報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「再びのスピンオフ!」

2018-04-01 19:30:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月1日10:30.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 オーナー:「はい、それじゃエレーナ。交替するよ」
 エレーナ:「はい。今日チェックアウトのお客様は全員退館されました。それから……」

 エレーナは住み込みで格安ビジネスホテルで働いている。
 バックパッカーも多く利用するこのホテルにおいて、マルチリンガルのエレーナはとても重宝されていた。
 エレーナ自身も世界各国からやってくるバックパッカーの情報を手に入れることができ、一石二鳥であった。

 エレーナ:「……以上です」
 オーナー:「ご苦労さま。今日は一日オフだね。久しぶりの日曜日休みだ。ゆっくりしておいで」
 エレーナ:「はい。ありがとうございます」

 エレーナは丁寧に挨拶したが……。

 エレーナ:(ここ最近、“魔女の宅急便”の仕事が無いのよねぇ……)

 というボヤきを心の中でした。
 と、そこへ……。

 エレーナ:「ん?」
 鈴木:「こんにちはー」

 元顕正会男子部組長にして、今は日蓮正宗第3布教区の大化山正証寺の信徒になった鈴木弘明がやってきた。

 エレーナ:「な、なに?また予約しないで来たの?チェックインは16時からだよ?」
 鈴木:「違いますよ。この度、近くのマンションに引っ越して来ましたんで、その挨拶です」
 オーナー:「ほお……」
 エレーナ:「え?……え?……ええーっ!?」
 鈴木:「といっても、一駅変わっちゃうけど……。最寄り駅は菊川です。でも、同じ新大橋通り沿いなんですよ」
 オーナー:「森下駅も菊川駅もそんなに離れていないからね。区が違うけれども……」

 森下は江東区、菊川は墨田区である。
 途中に区境があるわけだ。

 鈴木:「これから毎日遊びに行けるね。あ、もちろん、俺のマンションに遊びに来てもいいよ」

 それを聞いてエレーナはげんなりした。

 エレーナ:「あの時、思い知らなかった?魔道師に深く関わると、痛い目に遭うって」
 鈴木:「俺も“協力者”になるよ」
 エレーナ:「誰から聞いたんだ、アンタ……」
 オーナー:「鈴木君……だっけ?私はキミの言う“協力者”に当たるんだけど、正直言って生半可な気持ちではできないよ?日本ではまだ少ないけど、海外には魔女狩りが未だ存在するからね。それに“協力者”というだけで、危険な目に遭うこともある。例えば“魔女の宅急便”というアニメではかなり好意的に描かれているが、しかし魔女狩りを行う側からすれば、あの主人公を住まわせたパン屋さんだって襲撃の対象となるだろう。つまり、そういうことなんだ」
 鈴木:「魔女狩りを行う……邪教キリスト教の集団ですか……」

 鈴木は俯いたが、すぐに眼鏡をキラーンと輝かせた。

 鈴木:「ご安心ください。その為の法華講です」
 オーナー:「な、なに!?」
 鈴木:「邪教キリスト教の集団など、我ら青嵐法華講が塵芥に処して差し上げましょう!『流血の惨を見る事、必至であります』!」
 オーナー:「怖い怖い!」
 エレーナ:(こいつ絶対アメブロやらせちゃいけないヤツだ)
 鈴木:「それはともかく、キミにちょっとした情報があるんだ。後で時間いいかな?」
 エレーナ:「夜勤明けだから、寝かせてもらうよ?」
 鈴木:「午後でいい。むしろ、時間は遅めの方がいいな」
 エレーナ:「遅めって……」
 鈴木:「夕食、一緒に食べない?俺が奢るよ」
 エレーナ:「えっ、ホント!?行く行く!」
 オーナー:(タダ飯とタダ酒には目の無いコだからなぁ……)
 鈴木:「じゃ、決まりだね。今日の夕方6時……18時に迎えに来るよ」

 鈴木は再び眼鏡をキラーンと光らせ、ニヤッと笑った。

[同日18:00.天候:晴 同ホテル地下1階 エレーナの自室]

 エレーナ:「Per me si va tra la perduta gente.Per me si va ne citta dolente,Lasciate ogne speranza,voi ch’intrate.」(訳:我を通らば、滅びの人々の中へ。我を通らば、苦悩の街の道へ。我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ)

 エレーナは薄暗い部屋で魔道書を呼んでいた。
 新しい魔法を覚えようとしているのだろうか。

 エレーナ:「Pape Satan,pape Satan alepe!Lasciate ogne speranza,voi ch’intrate.O vendtta di Dio.」(訳:パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ。嗚呼、神の復讐よ)

 『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ』は何かの掛け声らしい。
 その為、ダンテ一門では実際に魔法を使用する際の詠唱として使用されている。
 『南無妙法蓮華経』と意味合いは同じかもしれない。

 プー!

 エレーナ:「おっと!」

 その時、室内の内線電話が鳴った。

 エレーナ:「はい!」

 エレーナは急いで電話を取った。

 オーナー:「鈴木君が来たよ」
 エレーナ:「あ、そうだった。今行きます!」

 鈴木との約束をすっかり忘れていたエレーナだった。
 で、すぐに1階に向かった。

[同日18:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 ジョナサン菊川店]

 鈴木:「いやあ、嬉しいなぁ。本当に俺と一緒に来てくれるなんて。功徳だね」
 エレーナ:「仏に感謝するのは勝手だけど、神には感謝しないでよ」
 鈴木:「もちろん!俺は日蓮正宗の信徒だ!」
 エレーナ:「で、食事と酒を奢ってくれる約束でしょ?」
 鈴木:「もちろん!金ならある!」

 鈴木、親からの仕送りだけで溜め込んだ札束の入った長財布を見せる。

 エレーナ:「OK.それじゃ、食べましょう」
 鈴木:「遠慮しないで、好きなもん頼んじゃってよ。俺はとんかつだな」
 エレーナ:「あら?意外と和風」
 鈴木:「そうだろそうだろ。あとはドリンクバーを……」
 エレーナ:「酒は頼まないの?」
 鈴木:「俺は飲めないんだ。特盛や稲生先輩と違って。あ、だけどキミはガンガン頼んじゃっていいからね。むしろ、酔い潰れるほどに……」
 エレーナ:「酔い潰れても、アンタの世話にはならないわ。ワイン頼もうかな。あと、ステーキ」
 鈴木:「あいよ!」

 鈴木はコールボタンを押した。

 エレーナ:(特段プレイボーイって感じでも無さそうだけど、単なるスケベ野郎ってところか?前回の話しぶりからして、マリアンナに最初目を付けたけど、諦めて今度は私に目を付けたって感じっぽいけど……)

 エレーナは鈴木が注文している間、水の入ったグラスを口に運んだ。
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“戦う社長の物語” 「帰りの旅は続く」

2018-04-01 10:20:39 | アンドロイドマスターシリーズ
[1月14日19:25.天候:地下なので不明 東京都台東区東上野 東京メトロ上野駅日比谷線ホーム]

 電車を降りて、そのまま進行方向にある階段へ向かおうとした敷島達。
 しかしその背後で、乗客達のどよめきが起きた。

 敷島:「何だ?」

 突然黒いロボットでも現れたのかと思ったが、よく見ると……。

 敷島:「あれは!?」

 先ほど車内でメイドロイドに先導を受けていた老人が、電車とホームの間の大きな隙間に落ちていた!
 上野駅地下鉄ホームは急カーブしている昭和通りの下にある為、銀座線・日比谷線共に大きくホームが湾曲している。
 その為、両線ホームとも監視の駅員が常駐しており、この事が両線のワンマン運転化並びにホームドアの設置が遅れていることに影響していると言われている(銀座線ホームは最近ようやくホームドアが設置された)。
 メイドロイドはアラーム音を鳴らしたままフリーズして動けない。

 敷島:「エミリー、シンディ!行け!行け!」
 エミリー:「かしこまりました!」
 シンディ:「了解!」

 エミリーとシンディは先頭車の後ろまで行くと、エミリーは車体を大きく傾かせた。
 かつてJR南浦和駅でも似たような事故が発生しており、多くの人間の乗客が力を合わせて車体を傾かせ、電車とホームに挟まれた乗客を救出したという美談が語られているが、この乗客達の代わりをエミリーが1人で行ったのである。

 シンディ:「ほらっ!アンタもボサッとしてないで、そっち持って!」
 メイドロイド:「は、はい」

 シンディはエミリーが電車を傾かせている間、ホームの隙間に挟まれた老人を引き上げた。

 老人:「ふぅーっ……!命拾いしたわい……」

 と、その時だった。

 鷲田:「警視庁ロボットテロ対策部の出動だ!」
 村中:「……と言っても2人だけ、だけど」

 バタバタと鷲田と村中がやってきた。
 尚、前者が部長、後者が課長である。
 この2人しかいない部署……特命係みたいなものとでも言えばいいのか。

 鷲田:「キサマら!ついに人の命を!」
 村中:「スクラップ処分は免れないよ!」
 敷島:「ちょ、ちょっと!鷲田警視たち!」
 鷲田:「さあ、来てもらおうか!もちろん、所有者のキミ達も所有者責任で当然来てもらう!」
 アリス:「あら?Policeがそんな横暴なことしていいのかしら?シンディをフル爆装して、警視庁を数秒で瓦礫にさせてもよろしいのですよ?」
 鷲田:「おい、聞いたか?」
 村中:「さすがは世界的マッドサイエンティストの孫娘。言うことがさすが」
 老人:「待て!」

 駅員から応急手当を受けている老人が、強く鷲田と村中を制した。
 尚、シンディは役に立たなかったメイドロイドに説教していたし、エミリーは応急手当を手伝っていた。

 老人:「キミ達は何か勘違いをしておるぞ!」
 鷲田:「勘違いですと?それは……。!」
 村中:「まあまあ。ここは私達、警察にお任せください。あなたがホームで電車を待っていた際、あのロボット達のいずれかに突き落とされたことは簡単に……」
 老人:「じゃから待てと言っておる!」
 鷲田:「も、もしや、あなたは……!」
 村中:「? 部長のお知り合いですか?」
 鷲田:「警視庁OBで元・警視正の戸田敬一郎先輩では!?」
 村中:「ええーっ!?あの『公安の鬼』と呼ばれた……あの戸田警視正!?」
 戸田老人:「キミ達の捜査は殆ど手抜きじゃな」
 鷲田:「は、はあ……」
 戸田老人:「ワシが最初から説明してやろう。心して聞くように」

 当たり前だが、戸田老人の証言のおかげで、エミリー達の疑いは晴れたのである。

 戸田老人:「取りあえず落ちた時に足を挫いたので、病院まで連れて行ってくれんかの?」
 鷲田:「ははっ!すぐに!」
 敷島:「救急車呼んどらんの?」

[同日20:20.天候:晴 JR上野駅・低いホーム]

 敷島:「帰るのが遅くなっちまったよ、全く」
 アリス:「事情聴取なんかで小一時間ほど取られたもんね」
 敷島:「いや、全く」

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。15番線に停車中の列車は、20時25分発、快速“ラビット”、宇都宮行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 シンディ:「社長、博士。グリーン券です」
 敷島:「ありがとう」
 アリス:「Thanks.」

 シンディが買って来たグリーン券を手に、敷島達は頭端式のホームに停車しているE233系の5号車に乗り込んだ。

 敷島:「ここは、あえて平屋!」
 アリス:「なん……だと?」

〔この電車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は赤羽、浦和、大宮、蓮田、久喜(くき)、古河(こが)、小山(おやま)と小山から先の各駅です。グリーン車は4号車と5号車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕

 シンディはヒョイと荷物を荷棚に上げた。
 この2階建てグリーン車では1階席と2階席には天井の高さの関係で荷棚が無いが、平屋席にはある。
 その間、敷島は座席を回転させて向かい合わせにした。
 そして……。

 エミリー:「お待たせしました。ビールです」

 エミリーがホームのコンビニで買って来た缶ビールをビニール袋の中から出した。

 アリス:「まだ飲むの?」
 敷島:「さっきの地下鉄でケチが付いたから、飲み直しだよ。アリスも飲むか?」
 アリス:「しょうがないわねぇ……」
 シンディ:(飲むんだ)

 それからしばらくして、ホームに発車ベルが鳴り響く。

〔15番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 敷島:「あーっ、アリス!おつまみのチーズ鱈、俺のだぞ!」
 アリス:「いいじゃない。ケチケチしないの」

 快速“ラビット”号は定刻に発車した。
 低いホームからの発車の場合、高い位置に出るまでは低速度で出発する。
 線形の問題もあるのだろうが、低いホームは元々長距離列車が発車するホームだったということもあり、汽車時代の名残でもあるのだろう。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は宇都宮線、快速“ラビット”、宇都宮行きです。停車駅は……〕

 宇都宮線快速の名前は“ラビット”。
 ウサギのように速い、という意味で名付けられたのだろうが、しかし1つ疑問がある。
 この疑問に答えれる、日本人はいるだろうか。

 敷島:「! そう言えば、英語でウサギを意味するRabbit(ラビット)とBunny(バニー)はどう違うんだ?」
 アリス:「んなもん、ググればいいじゃない」
 敷島:「目の前にネイティブがいるから聞いてるんだよ!」

 敷島は呆れて言った。

 アリス:「Rabbitは兎でいいのよ」
 敷島:「じゃあ、Bunnyは何だ?」
 アリス:「ウサギでいいのよ」
 敷島:「意味が分からん!」
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