[11月6日16時00分 天候:曇 宮城県仙台市青葉区春日町 せんだいメディアテーク4階仙台市民図書館]
リサ「あった!あったよ!」
愛原「あったか!?」
50年前の新聞記事を図書館で探していたところ、リサが見つけた。
リサ「これじゃない!?」
愛原「これは……」
『未明の火災、3棟焼く!!』『火元の家屋から焼死体数名 家の住人か?』
という見出しが目立っていた。
日付は7月15日になっているから、確かに夏休み直前である。
仙台市の小中学校は7月の下旬(概ね20日から25日までのいずれか)に夏休みに入り、8月の下旬(概ね8月25日前後)までである。
東京のように8月末までではない。
愛原「夕刊は無いかな?もしかしたら、続報が出ているかもしれない」
リサ「ダメ。15日は日曜日だから、夕刊が無い」
愛原「そ、そうか。それなら、16日の朝刊だ」
私は16日の朝刊を探した。
愛原「これは……!」
さすがに1日経つと詳細な情報が明らかになるのか、もう少し詳しく載っていた。
被害者の情報を詳しく報道するのは、今も昔も変わらないようだ。
焼死した家族だけではなく、生き残った斉藤玲子の顔写真まで載っているくらいだ。
その写真は、卒アルに載っていた物に酷似していた。
斉藤玲子は無傷だと思われていたが、煙を吸ったということで、病院には運ばれたらしい。
それなら当時、担任の小松先生は病院には……行かなかったのだろうか。
いや、学校に連絡が行くのが遅かったのか?
残念ながら、その後は忘れられたのか、もうこの火災に関する記事は無かった。
記事を読むと、火元は台所からだとされているが、出火原因は不明とされている。
今よりも捜査能力は劣っていただろうが、それでも分からなかったのか。
愛原「よし。これをコピーしよう」
リサ「いいの?」
愛原「図書館では、保管している図書のコピーサービスをやっているんだよ。著作権法においても、図書館で閲覧できる図書においては、それをコピーしても良いことになっているんだ。だからこれは、法律でも認められている当然の権利なんだよ」
リサ「そうなんだ!」
コピーは合法だが、有料である。
そして、コピーをする際に改めて記事を読んだ時、私は新聞を落としそうになった。
顔写真の所に名前が書いてあるのだが、改めて死んだ斉藤玲子の親族の名前を見て驚いたのだ。
愛原「白井だ……!」
リサ「えっ!?」
名字が白井になっていたのである。
とはいえ、この中に白井伝三郎がいたわけではない。
だが、もしかすると、白井伝三郎の親族ではなかったのか?
そう思った。
愛原「まさか、ここで繋がっていたとは……」
もしかすると、白井伝三郎がダイレクトに狙っていたのは上野医師ではなく、斉藤玲子だったのか!?
まだ中学生の少女をダイレクトに狙うわけがない。
しかし、上野医師との接点が無いと思っていたら……。
斉藤玲子をダイレクトに狙っていた理由がちゃんとあった!
[同日16時45分 天候:曇 同地区 せんだいメディアテーク→同区立町 ヤマト運輸仙台国分町営業所]
善場「でかしました!さすがは愛原所長です!」
電話で報告すると、善場主任も喜んでくれた。
愛原「明日、コピーした新聞記事をお持ちします」
善場「いえ、できればすぐにでも送って頂けると助かります」
愛原「FAXですか?」
善場「それだと画像が鮮明でない可能性がありますので、所長がお持ちのコピーをそのまま送ってください」
愛原「今から郵便ですと、レターパックでも、明後日以降とかになりそうですが……」
善場「宅配便で、1番速いので送ってください。料金は後でお支払いします」
愛原「わ、分かりました」
そう都合よく宅配便の営業所があるのかと思って調べてみると、徒歩圏内にヤマト運輸の営業所があることが分かった。
そこに直接持ち込めば、早く届けてくれるだろう。
私はトイレを済ませて戻って来たリサを連れて、仙台市民図書館をあとにした。
リサ「トイレ、きれいだった」
愛原「それは良かった」
春日町交差点から晩翠通りを南下する。
仙台市出身の詩人、土井晩翠から取られた名前だ。
“荒城の月”の作詞者でも有名で、仙台市地下鉄の駅構内では、毎時、時報代わりにそのインストゥルメンタルが流されている。
それからKKR東北公済病院の前の交差点を右に曲がった路地の途中に、ヤマト運輸の営業所はあった。
愛原「書類を送りたいんですが、梱包材が無くて……」
スタッフ「それなら宅急便コンパクトがいいですよ」
愛原「そうですか。できれば明日の午前中に届けてもらいたいのですが……」
スタッフ「はい、大丈夫です」
さすがだ!
書類は郵便のレターパックみたいな梱包材に入れられた。
但し、時間指定できるだけあって、料金はさすがにそれよりは高かったが。
といっても、バカ高いわけではない。
スタッフ「それではお預かりします」
愛原「よろしくお願いします」
私は送り状の控えを受け取って、営業所を出た。
これは領収証の代わりにもなるので、取っておく。
愛原「よし。取りあえず、帰るとするか」
リサ「うん」
[同日17時05分 天候:曇 同区大町 仙台市地下鉄大町西公園駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]
ヤマト運輸の営業所から、最も近い地下鉄東西線の駅は大町西公園駅である。
そこから地下鉄で帰ることにした。
〔1番線に、荒井行き電車が、到着します〕
東行きホームに、小型車両4両編成が到着する。
席は空いているものの、そこそこ乗っているのは、今日は日曜日で、始発駅の八木山動物公園からの行楽客が多いからだろう。
駅名の八木山動物公園だけでなく、副駅名にもなっている八木山ベニーランドという遊園地の最寄り駅でもある。
座席の真ん中にリサと隣同士で座った。
〔1番線から、荒井行き電車が、発車します〕
すぐに短い発車サイン音が鳴って、ホームドアと車両のドアが閉まる。
線内でも乗降客数が少ないということもあり、停車時間はそんなに取られていないようである。
駆け込み乗車もなく、電車はドアを再開閉することなく、すぐに発車した。
〔次は青葉通一番町、青葉通一番町。藤崎前です〕
私は母親にLINEを送った。
既に高橋は客間で寝込んでおり、夕食は18時からだという。
地下鉄に乗ったので、余裕でその時間までには帰れると伝えておいた。
母親「リサちゃん、お肉大好きでしょう?生協に行って、ステーキ肉買って来たの。今夜はそれだから」
という返信が返って来た。
同じく『魔王軍』メンバーとLINEのやり取りをしているリサに……。
愛原「今夜はステーキだって」
と耳打ちすると、動揺してスマホを床に落とすほどだった。
高橋の方はさすがに高熱で食欲は無いものの、今は病院でもらった薬を飲んで眠っているとのことである。
リサ「あった!あったよ!」
愛原「あったか!?」
50年前の新聞記事を図書館で探していたところ、リサが見つけた。
リサ「これじゃない!?」
愛原「これは……」
『未明の火災、3棟焼く!!』『火元の家屋から焼死体数名 家の住人か?』
という見出しが目立っていた。
日付は7月15日になっているから、確かに夏休み直前である。
仙台市の小中学校は7月の下旬(概ね20日から25日までのいずれか)に夏休みに入り、8月の下旬(概ね8月25日前後)までである。
東京のように8月末までではない。
愛原「夕刊は無いかな?もしかしたら、続報が出ているかもしれない」
リサ「ダメ。15日は日曜日だから、夕刊が無い」
愛原「そ、そうか。それなら、16日の朝刊だ」
私は16日の朝刊を探した。
愛原「これは……!」
さすがに1日経つと詳細な情報が明らかになるのか、もう少し詳しく載っていた。
被害者の情報を詳しく報道するのは、今も昔も変わらないようだ。
焼死した家族だけではなく、生き残った斉藤玲子の顔写真まで載っているくらいだ。
その写真は、卒アルに載っていた物に酷似していた。
斉藤玲子は無傷だと思われていたが、煙を吸ったということで、病院には運ばれたらしい。
それなら当時、担任の小松先生は病院には……行かなかったのだろうか。
いや、学校に連絡が行くのが遅かったのか?
残念ながら、その後は忘れられたのか、もうこの火災に関する記事は無かった。
記事を読むと、火元は台所からだとされているが、出火原因は不明とされている。
今よりも捜査能力は劣っていただろうが、それでも分からなかったのか。
愛原「よし。これをコピーしよう」
リサ「いいの?」
愛原「図書館では、保管している図書のコピーサービスをやっているんだよ。著作権法においても、図書館で閲覧できる図書においては、それをコピーしても良いことになっているんだ。だからこれは、法律でも認められている当然の権利なんだよ」
リサ「そうなんだ!」
コピーは合法だが、有料である。
そして、コピーをする際に改めて記事を読んだ時、私は新聞を落としそうになった。
顔写真の所に名前が書いてあるのだが、改めて死んだ斉藤玲子の親族の名前を見て驚いたのだ。
愛原「白井だ……!」
リサ「えっ!?」
名字が白井になっていたのである。
とはいえ、この中に白井伝三郎がいたわけではない。
だが、もしかすると、白井伝三郎の親族ではなかったのか?
そう思った。
愛原「まさか、ここで繋がっていたとは……」
もしかすると、白井伝三郎がダイレクトに狙っていたのは上野医師ではなく、斉藤玲子だったのか!?
まだ中学生の少女をダイレクトに狙うわけがない。
しかし、上野医師との接点が無いと思っていたら……。
斉藤玲子をダイレクトに狙っていた理由がちゃんとあった!
[同日16時45分 天候:曇 同地区 せんだいメディアテーク→同区立町 ヤマト運輸仙台国分町営業所]
善場「でかしました!さすがは愛原所長です!」
電話で報告すると、善場主任も喜んでくれた。
愛原「明日、コピーした新聞記事をお持ちします」
善場「いえ、できればすぐにでも送って頂けると助かります」
愛原「FAXですか?」
善場「それだと画像が鮮明でない可能性がありますので、所長がお持ちのコピーをそのまま送ってください」
愛原「今から郵便ですと、レターパックでも、明後日以降とかになりそうですが……」
善場「宅配便で、1番速いので送ってください。料金は後でお支払いします」
愛原「わ、分かりました」
そう都合よく宅配便の営業所があるのかと思って調べてみると、徒歩圏内にヤマト運輸の営業所があることが分かった。
そこに直接持ち込めば、早く届けてくれるだろう。
私はトイレを済ませて戻って来たリサを連れて、仙台市民図書館をあとにした。
リサ「トイレ、きれいだった」
愛原「それは良かった」
春日町交差点から晩翠通りを南下する。
仙台市出身の詩人、土井晩翠から取られた名前だ。
“荒城の月”の作詞者でも有名で、仙台市地下鉄の駅構内では、毎時、時報代わりにそのインストゥルメンタルが流されている。
それからKKR東北公済病院の前の交差点を右に曲がった路地の途中に、ヤマト運輸の営業所はあった。
愛原「書類を送りたいんですが、梱包材が無くて……」
スタッフ「それなら宅急便コンパクトがいいですよ」
愛原「そうですか。できれば明日の午前中に届けてもらいたいのですが……」
スタッフ「はい、大丈夫です」
さすがだ!
書類は郵便のレターパックみたいな梱包材に入れられた。
但し、時間指定できるだけあって、料金はさすがにそれよりは高かったが。
といっても、バカ高いわけではない。
スタッフ「それではお預かりします」
愛原「よろしくお願いします」
私は送り状の控えを受け取って、営業所を出た。
これは領収証の代わりにもなるので、取っておく。
愛原「よし。取りあえず、帰るとするか」
リサ「うん」
[同日17時05分 天候:曇 同区大町 仙台市地下鉄大町西公園駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]
ヤマト運輸の営業所から、最も近い地下鉄東西線の駅は大町西公園駅である。
そこから地下鉄で帰ることにした。
〔1番線に、荒井行き電車が、到着します〕
東行きホームに、小型車両4両編成が到着する。
席は空いているものの、そこそこ乗っているのは、今日は日曜日で、始発駅の八木山動物公園からの行楽客が多いからだろう。
駅名の八木山動物公園だけでなく、副駅名にもなっている八木山ベニーランドという遊園地の最寄り駅でもある。
座席の真ん中にリサと隣同士で座った。
〔1番線から、荒井行き電車が、発車します〕
すぐに短い発車サイン音が鳴って、ホームドアと車両のドアが閉まる。
線内でも乗降客数が少ないということもあり、停車時間はそんなに取られていないようである。
駆け込み乗車もなく、電車はドアを再開閉することなく、すぐに発車した。
〔次は青葉通一番町、青葉通一番町。藤崎前です〕
私は母親にLINEを送った。
既に高橋は客間で寝込んでおり、夕食は18時からだという。
地下鉄に乗ったので、余裕でその時間までには帰れると伝えておいた。
母親「リサちゃん、お肉大好きでしょう?生協に行って、ステーキ肉買って来たの。今夜はそれだから」
という返信が返って来た。
同じく『魔王軍』メンバーとLINEのやり取りをしているリサに……。
愛原「今夜はステーキだって」
と耳打ちすると、動揺してスマホを床に落とすほどだった。
高橋の方はさすがに高熱で食欲は無いものの、今は病院でもらった薬を飲んで眠っているとのことである。