報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「熱海温泉」 2

2022-04-12 20:05:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月19日16:00.天候:晴 静岡県熱海市 KKRホテル熱海2Fプール]

 リサと愛原達は、ホテルのプールで泳いでいた。
 絵恋は青いタートルネックのビキニを着ていたが、リサは黒いスポブラと同じ色のビキニショーツを穿いている。
 まるで、ビーチバレーの水着みたいだ。
 愛原は撮影の為に、完全防水のデジカメを持って来ていた。
 これは普通の画像も撮影できるし、動画も撮影できる。

 リサ:「うーむ……」

 リサは一通りプール内を泳いだり、水底へ潜水したりした。
 泳ぎは特に苦手ではない。
 ただ、学校の水泳の授業を受けたりしていて気づいたことがある。

 リサ:「わたし、水中では無敵じゃない」
 絵恋:「えっ?」
 リサ:「呼吸する為に水の上に出ないといけないし、水の中を速く泳げるわけでもない」
 絵恋:「リサさん、泳ぎは得意そうだけどね」
 リサ:「うん、でも人並み。人間と同じ」

 リサは周りに誰もいないを確かめてから、わざと右手だけ第1形態に変化した。
 爪が長く鋭く伸びて尖る。
 この爪に引き裂かれたり、突き刺されたりしたら、並みの人間はひとたまりも無いだろう。
 ところでしれっと爪だけ変化させているが、この『部分変化』は昔からできていたわけではない。
 Gウィルスが変化したのか、或いはリサ自身が何か身に付けた技の1つなのかは分からないが、一部分だけでも意図的に変化できるようになった。
 この爪で、水を引っ掻いてみる。
 だが、その動きは地上よりも遅かった。
 普通に水圧の抵抗を受けて素早く爪を振り下ろすことができないばかりか、その爪も水の抵抗を受けてミシミシ言う有り様であった。

 リサ:「わたしに勝ちたかったら、わたしを水の中に落とすといいかもね」
 絵恋:「これは意外だったわ」

 リサはすぐに爪をしまった。

 リサ:「通りでオリジナルの大先輩も水の中では現れなかったし、他のリサ・トレヴァー達も水の中で戦おうとしなかったわけだ」
 絵恋:「ゾンビとかもそうなのかしら?」
 リサ:「わたしでさえそうなんだから、ザコゾンビ達もそうだろうね」

 ただ、歩く死体と化しているわけだから、溺死させることはできない。
 例え水中に長時間浸からせて水死させたと思っても、ゾンビなら生きている。
 下水道などの水路に現れたゾンビが、地上のそれらと比べて動きが遅く、ザコさ加減が増しているのはそこに理由があるのだろう。
 もっとも、主人公達も人間である以上、条件は似たようなものであるが。

 リサ:「そう考えると怖くなってきた。上がろう」
 絵恋:「リサさんでも怖いと思うことはあるのね」
 リサ:「そりゃあるって。目の前にロケラン持ったBSAAが現れたら、さすがにわたしもビックリする」

 もっとも、ボスクラスのBOWはそのロケランの弾を弾き返したり、上手く避けたりすることもあるので、ロケランとて完全チートアイテムというわけではない。
 リサもそれを避けられる自信があるが、さすがに被弾したら大怪我するだろうとは思っている(死ぬとは思っていない)。

 絵恋:「ねえ。あっちにジャグジーがあるよ。あっちに入りましょう」
 リサ:「おー、ジャグジー。先生、ジャグジーに行って……って、あれ?」

 いつの間にか愛原の姿が無くなっていた。

 高橋:「ああ、先生か。今、善場の姉ちゃんから電話掛かって来たんでな。撮影係は俺が代理だ」
 リサ:「先生も忙しい」
 高橋:「そりゃそうだ。何せ、先生は一流の名探偵なんだからよ。コナンばりにここで殺人事件が起きても、先生ならすぐに解決してくれるぜ」
 絵恋:「善場さんってことは、お父さん絡みなの?」
 高橋:「いよいよ、タイーホかもしれねーぜ?ああ?」
 絵恋:「…………」
 リサ:「サイトー、ジャグジー入ろ」
 絵恋:「うん」

[同日17:00.天候:晴 同ホテル7F大浴場]

 プールを楽しんだ後で、温泉に浸かる。
 大浴場からは、相模灘の風景を眺めることができる。
 この時間ともなると、日が傾いてくるので、幻想的な光景が広がる。

 リサ:「さすがにここでは水着は着れないから、まっぱだね」
 絵恋:「リサさんと一緒に入る、最後のお風呂かぁ……」
 リサ:「また明日も入ればいい。特に愛原先生は温泉好きだから、明日も入ると思う。このホテルの風呂だけじゃなく、どこかのお風呂とか……」
 絵恋:「それもそうね。……そうだ。リサさん、背中流してあげるね」
 リサ:「ありがとう。だけど今日は、わたしがサイトーの背中を流してあげる」
 絵恋:「ええっ?」
 リサ:「いつも流してもらって悪いから」
 絵恋:「リサさん……」

 2人で洗い場に移動した。

 リサ:「それじゃ、行くよ」
 絵恋:「は、はい」

 リサは絵恋の背中にタオルを当てた。

 絵恋:「も、萌えぇぇぇぇっ!!」
 リサ:「おっ、久しぶりの絶叫」

 リサが背中を流している間、女湯では絵恋の萌え絶叫がこだましていたという。

[同日18:00.天候:晴 同ホテル1Fレストラン]

 夕食はホテル1Fにあるレストランで。
 ここでは和食か中華料理を楽しむことができる。
 今回のプランは和食であった。
 風呂上がりの4人は、全員浴衣に着替えている。

 愛原:「ちょっと、食べながらでいいから聞いてもらいたいんだが……」

 愛原がビールの入ったグラス片手に、絵恋を見た。

 愛原:「ロシアのウラジオストクの病院から、キミのお父さんを連れ去った連中というのは、“青いアンブレラ”で間違いないようだ。ヴェルトロは、同じ町の郊外のアジトにいた所をBSAAに捕獲されている」
 高橋:「“青いアンブレラ”って、アネゴのいる所じゃないですか」
 愛原:「ああ。恐らく高野君も、その部隊にいたのかもな。数少ない日本人隊員で、対象が同じ日本人の斉藤元社長じゃ、駆り出されるに決まってる」
 高橋:「ヴェルトロはダサく捕まったんですね」
 愛原:「本当はヴェルトロが斉藤元社長を捕獲しに行くはずだったのだが、それを“青いアンブレラ”に横取りされた形になったらしい。で、宙に浮いた彼らを待ち受けていたのはBSAAと」
 高橋:「“青いアンブレラ”なら、斉藤元社長を殺したりはしませんかね?」
 愛原:「そうだな。無闇な殺生はしないのが彼らのやり方だから……」
 絵恋:「あの……その“青いアンブレラ”は、父をさらってどうするつもりなのでしょうか?」
 愛原:「分からんな。彼らの声明によると、『バイオテロ組織ヴェルトロから守る為、致し方無く行動した』ということになっている。だが、『すぐに病院に戻す』とも言ってないんだ。高野君なら、どうするかなぁ……」
 高橋:「どうしますかねぇ……」
 リサ:「まあ、殺しはしない?」
 愛原:「しないとは思うけどね」
 高橋:「アネゴならしねぇよな……」

 愛原と高橋は首を傾げた。
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“私立探偵 愛原学” 「熱海温泉」

2022-04-12 15:50:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月19日15:00.天候:晴 静岡県熱海市 KKRホテル熱海]

 チェックインの時間と共にホテルに到着した私達。

 

 リサ:「おおー!凄いホテル!」
 高橋:「姉ちゃん、何つーコネ持ってんだよ……」
 愛原:「ここは国家公務員共済組合連合会経営のホテルだからね、つまりここを安く利用できるのは善場主任だけじゃないってことだよ」
 高橋:「と、言いますと?」
 愛原:「藤野の研究所の守衛さん達も国家公務員だから組合員だし、オマエがさんざんっぱらお世話になった少年院の教官さんや少年刑務所の刑務官さんも国家公務員だから、ここに一っ風呂浴びに来るかもな?」

 少年院の法務職員は刑務官(法務事務官)ではなく、法務教官である。

 高橋:「俺、帰っていいっスか!?」
 愛原:「さよなら。警察のお世話にもなったことの無い善良な俺達は、堂々と入ろうな?」
 リサ:「うん」
 絵恋:「そうですね」
 高橋:「ちょっと待ってくださ~い!」(´;ω;`)

 ホテルの中に入る。
 外観もそうだが、ホテルの中もリゾートホテルらしく、おしゃれな物となっていた。
 経営母体さえ気にしなければ、別にいたって普通のリゾートホテルである。

 高橋:「うう……まさか、ここにネンショー時代のクマヒゲさんとか、少刑時代のタヌキオヤジとかいねーだろうな?」
 愛原:「もしも会ったら、『その節は、お世話になりました!』って挨拶するんだぞ」
 高橋:「『その節は、大きなお世話になりました』……!」
 愛原:「こら!」

 学校の先生に仇名を付ける悪ガキは全国的にいれど、そんな悪ガキ達も一線超えて法務省の世話になると、そこの職員達にも仇名を付けるらしい。

 フロントマン:「いらっしゃいませ。お泊まりでございますか?」
 愛原:「はい。優待券利用です」

 私は善場主任からもらった優待宿泊券を取り出した。
 尚、当作品はフィクションであり、KKRホテルズに優待券が実在するかは【お察しください】。
 共済組合員であれば、組合員価格で泊まれるが、その代わり組合員証の提示を求められる。
 もっとも、この事自体は会員証を発行しているチェーンホテルが、安価な会員価格を設定している代わりに、会員証の提示を求めるのと同じことである。

 フロントマン:「かしこまりました。それでは、こちらの宿泊カードに御記入を……」

 私がチェックインをしている間、高橋は周りを凄く気にしていた。

 愛原:「きれいなホテルですね。とても、国の役人さん御用達とは思えないですよ」
 フロントマン:「もちろん、料金は異なりますが、一般のお客様もご利用になれます」
 愛原:「ここの従業員さん達も、公務員?」
 フロントマン:「全員がというわけではございませんが、例えば私の場合、昔、宮城刑務所で勤務していたことがございます」
 愛原:「元刑務官さんですか」
 高橋:「!!!」

 高橋、慌てて黒いキャップを深く被って顔を隠した。

 フロントマン:「ん?どうかなさしいましたか?」
 愛原:「い、いえ!こいつ、ちょっと人見知りなんです!そ、それで部屋は?」
 フロントマン:「ツインの部屋を2部屋ご希望とのことで、御用意させて頂きました」
 愛原:「ありがとうございます」
 フロントマン:「それでは、そちらのエレベーターをご利用ください」
 愛原:「お世話になります。……ほら、行くぞ」
 高橋:「へ、へへ……」

 先に行ったリサがエレベーターのボタンを押す。
 1階に待機していたこともあり、すぐにエレベーターのドアが開いた。

〔上に参ります〕

 そして、エレベーターに乗り込む。

〔ドアが閉まります〕

 バンとドアが閉まり、エレベーターがスーッと上に上がると……。

 高橋:「ああーっ、ビックリしたーっ!ムショの看守がこんなホテルで働くなよ~っ!」

 高橋は壁に寄り掛かり、帽子を取った。

 愛原:「知り合いか?」
 高橋:「違いますよ!ただ、目つきがどっかで見たことあるなと思ってたら、ムショの看守ですよ!」
 愛原:「ああ。ちょっと目つきが鋭い人だったな」

 宮城刑務所と言ったら、懲役ン十年とか無期懲役、そして併設されている拘置支所には死刑囚も収監されている、凶悪犯収容施設である。
 そんな所で働けば、自ずと眼光も鋭くなるのだろう。
 何しろ、ヤンチャが過ぎた高橋が震え上がるほどなのだから。

〔ドアが開きます〕

 リサ:「着いた」
 愛原:「ああ」

 客室フロアでエレベーターを降り、自分達の部屋に向かう。
 私と高橋の部屋は、リサと絵恋さんの部屋と隣り合わせになっていた。

 リサ:「早速プール入る?」
 愛原:「そうしよう」
 リサ:「サイトーとの思い出の画像、しっかり撮ってね」
 愛原:「分かってるって」

 私達は部屋に入った。

 愛原:「部屋も広くてきれい。しかも、窓から海が見えるぞ!」
 高橋:「あの海に向かってダイブしたいっスねー」
 愛原:「まさか警察に追われた時、ホントにそうしようとしたんじゃないだろうな?」
 高橋:「なもんで、俺はサツの裏かいて山の方に逃げました。海の方に逃げたゾッキー達は悉く捕まりましたが、山の方は手薄だったんで、俺は逃げ切りました」
 愛原:「……ドヤ顔で言う事じゃないからな?それより、水着の準備だ。茶の一杯でも飲んで一息つきたいところだが、10代のエネルギーは凄まじい。荷物を置いたら、すぐに来るような……」

 ピンポーン♪(ドアチャイムの音)

 愛原:「……勢いなんだよな」
 高橋:「『先生の一服のお時間を邪魔すんな!』って追い返しますか?」
 愛原:「待て待て。いいから、さっさと準備しよう。彼女らの最後の思い出作りなんだ」
 高橋:「はあ……」
コメント (1)
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