報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「陰謀論」

2022-04-10 20:08:59 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[現地時間3月19日14:00.天候:曇 ロシア連邦某所]
(※ここでは三人称です)

 斉藤秀樹:「少しは労わってくれんかね?こう見えてもケガ人なんだから」
 高野芽衣子:「さすがに包帯ぐるぐる巻きは、オーバーだったと思いますけどね?」
 斉藤秀樹:「それはそうかもしれんが、打撲くらい負っているんだ。そのケガが治るまで待てなかったのかね?」
 高野:「あなたのケガは表向き、全治1ヶ月です」
 秀樹:「表も裏も無く、これは全治1ヶ月のケガに見えんかね?」
 高野:「しかし、あなたをあのまま普通の病院に入れっ放しにするわけにはいきませんでした。何故なら、私達が行かなければ、ヴェルトロが向かっていたでしょう」
 秀樹:「何故かね?日本の警察や公安は、白井がヴェルトロと手を組んでいたと思っているようだが……確かに一時そうしていたのは事実だ。しかし、だいぶ前に手を引いたはずだ。今頃奴らは、地中海に沈んだかつての閣下様の供養に向かっていることだろう」
 高野:「それが引き返して来るとなったら、どう思います?」
 秀樹:「引き返すったって、地中海とウラジオストクは相当離れているだろう?ましてやロシアはウクライナと戦争中だし、西側諸国から目の敵にされている。向こう側から入国するのは、今は難しいだろう」
 高野:「では、ロシアの友好国経由で入国するというのはどうでしょう?」
 秀樹:「なに?」
 高野:「ヤング・ホーク団がミッションに失敗したことは、とっくにヴェルトロの耳に入っていることでしょう。そして、もう下部組織任せにせず、自分達で捕まえに行こうと思うのは必然です」
 秀樹:「だから、どうして私を捕まえようとするのかね?ヴェルトロは」
 高野:「分かりませんか?五十嵐元社長らが愛原博士から買い付けた化学肥料、あれにはTアビスが含まれていたんですよ。Tアビスはヴェルトロにとっては、特別なウィルス兵器ですからね」
 秀樹:「それで?」
 高野:「2005年にFBCが解体された年、Tアビスを極秘に入手していた組織がありました。そして、そこからそれを買い付けた企業が存在します。大日本製薬ですよ」
 秀樹:「う……」
 高野:「今のヴェルトロはそれに気づいています。そして、Tアビスを何としてでも手に入れる為に、あなたを捕まえようとしているのです」
 秀樹:「今の私は、社長を解任されているよ。私なんぞ捕まえても、何の役にも立たん」
 高野:「しかし、元社長の肩書は残ります。脅迫には使えると思っているでしょう」
 秀樹:「それでキミ達は、私をどうするつもりなのかね?ヴェルトロに引き渡す気か?」
 高野:「ヴェルトロに引き渡すつもりなら、こんなリスキーなことはしません。私達の目的は……」

[日本時間13:20.天候:晴 静岡県熱海市 JR熱海駅→熱海駅前各所]

〔♪♪♪♪。まもなく、熱海に到着致します。東海道新幹線は、お乗り換えです。この電車は、特急“踊り子”13号、伊豆急下田・修善寺行きです。熱海で切り離しとなりますので、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください。熱海を出ますと、伊豆急下田行きは網代に。修善寺行きは、三島に止まります〕

 東京駅から1時間20分で熱海に着く。
 新幹線ならもっと早く着くだろうが、在来線特急ならこんなところか。

 愛原:「よし、降りるぞ。準備してー」

 私は席を立って、荷棚から荷物を下ろした。

 高橋:「先生、まだチェックインの時間には早いですが……」
 愛原:「少し駅前をブラブラしようよ。慰安旅行みたいに、チェックインしてすぐ宴会ってわけじゃないんだし」
 高橋:「なるほど」

〔あたみ~、熱海~。ご乗車、ありがとうございます〕

 電車が熱海駅に到着すると、私達はホームに降り立った。

 愛原:「どうやら、駅前に足湯があるらしい。疲れた足を癒やすのに、ちょうどいいだろう」
 リサ:「先生、プールは?」
 愛原:「チェックインしてからでないと入れないみたいだ。それまで待とう」
 リサ:「なるほど……」

 改札口を出て駅の外に出る。
 すると、駅前広場に“家康の湯”なる足湯があった。
 タオルが必須だが、実は自動販売機で売っている。
 最初は牛乳の自動販売機かと思ったが、違った。
 リサは黒いプリーツスカートを穿いているし、絵恋さんも白いスカートを穿いている。
 高橋のジーンズと違って、裾をまくる必要は無いわけだ。
 もっとも、靴下は脱がないとダメだが。

 愛原:「足湯だけでお腹一杯になりそうだな」
 高橋:「帰りますか?w」
 リサ:「ダメー!」

 足湯に使った後は、アーケード街に入ってみる。

 リサ:「美味しそう……」
 愛原:「リサ、駅弁食べただろ?」
 リサ:「おやつの時間だよ~」
 愛原:「まだ早い!」

 が……。

 女性店員:「熱海ばたーあんパンは如何ですかー!数量限定でーす!」
 愛原:「すいません」
 女性店員:「はい、いらっしゃいませー!何をお探しですかー?」
 愛原:「キミの胸のばたーあんパン2つ、もらえるかな?」
 女性店員:「は?」
 リサ:「先生……

 シャッキーンとリサ、右手の爪を長く鋭く伸ばした。

 高橋:「先生……

 ジャキッと高橋、マグナム44を取り出す。
 そして……。

 女性店員:「ありがとうございましたー!」
 リサ:「モグモグ……」
 高橋:「モグモグ……」
 愛原:「冗談だったのに……」
 絵恋:「もう酔っ払ったんですか。いい加減にしてくださいよ」
 愛原:「ゴメン……」

 リサの爪引き裂き攻撃や、高橋のマグナム発砲は免れたものの、私は2人に奢ることとなった。

 愛原:「駅からバスでホテルまで行こうとしたけど、歩いて行けそうだな」

 アーケード街を抜けると、県道に出る。
 そこを歩けば、宿泊先のホテルに着ける。
 だが、またその途中で……。

 リサ:「おおっ!熱海プリン!」

 今度はプリンをロックオンしたリサだった。

 リサ:「重い物を食べた後は、消化の良い軽いスイーツがいい」
 高橋:「先生、今度はナンパは無しですよ?」
 愛原:「わ、分かってるって。絵恋さんも食べるかい?」
 リサ:「サイトー、先生が奢ってくれるって。一緒に食べよ」
 絵恋:「あ、ありがとうございます」

 観光をするはずが、リサに主導権を取られて食べ歩きになってしまった。
 まあ、確かに食べ歩きも観光っちゃ観光だが……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「春休み旅行出発」

2022-04-10 14:26:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月19日10:57.天候:晴 東京都墨田区菊川 菊川駅前バス停→都営バス東20系統車内]

 昨日とは打って変わって好天の東京。
 私と高橋、そしてリサは予定通り、出発した。
 まずは鉄道乗車駅である東京駅に向かう。
 遠回りで所要時間は掛かるものの、乗り換え無しで東京駅に行けていたので、私は重宝していたのだが……。

 愛原:「うー……。今年度末を以って廃止かぁ……」

 バス停には東20系統廃止のお知らせが張られていた。
 普段は1時間に1~2本という、都営バスでも屈指のローカル線ではあるし、確かにラッシュ時を除けば車内も空いている状態ではあった。
 しかし、これが民営のバスならまだしも、公営のバスで廃止が決定されるとは……。
 どこか、民間のバス会社がコミュニティバスとして継承してくれないだろうか。

〔ピンポン♪ まもなく、バスが参ります〕

 バス接近の自動放送が流れる。
 そして、いつものノンステップバスがやってきた。

 愛原:「お願いします」

 前扉からバスに乗り込み、後ろの席に向かう。
 確かに車内は空いてはいたが、それでも10人くらいは乗っているし、このバス停で更に乗客は増やしたので、けして寂しいわけではないと思うのだが……。
 現に1番後ろの席には座れなかったので、高橋とリサで2人席に座ってもらい、私はその前の席に座ったくらいだ。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは乗客を増やして発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは東京都現代美術館、日本橋経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます〕

 愛原:「リサ、絵恋さんは電車に乗ったのかな?」
 リサ:「うん。熱海行きに乗ったって」
 愛原:「そうか」
 高橋:「そのまま現地集合にしちゃえばいいんじゃないスか?」
 愛原:「オマエなぁ……」

 取りあえず、一旦改札口の外には出て来てもらって、そこでキップを渡すことになるだろう。

 リサ:「丸の内北口に来てもらえばいい?」
 愛原:「ああ。そうしてもらってくれ」
 リサ:「分かった」

 リサは絵恋さんにLINEを送った。
 私も善場主任に出発報告のメールを送ったが、今のところまだ返信は無い。
 さすがに今日は休んでいるのか、或いは斉藤社長がヴェルトロらしき戦闘組織に連れ去られたので、その情報収集で忙しいかのいずれかだろう。

[同日11:30.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京駅丸の内北口です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください」〕

 バスは渋滞にハマることもなく、だいたい定刻通りに到着した。
 都営バスは他の民営のバス会社に比べると、定時運転率は高い。
 中扉からバスを降りて、待ち合わせ場所の丸の内北口に向かう。
 丸の内側の赤レンガ駅舎は観光スポットになっており、ざっと見ただけでも、何組かの旅行客がスマホを向けて撮影をしている。
 これはこの丸の内側だけに限らず、ここよりは地味な日本橋口でも見られる。
 中に入ると、改札口の横に絵恋さんが立っていた。

 リサ:「サイトー、おはよう」
 絵恋:「リサさん、おはよう。今日はよろしくね」
 リサ:「よろしくー」
 愛原:「それじゃ早速、キップを配ろう」
 リサ:「先生、サイトーと隣にして」
 愛原:「分かってるよ」

 まあ、席順はほぼ自動的に決まる。
 自動改札機を通ると、駅構内は賑わっていた。
 蔓延防止の正式解除は週明け最初の平日なのだが、既に私達を含めてフライングしている感じだ。
 だが、それにも理由がある。
 その理由は、後ほど判明するので説明は省く。

 リサ:「先生、12時発ってことは、駅弁買っていいよね?」
 愛原:「もちろんだ。早速、買いに行こう」

 というわけで、改札内コンコースにある駅弁売り場へ……。

 愛原:「俺は東京弁当にするか」
 高橋:「先生、幕の内系お好きですね」
 愛原:「そうか?たまに、別の物を買う時はあるが……。こういうのでいいんだよ、こういうので」
 高橋:「はあ……」
 愛原:「別にオマエは好きなの頼んでいいよ?」
 高橋:「いえ、俺も同じので」
 リサ:「わたしは『牛すきと牛焼肉弁当』。サイトーは?」
 絵恋:「わ、わたしもリサさんと同じので」
 リサ:「ん、分かった」

 駅弁を購入した後はホームへ。
 東海道本線が到着する9番線に、まだ列車は入線していなかった。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の9番線の列車は、12時ちょうど発、特急“踊り子”13号、伊豆急下田・修善寺行きです。1号車から9号車が伊豆急下田行き、10号車から14号車が修善寺行きです。……〕

 高橋:「先生、何号車ですか?」
 愛原:「14号車だ。最後尾だな」

 これもBSAAとの……。
 14号車のところまで歩いて行く途中、10番線に上野東京ラインからの普通列車、小田原行きが到着した。
 この列車は後ほど、私達が乗る特急に追い抜かれることになる。
 私が“踊り子”には車内販売が無いことを伝えると、リサは途中の自動販売機でお菓子を購入していた。

[同日11:50.天候:晴 JR東京駅・東海道本線ホーム→4033M列車14号車内]

〔まもなく9番線に、当駅始発、特急“踊り子”13号、伊豆急下田・修善寺行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。……〕

 ホームに接近放送が鳴り響く。
 品川方向から、回送で列車がやってきた。
 かつては中央本線の特急“かいじ”や“あずさ”で運転されていた車両を改造したものである。

〔「1号車から9号車が伊豆急下田行き、10号車から14号車が修善寺行きです。全車両指定席で、自由席はございません。お手持ちの特急券の号車番号をお確かめの上、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください」〕

 列車が所定の停車位置に到着すると、ホームで待機していた車掌が乗務員室に乗り込んだ。
 そして……。

〔「……準備できましたら、ドア扱い願います」〕

 乗降ドアが開いて、私達は列車に乗り込んだ。

〔♪♪♪♪。ご案内致します。この電車は特急“踊り子”13号、伊豆急下田・修善寺行きです。前9両、1号車から9号車が伊豆急下田行き。後ろ5両、10号車から14号車が修善寺行きです。……〕

 新幹線の自動放送と同じ男性声優の放送が流れる。

 愛原:「ここだな」

 私達の席は、進行方向左側であった。
 前の席に私と高橋、その後ろにリサと絵恋さんが座る。
 本当は向かい合わせにしてワイワイやりたいところだが、コロナ禍でそれは自粛が呼び掛けられている。
 それはまん防が解除されても同じようだ。
 もっとも、その方がテーブルが使えるので良いことは良いのだが。
 私は荷物を荷棚に起き、テーブルを出すと、その上に駅弁やお茶を置いた。

 リサ:「おおっ、この電車もWi-Fi入るー」
 絵恋:「それは良かったわね」

 私もWi-Fiを使わせてもらうことにし、それでニュースサイトを見てみる。
 相変わらず斉藤元社長がどこに連れ去られたのかは不明だが、少なくとも速報として、『日本人収容のウラジオストク市内総合病院襲撃事件、実行犯は“青いアンブレラ”か?』とあった。
 “青いアンブレラ”が犯人とは……。
 ヴェルトロなら何となく動機は想像できるが、“青いアンブレラ”が斉藤元社長を連れ去る理由とは?
 想像がつかなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする