報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「仙台での調査、終わり」

2023-04-17 20:37:46 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日16時00分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区春日町 せんだいメディアテーク4階仙台市民図書館]

 リサ「あった!あったよ!」
 愛原「あったか!?」

 50年前の新聞記事を図書館で探していたところ、リサが見つけた。

 リサ「これじゃない!?」
 愛原「これは……」

 『未明の火災、3棟焼く!!』『火元の家屋から焼死体数名 家の住人か?』
 という見出しが目立っていた。
 日付は7月15日になっているから、確かに夏休み直前である。
 仙台市の小中学校は7月の下旬(概ね20日から25日までのいずれか)に夏休みに入り、8月の下旬(概ね8月25日前後)までである。
 東京のように8月末までではない。

 愛原「夕刊は無いかな?もしかしたら、続報が出ているかもしれない」
 リサ「ダメ。15日は日曜日だから、夕刊が無い」
 愛原「そ、そうか。それなら、16日の朝刊だ」

 私は16日の朝刊を探した。

 愛原「これは……!」

 さすがに1日経つと詳細な情報が明らかになるのか、もう少し詳しく載っていた。
 被害者の情報を詳しく報道するのは、今も昔も変わらないようだ。
 焼死した家族だけではなく、生き残った斉藤玲子の顔写真まで載っているくらいだ。
 その写真は、卒アルに載っていた物に酷似していた。
 斉藤玲子は無傷だと思われていたが、煙を吸ったということで、病院には運ばれたらしい。
 それなら当時、担任の小松先生は病院には……行かなかったのだろうか。
 いや、学校に連絡が行くのが遅かったのか?
 残念ながら、その後は忘れられたのか、もうこの火災に関する記事は無かった。
 記事を読むと、火元は台所からだとされているが、出火原因は不明とされている。
 今よりも捜査能力は劣っていただろうが、それでも分からなかったのか。

 愛原「よし。これをコピーしよう」
 リサ「いいの?」
 愛原「図書館では、保管している図書のコピーサービスをやっているんだよ。著作権法においても、図書館で閲覧できる図書においては、それをコピーしても良いことになっているんだ。だからこれは、法律でも認められている当然の権利なんだよ」
 リサ「そうなんだ!」

 コピーは合法だが、有料である。
 そして、コピーをする際に改めて記事を読んだ時、私は新聞を落としそうになった。
 顔写真の所に名前が書いてあるのだが、改めて死んだ斉藤玲子の親族の名前を見て驚いたのだ。

 愛原「白井だ……!」
 リサ「えっ!?」

 名字が白井になっていたのである。
 とはいえ、この中に白井伝三郎がいたわけではない。
 だが、もしかすると、白井伝三郎の親族ではなかったのか?
 そう思った。

 愛原「まさか、ここで繋がっていたとは……」

 もしかすると、白井伝三郎がダイレクトに狙っていたのは上野医師ではなく、斉藤玲子だったのか!?
 まだ中学生の少女をダイレクトに狙うわけがない。
 しかし、上野医師との接点が無いと思っていたら……。
 斉藤玲子をダイレクトに狙っていた理由がちゃんとあった!

[同日16時45分 天候:曇 同地区 せんだいメディアテーク→同区立町 ヤマト運輸仙台国分町営業所]

 善場「でかしました!さすがは愛原所長です!」

 電話で報告すると、善場主任も喜んでくれた。

 愛原「明日、コピーした新聞記事をお持ちします」
 善場「いえ、できればすぐにでも送って頂けると助かります」
 愛原「FAXですか?」
 善場「それだと画像が鮮明でない可能性がありますので、所長がお持ちのコピーをそのまま送ってください」
 愛原「今から郵便ですと、レターパックでも、明後日以降とかになりそうですが……」
 善場「宅配便で、1番速いので送ってください。料金は後でお支払いします」
 愛原「わ、分かりました」

 そう都合よく宅配便の営業所があるのかと思って調べてみると、徒歩圏内にヤマト運輸の営業所があることが分かった。
 そこに直接持ち込めば、早く届けてくれるだろう。
 私はトイレを済ませて戻って来たリサを連れて、仙台市民図書館をあとにした。

 リサ「トイレ、きれいだった」
 愛原「それは良かった」

 春日町交差点から晩翠通りを南下する。
 仙台市出身の詩人、土井晩翠から取られた名前だ。
 “荒城の月”の作詞者でも有名で、仙台市地下鉄の駅構内では、毎時、時報代わりにそのインストゥルメンタルが流されている。
 それからKKR東北公済病院の前の交差点を右に曲がった路地の途中に、ヤマト運輸の営業所はあった。

 愛原「書類を送りたいんですが、梱包材が無くて……」
 スタッフ「それなら宅急便コンパクトがいいですよ」
 愛原「そうですか。できれば明日の午前中に届けてもらいたいのですが……」
 スタッフ「はい、大丈夫です」

 さすがだ!
 書類は郵便のレターパックみたいな梱包材に入れられた。
 但し、時間指定できるだけあって、料金はさすがにそれよりは高かったが。
 といっても、バカ高いわけではない。

 スタッフ「それではお預かりします」
 愛原「よろしくお願いします」

 私は送り状の控えを受け取って、営業所を出た。
 これは領収証の代わりにもなるので、取っておく。

 愛原「よし。取りあえず、帰るとするか」
 リサ「うん」

[同日17時05分 天候:曇 同区大町 仙台市地下鉄大町西公園駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 

 ヤマト運輸の営業所から、最も近い地下鉄東西線の駅は大町西公園駅である。
 そこから地下鉄で帰ることにした。

〔1番線に、荒井行き電車が、到着します〕

 東行きホームに、小型車両4両編成が到着する。
 席は空いているものの、そこそこ乗っているのは、今日は日曜日で、始発駅の八木山動物公園からの行楽客が多いからだろう。
 駅名の八木山動物公園だけでなく、副駅名にもなっている八木山ベニーランドという遊園地の最寄り駅でもある。
 座席の真ん中にリサと隣同士で座った。

〔1番線から、荒井行き電車が、発車します〕

 すぐに短い発車サイン音が鳴って、ホームドアと車両のドアが閉まる。
 線内でも乗降客数が少ないということもあり、停車時間はそんなに取られていないようである。
 駆け込み乗車もなく、電車はドアを再開閉することなく、すぐに発車した。

〔次は青葉通一番町、青葉通一番町。藤崎前です〕

 私は母親にLINEを送った。
 既に高橋は客間で寝込んでおり、夕食は18時からだという。
 地下鉄に乗ったので、余裕でその時間までには帰れると伝えておいた。

 母親「リサちゃん、お肉大好きでしょう?生協に行って、ステーキ肉買って来たの。今夜はそれだから」

 という返信が返って来た。
 同じく『魔王軍』メンバーとLINEのやり取りをしているリサに……。

 愛原「今夜はステーキだって」

 と耳打ちすると、動揺してスマホを床に落とすほどだった。
 高橋の方はさすがに高熱で食欲は無いものの、今は病院でもらった薬を飲んで眠っているとのことである。
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“私立探偵 愛原学” 「仙台での現地調査」

2023-04-17 11:30:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月6日14時18分 天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅西口バスプール→仙台市営バス411系統車内]

 仙台駅西口にあるバスプールから、路線バスに乗り込む私とリサ。
 乗る場所こそ違えど、実は往路の時に乗ったバス路線の逆方向である。
 そして、車種こそ違えど、大型のワンステップバスがやってきた。
 これはSuicaやPasmoで乗れるので、それで乗る。
 後ろの2人席に座るが、またしてもリサは私に密着しようとする。
 生理前でムラムラしているとか、そういうことじゃないだろうな?
 パーカーのフードを被っているのは、鬼の角が出ているからだろう。

〔発車致します。ご注意ください〕

 バスはそこそこの乗客を乗せると、バスプールを発車した。
 因みに始発停留所はこのバスプールではなく、北西部にある交通局(木町通車庫)である。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ 毎度、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは411系統、三百人町、若林区役所前経由、薬師堂駅行きです。次はJR東日本前、JR東日本前でございます。【中略】日蓮正宗佛眼寺へおいでの方は、東八番丁でお降りになると便利です。次は、JR東日本前でございます〕

 愛原「グーグルマップによると、このバスで宮城の萩大通で降りて、一本、道を入った所が現場らしい」
 リサ「そう……」
 愛原「もう少しで、仙台の家が分かるかもよ」
 リサ「お母さん、大変だったんだね。まあ、わたしもだけど……」
 愛原「だなぁ……。だから、リサには早く人間に戻ってもらって、幸せに……」

 するとリサ、私の顔を覗き込んで言った。

 リサ「幸せになる為の対価が『鬼になること』なんだとしたら、わたしはこのままでいいと思ってるよ?」
 愛原「おい、何言って……」
 リサ「だってぇ……。人間のままだったら、先生に会えなかったじゃない……」
 愛原「オマエなぁ……」

 私はこれ以上、何も言わなかった。

[同日14時35分 天候:曇 仙台市若林区一本杉町 一本杉町東バス停]

〔「一本杉町東です」〕

 私達はこのバス停でバスを降りた。
 バス停名としての『宮城の萩大通』は、次のバス停なのだが、このバス停でも、宮城の萩大通はすぐ目の前である。
 この大通りは片側3車線なのだが、市道である。
 それに対して、私達が通って来た道は片側1車線で歩道も狭い道であるが、県道である為、一本杉町交差点では、格上の県道が優先道路となる。
 つまり、何故か片側3車線の市道の方が青信号が短く、片側1車線の県道の方が青信号が長いという現象が発生している。
 もっとも、県道側とて、昼間は交通量の多い道なのであるが。

 愛原「この道を入って行く」
 リサ「うわっ、狭っ!」

 車が1台入って行けるくらいの路地に入る。
 この道を進んで行き、更に左に曲がったり、右に曲がったりしているうちに……。

 愛原「ん?ここか?」

 グーグルマップで確認したマンションが建っていた。
 マンションというよりは、アパートか?
 3階建てだし。

 リサ「ここがそうなんだ……」
 愛原「よくよく考えたら、あれから50年も経ってるんだ。このマンションだって、後から建てられたものかもしれない」

 築50年にしては新しいからだ。
 見た限り、築10年程度だろう。
 つまり、その前に、焼け跡に何がしかの建物が建っており、それも取り壊されて、新たにここにマンションだかアパートだかが建てられたのだろう。
 分譲ではなく、賃貸だということは見て分かる。
 『入居者募集』の看板が地味だからだ。
 ここで霊感が強いとかあれば、何かしら感じる物があるのだろうが、あいにくと私は霊感なんぞ持ち合わせていないからな……。

 愛原「あ、そうだ」
 リサ「?」
 愛原「もう1軒、付き合ってくれるか?」
 リサ「いいよ」

 あいにくとマンションやその周辺には、50年前の痕跡など無い。
 また、閑静な住宅街ということもあり、なかなか聞き込み調査をすることは難しい。
 そこで、図書館に行ってみることにした。
 1人を除く家族全員が焼死するような不審火であれば、絶対に地元のニュースになったはずだからだ。
 地元どころが、全国紙にも載ったかもしれない。
 そして、図書館なら昔の新聞を保存しているはずだからだ。

[同日14時45分 天候:曇 同区南小泉 仙台市若林図書館]

 幸い図書館は、例の現場から徒歩圏内にある。
 のだが……。

 職員「今から50年前の新聞ですか?」
 愛原「はい。地元の新聞……というと、河北新報になりますかね?それを見たいのですが……」

 窓口で職員に問い合わせてみた。
 全国紙にも載ったであろうが、こういうのは地元の新聞の方が詳しく載っていると思ったのである。

 職員「あいにくですが、当館ではそこまで昔の新聞は保存しておりません」
 愛原「ええっ!?」

 やはり、新聞社に行かないとダメか?

 職員「市民図書館であれば、マイクロ版であれば保存しておりますし、閲覧もできます」
 愛原「マイクロ版?」
 職員「昭和50年以前の原版も保存されてはいるのですが、保存状態状態が悪く、閲覧不可となっております。しかし、それのコピーであるマイクロ版であれば、閲覧可能です」
 愛原「分かりました」

[同日15時30分 天候:曇 仙台市青葉区春日町 仙台市民図書館]

 私はすぐにタクシーを呼び、それに乗って仙台市民図書館に向かった。
 日曜日は18時まで開館しているということで、時間に余裕はあったが、入館時間には間に合っても、肝心の記事を探すのに時間が掛かるだろう。
 だから、急いで行く必要があった。

 リサ「おおっ、広い!」
 愛原「さすがは仙台市図書館の中では、中心的な役割を果たす図書館だ」

 尚、仙台市内には北部の泉区に宮城県立図書館もあって、そちらもかなり広いのだが、いかんせん交通の便が悪い。
 それなら、まだ市街地近くにある市民図書館の方が良いと思ったのだ。

 愛原「探す範囲は1973年の7月前半だ。夏休み直前ということは……」
 リサ「分かった」

 果たして、上手く見つかるかどうか……。
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