフリー機能にしているケータイで、研究所に連絡した。
恐らく今、シンディの稼働実験で忙しいだろうが、誰かしら電話に出るだろう。
「……って、出ねーし!しょうがない。ミク、仙台支部につないでくれ」
「はい」
ミクは仙台支部の代表電話に掛けた。
これもインパネの近くに仕掛けたフックに引っ掛ける。
ハンズフリーにすることにより、片手がケータイに取られることなく電話ができる。
〔「こちらは……」〕
「? もしもし?もしもーし!」
一瞬、女性の声がしたかと思うと電話が切れた。
「何だぁ?」
ミクがもう1回掛けてみたが、繋がらなくなった。
「たかおさん……」
「な、何か、マズいことでも起きてるのか……?そうだ。ミク、他のボカロ……確か、MEIKOは午前中オフで研究所にいるはずだ。MEIKOに直接通信してくれ」
「は、はい。……ダメです。トレスできません」
「なっにー!?」
そこへ電話が鳴る。
ミクが出た。
「もしもし?KAITO?」
「KAITO?そうか。逆にあいつは、朝からテレビ仙台の収録の仕事があったな……。今頃、終わったところか」
「え?なに?」
{「け、研究所が大変なことになってる。理事達が危ない。ボクは一応、彼らの救助にっ……!」ブツッ!}
「KAITO!?……たかおさん、KAITOも……」
「おいおいおい。一体、何が起きてるっていうんだよ!?」
敷島は本部にも連絡したが、こちらもなしのつぶてだった。
だが、
{「ミク!無事なの!?」}
「ルカ!」
「ルカ?そうか、あいつは本部で特別整備中だった」
ルカが1番、ウィルスに感染しているため。
{「仙台支部と研究所が大変なことになったみたいなの!」}
「何が起きたの?」
{「分からない。だけど、シンディの実験中に事故があったみたいで……」}
「事故だあ!?」
敷島は咄嗟にシンディの暴走を思い浮かべた。
それはミクもルカも同じように思ったらしい。
{「本部に保管してるバージョン・シリーズ達が突然暴走して、こっちも大騒ぎになってる。幸い私やLilyさんは護身用のレーザー・アイを搭載してるから、何とかそれで応戦してるけど……」}
「ルカ!何とか持ちこたえてくれ!シンディはバージョン・シリーズを使役することができる。もしヤツが暴走したってんなら、5年前の決戦の時のように全機フル稼働させることは簡単なはずだ!」
で、そのバージョン・シリーズの配置数はアリスがいる関係で、仙台が1番多い。
無論アリスやエミリーの目が黒いうちは、勝手なことは許していないが、そこにシンディが加わるとなると……。
「……つまり、今、仙台に戻るということは、自殺行為に等しいということだな。飛んで火にいる夏の虫、だ」
そうこうしているうちに、車は東北自動車道の村田ジャンクションに差し掛かる。
予定なら左車線に入り、仙台方面である下り線に入るわけだが、
「このまま本部へ避難した方が良さそうだ」
敷島はハンドルを右に切った。
「まだルカなど、防衛力を持つロボットがいる本部の方が安全だろう」
ということで、上り車線に入ったのである。
村田ジャンクションから上り線に入る。
「取りあえず、仕切り直しの為にも、まずは最初のパーキングエリアに入ろう」
それは蔵王パーキングエリアである。
トイレと自動販売機くらいしか無い小規模なパーキングエリアだ。
もっとも、その分静かなので、大型トラックの運転手の中には、逆にそういった場所を好んで休憩や仮眠を取ることもあるという。
そんなパーキングエリアに入った時だった。
「ひいっ!」
突然ミクが恐怖におののく仕草をした。
「どうした!?」
当然、敷島が驚いた。
「そ、そんな……!」
敷島も、どうしてミクが怯えたのかの理由が分かった。
何故か頭上に響くジェットエンジン音。
ゴー、ズシャッ!という音がして、敷島達の車の前に着地する者がいた。
エミリーではない。
金髪を向かって右側にサイドテールにし、不敵な態度に2人は見覚えがあった。
「し、シンディ!?」
「…………」
シンディは険しい顔をして敷島達を見据え、そして近づいて来た。
「くそっ!エミリーは何をやってるんだ!?」
「ま、まさか……エミリー……やられちゃっ……た?」
「うそだろ!?」
シンディは敷島達とやや間合いのある所で立ち止まり、右手を変形させたマシンガンを突き出した。
そして開口、
「覚悟なさい」
「マジかよ……」
敷島、この時ばかりは死を覚悟したという。
山形自動車道を走行する敷島の車。
その助手席には初音ミクが座っていた。
「いやあ、ミニライブもテレビの収録も順調に終わったなぁ」
「はい」
「地方ばかりじゃなく、やっぱ東京での仕事が増えないとな。まあ、昔に比べたら随分増えてはいるけど……」
「お仕事があるだけで幸せです」
「はははっ!ミクは昔から変わんないなぁ……。まあ、俺も似たようなもんか。結局、俺がフィールドテストやったの、お前だけだもんな。リンとレンは平賀奈津子先生がやったし、MEIKOもKAITOもルカもウィリーから逃げてきたようなものだしな」
「そうですね。たかおさん、本当はもう研究所にいて、稼働実験の立ち会いをしなきゃいけなかったんじゃないですか?」
「その後、すぐフィールドテストに入られちゃたまらんよ。ミクみたいな大人しい性格設定のボカロならともかく、マルチタイプだろ?生命保険にいくら入ってても割に合わないよ。あっはっはっはっ!」
そうこうしているうちに、路肩には動物注意の標識が現れる。
鹿や猿の他に熊の絵もあった。
「ん!?」
何と、道路の上に熊がいた。
「危ねぇっ!」
敷島、やや急ハンドル気味で避ける。
「あー、ビックリした……。マジで熊いるんだなぁ……」
「今の……」
「ん?」
「生物反応がありませんでした」
「はあ?スキャンに失敗したのか?」
「違います。動物ではないようです」
「はははっ!ディズニーランドのアトラクションにある熊のロボットかぁ?……うあっ!?」
今度は大きな犬みたいなのが追い越し車線にいた。これも急いで避ける。
「何だ何だ何だ!?いくら山深い場所だからって、動物多過ぎだろ?!」
「今のも……生物反応が……」
「ミクのスキャン、調子悪いのか?」
「そんなはずは……」
すると、目の前を走っていたトラックが何も無い所で突然何かにぶつかった。
「ああ!?」
敷島が変な顔をしていると、
「たかおさん!右車線に入って!」
「は?え!?」
「早く!」
「お、おう!」
ミクは片目を緑色に光らせていた。
前方をスキャンしている。
敷島はミクに言われた通り、再び追い越し車線に入る。
すると、今度は敷島の後ろ(左の走行車線)を走っていた車が何も無い所でぶつかった。
「な、何が起きてるんだ!?」
「人間の視覚……いえ、特殊なスキャンが無いと見えない何かがいます」
「全部、生物反応無し?機械の反応?つまりロボット?」
「はい!」
「何が起きてるんだか知らんが……」
敷島はハンズフリー機能にしているケータイで、研究所に連絡した。
恐らく今、シンディの稼働実験で忙しいだろうが、誰かしら電話に出るだろう。
「……って、出ねーし!しょうがない。ミク、仙台支部につないでくれ」
「はい」
ミクは仙台支部の代表電話に掛けた。
これもインパネの近くに仕掛けたフックに引っ掛ける。
ハンズフリーにすることにより、片手がケータイに取られることなく電話ができる。
〔「こちらは……」〕
「? もしもし?もしもーし!」
一瞬、女性の声がしたかと思うと電話が切れた。
「何だぁ?」
ミクがもう1回掛けてみたが、繋がらなくなった。
「たかおさん……」
「な、何か、マズいことでも起きてるのか……?そうだ。ミク、他のボカロ……確か、MEIKOは午前中オフで研究所にいるはずだ。MEIKOに直接通信してくれ」
「は、はい。……ダメです。トレスできません」
「なっにー!?」
そこへ電話が鳴る。
ミクが出た。
「もしもし?KAITO?」
「KAITO?そうか。逆にあいつは、朝からテレビ仙台の収録の仕事があったな……。今頃、終わったところか」
「え?なに?」
{「け、研究所が大変なことになってる。理事達が危ない。ボクは一応、彼らの救助にっ……!」ブツッ!}
「KAITO!?……たかおさん、KAITOも……」
「おいおいおい。一体、何が起きてるっていうんだよ!?」
敷島は本部にも連絡したが、こちらもなしのつぶてだった。
だが、
{「ミク!無事なの!?」}
「ルカ!」
「ルカ?そうか、あいつは本部で特別整備中だった」
ルカが1番、ウィルスに感染しているため。
{「仙台支部と研究所が大変なことになったみたいなの!」}
「何が起きたの?」
{「分からない。だけど、シンディの実験中に事故があったみたいで……」}
「事故だあ!?」
敷島は咄嗟にシンディの暴走を思い浮かべた。
それはミクもルカも同じように思ったらしい。
{「本部に保管してるバージョン・シリーズ達が突然暴走して、こっちも大騒ぎになってる。幸い私やLilyさんは護身用のレーザー・アイを搭載してるから、何とかそれで応戦してるけど……」}
「ルカ!何とか持ちこたえてくれ!シンディはバージョン・シリーズを使役することができる。もしヤツが暴走したってんなら、5年前の決戦の時のように全機フル稼働させることは簡単なはずだ!」
で、そのバージョン・シリーズの配置数はアリスがいる関係で、仙台が1番多い。
無論アリスやエミリーの目が黒いうちは、勝手なことは許していないが、そこにシンディが加わるとなると……。
「……つまり、今、仙台に戻るということは、自殺行為に等しいということだな。飛んで火にいる夏の虫、だ」
そうこうしているうちに、車は東北自動車道の村田ジャンクションに差し掛かる。
予定なら左車線に入り、仙台方面である下り線に入るわけだが、
「このまま本部へ避難した方が良さそうだ」
敷島はハンドルを右に切った。
「まだルカなど、防衛力を持つロボットがいる本部の方が安全だろう」
ということで、上り車線に入ったのである。
村田ジャンクションから上り線に入る。
「取りあえず、仕切り直しの為にも、まずは最初のパーキングエリアに入ろう」
それは蔵王パーキングエリアである。
トイレと自動販売機くらいしか無い小規模なパーキングエリアだ。
もっとも、その分静かなので、大型トラックの運転手の中には、逆にそういった場所を好んで休憩や仮眠を取ることもあるという。
そんなパーキングエリアに入った時だった。
「ひいっ!」
突然ミクが恐怖におののく仕草をした。
「どうした!?」
当然、敷島が驚いた。
「そ、そんな……!」
敷島も、どうしてミクが怯えたのかの理由が分かった。
何故か頭上に響くジェットエンジン音。
ゴー、ズシャッ!という音がして、敷島達の車の前に着地する者がいた。
エミリーではない。
金髪を向かって右側にサイドテールにし、不敵な態度に2人は見覚えがあった。
「し、シンディ!?」
「…………」
シンディは険しい顔をして敷島達を見据え、そして近づいて来た。
「くそっ!エミリーは何をやってるんだ!?」
「ま、まさか……エミリー……やられちゃっ……た?」
「うそだろ!?」
シンディは敷島達とやや間合いのある所で立ち止まり、右手を変形させたマシンガンを突き出した。
そして開口、
「覚悟なさい」
「マジかよ……」
敷島、この時ばかりは死を覚悟したという。