報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「6番街におけるクエスト達成」

2020-05-23 17:00:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月6日23:15.天候:晴 アルカディアシティ6番街 代官屋敷]

 ガメツィン:「ろ、ロッカータ!これは一体どういうことじゃ!?」
 ロッカータ:「く、曲者だ!であえであえ!」

 ロッカータは手持ちのホイッスルをピィーッと吹いた。
 だが、誰も来る様子は無い。

 クリス:「お生憎様、あんた達の(自称)優秀な部下達はここに来れないみたいだよ?」

 クリスは長剣の切っ先を2人の副理事と代官に向けながら言い放った。
 それもそのはず、部屋の外では代官の部下達が『流血の惨』に見舞われていたのだった。

 稲生:「地下にいたサハギンキングというボスキャラは、この人達が数分で倒してくれたよ」

 稲生も長身のクリスの後ろからヒョイと顔を出して言った。

 ロッカータ:「ば、バカな!?レベル15の自称勇者を食い殺した猛者だぞ!?」
 クリス:「一応、私のレベルもそれくらいなんだけどね?計算間違えてない?」
 ガメツィン:「この役立たず!オマエはクビだ、バカモン!」
 ロッカータ:「そんな殺生な!」
 イリーナ:「あと、あんた達、盗賊団に依頼して、女性の服とか盗ませていたみたいだけど、もしかして、これが目的?」

 イリーナは普段細くしている目を開き、緑色の瞳で2人の政治家達をロックオンしながら言った。
 手に持っているのは、何かの書類。
 既にクシャクシャにはなっているが、別に破れていたりはしていない。
 判読は可能である。

 ガメツィン:「そ、それは!?」
 マリア:「ミッドガード共和国のエージェントとのやり取りが書かれた書類だ。これはどういうことだ?」
 ガメツィン:「か、返せ!」

 ガメツィン魔界共和党総務副理事は慌てて稲生達の所に走って来た。
 が、その動きはクリスの長剣によって止められた。
 と、その時だった。
 ドアの外からドドドドと何か大勢の者達がやってくる音がした。

 ロッカータ:「おおっ!応援だ!」
 ガメツィン:「本当か!?でかした!」

 応援は応援でも、それはガメツィンの味方ではなく……。

 横田:「よーし、2人とも逮捕する!6番街における女性服窃盗の容疑、ミッドガード共和国へのスパイ容疑、そして何より重大な罪が……」
 警備兵A:「理事殿!理事殿の盗品が発見されました!」
 横田:「クフフフフ……!私の『JKパンティ秘蔵コレクション』の窃盗容疑!!これだけは……これだけは絶対に許せません!クフフフフ……市中引き回しの上、打ち首獄門です……!」
 稲生:「ちょっと待てーい!」
 横田:「ひっ捕らえろ!」

 ガメツィンとロッカータは横田率いる治安部隊により、簡単に拘束された。

 横田:「ここで稲生さん達に会えるとは……」
 稲生:「人間界でしばらく顕正会員やってるんじゃなかったの?」
 横田:「やっていくうちに、私はこっちで活躍するべきだと思ったのです。なかなか怨嫉が激しくてですね……クフフフフ……」
 稲生:「顕正会の怨嫉なんて、原因はっきりしてるじゃん」
 横田:「私の場合、功徳でこの歳になっても毛がフサフサなのです」
 稲生:「それで?」
 横田:「報恩坊のトチロ~にそれを怨嫉されているようなのです」
 稲生:「き、気のせいじゃない?」
 警備兵B:「失礼します!館内にいた関係者全員の捕縛が完了しました!」
 横田:「クフフフフ……ご苦労様です。さっさと役所に連れて行きますよ。ああ、あと、ここにある証拠品の押収もお願いします。クフフフフ……」
 警備兵B:「了解しました!」
 稲生:「ねえ、横田理事」
 横田:「何でしょうか、稲生さん?」
 稲生:「申し訳ないけど、ここにあるクリスの下着とマリアさんの服一式、それと先生の下着は回収させてもらえないですか?」
 横田:「ああ、いいでしょう。どうせこいつら、ミッドガードへのスパイ容疑と私の秘蔵コレクションを盗んだ罪で死刑は確定ですからね。クフフフフ……」
 マリア:「どうしてこいつら、女性の服を盗んでいたの?」
 横田:「あいつらへの尋問次第ですが、ここのガメツィンも女好きで、よく愛人を作ってはこの屋敷に連れ込んで、あとはもう【18禁】だったそうですね。ところがその愛人の中に、ミッドガードからのスパイがいたようなのです。そのスパイは別の愛人の服を着て変装し、この国の国防に対する重要書類を盗んで行ったというのです。ガメツィンはそれを捜し出す為に女性の服を盗ませていたのでしょう」
 稲生:「本当かなぁ?」
 マリア:「何かウソくさい……」
 横田:「ですが、これは結構信憑性のある話です。そのスパイというのは、マリアンナさんと似た服を着ていたとのことですよ。ええ、その美しいJK制服を……嗚呼……」
 イリーナ:「ということは、ミッドガードのスパイは人間界のヤツってことかしら?」
 横田:「今後の捜査にもよりますが、その公算は大きいかと。クフフフフフ……」

 屋敷の外に出ると、大騒ぎとなっていた。

 警備兵C:「ほら!さっさと馬車に乗り込め!」
 盗賊団A:「いってーな!もっとテイチョーに扱えよ、テイチョーに!」
 盗賊団B:「ジンケンシンガイだぞ!」
 盗賊団C:「テイチョー?ジンケン……?何だそりゃ?」
 ラジオリポーター:「はい、こちら6番街の代官屋敷の前です!先ほど政府の治安部隊がこの屋敷に突入し、中にいた共和党副理事と代官が逮捕されました。容疑としては、ここ最近頻発していた女性の服ばかりを狙った窃盗事件の首謀、そして我が国アルカディア王国への挑発を続ける隣国ミッドガード共和国へのスパイ容疑とのことです。……」
 警備兵D:「ほら、道を開けて!退いて退いて!見世物じゃないぞ!」
 稲生:「何だか凄いことになりましたねぇ……」
 マリア:「人間界でも、あれだけのことをやれば大騒ぎにもなるさ」
 稲生:「確かに……」
 横田:「えー、皆さん」
 稲生:「えっ、なに?」
 横田:「この度の捜査協力、ありがとうございます。今宵は6番街にお泊りとのことで、馬車を用意しました。宿屋まで送らせましょう」
 稲生:「あっ、ありがとう」
 横田:「それと、功労賞をお渡しします。早くて明日の午前中にはお届けするつもりですので、宿屋で待っていてください」
 稲生:「ど、どうも」

 4人は馬車に乗り込んだ。
 容疑者達を乗せた何台もの馬車は粗末な造りながらも、鉄格子だけはしっかりと付いた護送車であった(しかもロングシート)が、こちらは4人用ボックスシートだった。
 もちろん窓には鉄格子ではなく、カーテンが付いている。

 御者:「宿屋はどちらで?」
 稲生:「三星亭です。カブキンシタウンの」
 御者:「かしこまりました」

 御者は馬車を出した。

 イリーナ:「あー、疲れた。明日はゆっくりしようねぇ……」
 マリア:「師匠。寝るのは宿屋に着いてからにしてください」

 そう言いながらマリアも欠伸をした。

 クリス:「私も盗品を取り返せたら、何だか安心して凄い睡魔だ。着いたら起こしてくれ」

 クリスが盗まれたのは胸当ての下に着けるスポプラと、股当ての下に着けるビキニショーツだけではなく、綿入れも入っていた。綿入れは日本の襦袢とはちがい、ノースリーブのワンピースのようなデザインである。

 稲生:「あ、うん」

 全員ウトウトすると、何故か却って目が冴える稲生。
 仕方無いので、彼は到着するまでスマホいじりで過ごした。
 隣でうたた寝し、時折寄り掛かって来るマリアの体を受け止めながら。
コメント (3)
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