[9月20日21:45.JR盛岡駅に停車中の“はやぷさ”96号8号車内 敷島孝夫&シンディ]
何だかんだで、帰りは新幹線の最終列車になってしまった敷島。
下りの“はやぶさ”の最終には乗ったが、まさか上りの最終に乗るとは思いもしなかった。
帰りは経費節減で高速バスになると思われたが、まさかの新幹線だ。但し、普通車だが。
その敷島だが、到着した列車に乗り込み、シンディを指定された座席に座らせると、デッキに出て森須に連絡を取った。
余談だが、盛岡駅に停車したこの列車がなかなか発車しないのは、“こまち”を連結させるからだ。
「……あ、もしもし。森須支部長、敷島です」
{「ああ。敷島君、ご苦労さん。まだ、盛岡市内かね?」}
「何とか最終の“はやぶさ”に乗ることができました。これで仙台には、今日中に帰れると思います」
{「そうか」}
「明本さんに関しましては、返す返すも残念でなりません」
{「ああ。そこはさすがにテロリストと言わざるを得ない。だが、こちらも手をこまねくわけにはいかない。幸い、マリオとルイージが川崎町のアジトで手に入れた情報。これこそが、一気に事件を解決することになるだろう」}
「解決できるんですか?」
{「この事件、いくつもの謎があった。分かるかね?まず1つだが、そもそも何故今になってAR団は現れた?『押し進む機械化・自動化により、人間が仕事を奪われることに反対する』という、何とも稚拙な思考の団体が、何故今さらここまでやる?」}
「そう言われれば……。宗教関係のテロ組織なら、今になって活動する理由に、『神の啓示だ』とかあるんでしょうが……」
{「2つ目。廃ホテル“シークルーズ”もまた何故今になって現れた?どうしてタイミング良く爆発した?」}
「爆発したのは確か……」
ケンショーグリーンが自爆装置の起動ボタンを押したからであるが……。
{「3つ目。“シークルーズ”に現れたケンショーレンジャーとは何者だ?どうしてキミ達の前に立ちはだかった?」}
「あいつらがテロリストだと思ってたんですがねぇ……」
{「細かい疑問はまだまだあるが、これらの謎を解けば、真実が見えてくるはずだ。私達はマリオ達が入手した情報を解析する。取りあえずキミにおいては、まず無事に帰ることを念頭に置いてくれ」}
「はい」
[同日21:51.東北新幹線“はやぶさ”96号8号車内 敷島&シンディ]
列車は定刻に盛岡駅を発車した。
夜の帳を引き裂いて南進する。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は1号車から10号車が“はやぶさ”号、仙台行き。11号車から16号車が“こまち”号、仙台行きです。次は、新花巻に止まります。……〕
「森須支部長、何だって?」
シンディは敷島の足元にコードを通し、窓下のコンセントにプラグを差して充電している。
目を閉じていたが、その目を開けて敷島に聞いた。
「マリオ達が新たな情報を掴んだらしい。それを解析すれば、一気に事件は解決できそうなんだって。ただその割には、謎めいたことを言ってたけどな」
「謎めいたこと」
「ああ」
敷島は“シークルーズ”での出来事を思い返していた。
「シンディはケンショーレンジャーに何か心当たりはあるかい?」
「さあ……?メモリーにもライブラリにも無いね」
敷島が出したもう1つの謎があった。
「そもそもシンディ、お前はどうしてあの廃ホテルで“眠って”いたんだ?その体……」
「知らない。ウィリアム博士のやることは……」
「お前の体が地下深くの秘密研究所に保管されていたのなら、まだ分かるんだ。だけど、明らかにホテル施設だった展望台の片隅に置かれていたというのはおかしい。誰がどうやって、お前を展望台に置いたのか?そもそも、どうしてそこに置いたんだ?」
もし、仮にだ。
秘密研究所やホテルが自爆しなかったら、敷島達は展望台に行かなかっただろう。
展望台を出たヘリポートにて、平賀と合流するという目的が無ければ……。
「ヘリポート……」
「ん?」
「……そうか。ヘリポートか……」
敷島は左手を顎にやって考え込んだ。
(誰かがヘリでシンディをあのホテルに運び込んだ?……いや、持ち出そうとしていた?)
後者の方が可能性が高いように見えた。
(そもそもあの時、イスラムのテロ組織がいるという想定で乗り込んだはずだ。それで最初、ケンショーレンジャーがそうじゃないかと思った。けど、実はそうじゃなくて……。結局いつの間にかイスラムのテロ組織の話は無くなっていたけど、本当か?あのホテル、俺達やケンショーレンジャー以外に誰かいたんじゃないのか?)
敷島達がシンディを発見したのは偶然だ。
誰かに仕組まれていたとしても、敷島達の立場から見れば偶然であることに変わりはない。
だが、実はそれって、敷島達が見つけてしまったことで、誰かが不都合だったとは考えられないか。
想定外のホテルの自爆。シンディの発見、そして回収。
「あっ……!」
そして、気づいた。
AR団が犯行声明を出し始めたのと、シンディの起動がほぼ同時であること……。
敷島は驚愕の顔で、シンディを見た。
そんな敷島の顔を不敵な笑みで受け止めるシンディ。
「私に何か責任でもあるの?」
「……現時点では何も言えないさ。多分、今のお前に『何か知ってるんだろ?』と聞いても、『何も知らない』とか『言えない』とか言うだろうし」
「まあ、そうねぇ……。マリオ達が何か情報を掴んだんでしょう?その解析結果が出るまで、待つしかないんじゃない?」
「まあな」
[同日22:41.東北新幹線くりこま高原〜古川間 “はやぶさ”96号8号車内 敷島&シンディ]
「緊急地震速報、受信!」
座席に体を埋めていたシンディが体を起こした。
「はあ!?」
特に大きな揺れなどは感じなかったが、車内の照明が消えた。
〔「お客様にお知らせします。只今、緊急地震速報を受信、並びに大きな揺れが発生しましたので、緊急停車致します。急停車にご注意ください。テーブルの上、荷物棚からの落下物にご注意ください。お立ちのお客様はお近くの席にお掛けになるか、手すりにお掴まりください」〕
非常灯は点灯したが、車内はかなり暗い。
そして、列車は駅ではない所で停車した。
「マジかよ?」
敷島はスマホに入れておいたラジオのアプリを起動させた。
{「……宮城県沖を震源とする強い地震が発生しました。念のため、津波に警戒してください。……」}
「マジかよ。ツイてねぇ……」
「まあ、自然現象ですものね」
「てか、何で停電したんだ?」
「送電系統の安全装置でも働いたんじゃない?いくら私でも、交流2万5000ボルトの電流なんて危険だもの」
「直流1500ボルトも危険だって、エミリーは言ってたな」
それから約10分くらい経って、停電は復旧した。
震源地は宮城県沖で、最大震度は正しく敷島達のいる場所で震度5弱だったという。
恐らくは、東日本大震災の余震だろう。
本震から既に3年以上も経つというのに、未だに余震があるのだから恐れ入る。
緊急停車してから15分ほど経過して、列車は運転再開した。
「!」
走り出してから数分後、シンディは線路外にバージョン3.0の姿を確認した。
(銃を向けてる!?)
だが、それは何かをするでもなく通り過ぎた。
(地方にはまだ旧型の旧型がいるのね)
何だかんだで、帰りは新幹線の最終列車になってしまった敷島。
下りの“はやぶさ”の最終には乗ったが、まさか上りの最終に乗るとは思いもしなかった。
帰りは経費節減で高速バスになると思われたが、まさかの新幹線だ。但し、普通車だが。
その敷島だが、到着した列車に乗り込み、シンディを指定された座席に座らせると、デッキに出て森須に連絡を取った。
余談だが、盛岡駅に停車したこの列車がなかなか発車しないのは、“こまち”を連結させるからだ。
「……あ、もしもし。森須支部長、敷島です」
{「ああ。敷島君、ご苦労さん。まだ、盛岡市内かね?」}
「何とか最終の“はやぶさ”に乗ることができました。これで仙台には、今日中に帰れると思います」
{「そうか」}
「明本さんに関しましては、返す返すも残念でなりません」
{「ああ。そこはさすがにテロリストと言わざるを得ない。だが、こちらも手をこまねくわけにはいかない。幸い、マリオとルイージが川崎町のアジトで手に入れた情報。これこそが、一気に事件を解決することになるだろう」}
「解決できるんですか?」
{「この事件、いくつもの謎があった。分かるかね?まず1つだが、そもそも何故今になってAR団は現れた?『押し進む機械化・自動化により、人間が仕事を奪われることに反対する』という、何とも稚拙な思考の団体が、何故今さらここまでやる?」}
「そう言われれば……。宗教関係のテロ組織なら、今になって活動する理由に、『神の啓示だ』とかあるんでしょうが……」
{「2つ目。廃ホテル“シークルーズ”もまた何故今になって現れた?どうしてタイミング良く爆発した?」}
「爆発したのは確か……」
ケンショーグリーンが自爆装置の起動ボタンを押したからであるが……。
{「3つ目。“シークルーズ”に現れたケンショーレンジャーとは何者だ?どうしてキミ達の前に立ちはだかった?」}
「あいつらがテロリストだと思ってたんですがねぇ……」
{「細かい疑問はまだまだあるが、これらの謎を解けば、真実が見えてくるはずだ。私達はマリオ達が入手した情報を解析する。取りあえずキミにおいては、まず無事に帰ることを念頭に置いてくれ」}
「はい」
[同日21:51.東北新幹線“はやぶさ”96号8号車内 敷島&シンディ]
列車は定刻に盛岡駅を発車した。
夜の帳を引き裂いて南進する。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は1号車から10号車が“はやぶさ”号、仙台行き。11号車から16号車が“こまち”号、仙台行きです。次は、新花巻に止まります。……〕
「森須支部長、何だって?」
シンディは敷島の足元にコードを通し、窓下のコンセントにプラグを差して充電している。
目を閉じていたが、その目を開けて敷島に聞いた。
「マリオ達が新たな情報を掴んだらしい。それを解析すれば、一気に事件は解決できそうなんだって。ただその割には、謎めいたことを言ってたけどな」
「謎めいたこと」
「ああ」
敷島は“シークルーズ”での出来事を思い返していた。
「シンディはケンショーレンジャーに何か心当たりはあるかい?」
「さあ……?メモリーにもライブラリにも無いね」
敷島が出したもう1つの謎があった。
「そもそもシンディ、お前はどうしてあの廃ホテルで“眠って”いたんだ?その体……」
「知らない。ウィリアム博士のやることは……」
「お前の体が地下深くの秘密研究所に保管されていたのなら、まだ分かるんだ。だけど、明らかにホテル施設だった展望台の片隅に置かれていたというのはおかしい。誰がどうやって、お前を展望台に置いたのか?そもそも、どうしてそこに置いたんだ?」
もし、仮にだ。
秘密研究所やホテルが自爆しなかったら、敷島達は展望台に行かなかっただろう。
展望台を出たヘリポートにて、平賀と合流するという目的が無ければ……。
「ヘリポート……」
「ん?」
「……そうか。ヘリポートか……」
敷島は左手を顎にやって考え込んだ。
(誰かがヘリでシンディをあのホテルに運び込んだ?……いや、持ち出そうとしていた?)
後者の方が可能性が高いように見えた。
(そもそもあの時、イスラムのテロ組織がいるという想定で乗り込んだはずだ。それで最初、ケンショーレンジャーがそうじゃないかと思った。けど、実はそうじゃなくて……。結局いつの間にかイスラムのテロ組織の話は無くなっていたけど、本当か?あのホテル、俺達やケンショーレンジャー以外に誰かいたんじゃないのか?)
敷島達がシンディを発見したのは偶然だ。
誰かに仕組まれていたとしても、敷島達の立場から見れば偶然であることに変わりはない。
だが、実はそれって、敷島達が見つけてしまったことで、誰かが不都合だったとは考えられないか。
想定外のホテルの自爆。シンディの発見、そして回収。
「あっ……!」
そして、気づいた。
AR団が犯行声明を出し始めたのと、シンディの起動がほぼ同時であること……。
敷島は驚愕の顔で、シンディを見た。
そんな敷島の顔を不敵な笑みで受け止めるシンディ。
「私に何か責任でもあるの?」
「……現時点では何も言えないさ。多分、今のお前に『何か知ってるんだろ?』と聞いても、『何も知らない』とか『言えない』とか言うだろうし」
「まあ、そうねぇ……。マリオ達が何か情報を掴んだんでしょう?その解析結果が出るまで、待つしかないんじゃない?」
「まあな」
[同日22:41.東北新幹線くりこま高原〜古川間 “はやぶさ”96号8号車内 敷島&シンディ]
「緊急地震速報、受信!」
座席に体を埋めていたシンディが体を起こした。
「はあ!?」
特に大きな揺れなどは感じなかったが、車内の照明が消えた。
〔「お客様にお知らせします。只今、緊急地震速報を受信、並びに大きな揺れが発生しましたので、緊急停車致します。急停車にご注意ください。テーブルの上、荷物棚からの落下物にご注意ください。お立ちのお客様はお近くの席にお掛けになるか、手すりにお掴まりください」〕
非常灯は点灯したが、車内はかなり暗い。
そして、列車は駅ではない所で停車した。
「マジかよ?」
敷島はスマホに入れておいたラジオのアプリを起動させた。
{「……宮城県沖を震源とする強い地震が発生しました。念のため、津波に警戒してください。……」}
「マジかよ。ツイてねぇ……」
「まあ、自然現象ですものね」
「てか、何で停電したんだ?」
「送電系統の安全装置でも働いたんじゃない?いくら私でも、交流2万5000ボルトの電流なんて危険だもの」
「直流1500ボルトも危険だって、エミリーは言ってたな」
それから約10分くらい経って、停電は復旧した。
震源地は宮城県沖で、最大震度は正しく敷島達のいる場所で震度5弱だったという。
恐らくは、東日本大震災の余震だろう。
本震から既に3年以上も経つというのに、未だに余震があるのだから恐れ入る。
緊急停車してから15分ほど経過して、列車は運転再開した。
「!」
走り出してから数分後、シンディは線路外にバージョン3.0の姿を確認した。
(銃を向けてる!?)
だが、それは何かをするでもなく通り過ぎた。
(地方にはまだ旧型の旧型がいるのね)