[3月11日14:46.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
〔「黙祷!」〕
東日本大震災から11年経った。
一緒に黙祷をした高橋は当時、少年院に入っていたそうだし、リサは霧生市のアンブレラ秘密研究所の中だった。
絵恋さんは、まだ幼稚園児だったという。
絵恋さんが幼稚園児だった当時、リサは既に浚われた当時の10歳の年齢のままコールドスリープしていた。
目が覚めたのは、震災が契機。
震災の影響で研究所内が停電に見舞われ、非常電源に不具合があった為にすぐに復電できず、コールドスリープ中の日本版リサ・トレヴァー達がそこから目覚めるきっかけになってしまった。
白井は止む無く計画を変更し、目覚めた『最も危険な12人の巫女たち』を鬼にするべく、様々な実験を開始するに至った。
私はというと……。
愛原:「あまり記憶が無いんだ。顕正号の時を境に、それ以前の記憶が飛び飛びになってて……」
高橋:「顕正号の時に先生は頭を強く打ってしまいましたからね、仕方が無いですよ」
黙祷が終わってから、私達は自分の席に着いた。
リサ:「先生、ジュース飲んでいい?」
愛原:「いいよ」
リサと絵恋さんは、給湯室に移動する。
愛原:「思えば刑務所とか少年院は大地震でも安全かもな?脱走しないように、頑丈にできてるんだから」
高橋:「まあ、そうっスね。あの揺れはハンパじゃなかったんで、死ぬかと思いましたよ」
愛原:「どこの少年院にいたんだ?」
高橋:「新潟っス。まあ、あの時は新潟で色々とやらかしたんで……」
愛原:「そうなのか」
高橋:「まあ、新潟っつっても、新潟市じゃなく、長岡市っスけどね」
愛原:「なるほどな」
一瞬、長岡って京都じゃないのかと思ったが、あれは長岡京市だ。
高橋:「今日は五十嵐元社長の所に行かないんスか?」
愛原:「今日は弁護士の秤田先生と打ち合わせがあるらしい上に、他にも面会者が来る予定らしい。オマエも知ってるかと思うが、弁護士の面会には制限が無いが、それ以外の面会者は1日1組って決まりがあるから、他に面会者がいると今日はダメなんだ」
弁護士の場合は面会と言わず、接見と言うか。
まあ、あのアンブレラ・ジャパンの総責任者が無罪を主張だなんてとんでもないと思うのが人情だが、そんな被告人でも弁護士を雇う権利はある。
高橋:「ああ、確かそうでしたよね」
その時、テレビから速報のアラームが鳴った。
それを見ると……。
愛原:「あっ!」
『大日本製薬社長 斉藤秀樹氏 刑事告訴へ。アンブレラ・ジャパン研究開発部門統括だった白井伝三郎容疑者の共犯であったことが判明』
高橋:「マジっスか!」
リサ:「なに、どうしたの?」
愛原:「な、何でも無い!何でもないんだ!」
私は慌ててテレビの電源を切った。
リサ:「なに?なに?」
愛原:「絵恋よォ、オメェ、もう学校に行けねーぜ?覚悟しとくんだな」
絵恋:「な、なに!?どういうこと!?」
愛原:「高橋!」
高橋:「先生、こういうことは早いうちに話しておいた方がいいですよ?」
愛原:「いや、しかしだな……」
ニュース速報だけで、すぐに話すのは早いのではないかと思った。
リサ:「サイトーが学校に行けなくなるってどういうこと?」
高橋:「家族の誰かがサツの世話になって、ムショに行くとな、仕事してる家族は仕事を失い、学校に通ってる家族は学校を辞めることになるんだよ。覚えときな」
まるで、自分の体験談のように言う高橋。
……いや、もしかしてこいつ、本当にそんな体験を?
愛原:「待て待て。斉藤社長は、まだロシアにいるんだぞ?そもそも警察の手が及ばない所だ。あのハイジャック団みたいに国際指名手配でもされない限りはな」
高橋:「でも先生。バイオテロに関わった連中は、みんな国際指名手配されたり、BSAAにブッ殺されたりしてるじゃないですか」
愛原:「いや、しかしだな……」
BSAAが殺すのは、あくまでBOWやクリーチャーだ。
人間に関しては拘束して、その国の司法機関に引き渡すのみ。
BSAAには司法権は無いからだ。
なので本来は、リサも殺処分の対象なのである。
だがそこを善場主任のバックボーンである国家機関が動いて、まずはBSAA極東支部日本地区本部を通し、うちのリサについては即座の殺処分を見送らせている。
民間レベルでの延命嘆願は聞かないBSAAも、さすがに相手が一国家機関となると、さすがに手は出せないようだ。
極東支部の責任で、うちのリサに関しては『殺処分』ではなく、『監視』ということになっている。
但し、1人でも人間を食い殺した暁には、めでたく『殺処分』にランクアップだ。
愛原:「……おい、まさか、BSAAが動くとでも?」
高橋:「先生らしくない言葉ですね。善場の姉ちゃん達が告訴するってなったら、そりゃあ、BSAAは喜んで捕まえに行くんじゃないスか?」
愛原:「しかし、場所はロシアだぞ?」
ロシアでも極東のウラジオストクだが、あそこはBSAAのどこの支部の管轄になるのだろう?
やはり、極東支部だろうか?
それとも、ロシアそのものは東欧、つまりヨーロッパにあることになっているから、欧州本部か?
いま、欧州本部はだいぶキナ臭いことになっているらしいのだが……。
愛原:「今、ロシアはウクライナとの戦争でピリピリしているから、いくら中立の国連軍でも、介入されるのは嫌がるだろう?」
高橋:「でも、場所はウクライナとは反対側っスからね。ちょっとくらいならいいんじゃないスか?」
愛原:「戦争中じゃなかったら、オマエの言う通りかもしれんが、何しろ戦争中は何でもアリだからなぁ……」
と、そこへ電話が掛かってきた。
モニタを見ると、善場主任からだった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「善場主任。お疲れ様です」
善場:「テレビのテロップ、御覧になりましたか?」
愛原:「見ましたけど、今ちょっと不都合なんで」
善場:「そうなんですか?」
愛原:「何しろ、娘さんの方が今ここにいるんで」
善場:「そうですか。まあ、娘の方も後ほど、調べさせて頂くことになるとは思いますが」
愛原:「どうしてです?彼女は何も悪い事はしていないでしょう?」
善場:「そうですね。そんな証拠はどこにもありません」
愛原:「それじゃあ……」
善場:「普通の人間ではない証拠は見つかりましたけどね」
愛原:「はあ?どういうことですか?」
善場:「後でお見せします。今はまだ、捜査中ですので。これで失礼します」
私の与り知らぬ所で、何かが動いている。
私は呆然している絵恋さんを見た。
例え人間の姿に化けているリサでも、時折化け物の片鱗を見せることがある。
それと比べれば、絵恋さんなんかそんな片鱗を全く見せることがない、れっきとした人間にしか見えないのだが……。
〔「黙祷!」〕
東日本大震災から11年経った。
一緒に黙祷をした高橋は当時、少年院に入っていたそうだし、リサは霧生市のアンブレラ秘密研究所の中だった。
絵恋さんは、まだ幼稚園児だったという。
絵恋さんが幼稚園児だった当時、リサは既に浚われた当時の10歳の年齢のままコールドスリープしていた。
目が覚めたのは、震災が契機。
震災の影響で研究所内が停電に見舞われ、非常電源に不具合があった為にすぐに復電できず、コールドスリープ中の日本版リサ・トレヴァー達がそこから目覚めるきっかけになってしまった。
白井は止む無く計画を変更し、目覚めた『最も危険な12人の巫女たち』を鬼にするべく、様々な実験を開始するに至った。
私はというと……。
愛原:「あまり記憶が無いんだ。顕正号の時を境に、それ以前の記憶が飛び飛びになってて……」
高橋:「顕正号の時に先生は頭を強く打ってしまいましたからね、仕方が無いですよ」
黙祷が終わってから、私達は自分の席に着いた。
リサ:「先生、ジュース飲んでいい?」
愛原:「いいよ」
リサと絵恋さんは、給湯室に移動する。
愛原:「思えば刑務所とか少年院は大地震でも安全かもな?脱走しないように、頑丈にできてるんだから」
高橋:「まあ、そうっスね。あの揺れはハンパじゃなかったんで、死ぬかと思いましたよ」
愛原:「どこの少年院にいたんだ?」
高橋:「新潟っス。まあ、あの時は新潟で色々とやらかしたんで……」
愛原:「そうなのか」
高橋:「まあ、新潟っつっても、新潟市じゃなく、長岡市っスけどね」
愛原:「なるほどな」
一瞬、長岡って京都じゃないのかと思ったが、あれは長岡京市だ。
高橋:「今日は五十嵐元社長の所に行かないんスか?」
愛原:「今日は弁護士の秤田先生と打ち合わせがあるらしい上に、他にも面会者が来る予定らしい。オマエも知ってるかと思うが、弁護士の面会には制限が無いが、それ以外の面会者は1日1組って決まりがあるから、他に面会者がいると今日はダメなんだ」
弁護士の場合は面会と言わず、接見と言うか。
まあ、あのアンブレラ・ジャパンの総責任者が無罪を主張だなんてとんでもないと思うのが人情だが、そんな被告人でも弁護士を雇う権利はある。
高橋:「ああ、確かそうでしたよね」
その時、テレビから速報のアラームが鳴った。
それを見ると……。
愛原:「あっ!」
『大日本製薬社長 斉藤秀樹氏 刑事告訴へ。アンブレラ・ジャパン研究開発部門統括だった白井伝三郎容疑者の共犯であったことが判明』
高橋:「マジっスか!」
リサ:「なに、どうしたの?」
愛原:「な、何でも無い!何でもないんだ!」
私は慌ててテレビの電源を切った。
リサ:「なに?なに?」
愛原:「絵恋よォ、オメェ、もう学校に行けねーぜ?覚悟しとくんだな」
絵恋:「な、なに!?どういうこと!?」
愛原:「高橋!」
高橋:「先生、こういうことは早いうちに話しておいた方がいいですよ?」
愛原:「いや、しかしだな……」
ニュース速報だけで、すぐに話すのは早いのではないかと思った。
リサ:「サイトーが学校に行けなくなるってどういうこと?」
高橋:「家族の誰かがサツの世話になって、ムショに行くとな、仕事してる家族は仕事を失い、学校に通ってる家族は学校を辞めることになるんだよ。覚えときな」
まるで、自分の体験談のように言う高橋。
……いや、もしかしてこいつ、本当にそんな体験を?
愛原:「待て待て。斉藤社長は、まだロシアにいるんだぞ?そもそも警察の手が及ばない所だ。あのハイジャック団みたいに国際指名手配でもされない限りはな」
高橋:「でも先生。バイオテロに関わった連中は、みんな国際指名手配されたり、BSAAにブッ殺されたりしてるじゃないですか」
愛原:「いや、しかしだな……」
BSAAが殺すのは、あくまでBOWやクリーチャーだ。
人間に関しては拘束して、その国の司法機関に引き渡すのみ。
BSAAには司法権は無いからだ。
なので本来は、リサも殺処分の対象なのである。
だがそこを善場主任のバックボーンである国家機関が動いて、まずはBSAA極東支部日本地区本部を通し、うちのリサについては即座の殺処分を見送らせている。
民間レベルでの延命嘆願は聞かないBSAAも、さすがに相手が一国家機関となると、さすがに手は出せないようだ。
極東支部の責任で、うちのリサに関しては『殺処分』ではなく、『監視』ということになっている。
但し、1人でも人間を食い殺した暁には、めでたく『殺処分』にランクアップだ。
愛原:「……おい、まさか、BSAAが動くとでも?」
高橋:「先生らしくない言葉ですね。善場の姉ちゃん達が告訴するってなったら、そりゃあ、BSAAは喜んで捕まえに行くんじゃないスか?」
愛原:「しかし、場所はロシアだぞ?」
ロシアでも極東のウラジオストクだが、あそこはBSAAのどこの支部の管轄になるのだろう?
やはり、極東支部だろうか?
それとも、ロシアそのものは東欧、つまりヨーロッパにあることになっているから、欧州本部か?
いま、欧州本部はだいぶキナ臭いことになっているらしいのだが……。
愛原:「今、ロシアはウクライナとの戦争でピリピリしているから、いくら中立の国連軍でも、介入されるのは嫌がるだろう?」
高橋:「でも、場所はウクライナとは反対側っスからね。ちょっとくらいならいいんじゃないスか?」
愛原:「戦争中じゃなかったら、オマエの言う通りかもしれんが、何しろ戦争中は何でもアリだからなぁ……」
と、そこへ電話が掛かってきた。
モニタを見ると、善場主任からだった。
善場:「お疲れ様です。愛原所長」
愛原:「善場主任。お疲れ様です」
善場:「テレビのテロップ、御覧になりましたか?」
愛原:「見ましたけど、今ちょっと不都合なんで」
善場:「そうなんですか?」
愛原:「何しろ、娘さんの方が今ここにいるんで」
善場:「そうですか。まあ、娘の方も後ほど、調べさせて頂くことになるとは思いますが」
愛原:「どうしてです?彼女は何も悪い事はしていないでしょう?」
善場:「そうですね。そんな証拠はどこにもありません」
愛原:「それじゃあ……」
善場:「普通の人間ではない証拠は見つかりましたけどね」
愛原:「はあ?どういうことですか?」
善場:「後でお見せします。今はまだ、捜査中ですので。これで失礼します」
私の与り知らぬ所で、何かが動いている。
私は呆然している絵恋さんを見た。
例え人間の姿に化けているリサでも、時折化け物の片鱗を見せることがある。
それと比べれば、絵恋さんなんかそんな片鱗を全く見せることがない、れっきとした人間にしか見えないのだが……。