報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「やっと本編開始」

2018-04-04 19:48:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月4日19:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷1F大食堂]

 稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。ごちそうさまでした」
 マリア:「やっと私達の出番か。作者め。エレーナに作品枠やり過ぎだ」
 稲生:「誰に言ってるんですか?」
 マリア:「いや、何でもない」
 稲生:「大師匠様に年度初めの挨拶とかしなくていいんですか?」
 マリア:「大師匠様も神出鬼没だ。私達が挨拶に出向くとか、そういうことではないんだ」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「近々、魔王城でパーティーが行われるらしい。それに大師匠様も参加されるだろうから、その時に御挨拶ってところかな」
 稲生:「おっ、また魔界に行く機会があるんですか」
 マリア:「一応ね。ただ、詳細がサッパリ。普通は師匠から上意下達で来るはずなんだけども、肝心の師匠が最近出ずっぱりだから」
 稲生:「ですよねぇ……。僕も藤谷班長から御講参加の誘いが来てるんですよ」
 マリア:「勇太の寺の?」
 稲生:「はい。マリアさんも御一緒にどうですか?」
 マリア:「遠慮しとく。またウォッカ入り甘酒飲まされたらたまらん」
 稲生:「い、いや、あれはその……ケンショーレンジャーのしわざで……」
 マリア:「分かってるよ」
 稲生:「それに、魔女狩りカルト教団も入って来れないから、安全地帯です」
 マリア:「ケンショーレンジャーの侵入を阻止できないようじゃ、100パー安全とは言えないな」
 稲生:「ハハハ……」
 マリア:「ま、この世界で100%を求める方が無理か」
 稲生:「そ、そうですよ、マリアさん」

 夕食が終わると、メイド人形達が食後のコーヒーを持って来た。

 稲生:「ありがとう」
 マリア:「魔界へは人間界のどこからでも行けるから、行ってきていいんじゃない?」
 稲生:「もし良かったら、マリアさんも……。あの、お寺とかじゃなくていいんで……」
 マリア:「うーん……私も、この屋敷で留守番してなきゃいけない身だからねぇ……。師匠が帰って来るまでは、何とも……」
 稲生:「分かりました。それじゃ僕、先生が早く帰って来るよう、唱題してきます」
 マリア:「ちょっと待て!魔力の無駄遣いはダメだぞ!」
 稲生:「魔力の無駄遣いじゃありません。御祈念です」
 マリア:「いや、だからさ、それが私から見れば魔力を使っているようにしか見えないんだって」
 稲生:「マリアさん。『日蓮正宗の信仰を続けることは自由』と先生に言われましたよ?唱題と御祈念は、その日蓮正宗の信仰活動の1つなんですけど?」
 マリア:「分かった。分かったよ」
 稲生:「じゃあ、ちょっと唱題してきます」

 稲生は席を立つと自分の自室に戻った。

 マリア:「勇太が祈りを捧げると、本当に叶うから恐ろしいんだよな」

 と、そこへテーブルの上の水晶球が鈍く点滅した。

 マリア:「う……。何か、嫌な予感」

 マリアは手を伸ばして、水晶球に手をかざした。

 イリーナ:「やほー!先生だお!元気にしてた?」
 マリア:「師匠!今どこですか?」
 イリーナ:「今ねぇ、シリアにいるの」
 マリア:「はあ!?」

 よく耳を澄ますと、イリーナの後ろからマシンガンの発砲音とか、ショットガンの発砲音とかが僅かに聞こえてくる。

 マリア:「何でそんな物騒な所に!?」
 イリーナ:「まあまあ。報酬としてインゴッド大量に手に入ったから、今年もまた贅沢な暮らしができるよ?」
 マリア:「『一気にドカンと稼ぐ』方針なのはいいですが、あまり物騒なのはどうかと……」
 イリーナ:「あ、痛ッ!」
 マリア:「師匠!?」
 イリーナ:「あ、ゴメンゴメン。流れ弾がローブに当たっただけ」

 魔道師のローブは戦士の鎧に相当する。
 イリーナの場合、銃弾が当たっても、せいぜい石が当たった程度なのだろう。

 マリア:「ちょっと!」
 イリーナ:「じゃあ、そろそろ離脱するかね。あ、今週中には帰るから、どこか行きたい所があったら出掛けていいよ。お留守番ありがとさん」
 マリア:「…………」
 イリーナ:「それじゃ、チャオ♪」

 こうしてイリーナからの通信が切れた。

 マリア:「勇太ァ!今すぐ唱題と祈念やめて!!」

 そして、食堂内の内線電話から稲生の部屋に中止命令を送ったのだった。

[同日20:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側・マリアの部屋]

 マリア:「全く。勇太の祈りには困ったものだよ」
 稲生:「いやあ、すいません。でも先生が無事で良かったですよ」
 マリア:「あの人は殺しても死なないから、それこそマシンガンを食らっても大丈夫」
 稲生:「いや、さすがは大魔道師だ。早速実家に連絡して、またマリアさんの部屋とか用意してもらいますから」
 マリア:「すまない。報酬はインゴッドを2〜3個くらいでいいかな」
 稲生:「インゴッド!?いや、そんなのもらうわけにはいきませんよ!」
 マリア:「でも、イブキからは小判をもらったんだろ?妖狐が小判なら、魔道師はインゴッドだ。大丈夫。師匠が中東で稼いだインゴッドを少し流用するだけだ」
 稲生:「結局、錬金術はインチキ確定でいいんですね」

 ダンテ一門の魔道師の中で、未だに錬金術に成功したという話は聞かない。

 稲生:「それじゃ、先生のお帰りを待って……」
 マリア:「いや、もうそこは見切り発車でいいみたい。さっきも言ったと思うけど、師匠の力を持ってすれば、どこからでも魔界へは行けるから」
 稲生:「そうですか。それじゃ、お言葉に甘えて……」
 マリア:「日本国内における交通手段は、全て稲生に任せることなっているから、そこは頼む」
 稲生:「分かりました。明日、ちょっと行ってきます」
 マリア:「間違っても、宿泊先はワンスターホテルにするなよ?」
 稲生:「多分、エレーナの方から断ってくると思うんで、それは大丈夫です」

 もっとも、宿泊先は全て稲生の実家ということになりそうだが。
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“魔女エレーナの日常” 「日蓮正宗もこんな感じだったら面白いのに」

2018-04-04 10:20:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月1日20:00.天候:曇 東京都墨田区菊川→東京都江東区森下]
(エレーナの一人称です)

 私はこう見えてもマスターの資格を得た一人前の魔道師だ。
 現に先日、秋葉原でオタク狩りに遭った日本人の男を1人助けたことがある。
 その男が事もあろうに私を痴漢の亡霊から守る為、私が住み込みで働くホテルまで送って行こうと言うんだ。
 バカバカしい。
 見習い期間も含めて魔道師を長くやってりゃ、亡霊くらい何度も相手になっている。
 マリアンナのバカは相当苦労したみたいだけど、私は奴らの弱点を知ってる。
 何もこんなオタク狩りに遭うような、ひ弱なオタクに守ってもらう必要など無い。
 ……はずなのだが。

 鈴木:「さ、支払いも済ませたし、早いとこ帰ろう」
 エレーナ:「食事を奢ってくれたことはありがとう。だけど、私は本当に1人でも大丈夫だから」
 鈴木:「だけど、面倒なことは嫌いだろ?」
 エレーナ:「ん?」

 まあ、確かに1円の金にもならないことは嫌いだが。

 鈴木:「俺の今までの調査だと、被害者の女性達は皆1人で夜歩いている所を狙われている。例えこんな俺でも、一緒に歩いていれば襲ってこないというわけだ」
 エレーナ:「うーむ……」

 いや、それは無いな。
 亡霊の正体が本当にただの痴漢なのかどうか、それが判明してからでないと、現時点ではまだ何とも言えない。
 それに、私と鈴木が初めて男女一緒に襲われたパターンとなるだけかもしれない。
 どうせ襲われるのなら、私1人の方がいい。
 こいつは絶対に戦力にならないどころか、むしろ足を引っ張って来る方だろう。
 そんな時、誰かを守りながらの戦いの方が、1人で戦う時より断然不利であることは私もよく知っている。

 エレーナ:「アンタこそ気をつけた方がいいんじゃないか?」
 鈴木:「何だって?」
 エレーナ:「アンタはアンタで、人間のヤンキーにカツアゲに遭うかもよ?」
 鈴木:「ぐっ……!い、いや、この辺りは治安の心配は無いから大丈夫」

 まあ、確かにそういう話はこの辺では聞かない。
 むしろ、治安は良い方だと思う。
 だからこそ余計に、鈴木の話が俄かに信じられないんだ。

 エレーナ:「むしろ私が守ってやる側かもよ?」
 鈴木:「そ、それならそれで本望です……」
 エレーナ:「もちろん、タダじゃないけどね。何だったら、私がアンタを送ってやってもいいよ?」
 鈴木:「えっ、本当!?」

 しまった!ヤブヘビ!
 鈴木は鼻息を荒くしている。
 男の家にのこのこ向かって、そのまま連れ込まれて後は【貞操を奪われてポイ】というパティーンじゃないか!
 えーと……。

 1:鈴木を家まで送ってやろう
 2:やっぱり鈴木に送ってもらう

 おい、作者!選択肢が2つしか無いってどういうことだよ!?
 3:魔法でドロンとか無いのかよ!?

 エレーナ:「いや、やっぱり一緒に来たければ来なよ」
 鈴木:「やったーっ!俺んちこっち!良かったら上がってお茶でも……!」
 エレーナ:「おい、人の話聞けよ。オマエの家に行くんじゃない。そこまで言うんだったら、送らせてやるって言ってんの」
 鈴木:「何だ。だったら、最初からそう言えばいいのに……。このツンデレw」
 エレーナ:「アホか!」

 何か、こいつと一緒にいると疲れる。
 むしろ痴漢の亡霊にはガチで現れてもらって、こいつだけ痛めつけてくれないかな。

 鈴木:「……月がきれいだね」

 新大橋通りを歩いていると、鈴木が突然そんなこと言い出した。
 私も空を見てみたが、月は見えない。
 どうやら食事をしている間に、雲ってきたみたいだ。
 空気も少し湿っぽい。
 明日は雨でも降るのか。

 鈴木:「月の明かりに照らされて、夜空をホウキで舞う魔女。何て幻想的なんだろう」

 ん?何だか怪しいぞ。
 こいつの目、少し据わってやがる。

 鈴木:「ようやく俺にも運が回ったかもしれない。キミみたいな子に会えたことだしね」

 そう言うと鈴木のヤツ、自分の眼鏡を押し上げた。
 キラーンとレンズが反射する。
 月の明かりに反射すればまだそれなりの雰囲気もあったのだろうが、あいにくと反射したのは都営バスのヘッドライトだ。

 鈴木:「因みに俺のマンションはここ」
 エレーナ:「えっ?」

 それは私のホテルから急げば5分くらいで着く位置にあった。
 だったら、鈴木を送る名目にしてここでサヨナラすれば良かった!

 エレーナ:「そ、それじゃ、私はこれで……」

 私はその場を離れようとしたが、鈴木にグッと手を掴まれる。

 鈴木:「おいおい、何を言ってるんだよ?キミを送り届ける約束じゃないか」

 マジか……!
 因みに私は平気だが、マリアンナに今のをやると間違い無くブチギレて鈴木の命は無くなっていただろう。
 ん?あいつ、男嫌いだから、成り行きで手を掴まれたとはいえ、それが男だったらそうなるよって話。
 ようやく稲生氏とは素手で手を繫げるまでにはなったみたいだけど。

 エレーナ:「分かったから、手を放してくれ。魔女の中には手を掴まれただけでマジギレするバカもいるから、気をつけた方がいいぞ」
 鈴木:「分かったよ。早く俺も稲生先輩みたいになれるといいな」
 エレーナ:「そうか……。ん?」

 鈴木は素直に手を放してくれたが、その後のセリフ、どういう意味か知りたいような、知りたくないような……。

 鈴木:「それにしても、妙観講の奴らが随分と騒いでいたんで、何事かと思って調べてみたんだ。そしたら、痴漢の幽霊の話に辿り着いたんだけど……」

 ん?ちょっと待った!
 こいつの話、ガチだったのか?
 痴漢が女の抵抗に遭って殺されて、その怨念で……って話、ベタ過ぎるから作り話だと思っていたんだけど……。

 エレーナ:「なあ、さっきの話、本当だったのか?」
 鈴木:「何言ってるんだ。本当だよ。痴漢に遭って、逆に殺しちゃったって女性は妙観講員だったんだよ。もちろん正当防衛が認められて無罪放免だけど、それを嬉々として体験発表して“慧妙”に載ってたんだ。どうもその痴漢、最初から痴漢だったわけじゃなかったみたいなんだ」
 エレーナ:「どういうことだ?」
 鈴木:「顕正会員だったんだよ。どうやら妙観講員に法論を吹っ掛けた……のか、それとも妙観講員から吹っ掛けられたのかは知らないけど、それで男女1人ずつになったことがそもそもの間違いだったみたいだな。その後、どういう経緯があったのか知らないが、結果はさっき話した通りだよ」

 話している最中に顕正会の男がムラムラ来たか、それとも法論とやらに負けそうになったので、腹いせにレイプしてやろうと思ったか……。
 少なくとも、女の方から誘ったってことは無さそうだな。

 鈴木:「こうしてキミを送っているのも、亡霊は痴漢というよりも顕正会員だったから、俺の立場が役に立つかもしれないって思ってさ」
 エレーナ:「そういうことか」

 これで納得した。
 それしても稲生氏といい、こいつといい、その日蓮正宗とやらは魔女狩りはしないものの、やっぱり危なそうな宗教だ。

 こうして私達はホテルまで到着した。

 エレーナ:「今度こそここでサヨナラだな」
 鈴木:「そうだね」

 鈴木は何故か時計をチラッと見た。

 鈴木:「ちょっとロビーで時間を潰させてもらえないかな?」
 エレーナ:「は?……いや、別にいいけど……」
 鈴木:「悪いな」

 鈴木はホテルのロビーに入ると、自販機コーナーからジュースを買った。
 本当にここで時間を潰す気か。
 何だか、何を企んでいるのか気になる。
 私もロビーで待つことにした。
 そして、時計の針が20時33分を指した。

 鈴木:「よしっと。そろそろ、こんな所か……」
 エレーナ:「なに?」
 鈴木:「じゃ、俺はもう帰るから。また遊びに来るからね」
 エレーナ:「あ、ああ……。今日はごちそうさま」

 鈴木は笑みを浮かべてホテルから出て行った。
 笑みはオタクのようなキモい笑みであったが、私はそいつの企みの方が気になって、キモさはあまり気にならなかった。
 あいつ……、一体何を企んでいる?

 エレーナ:「!!!」

 その時、私はゾクッと背筋に寒気を感じた。
 これは……霊気!?
 ホテルの前の路地を新大橋通りに向かって歩く鈴木。
 その後ろをシャドウの姿の亡霊が向かって行く。
 恐らくこれは霊感の強い者、或いは私みたいな魔力を持つ者でしか見えないだろう。

 エレーナ:「鈴木ッ!!」

 シャドウは鈴木の背後を狙って走って行く。
 そしてそいつは鈴木の首に向かって手を伸ばした。

 エレーナ:「鈴木!後ろ!!」

 バァン!!

 シャドウ:「ギャアアアアアアア!!!」
 エレーナ:「!!!」

 鈴木は振り向き様、手に持っていた数珠をシャドウに叩き付けた。

 鈴木:「南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!南無妙法蓮華経!」
 シャドウ:「ドゥワァァァァァ……ッ……!!」
 エレーナ:「……!!」

 これがあのオタク狩りに遭っていた鈴木!?
 鈴木は経本を倒れ込んだシャドウの頭に叩き付けながら、数珠を手に掛けて題目を唱え上がる。
 そして、シャドウは断末魔を上げながら消えて行った。
 私が呆然としていると、鈴木は言った。

 鈴木:「全く、異流儀が。この世を彷徨い続けることも無間地獄のうちだってことは分かったから、生きてる人間に迷惑掛けるんじゃないよ。死んだくせに」

 鈴木はそんなことを言って、数珠と経本をバッグにしまった。
 そ、そういえばマリアンナが言ってたな……。
 稲生氏も似たような魔法を使うと。
 ど、どうしよう……?何か、ヤバいヤツと知り合ってしまったような……?
 私はフリーズしながら、鈴木の背中を見送っていた。
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