報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「次なる調査への準備」

2023-04-22 19:57:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月7日15時29分 天候:晴 東京都港区新橋 JR新橋駅→山手線1562G電車最後尾車内]

〔まもなく6番線を、電車が通過します。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。京浜東北線の快速電車は、当駅には停車致しません。山手線の電車を、ご利用ください〕
〔まもなく5番線に、東京、上野方面行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、有楽町に、停車します〕

 善場主任との話が終わり、私はJR新橋駅にいた。
 事務所に戻るなら、乗り換え無しなら都営バス。
 時間通りに帰りたければ都営地下鉄、急いでいるならタクシーを使うのがデフォである。
 しかし、私には考えがあった。

〔しんばし~、新橋~。ご乗車、ありがとうございます。次は、有楽町に、停車します〕

 20代の若い女性車掌に視線を送りつつ、私は空いている最後尾車両に乗り込んだ。
 そして、先代の車両よりも柔らかい座席に腰かけた。
 ホームからは、賑やかな発車メロディが流れてくる。
 東海道本線のホームではゆったりとしたメロディなのに対し、こちらはせわしない感じのメロディだ。

〔5番線の山手線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 京浜東北線の快速電車に追い抜かれ、私を乗せた山手線電車は、京浜東北線の後を追い掛けるように発車した。
 尚、北行きの快速電車の運行は、これで終わり。
 あとは終電まで、各駅停車のみとなる。

〔次は有楽町、有楽町。お出口は、左側です。地下鉄日比谷線と、地下鉄有楽町線はお乗り換えです〕

 私が山手線で向かう先は、秋葉原。
 善場主任から、今度は斉藤玲子の実家を調査するように依頼された。
 そこで今度は、福島県郡山市までの新幹線のキップを購入しようと思ったのである。
 それなら何も、わざわざ秋葉原まで行かなくても、新橋駅にだって“みどりの窓口”や指定席券売機はある。
 それなのに、どうして秋葉原なのか。
 まあ、何となくそんな気がしただけだ。
 何となく、な……。

[同日15時45分 天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 因みに実家からの連絡によると、高橋の体調は、37度台まで下がったらしい。
 中途半端に動けることもあり、高橋は何としてでも今日中に帰京したいとのことだったが、36度台まで下がってから帰るようにLINEしておいた。
 昨日が38度台、今日が37度台なら、おとなしく寝ていれば、明日には平熱に下がっているだろう。
 病院からは薬を3日分出されたらしいので、それを飲んでおとなしく寝ているようにと申し伝えておいた。
 それから私は、指定席券売機で新幹線のキップを購入した。
 もちろん、リサや高橋の分も入っている。
 領収書をもらうのも忘れない。
 尚、前回の旅費については、先ほどのデイライトの事務所で清算してもらった。

 リサ「せーんせっ!」

 後ろから肩を叩かれた。

 愛原「リサ……」

 振り向くと、学校の制服姿のリサがいた。

 リサ「先生の匂いがしたから、もしかしたらと思ったら、ここにいたね」

 リサはニッと笑った。
 もっとも、ピンク色のマスクを着けているので、口元から覗いているはずの牙は見えない。

 愛原「学校帰りか?」
 リサ「そ。先生も帰りでしょ?一緒に帰ろうよ?」
 愛原「ああ、そうだな」

 私は券売機からキップとお釣と領収書を手にすると、秋葉原駅をあとにした。

[同日16時12分 天候:晴 東京都千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→新宿線1512T電車最後尾車内]

 リサ「お待たせー」
 愛原「じゃあ、行こうか」

 私達は都営地下鉄の岩本町駅に移動した。
 電車に乗る前、リサがトイレに寄って行った。
 それから、ホームに下りる。
 尚、この間、リサは私と腕を組んでいた。
 まるで、『パパ活女子』みたいで誤解されるからやめるように言ったのだが、これだけはリサは頑として聞かなかった。

 リサ「お兄ちゃんがいると邪魔されるからね。いない今のうちだけでもいいでしょ?」

 というのがリサの言い分。
 まあ、あまりに固辞し過ぎて機嫌を損ねてしまい、暴走に繋がったら私の責任になるので、好きにさせることにした。
 こういうのもBSAA等に監視されているはずなのだが、特に何も言われないので、まだ許容範囲であるらしい。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 トンネルの向こうから轟音と強風が吹いてくる。
 編成が長いので、電車も勢い良く入線してくるのだ。
 電車がやってくると、リサの肩まで伸ばした髪がゆらゆら揺れ、短くしているスカートもひらひら靡いた。

〔4番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町、秋葉原〕

 私達は最後尾の車両に乗り込んだ。
 他の鉄道会社の秋葉原駅は比較的賑わっているのだが、そこから少し離れたこの駅は、急行電車が通過するということもあり、あまり賑わっている感じはない。
 もちろん、これから夕方ラッシュが始まれば、もう少し賑わうのだろうが。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 JR東日本の通勤電車と同じ音色のドアチャイムが鳴り、ドアが閉まる。
 東京都交通局の車両だと、そういう音色である。
 京王線から乗り入れてくる電車のドアチャイムは、JR東海の普通列車と同じ音色である。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 電車が走り出した。
 私とリサは隣同士で座れる座席が空いていなかったということもあり、ドアの前に立っていた。
 リサはスマホを出して、『魔王軍』メンバーとLINEのやり取りをしているようだ。
 今は角を引っ込め、耳も人間と同じ形に化けており、これだけ見ると、普通の女子高生のようである。
 日本アンブレラは、こういう少年少女を大量生産して、どこかに売るつもりだったらしいが……。
 どうせ、ロクでもない計画だろう。
 ここにいるリサという成功例はできたが、それが大量生産される前に会社が潰れて良かったと思う。
 もっとも、白井伝三郎には、もっと別の目的があったようだが……。
コメント
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