報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「たかつえスキー場に到着」

2022-02-23 20:07:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日06:30.天候:晴 福島県南会津郡南会津町高杖原 会津高原たかつえスキー場]

 バスは6時に会津高原尾瀬口駅を出発した。
 先頭は一般客を乗せた2台であるが、そのうち1台は別の道に行った。
 私達はこれから会津高原たかつえスキー場という所に向かうのだが、シャトルバスは他にだいくらスキー場行きがあり、そちらへ向かうバスだろう。
 私達を乗せた東京中央学園の貸切バス3台は、その後ろを行く。
 そして、最後に聖クラリス女学院のバス2台が出た。
 両脇に高く積もった雪壁の中をバスは進む。
 豪雪地帯とはいえ、国道ということもあり、除雪はちゃんとされているようだ。
 駅から30分ほど走って、バスはたかつえスキー場へと到着した。
 さすがにこの時間になると、外も少しは明るくなってくる。
 但し、まだ薄暗いのは曇っているからだろう。
 一応、天気予報では昼には晴れることになっているが……。

 リサ:「先生、お腹空いた」

 後ろの席からリサが顔を覗かせた。

 愛原:「分かった。確か、スキー場内のレストハウスで朝食が出るはずだ。多分、スキーはそれからだろう」

 バスは駐車場に到着した。

 愛原:「大沢さん、やはり朝食はあの建物の中で?」
 大沢:「そうです。朝食サービス付きなので」
 愛原:「朝食はバイキングですか?」
 大沢:「そうです」
 絵恋:「聞いた、リサさん?朝食はバイキングですって」
 リサ:「おー!」
 愛原:「皆の分を食べ尽くすなよ」

 バスの床下の荷物室から荷物を降ろす手伝いをしていると、遅れて聖クラリス女学院のバスも到着した。

 男子生徒A:「知ってるか?聖クラリスって、可愛いコいっぱいいるらしいぞ?」
 男子生徒B:「ホントか?」
 男子生徒C:「ちょっと声掛けてみようかな」

 こういうこともあるので、特に女子校は男子校や共学校と混在させることはないと聞いたことがあるのだが、聖クラリス女学院は違うのだろうか。
 あそこも御嬢様学校で、『悪い虫』には特に警戒するような学校だと思うのだが。
 反面、同じ女子には甘く、それが日本版リサ・トレヴァー『1番』の侵食を許してしまった感がある。

 教師:「オマエ達、何言ってる。他校の人に迷惑を掛けたりしたら、内申に響くぞ」
 男子生徒A:「冗談っスよ」
 男子生徒B:「でも先生、女子ならいいんスか?」
 教師:「へ?」
 女子生徒A:「あのー、付き合ってる人とか、いますか?」
 高橋:「一応いるぞ」
 女子生徒B:「バレンタインのチョコ、後で受け取ってもらえますか?」
 高橋:「もう過ぎてんだろ」

 イケメン高橋、女子にはモテるモテる。

 教師:「オマエ達!さっさと建物に入れ!」
 愛原:「高橋は連れて来ない方が良かったかなぁ……」
 高橋:「何でですか!?」
 リサ:「わたしが感染させて、兄ちゃんに近づけさせないようにするというのは?」
 愛原:「後で善場主任に怒られるから、やめなさい」
 リサ:「はーい」

 リサも荷物を持って、スキーセンターへと向かって行った。

 女子生徒A:「もしかして、愛原さんのお兄さん?」
 リサ:「一応」
 女子生徒B:「ねぇねぇ!良かったら、お兄さんの連絡先教えて!?」
 リサ:「それは……」
 絵恋:「ちょっと!リサさんが困ってるでしょ!散った散った!」
 小島:「リサさんを困らせちゃダメね」
 淀橋:「魚心あれば水心って言うけどね」
 淀橋:「リサさん、どうしてもって言う場合はどんな条件?」

 リサの取り巻き達も応援に回る。
 全員、リサから老廃物(と多少の血液)を吸い取られて子飼いと化したコ達だ。

 リサ:「愛原先生にパンツ見せてあげて。何なら今すぐ脱いで差し上げて」
 絵恋:「そうよ!それくらいやりなさいよ!」
 愛原:「こらぁーっ!」

 全く、油断も隙も無い。

 リサ:「JKのパンツなんて、そうそう見れるモンじゃないから、それくらいの価値はあると思う」
 愛原:「そういう問題じゃない!」

 こういう感覚がズレている所、リサは人間じゃないって思い出させてくれる。

 愛原:「高橋!収拾がつかなくなる前に、オマエのTwitterとFacebook、教えてやれ!」
 高橋:「はあ……分かりました」
 愛原:「さすがにLINEやメールは早いから、まずはそこからやり取りをしてもらう。いいね?」
 女子生徒A:「やった!」
 女子生徒B:「ありがとうございます!」
 リサ:「後で先生にパンツ……」
 愛原:「いらんっちゅーに!」

 もっとも、高橋のTwitterとFacebook、内容はフツーの報告のはずなのに、何故か犯罪臭がするんだよなぁ……。

 リサ:「それならスパッツからでいいや」
 愛原:「だから!」
 リサ:「そうだ!ブルマー貸してあげから、それ穿いて先生に見せてあげて」
 愛原:「やめなさい!」
 女子生徒A:「ぶ、ぶるまぁ!?」
 女子生徒B:「愛原さん、普段家で何してんの?」
 リサ:「サイトー達と楽しいこと!」
 絵恋:「そう!楽しい事よ!」
 小島:「うん、楽しい事」
 淀橋:「楽しい事……だね」
 女子生徒A:「な、なに?何か怪しいんですけど……」
 女子生徒B:「ブルマってことは、おうちでコスプレイベントとか?」
 リサ:「ちが……」
 愛原:「リサ、この際そういうことにしておけ!」

 私はリサの口を塞いでそう言った。
 しかし、本当にリサは主導権を握るのが上手いな。
 きっと『1番』も、そうして聖クラリス女学院を侵食したのだろう。
 それにしても……。

 愛原:(確かに不自然だな……)

 東京中央学園はこんな感じで楽しくやっているのに、聖クラリス女学院の方はそんな雰囲気が微塵も無い。
 そこの生徒をナンパしようと企んでいた男子生徒も、首を傾げた。

 男子生徒A:「何かさ、全員陰キャじゃね?」
 男子生徒B:「まるでお通夜みたいっスね」
 男子生徒C:「あれも何かのネタ?」
 男子生徒D:「いや、違ェだろ」

 聖クラリス女学院の生徒の制服は、宝塚音楽学校の制服にやや似ている。
 あれをもっと黒くした感じ。
 ミッション系の女子校なので、制服のデザインもシックなものなのだろう。
 恐らく、修道女の衣装をモチーフにしているのではないだろうか。
 無宗教の東京中央学園が、明るい緑色のブレザーを着ているのとは対照的である。
 それにしても、何だか精気が無い。
 夜通し電車の中だったので、疲れているのだろうが、それにしても……と思う。

 愛原:(後で善場主任に連絡しておくかな)

 私は取りあえず朝食を済ませた後、善場主任に報告も兼ねて問い合わせてみることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「会津高原尾瀬口駅」

2022-02-23 16:06:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日05:13.天候:雪 栃木県・福島県境付近 野岩鉄道会津鬼怒川線“スノーパル2355”1号車内]

〔♪♪♪♪。「皆様、おはようございます。電車は只今、野岩鉄道会津鬼怒川線内を順調に走行しております。あと凡そ10分ほどで、終点の会津高原尾瀬口に到着致します。お忘れ物、落とし物をなさいませんよう、お支度をしてお待ちください。……」〕

 到着10分前くらいになり、車内の照明が元の明るさに戻る。
 それまで比較的静かだった車内が、俄かに賑やかになった。

 愛原:「うーん……」

 私はアイマスクを取り、大きく手足を伸ばした。
 久しぶりに乗った夜行列車、慣れないとなかなか眠れないものだな。
 最後に乗った夜行列車は、“ムーンライトながら”か“ムーンライト信州”だったか。
 あれを思い出す。
 閉めていたカーテンを開けると、当然ながらまだ暗い。
 だが、新藤原駅もなかなか山中にある駅だったが、それ以上に山深くなり、その分、雪も大きくなっていた。
 これなら、問題無くスキーもできるだろう。

 高橋:「先生……おはざーっス」
 愛原:「おう、おはよう。よく眠れたか?」
 高橋:「まあまあッス」
 愛原:「そうか」

 私は荷物を降ろすことにした。
 その時、後ろに座っているリサ達の姿が目に入る。

 愛原:「おはよう、リサ。大丈夫か?変化してないか?」

 私はフードを被っているリサの頭を撫でた。
 幸い、角は生えていないようだ。
 たまに寝惚けて第1形態の鬼姿に戻ることがあるので、その用心の為にフードを被っている(絵恋さんなど、一部の人間以外には基本秘密なので)。

 リサ:「ううーん……大丈夫……」

 リサは眠い目を擦りながら言った。

 リサ:「サイトー、起きて。もうすぐ到着」
 絵恋:「ふぁい……」

 私はトイレに行こうしたが、通路まで長蛇の列ができていた。
 しょうがないので、駅のトイレを使うことにした。

[同日05:23.天候:雪 福島県南会津郡南会津町 野岩鉄道・会津鉄道会津高原尾瀬口駅→会津バス車内]

〔♪♪♪♪。「皆様、長らくのご乗車、大変お疲れさまでした。まもなく終点の会津高原尾瀬口、会津高原尾瀬口に到着致します。お出口は、右側です。会津高原尾瀬口駅前広場より、だいくらスキー場、たかつえスキー場へのシャトルバスに接続しております。尚、団体の皆様は団体専用のバスをご利用ください。……」〕

 他にもバスは6時に出発するが、乗車はその30分前からできること、この電車内でも6時まで車内で休めることが案内された。
 引率者の1人として、私達は先に降りて、バスの方に行く必要があるだろう。
 列車は速度を落とし、1面2線のホームに進入した。
 反対側のホームには、既に普通列車が停車していたが、車内の照明は点いていないので、夜間滞泊の車両だろう。
 始発電車として運転されるまで、待機中と思われる。

 愛原:「着いた。じゃあ、降りるか」
 高橋:「はい」

 私達は荷物を持って、ホームに降りた。

 愛原:「うひょ~!」
 リサ:「雨氷?」
 愛原:「違う!寒ッ!新藤原より寒い!」

 天気は小雪が舞う程度だが、時折吹く風が体温を奪うのがすぐに分かる。
 うかうかしていたら、本当に凍死してしまう。

 愛原:「ちょっとトイレ行って来るわ」
 高橋:「俺もお供します。で、一服させてください」
 愛原:「いいだろう。リサ達は、他の皆と一緒に来いよ?」
 リサ:「分かった」

 私と高橋は一足お先に、駅舎へと向かう。
 除雪された構内踏切を渡り、待合室へと向かった。
 駅のトイレを借りた後、高橋は喫煙所に行って一服。
 駅前広場に行くと、そこにはバスが7台止まっていた。
 全てが地元のバス会社のバスだった。
 そのうち、東京中央学園は3台のバスを借りているはずだ。
 で、人数的に聖クラリス女学院は2台借りているだろう。
 そして残りの2台が一般客用。
 うち1台がだいくらスキー場行きで、もう1台がたかつえスキー場行きだろう。
 バスに近づいてみると、ちゃんと団体名と行き先が書かれているので、迷うことはない。
 再び駅に戻ると、妙観光の大沢さんがやってきた。

 大沢:「愛原さん、おはようございます」
 愛原:「おはようございます」
 大沢:「バスの確認をしてくれたんですか」
 愛原:「そうです。あそこに3台固まって止まっているのが、東京中央学園のバスですね」
 大沢:「ありがとうございます。先生方によりますと、乗り遅れ防止の為、駅の外に早めに出て、バスに乗り込むそうです」
 愛原:「なるほど。……あ、そうか。我々は完全に団体貸切だから、一般客のダイヤに合せる必要は無いわけですね」
 大沢:「確かにそうなんですが、バス会社によると、あくまでも“スノーパル”のツアーに合せて乗った方が安くなるので、6時出発のダイヤになるようです」
 愛原:「そうなんですか」

 その辺りの事情は専門外なのでよく分からないが、恐らくこういうことだろう。
 東京中央学園がその名義でバスを貸し切るより、東武のツアーに便乗し、バスの台数を増やして貸し切るという形の方が安くなるのかもしれない。
 そこは旅行会社同士、上手くやったようだ。

 大沢:「もっとも、それ以降は完全に東京中央学園さんの名義での貸し切りになりますが」
 愛原:「でしょうね」

 東武のツアー会社が面倒を見てくれるのは、スキー場までだろう。
 “スノーパル2355”は上りは運転されないので、帰りは銘々に帰ってくださいということだ。
 もっとも、完全に見放しているのではなく、ちゃんと駅までのシャトルバスの運行や、帰りの列車の割引サービスなどは行っているもよう。
 しばらくして、愛国清澄さんが高く掲げた旗を先頭に、寝惚け眼のリサ達がやってきた。

 大沢:「1組さんは1号車、2組さんは2号車、3組さんは3号車に乗ってくださーい!」

 すると中3の時、3組だったリサ達は3号車になるわけか。

 愛原:「大沢さん、PTAの我々は何号車に乗れとか決まりはありますか?」
 大沢:「特に決まってませんね。もともと50人乗りくらいの大型バスに、40人程度の生徒さんや先生が乗られるわけですから、各車両とも席は余る計算なんですよ。まあ、コロナ対策として、それくらいの余裕はあった方がいいでしょう。ましてや、こんな極寒の中、窓を開けて走行するわけにはいきませんから」
 愛原:「確かに。じゃあ、我々は3号車に乗っていいですか?」
 大沢:「いいですよ。それなら私は1号車に乗りまして、愛国は2号車に乗りましょう」
 愛原:「ありがとうございます」

 私と高橋は3号車に乗り込んだ。
 現行車種のいすゞ・ガーラ(日野・セレガとのOEMなので、バスファンからは合わせて『セレガーラ』と呼ばれることもある)に乗り込むと、さすがに車内は暖房が効いて暖かかった。

 大沢:「愛原さん方はこちらへどうぞ」
 愛原:「ありがとうございます」

 同じく眠そうにしている、リサ達の担任教師だった沼沢先生も運転席の後ろの席に座っている。
 彼は私よりも5つくらい年上の痩身で、眼鏡を掛けている。
 担当教科は英語とのこと。
 私と高橋は1A席と1B席へ座った。
 開いている前扉のすぐ後ろだから、多分ここが1番寒い。
 これなら、電車の中で待っていた方が良かったかな。
 後ろの席を見るが、さすがに後ろをサロン席にはしていなかった。
 私が警備会社にいた時に行われていた社員旅行では、サロン席で酒飲み達がドンチャン騒ぎをやっていたものだが。
 朝から興奮冷めやらぬ生徒達もいれば、列車の延長で寝ている生徒もいる。
 リサ達はというと……。

 リサ:「クー……スー……」
 絵恋:「クー……スー……」

 寝てたw
 私達のすぐ後ろの2A席と2B席で。

 愛原:「それにしても……」

 他のバスを見ると、一般客用のバスにも、それらしき乗客がボチボチ乗り始めている。
 だが、聖クラリス女学院の方は、まだ誰も駅から出て来なかった。
 彼女らは、ギリギリまで列車内で待機しているつもりなのだろうか。

 どうやらその通りで、彼女らが乗車を開始したのは、発車の10分前くらいだった。
 もちろん、それもそれでアリなのだが、何故か私は彼女らの行動に違和感を覚えた。

 リサ:「何か変だな……」
 絵恋:「気味悪いよね」

 さっきまで寝息を立てていたリサ達がいつの間にか起き、そんな彼女らを見てそう言った。
 具体的に何が気味悪いのかまでは分からないそうだが、何となく感覚的にそう思ったとのことだ。
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