報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター” 「AR団の攻撃」

2014-09-18 20:37:30 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月16日12:00.㈶日本アンドロイド研究開発財団仙台支部のビルB1Fプロムナード 敷島孝夫&森須]

「平賀太一先生は、会議に参加されてませんでしたね」
 敷島と森須はプロムナードにある飲食店で昼食を取っていた。
「基本的にテロ対策は、2つのチームで構成されている。鍵はシンディだ。即ち、シンディの再稼働賛成派と反対派のチームだな。キミは賛成派ということで、平賀副理事とは別のチームになっただけのことだ」
「個人的には反対なんですが、大賛成のアリスと結婚しちゃったからなぁ……」
 敷島は頭をかいた。
「いや、むしろキミには期待しているんだよ。まだシンディが人型殺人兵器だった頃、上手く立ち回った人間の代表格なんだからね」
(そりゃ、スパイ活動してたんだから当然ですよ)
 という言葉を敷島は飲み込んだ。
「扱いにくいマルチタイプを上手いこと使いこなしているではないか」
「ええっ、そうですか?それはエミリーが、ちゃんと私の言う事を聞いてくれているだけのことですよ?」
「無意識に使いこなせることこそが肝心」
「と、仰いますと?」
「エミリーはいかにも全ての人間に対して友好且つ従順な性格のように見えるが、意外とそうでもないんだよ」
「? まあ、確かに旧ソ連時代はKGBのロボットだったということですが……」
「まあ、キミはこれまで通りの路線を維持していてくれれば良い」
「アリスのヤツ、シンディのユーザー登録、勝手に自分にしやがりまして大変ですよ」
「それは仕方の無いことだ。オーナー登録は、もちろんアリス君が相応しいことは言うまでも無いが、ユーザー登録の希望者が誰1人いなかったのだから」
「そりゃそうでしょうね」
「エミリーを使いこなしているキミだからこそ、これもまた適材なのだよ」
「シンディのヤツ、私の言う事をちゃんと聞くかなぁ……」
「聞くさ」
「うーん……」
(シンディの行動に、あれだけのツッコミを入れられる人間はキミだけだよ)
 と、森須は思った。
「まあ、手当ては本部に頼んで増額してもらうから、頼んだよ」
「はあ……。そのうち、生命保険の加入が断られたりして」
「まあ、そう言うな。キミの午後の予定はどうなっているのかね?」
「ミクとリン・レンを連れて、仙南ラジオにゲスト出演する予定です。その後は岩沼市民会館でミニライブが……」
「大変だな、キミも」
「私にとっては、こちらが本業のつもりです」
 敷島は大きく頷いた。

[同日13:00.同場所 実験室 シンディ]

「うーむ……」
 ガラス張りの実験室の椅子に座るシンディ。
 その窓の外では、複数の研究者達が固まっていた。
「ハード、ソフトウェア共に処分前のものと同一と見て差し支えないと思われます」
「ああ。あのウィリアム・フォレストの置き土産の1つだからな、あのシンディは……」
「交換用のボディをそのまま使えるというのは凄いですね」
「確かにまた処分するのは勿体ない……」
「主任理事の十条先生も、力を入れておられるだけのことはあるな」
 会話の内容から見てもだいたい分かるが、ここにいる研究者達はシンディ再稼働賛成派である。
 研究者の1人が実験室のドアのロックを解除した。
「キミ、もう出ていいよ」
「はーい」
 促されたシンディは実験室から出て来た。
「それじゃ今度は30分後、第2研究室に来るように」
「分かりました」
 シンディは実験室から出た。
 そこではエミリーが待っていて、
「シンディ。お疲れ様」
「全く。いくら調べたって、前の体と変わらないのにね」
「それだけ・前の・お前が・脅威的だったということだ」
「まあ、気持ちは分かるけど……。!」
 エレベーターホールから、平賀太一ら数名の反対派研究者達がやってきた。
 正に、一触即発!
 エミリーがシンディと平賀太一達の間に入る。
「お疲れ様です。ドクター平賀」
 エミリーが恭しく頭を下げる。
 エミリーの新しい主が平賀だからだ。
「ああ。アリスの研究所で、頑張ってるみたいだな。余計な仕事が増えてしまったけども、我慢してくれ」
「ノープロブレム。余計な・仕事では・ありません」
「お前はそう思えても、敷島さんのことが心配だ。敷島さんのサポート、よろしく頼むよ」
「イエス。ドクター平賀」
 平賀はそれだけ言うと、部下達を伴って奥へ歩いていった。
「太一坊ちゃん、少しは大人になったみたいね。あのメイドロボットも成長したからかしら?」
 因みに平賀は、わざとシンディの方を見ないでいた。
「ドクター平賀が・お前を・壊さないか・心配だ」
「本音は壊したくてしょうがないでしょうね。でも十条博士やアリス博士の目が黒いうちは、太一坊ちゃんは何もできないでしょう」
「ドクター・アリスの・虹彩は・プルーだ」
「……そこはツッコまず、スルーしてくれない?」

[同日15:00.宮城県岩沼市某所 敷島、初音ミク、鏡音リン・レン]

「皆さん、こんにちは!『どっきゅーんiラジオ』のお時間です!本日のゲストは、この方々!今、巷で話題のボーカロイド、初音ミクさんと鏡音リン、鏡音レン君の3人です。どうぞ!」
「こんにちはー。初音ミクでーす!」
「イェーイ!パフパフー♪」
「よろしくお願いしまーっす!」
「いやー、さすがに3人も入ってもらうと、スタジオが賑やかだねー!」
「ありがとうございまーす!」
「さて、色々お話を伺う前に、オープニング行ってみよう!」
 敷島はスタジオの外で、ミク達の様子を見ている。
 と、そこへケータイに着信があった。
 敷島はすぐにスタジオの外の廊下に出る。
「はい、もしもし?」
 相手は平賀太一だった。
{「ああ、敷島さん。お疲れさまです」}
「平賀先生。どうしました?」
{「実は件のテロ組織が声明を出しまして……」}
「で、何ですか?」
{「『ボーカロイド共のせいで、何名ものアイドル志願者がその夢を断たれたと思ってるんだ。機械なんぞに夢を断たれた少年少女達に対する罪の深さ、思い計って余りある。直ちに全てのボーロカイドの稼働停止を求めるものである』と」}
「む、無茶苦茶だ!こっちだって、鳴り物入りでデビューしたんじゃないんですよ」
{「分かってます。ボーカロイドが存在しなくたって、誰かがデビューしたせいで、誰かがデビューできなかったことには変わりが無いですからね。向こうの勝手な言い分ですよ」}
「何でこう自称市民団体ってのは、クレーマーみたいなのが多いんだ?」
{「とにかく、何をしてくるか分からないということです。十分注意してください」}
「分かりました」
 敷島は電話を切った。
「いきなりポーロカロイドを狙ってくるか。まあ、財団で1番目立つロボット達だから、しょうがないか……」
 敷島は舌打ちをして電話をしまうと、再びスタジオの中に戻った。
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最近の雑感

2014-09-18 19:18:04 | 日記
 ここ最近、小説ばかり書いている。
 “ユタと愉快な仲間たち”が一段落したので、それでは休止状態の“アンドロイドマスター”を再開したら、一段落させる場所を逸してしまった。
 もうしばらく、落とし所を見つけるまでお察し頂きたい。

 さて、通りすがり氏より、顕正会南房会館についての話があった。
 これは女性顕正会員パラパラ茜氏が南房会館を訪れた際、最寄りの御宿駅から近くて便利的な言及をしていたことに対し、通りすがり氏が実際そうなのかという疑問を投げてこられたことによる。
 私も実走調査をしたことが無いが、地図で見る限り、確かに近そうである。
 gooマップで御宿駅を出すと、そこから上(北)の方にスクロールしなくても、もう既に顕正会南房会館が表示されているくらいだ。
『駅から意外と遠い』が“ベタな顕正会会館の法則”なのだが、例外があったようだ。
 無論、それは宗門末寺にも言えること。必ずしも、駅から近い所に建立されているわけではないということに注意。
 顕正会の会館が駅から遠いことに拘っていると、揚げ足を取られるぞ。そもそも鉄道が通っていない地域にある末寺の立場はどうなる?
 仙台会館は富沢駅から意外と遠かったね。
 長町南駅から宮城交通コミュニティバス“ながまちくん”に乗って、西多賀交番前で降りると若干近くはなるが、日曜・休日が全便運休になるという使えない顕正会員に取って、交通手段として全くエントリーされていないバスである。
 ぶっちゃけ、顕正会員で使用したことのあるヤツ、俺だけじゃないの?といった勢いだ。
 甲府会館は、駅からのアクセスを全く考えていないのだろうか。行きはタクシー、帰りは何とかバス停を検索して甲府駅まで国際興業山梨交通バスでアクセスしたくらいだ。
 因みに甲府会館参詣が、私の顕正会員としての最後の参詣だった。
 話は前後するが、札幌会館がまだ事務所だった頃にも参詣したことがある。
 あれは地下鉄の菊水駅から意外と近かった。……近かったのだが、真冬の夕方に迷子になると大変だ。
 地下鉄も通っている街中だというのに、どんどんどんどん歩いている傍から雪が積もって行き、冗談抜きで遭難しそうになった。
 法華講員になってから、沖縄の会館にも行ったこともある。
 前のお寺の人が沖縄に在住しておられるので、せめて外観だけでもこの目で見てやろうではないかと思った次第だ。
 沖縄ともなれば、もはや鉄道でのアクセスは絶望的だ。
 沖縄都市モノレールでアクセスできようはずがない。
 ただ、それは宗門末寺も同じことではあるけどね。
 せめて111系統(那覇空港〜名護市を結ぶ高速バス)の路線沿いにあればいいのだが、境内に椰子の木が生えているその末寺は、車でしかアクセスできない。

 顕正会会館はともかく、宗門末寺の場合、アクセス案内が駅から遠いように書かれていても、実は路線バスで簡単にアクセスできることがあるので、少し下調べをしてみると良い(例、さいたま市の法勝寺。さいたま新都心駅から徒歩20分としか書かれていないが、実は大宮駅東口から東武バス『天沼循環』に乗り、庚申前バス停で降りるとそこから徒歩5分でアクセスできる。バスの本数も10〜20分に1本ほど)。
 私の今の所属末寺なんか、三門の真ん前にバス停があるにも関わらず、全く案内していないのが不思議だ。
 まあ、顕正会も似たようなのものだけど。
 
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“アンドロイドマスター” 「敷島の立ち位置」

2014-09-18 16:16:37 | アンドロイドマスターシリーズ
[9月16日00:15.仙台市泉区のぞみヶ丘 アリスの研究所 敷島孝夫、鏡音リン・レン、シンディ]

 泉中央駅前からタクシーに乗り、研究所に向かう。
 その間、雨は弱まって行き、のぞみヶ丘ニュータウンに入る頃には雨は止んだ。
 どうやら、やはりただのゲリラ豪雨だったらしい。
 バスなら研究所の下の折返し場で降りることとなり、そこから研究所裏手に上がる階段を登るのが大変なのだが、タクシーなら車道を直に上がって行ける。
「昔、ここに来たことがあるけど、若干変わってるかしらねぇ……」
 敷島が料金の支払いをしている間、シンディ達は先に降りた。
「来たことがあるの?」
 レンはタクシーのトランクから荷物を降ろしながら言った。
「ええ。ドクター南里が亡くなって、ドクター・ウィリーの名代で焼香にね。もっとも、姉さんや平賀坊ちゃんに追い出されちゃったけど……」
「坊ちゃん……」
 最後にタクシーを降りた敷島が、
「アリスのヤツ、多分寝てるだろうから静かに入ろう」
 と、3人を促した。
「ねぇ。この花壇って、前は無かったよね?」
 シンディがエントランス前に整備された花壇を指さした。
「ああ。エミリーが作ったんだ。いや、俺もアリスも財団の人も何も命令してないぞ。自分で考えてな。『お花・好きです』なんて言ってたけど……」
「ふーん……」
 するとシンディは右手を銃火器に変形させた。
 銃口の形状からして、火炎放射器だ。
「おい、何やってるんだ!?」
「趣味の悪い造りだね〜。私ならもっときれいに作れるわ」
「やめろ、こら!」
 敷島が慌てて、シンディの右手を掴んだ。
「! 冗談よ」
 シンディはそう言って、右手を元の手に戻した。
「こんなつまらないことで、姉さんとケンカしたくないもの」
「お前なぁ……」
 敷島は呆れた顔をした。
(私の銃火器を躊躇なく掴む人間、初めて会ったわ……)
 シンディは敷島を見て、(人間で言うなら)冷や汗をかいた。
「あー、やっぱり。アリスのヤツ、寝てやがんな……」
「兄ちゃん、カードキーは?」
「カードキーにプラスして、『クイズに答えないと、ドアが開かないので注意』って、どこのダンジョンの入口だよ!」
「ねぇ。その花壇は分かったけど、あれは何?」
 シンディは別の場所を指さした。
 丸太が何本も縦に整然と置かれて、そこからキノコがにょきにょき生えている。
「あれは、うちのバージョン5.0の兄弟が趣味でやってるキノコ栽培だ。世界中でここだけだぞ。ロボット研究と同時進行でキノコ栽培までやってる研究所って」
「まあ、そうだろうね」
 シンディはそのキノコをスキャンしたが、
「このキノコは研究用なのよね?」
「は?」
「それとも、これを材料に薬品でも作るのかしら?漢方薬?」
「何の話だ?マリオのヤツ、『ゴ近所ニお裾分ケシマス』って言ってたぞ?」
「……最近のバージョン・シリーズは、テロに銃火器を使うとは限らないのね」
「だから何の話だよ?」
「例を上げて言うとね、その手前にあるのはテングダケよ。で、その向こうにあるのがイッポンシメジ。あれがツキヨダケで、それがワライタケ……」
 全部毒キノコである。
「食用キノコくらいあるだろ!?」
「……無いね」
「燃やせ!」
「いいの?」

 敷島が回答にてこずったクイズの内容は、
『JR山手線と営業キロ数が同じ鉄道路線は? ア:鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線 イ:樽見鉄道線 ウ:阪神電鉄・阪神本線 エ:井原鉄道・井原線』
『2014年9月現在、日本で唯一夜行列車を運行している私鉄は? ア:東武鉄道 イ:名古屋鉄道 ウ:近畿日本鉄道 エ:西日本鉄道』
『創価学会が日蓮正宗から破門された年は? ア:1979年 イ:1981年 ウ:1991年 エ:1999年』
『作者の日蓮正宗所属支部は? ア:正連講 イ:妙観講 ウ:蘇生講 エ:【お察しください】』
 だそうである。
 てか、全部で何問出題されたんだよ?

[同日07:30.アリスの研究所・居住区 敷島孝夫&アリス・シキシマ]

「昨夜は随分と帰って来るのが遅かったみたいね」
 アリスはトーストを齧りながら、テーブルを挟んで向かい側に座る夫の敷島に言った。
「しょうがないだろ。財団が指定した新幹線、夜遅かったんだから。てか、エントランスドアのロック解除に変なクイズ使うの、やめなさい」
「じゃあ、パズルにする?」
「フツーにカードキーにしろよ!」

[同日09:00.アリスの研究所・研究所 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ、エミリー]

「……というわけで、オーナー登録はアタシになるから。皆、よろしくね」
 アリスが手元のノートPCを操作すると、シンディはアリスの前に片膝をついた。
「どうか、よろしくお願いします」
 これを見て敷島は、
(エミリーの、平賀先生に対するオーナー登録と似てるな)
 と、思った。
 南里が死亡して、エミリーのオーナー登録を平賀太一に変更した際、エミリーも同じ動きをした。
 そこはマルチタイプ共通なのか。
 で、ここで疑問が起こる。
「オーナー登録はアリスでいいとして、ユーザー登録はどうするんだ?ユーザーもお前か?」
「何言ってるの。タカオに決まってるじゃない」
「何だ、そうか……って、おい!」
「何よ?何か文句あんの?」
「俺はエミリーのユーザーにも登録されてるんだぞ!?」
「だから?」
「ボーカロイド・プロデューサーの仕事が忙しいのに、マルチタイプ2体も抱える余裕は無いぞ!」
「別に、単なるユーザー登録なんだから、いいじゃない。常に一緒にいる必要は無いんだし。てかアンタ、ほとんどボカロと一緒にいること自体も少ないじゃない?」
「ギクッ。い、いや、今日は財団支部の事務所に行かないとな……」
「ちょうど良かった。顔合わせにエミリーとシンディも連れて行ってあげてね」
「事務レベルの会議で行くだけだっつーに……」

[同日10:00.仙台市青葉区 ㈶日本アンドロイド研究開発財団仙台支部 敷島、エミリー、シンディ]

 車で支部事務所に向かった3人。
「まずは森須支部長に挨拶だ」
「結局、会議以外にやることあるんじゃん」
 さらっとシンディが突っ込んでくる。
「うるさいな」
 職員用駐車場に車を止め、そこからエレベーターで向かった。
 財団の入居しているフロアに行くと、
「メイド長!おはようございます!」
 すれ違うメイドロボットに、ピシッとした挨拶をされるのだった。
「総隊長!オハヨウゴザイマス!」
 ついでにセキュリティ・ロボットからも。
「随分と恐れられてるのね、姉さん?」
「私は・特に・何も・していない」
(ウソだぁ〜)
 エミリーの返事に、敷島は口元を歪めた。

 支部長室に入ると、刑事コロンボの主人公に似た森須支部長が椅子に座っていた。
「おお、来たか」
「支部長、シンディの稼働実験、今現在は順調です」
「ご苦労さん。オーナー登録もユーザー登録も終了したな?」
「はい」
「ふむ。東京でのフィールドテストは、一先ず合格だ。シンディ、キミは姉とも言えるエミリーと協力し、共に過去の贖罪をしてくれ」
「分かりました」
「なぁに。もうキミに残虐な命令を下す者はこの世にいない。安心して、今日からは我々人類の為に力を尽くしてもらいたい。具体的には、まず件のテロ組織対策だな」
「その為の会議ですよね、支部長?」
「ああ。まずは支部レベルで警戒強化を行ってくれとの本部通達だ。キミ達、姉妹にも会議に参加してもらう」
「かしこまりました」
「了解です。支部長」
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“アンドロイドマスター” 「夢オチ」

2014-09-18 00:09:09 | アンドロイドマスターシリーズ
[時期不明 場所不明 敷島孝夫、南里志郎、平賀太一、エミリー、シンディ]

 どこかの港湾と思しき場所。
 解体作業中の大型船の上で、鋼鉄の姉妹が睨み合っていた。
 そこへタイミング良く、付近に落雷がある。
 それがゴングのように、エミリーとシンディは激しい肉弾戦を繰り広げる。
 顔もそっくりなら体型もそっくり。そして、基本スペックはほぼ同じ。違うのは髪の色とその長さ、そして性格である。
 最初はシンディが優勢だった。
 エミリーは動力破損による自己修復を余儀なくされ、ついには再起動を行わなければならないほどにやられた。
 その間シンディは、固唾を飲んで見守っていた人間達を抹殺せんと、超小型ジェットエンジンを起動させ、敷島達の所へ向かおうとした。
 飛び立った直後、シンディの両足を掴むエミリー。
「なにっ!?」
 エミリーもまた自らのジェットエンジンを起動させ、シンディを抱えて飛んだ。
 そして、大型船の船橋甲板から一気に海へ飛び込もうとした。
 南里が叫ぶ。
「やめんか、エミリー!マルチタイプ奇数号機には、海水に対する耐性が無いのじゃ!海に飛び込んだら、約30秒で完全に壊れるぞ!!」
「ええーっ!?」
 敷島は目を見開いた。
「あのターミネーチャン達に、そんな弱点が!?」
 シンディも姉機の捨て身の攻撃に驚愕した。
「わ、私と心中する気!?たかだか、あんな人間どもなんかの為に……!?」
 シンディは左手から有線ロケットアームを起動させ、かろうじて甲板のへりを掴むことができた。
 だが、エミリーが更に力を出せば、チェーン式の腕は引きちぎられ、海中に落とされることだろう。
「わ、分かったわ。作戦は中止にするわ。休戦しましょう?」
 シンディは慌てた様子で、エミリーに言った。
「もう・誰も・傷つけない?」
「傷つけないわ。約束よ」
「エミリー、騙されるな!とっととシンディを壊せ!」
 平賀がエミリーに呼び掛けた。
「先生も何か言ってください!」
 平賀は学生の頃から師事している南里に言った。
「う、うむ……。じゃが、それはつまり、エミリーも壊れるということじゃぞ?何としても、それは避けたい……」
「先生!そんなこと言ってる場合ですか!人類がピンチなんですよ!」
 で、敷島は、
(この際だ。もしシンディが壊れて稼働停止になったら、大日本電機で頂いちゃおうか……)
 スパイ心が働いた。
 人間達がそれぞれの思いを交錯させている中、エミリーは……。
「お前を……信じる」
 エミリーはシンディの足元付近に穴を開け、足掛かりを作ってやった。
 だが!
「バカね!1人で泳ぎなさい!」
 姉の情けを踏みにじり、シンディは右手をショットガンに変形させた。
 しかし、シンディは武運に恵まれなかった。
 左手で掴んでいた甲板のへりが老朽化していたのと、2体のマルチタイプの重さに耐えられず、破損してしまった。
「きゃーっ!!」
 真っ逆さまに落ちるシンディ。
「シンディ!」
 エミリーは自らの左手を飛ばし、シンディを掴んだ。
 そして、腕のワイヤーを巻き上げる。
「ね、姉さ……。どうして……?」
「私は・お前と……」

 ブチィッ!!

「ん!?」
 エミリーの腕のワイヤーが切れた。
 シンディとの肉弾戦の最中に損傷を受けていて、彼女の重みに耐えられなかったのだ。
 結局、海に落ちてしまったシンディだった。

[9月15日23:02.宮城県仙台市青葉区 東北新幹線“はやぶさ”37号9号車内 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

「うっ!?」
 ビクッと体を震わせて目を覚ます敷島。
「よく眠れた?」
 一瞬、自分がどこで何をしているのか分からなかったが、そんな彼を覗き込む者がいた。
「うわっ、シンディ!」
「何よ?今まで、人型兵器の横で寝てた癖に……」
 シンディは呆れた顔をした。
「なーに、兄ちゃん?メモリー異常?」
 すぐ後ろの席に座っていたリンが覗き込んで来た。
「俺は人間だ!……変な夢見てただけだよ。ま、人間ならではだな」
 一部の動物も夢は見るそうである。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線はお乗り換えです。……〕

「ちょうど、そろそろ着く頃か……」
 車窓には見慣れた町の夜景が広がっている。

 放送が鳴ってから、だいたい5分くらいで列車は仙台駅のホームに滑り込んだ。
 ホームへ降りて改札口へ向かう途中、シンディが敷島の耳元で囁いた。
「おおかた、私に殺される夢でも見た?」
「!? い、いや、そういうわけじゃない」
 敷島は否定した。
「でも、私に怖い目に遭わされる夢かしら?」
「お前に、じゃないよ」
「?」
 敷島の反応に、シンディも訝しげな顔をした。
(大日本電機からのスパイだったってこと、財団にバレないようにしないと……。てか、南里所長の死の真相、バレたらエミリーに殺される……)

[同日23:45.仙台市地下鉄南北線、地上区間 敷島、鏡音リン・レン、シンディ]

 電車が地上区間に出ると、外は暗いにも関わらず、時折フラッシュのような光が発生した。
「ゲリラ豪雨だ……」
 閉め切った窓硝子に、バケツの水をぶっ掛けたような水しぶきが勢い良く当たる。
 それほどまでに激しい雨が降っているのだ。
「雷雨か……。姉さんとケンカするのに、ちょうどいい天候かもね」
 シンディはドアの前に立ち、楕円形の窓越しに外を見ながら呟いた。
「おい!」
 敷島はすぐに突っ込んだ。
「冗談よ。姉さんからケンカを売ってこなかったら、何もしないから」
「それよりプロデューサーは、傘をお持ちですか?」
 レンが聞いてきた。
「僕達は濡れても平気ですけど、プロデューサーは人間ですから、雨に濡れたらまずいんでしょ?」
「そうだなぁ……。確かに傘は持ってない。だけど、電車を降りて、タクシー乗り場までは屋根があって、濡れることはない……はずだ」
「じゃあ、これ使って」
 シンディは左すねに仕掛けた折畳の傘を出した。
 前の体の時は、刺殺用ジャックナイフを仕掛けていた場所である。
「お前はエミリーか!……ありがとう。必要があったら、使わせてもらうよ」
 敷島は突っ込んだ後で、傘を受け取った。

 もうしばらく、ゲリラ豪雨は続きそうである。
 
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