[4月8日20:35.天候:晴 JR大宮駅西口→京浜急行バス車内]
大宮駅西口そごう前のバス停でバスを待っていると、赤と白の塗装が特徴の京浜急行バスがやってきた。
既に何人か乗っているのは、ここより1つ前の西武バス大宮営業所が始発だからだろう。
メインはこの大宮駅西口である。
高速バスタイプであり、バス車内の後方にトイレが付いているタイプだ。
予約なしでも乗れるが、稲生達のように先に予約した者から優先して乗れる方式である。
羽田空港国際線ターミナル直行バスである為、必然的に客層は外国人が多い。
稲生:「ここにしますか」
マリア:「そうだな」
2人はあえて運転席のすぐ後ろの席に腰掛けた。
いつもは後ろの席に座る2人だが、今日に限って運転席のすぐ後ろにしたのは、どことなく河合有紗が何を仕掛けて来るか分からなかったからかもしれない。
……例え、マリアの契約悪魔や稲生が今後契約するであろう悪魔が一緒に乗っているとはいえ。
事故が起きた際、1番安全だとされる運転席のすぐ後ろを陣取ったのは偏に不安があったからと言える。
客層は外国人が多いといっても、その中でアジア系が1番多いようだ。
白人や黒人も少しは混じっていたが、カップルでいることが多く、稲生達のように日本人と白人の組み合わせは無かった。
半分ほどの座席が埋まり、バスは2〜3分遅れで大宮駅西口を発車した。
昼間の便だと、いつもは首都高さいたま新都心線の新都心西出入口から高速に乗るだが、この便はさいたま新都心駅西口にも止まるので、国道17号線(中山道)を南下することになる。
稲生:「有紗、何か仕掛けて来ますかね?」
マリア:「大丈夫さ。ヤツに、バスごと何かする力までは持ち合わせていなさそうだ。勇太や私をピンポイントで攻撃するしか能は無いだろう」
稲生:「そうですね」
マリア:「1つ、お願いがある」
稲生:「何ですか?」
マリア:「河合氏の件が済むということは、もうそいつは勇太の前に現れないということだ。そうなったら……もうそいつのことは忘れて、私だけを……」
稲生:「え?何ですか?」
マリアが言い終わらぬうちに、バスのすぐ隣を改造バイクが轟音を立てて通過していったので、よく聞き取れなかった。
運転手が運転席の窓を開けていたというのもあった。
稲生:「マリアさん?」
マリア:「……いや、何でもない。とにかく……亡霊なんかに、勇太を渡すつもりはない。それだけ」
稲生:「マリアさん……」
少し離れた後ろの席に座っている悪魔2体は……。
ベルフェゴール:「んー、惜しい!あともうちょっとで告白完了だったのに!」
アスモデウス:「ていうかさ、稲生氏がコクりゃ早い話なんじゃないの?全く、意気地無しなんだから」
ベルフェゴール:「だが、そこがいい」
アスモデウス:「どうせマリアンナは非処女なんだから、この際押し倒して……」
ベルフェゴール:「ハハハハ……。それはキミの今後の計画だろう?赤子の魂は多ければ多いほど良い」
アスモデウス:「まあね」
ベルフェゴール:「おや、マモンからのLINEだ」
悪魔がスマホを持っている……。
しかもLINEやってる悪魔って……。
ベルフェゴール:「なるほど。マモンの契約者は、『非処女でありながら処女』であるようだ」
アスモデウス:「でもそれって、見ようによっては『処女でありながら非処女』とも言うよね」
ベルフェゴール:「なるほど。それが世に言う“処女ビッチ”というものか」
アスモデウス:「ちょっと違うね」
キリスト教における七つの大罪の有名悪魔がこんな能天気な会話をしているくらいだから、まあ危険は無いものと思って良いだろう。
[同日21:50.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]
ところで空港連絡バスなど、首都高を走ったことのある人なら気づくことがあるだろう。
いや、高い確率で渋滞に巻き込まれるとか、そういうネガティブな話ではない。
防音壁とかがウザい部分もあるが、それが無い区間においては、結構夜景がきれいだということを。
今回の場合、バスはレインボーブリッジを渡った。
ライトアップされたレインボーブリッジ自体もそうなのだが、その橋の上から見える夜景に、外国人旅行者達が感嘆の声を上げていた。
マリア:「きれい……」
レインボーブリッジは二層構造になっていて、上層部分は首都高となっており、下層部分の一般道や並行して走る“ゆりかもめ”よりも眺望に優れている。
走行中はこれ(https://www.youtube.com/watch?v=HPFHnU2qF0w)を聴きながら走ると、ムードが出るかも。
一時は悪霊からの危険に晒されていることなど、忘れてしまいそうな感じであった。
東京の夜景を楽しんだ後、バスはほぼ時刻表通りに羽田空港国際線ターミナルに到着した。
稲生:「安全の為に乗った最前列席でしたけど、眺望は良かったですね」
マリア:「うん。“魔の者”から逃げる為とはいえ、日本を拠点にして良かったかも……」
そんなことを言いながらバスを降りる。
稲生:「まだ少し時間がありますね」
マリア:「ヘタに動かず、到着ロビーで待とう」
稲生:「はい」
イリーナの到着予定時刻は22時30分から40分ほどである。
稲生はスマホで、ここからワンスターホテルまでのルートを検索した。
稲生:「何とか電車があるうちに移動できそうだな……」
マリア:「勇太。大師匠様も御一緒なのに、電車移動は無いだろう。リムジンでも予約しないと」
稲生:「はあ……まだバスあるかな……」
マリア:「エアポートリムジンじゃない!」
稲生:「ああ、ハイヤーのことですか。そうですねぇ……」
昼間よりは人も少ないターミナル。
マリア:「私から離れないで。きっとどこかで見てるから」
稲生:「地縛霊だったら、その場から離れればそれで終了なんですけどねぇ……」
もっとも、稲生とて知っている。
東京中央学園の怖い話には、例え地縛霊でも、たまに気に入った人間に憑いて行く者もいることを。
それに、有紗自身は元々地縛霊などではなかったはずだ。
それが、どうして悪霊になんかなってしまったのか。
顕正会で積んだ害毒だと言ってしまえばそれまでだが、それにしたって稲生が日蓮正宗で塔婆供養くらいはしていたのだから、少しは効果があっても良かったはずだ。
で、普通なら効果はあるのだろう。
だがそこで誰かが墓暴きをし、遺骨を持ち去ってしまった。
それが悪霊化となった原因だとしたら……。
稲生:「あ、あの……すいません」
マリア:「なに?」
稲生:「ちょっと……トイレ行ってきていいですか?」
マリア:「男子トイレなら大丈夫だろう」
稲生:「そ、そうですか?」
マリア:「河合有紗は女だ。女が男子トイレには入れない。幽霊になっても、それは同じのはず」
稲生:「そ、そうか。確かに“トイレの花子さん”も、男子トイレには出ませんもんね」
稲生はそう言うと、トイレに向かった。
はてさて……。
1:やっぱり河合有紗の幽霊が出た。
2:別の幽霊が現れた。
3:何も起こらなかった。
4:見当もつかない。
大宮駅西口そごう前のバス停でバスを待っていると、赤と白の塗装が特徴の京浜急行バスがやってきた。
既に何人か乗っているのは、ここより1つ前の西武バス大宮営業所が始発だからだろう。
メインはこの大宮駅西口である。
高速バスタイプであり、バス車内の後方にトイレが付いているタイプだ。
予約なしでも乗れるが、稲生達のように先に予約した者から優先して乗れる方式である。
羽田空港国際線ターミナル直行バスである為、必然的に客層は外国人が多い。
稲生:「ここにしますか」
マリア:「そうだな」
2人はあえて運転席のすぐ後ろの席に腰掛けた。
いつもは後ろの席に座る2人だが、今日に限って運転席のすぐ後ろにしたのは、どことなく河合有紗が何を仕掛けて来るか分からなかったからかもしれない。
……例え、マリアの契約悪魔や稲生が今後契約するであろう悪魔が一緒に乗っているとはいえ。
事故が起きた際、1番安全だとされる運転席のすぐ後ろを陣取ったのは偏に不安があったからと言える。
客層は外国人が多いといっても、その中でアジア系が1番多いようだ。
白人や黒人も少しは混じっていたが、カップルでいることが多く、稲生達のように日本人と白人の組み合わせは無かった。
半分ほどの座席が埋まり、バスは2〜3分遅れで大宮駅西口を発車した。
昼間の便だと、いつもは首都高さいたま新都心線の新都心西出入口から高速に乗るだが、この便はさいたま新都心駅西口にも止まるので、国道17号線(中山道)を南下することになる。
稲生:「有紗、何か仕掛けて来ますかね?」
マリア:「大丈夫さ。ヤツに、バスごと何かする力までは持ち合わせていなさそうだ。勇太や私をピンポイントで攻撃するしか能は無いだろう」
稲生:「そうですね」
マリア:「1つ、お願いがある」
稲生:「何ですか?」
マリア:「河合氏の件が済むということは、もうそいつは勇太の前に現れないということだ。そうなったら……もうそいつのことは忘れて、私だけを……」
稲生:「え?何ですか?」
マリアが言い終わらぬうちに、バスのすぐ隣を改造バイクが轟音を立てて通過していったので、よく聞き取れなかった。
運転手が運転席の窓を開けていたというのもあった。
稲生:「マリアさん?」
マリア:「……いや、何でもない。とにかく……亡霊なんかに、勇太を渡すつもりはない。それだけ」
稲生:「マリアさん……」
少し離れた後ろの席に座っている悪魔2体は……。
ベルフェゴール:「んー、惜しい!あともうちょっとで告白完了だったのに!」
アスモデウス:「ていうかさ、稲生氏がコクりゃ早い話なんじゃないの?全く、意気地無しなんだから」
ベルフェゴール:「だが、そこがいい」
アスモデウス:「どうせマリアンナは非処女なんだから、この際押し倒して……」
ベルフェゴール:「ハハハハ……。それはキミの今後の計画だろう?赤子の魂は多ければ多いほど良い」
アスモデウス:「まあね」
ベルフェゴール:「おや、マモンからのLINEだ」
悪魔がスマホを持っている……。
しかもLINEやってる悪魔って……。
ベルフェゴール:「なるほど。マモンの契約者は、『非処女でありながら処女』であるようだ」
アスモデウス:「でもそれって、見ようによっては『処女でありながら非処女』とも言うよね」
ベルフェゴール:「なるほど。それが世に言う“処女ビッチ”というものか」
アスモデウス:「ちょっと違うね」
キリスト教における七つの大罪の有名悪魔がこんな能天気な会話をしているくらいだから、まあ危険は無いものと思って良いだろう。
[同日21:50.天候:晴 東京都大田区羽田空港 羽田空港国際線ターミナル]
ところで空港連絡バスなど、首都高を走ったことのある人なら気づくことがあるだろう。
いや、高い確率で渋滞に巻き込まれるとか、そういうネガティブな話ではない。
防音壁とかがウザい部分もあるが、それが無い区間においては、結構夜景がきれいだということを。
今回の場合、バスはレインボーブリッジを渡った。
ライトアップされたレインボーブリッジ自体もそうなのだが、その橋の上から見える夜景に、外国人旅行者達が感嘆の声を上げていた。
マリア:「きれい……」
レインボーブリッジは二層構造になっていて、上層部分は首都高となっており、下層部分の一般道や並行して走る“ゆりかもめ”よりも眺望に優れている。
走行中はこれ(https://www.youtube.com/watch?v=HPFHnU2qF0w)を聴きながら走ると、ムードが出るかも。
一時は悪霊からの危険に晒されていることなど、忘れてしまいそうな感じであった。
東京の夜景を楽しんだ後、バスはほぼ時刻表通りに羽田空港国際線ターミナルに到着した。
稲生:「安全の為に乗った最前列席でしたけど、眺望は良かったですね」
マリア:「うん。“魔の者”から逃げる為とはいえ、日本を拠点にして良かったかも……」
そんなことを言いながらバスを降りる。
稲生:「まだ少し時間がありますね」
マリア:「ヘタに動かず、到着ロビーで待とう」
稲生:「はい」
イリーナの到着予定時刻は22時30分から40分ほどである。
稲生はスマホで、ここからワンスターホテルまでのルートを検索した。
稲生:「何とか電車があるうちに移動できそうだな……」
マリア:「勇太。大師匠様も御一緒なのに、電車移動は無いだろう。リムジンでも予約しないと」
稲生:「はあ……まだバスあるかな……」
マリア:「エアポートリムジンじゃない!」
稲生:「ああ、ハイヤーのことですか。そうですねぇ……」
昼間よりは人も少ないターミナル。
マリア:「私から離れないで。きっとどこかで見てるから」
稲生:「地縛霊だったら、その場から離れればそれで終了なんですけどねぇ……」
もっとも、稲生とて知っている。
東京中央学園の怖い話には、例え地縛霊でも、たまに気に入った人間に憑いて行く者もいることを。
それに、有紗自身は元々地縛霊などではなかったはずだ。
それが、どうして悪霊になんかなってしまったのか。
顕正会で積んだ害毒だと言ってしまえばそれまでだが、それにしたって稲生が日蓮正宗で塔婆供養くらいはしていたのだから、少しは効果があっても良かったはずだ。
で、普通なら効果はあるのだろう。
だがそこで誰かが墓暴きをし、遺骨を持ち去ってしまった。
それが悪霊化となった原因だとしたら……。
稲生:「あ、あの……すいません」
マリア:「なに?」
稲生:「ちょっと……トイレ行ってきていいですか?」
マリア:「男子トイレなら大丈夫だろう」
稲生:「そ、そうですか?」
マリア:「河合有紗は女だ。女が男子トイレには入れない。幽霊になっても、それは同じのはず」
稲生:「そ、そうか。確かに“トイレの花子さん”も、男子トイレには出ませんもんね」
稲生はそう言うと、トイレに向かった。
はてさて……。
1:やっぱり河合有紗の幽霊が出た。
2:別の幽霊が現れた。
3:何も起こらなかった。
4:見当もつかない。