報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「ペンションの地下」

2025-01-30 20:20:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日22時00分 天候:曇 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階プレイルーム&バー]

 リサがスロットマシーンに興じている。
 オーナーが戻ってくる様子は無いし、窓から外を見ていても、まだパトカーが止まっている状態だ。
 どうする?
 こちらから出向いて、警察と合流しようか?
 そう考えていると……。

 リサ「やった!クイーン・ゼノビア全部揃った!」
 愛原「な、なに?」

 マティーニを飲み終わった私がスロットマシーンに近づくと、船の絵柄が揃っていた。
 他にも浮き輪や錨、舵輪の絵が描かれている。
 もしかして、本当に地中海でバイオハザードを起こした豪華客船“クイーン・ゼノビア”号のカジノにあった物だったのだろうか?
 メダルがジャラジャラと出てくる。
 そこで気づいたのだが、カジノバーでもある以上、VIPルームがあるのではないかと思った。
 壁際には、他にも暖炉がある。
 本当に燃やすのではなく、ただのオブジェであろう。
 私がそちらに注目したのは、ジャラっと鎖が動く音がしたからだ。

 愛原「ここに何かあるのか?」

 私が暖炉の中を覗いてみた。
 ただの飾りの為に、あまり奥行きは無い。
 だが、入って上を見ると、取っ手がぶら下がっているのが分かった。
 鉄製の三角形の吊り革のような形をしている。

 愛原「何だこれ?」

 私が引っ張るとガコンという音がした。

 愛原「ガコン?」

 しかし、目に見える範囲では何も起きていない。

 愛原「何か、変な音がしたが、何かあったか?」
 リサ「ううん」

 リサは首を横に振った。
 一旦暖炉から出たが、特にプレイルーム内でも何か起きたようでもなかった。
 どこか別の所で音がしたらしい。
 だが、この部屋から出るわけにはいかなかったので、探索を続けることにした。

 愛原「どうやら、そのスロットマシーンで勝つと、ギミックを操作できる仕掛けらしい」

 ここが元々、日本アンブレラの施設であったことを思い出した。
 ペンションとしてリニューアルされてからも、ギミックが完全に封印されたわけではないのだろう。
 あのエレベーターが普段停止されているのも、通常の昇降以外に、何か仕掛けが施されているからかもしれない。

 リサ「こっちのトランプゲームは?」
 愛原「よし、やってみよう」

 トランプ台にあるものとは別。
 最近のカジノにもあるそうだが、画面でコンピューター相手にゲームをするというもの。

 ルーカス・ベイカー「今日のお相手は、コイツだぁーっ!」
 愛原「ビックリした!」

 画面一杯に、白人の若い男が目一杯に映し出される。
 その狂気じみた笑顔が、カメラから離れる。
 カメラが動くと、そこには麻袋を被った者が座っていた。
 目の所と鼻の所だけ穴が開いている。

 ルーカス「赤コーナー、ホフマーン!」
 愛原「プロレスか!」
 リサ「これ、何のゲーム?」
 愛原「ブラックジャックらしい」
 リサ「ブラックジャック?」

 リサは目を丸くした。

 リサ「できるの?」
 愛原「何とかな」

 そして……。

 ルーカス「このゲームに勝ったのはァ~?……ミスタぁ~、アイハラぁ~ッ!!」
 愛原「何でコイツはノリがプロレスの司会みたいなんだ?」
 リサ「BSAAに殺された人だよね?」
 愛原「違う。“青いアンブレラ”だ。最後は体に注入した特異菌が暴走してな、“青いアンブレラ”の特別顧問をしていたBSAAのクリス・レッドフィールド氏に倒されたんだ」

 もちろん、画面の中のルーカスは変化前の人間の姿をしているが。

 ルーカス「負けたホフマンはァ~?……残虐切り裂きの刑だぁぁぁぁぁぁっ!!」
 ホフマン「ぎゃああああああああっ!!」
 愛原「おい、これ造ったのどこのメーカーだ!?」

 しかしどこにもラベルが貼られていない。

 ルーカス「このゲームに勝ったミスターアイハラには、次なるゲームにチャレンジしてもらうぜ。今、音がした所をよーく調べてみな。そんじゃ、チャオ!」

 ブツッと画面が消える。
 するとまた暖炉の方から、鎖がジャラジャラと音を立てるのが聞こえて来た。

 愛原「今度は何だ?」

 再び暖炉の中に入る。
 すると、また同じ取っ手が別の所から伸びていた。

 愛原「よし、引っ張ってみるぞ」

 私はそれを引っ張った。
 すると、ゴロゴロと目の前で何か引きずる音がした。
 暖炉の向こうの壁は引き戸になっていて、それが開いたのだ。
 開くと同時に、向こう側の照明がパッと点灯する。

 愛原「よし、行ってみよう」
 リサ「うん」

 そこへ屈みながら入ると、エレベーターになっているのが分かった。
 反対側にも扉がある。
 しかし、先ほど乗ったエレベーターと違い、格子状の扉になっているわけではない。
 普通の鉄扉であった。
 ボタンを見ると、今いる3階と地下3階しかボタンが無い。

 愛原「地下3階があるのか?」

 私はそのボタンを押した。
 すると、今入ってきた小さな扉が閉まり、エレベーターが動き出す。

 愛原「一体、どこへ連れていかれるんだろう?」
 リサ「多分、研究施設だろうね。ハンターとかいたりして?」
 愛原「いやいや。ここもBSAAが訪れているはずだぞ?地下の研究施設だって、捜査されているはずさ」
 リサ「それもそうか」

 オーナーはTウィルスを研究していたというから、まあ、いるとしたらハンターかタイラントか。
 あいにくと武器は持って来てはいないが、ハンターくらいならリサが簡単に勝つし、日本製のタイラントは日本版リサ・トレヴァーの命令で動くことを前提として製造された為、リサの命令なら何でも聞くから危険は無い……はずだ。

 愛原「着いた」

 ガコンと古いエレベーターならではの振動付きで停止した。
 そして、チーンというベルと共に、反対側のドアが開く。

 愛原「これは……」

 エレベーターの明かりに照らされた先は真っ暗だったが、少なくとも研究施設ではないことが分かった。
 本棚がズラリと並んでいることから、書庫、資料室のようである。

 愛原「電気は点くかな?」
 リサ「このスイッチ?」
 愛原「それだ」

 古めかしい上下に操作するタイプのレバーを、リサは下にガチャンと動かした。
 すると、この空間の照明がパッパッと点灯する。
 エレベーターの照明も含めて、ここの照明も蛍光灯だった。
 停電したり、断線しているわけではないことから、今も使用されているのだろうか?
 私達はこの書庫を探索することにした。
 
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“私立探偵 愛原学” 「警察の到着」

2025-01-30 16:15:07 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月1日21時30分 天候:雨 群馬県吾妻郡東吾妻町某所 ペンション『いたち草』3階プレイルーム&バー]

 ジュークボックスからは、相変わらずジャズが流れて来る。
 あの中に入っているのはピアノソロだけではなく、色々と入っているようだ。
 カジノで流れていそうな、アップテンポな曲が流れている。
 日本アンブレラの元社長で、今はペンションのオーナーである五十嵐皓貴氏との会話は進む。

 愛原「ところで、今日の夕食はとても美味しかったです」
 五十嵐「ありがとうございます。お気に召して頂けたようで良かったです」
 愛原「食べていて気付いたのですが、フランス料理のフルコースでありながら、コンセプトは沖縄のようでした。どうして沖縄なんですか?」
 五十嵐「元々あの料理は、サトウ様(斉藤秀樹の偽名)の御注文でした。サトウ様より、『私の次の旅行先、沖縄をモチーフにした料理にしてほしい』という御注文を受けまして……」
 愛原「『次の旅行先』!?」
 五十嵐「はい」

 なるほど!
 斉藤元社長は、次の逃亡先の暗示の為にあの料理を出させたのか。
 だったら最初から沖縄料理をオーナーに作らせて……というのもあるが、あからさま過ぎるし、何よりオリジナルの食材を集めないといけないからというのもあるか。
 しかし、今から沖縄に行くのか?
 無理だろう。
 どこかで夜明かしをして、それから沖縄に行くものと思われる。
 こうしてはいられない!
 私は席を立った。

 愛原「失礼!大至急、今の情報を私のクライアントさんに伝えなければなりません!電話を掛けてきます!」
 五十嵐「電話なら、そこのを使ってください」
 愛原「えっ?」

 厨房の入口の所に、壁掛けタイプの固定電話があった。
 1階フロントや301号室にあったようなアンティーク型ではなく、普通のプッシュボタン式である。

 五十嵐「他に、白井伝三郎の事とか、聞きたくないですか?」
 愛原「今は斉藤早苗という少女の体を使っているようですね」
 五十嵐「なに?もうそこまで行ったのか。……結局、ヤツの野望は成功したことになりますな」
 愛原「沖縄で私達の前に現れた後、また行方不明になったんです。クライアントさんによれば、沖縄本島から出ればすぐに分かるということなんですが、全く音沙汰無くて……」
 五十嵐「これでサトウ様の次の旅行先、そして旅行目的が分かりましたな」
 愛原「あっ……!」

 斉藤元社長は白井伝三郎(斉藤早苗)の居場所を知っているのだ。
 そして、これから会いに行こうとしているのだろう。
 多分、斉藤元社長の事だから、彼……いや、彼女というか……まあ、それを殺す算段が付いているのかもしれない。
 どうする?
 そこまで報告するか?
 ……まあ、契約だから、した方がいいか。

 愛原「ちょっとお電話お借りします!」
 五十嵐「どうぞ。なるべく早く御連絡をした方が良さそうですな」
 愛原「どういうことです?」
 五十嵐「ようやくゲリラ豪雨が収まって来たようです」

 確かに窓の外を見ると雨は弱くなり、雷の音も小さくなっていた。
 そしてその代わり、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえて来た。

 愛原「パトカーが!?」
 五十嵐「恐らく目的地はここ。用件は……サトウ様の事に関してでしょうな。愛原様方はこちらでお過ごしになっててください。……こちら、お代わりのお飲み物と軽食です」
 リサ「おおっ!今度はスモークタンと生ハムの盛り合わせ!」

 オーナーは私用にマティーニ、リサ用にノンアルコールカクテルのシャーリー・テンプルを出してくれた。
 おつまみとして、私用にはバターピーナッツも。
 オーナーはその後、この部屋を出ていった。
 サイレンを鳴らしたパトカーは、確かにこのペンションの前に着いた。
 私は電話を借り、それで善場係長に電話を掛けた。
 そして、五十嵐オーナーから聞いた話をそのまま伝える。

 善場「お疲れ様です。実は斉藤早苗こと、白井伝三郎の行方は未だに分かっていないのです。もしも斉藤容疑者がそれを知っているのなら、泳がせる必要がありますね」
 愛原「はい。あと、どうやらこのペンションに警察が到着したようです」
 善場「警察が?」
 愛原「はい。善場係長の方で、警察には捜査の手配をされたんですよね?」
 善場「そうです。では捜査の一環で、ペンションに来たのですね」
 愛原「今のところ、従業員とオーナーが対応に当たっているようですが、どうも今夜の宿泊客は、逃亡した斉藤さんを除いて、私とリサだけのようなので、私達も事情聴取をされそうです。その場合はどうしたら?」
 善場「そうですね……。斉藤容疑者とは会食してしまったので、当然ながらその関係を警察は疑うでしょうね」
 愛原「最悪、共犯だと疑われるわけですか……」
 善場「すぐに警察に通報しなかったところとかは疑われるでしょうね」
 愛原「しかし、私は係長にはすぐに連絡しましたが?」
 善場「はい。ですので、警察には私の電話番号を教えて頂いて結構です。少なくとも、こちらとしては愛原所長の報告を受けて、こちらから警視庁には連絡しましたから」
 愛原「分かりました」
 善場「何も無ければ明日、帰京ですね。月曜日には今回の件について、詳しく教えてください」
 愛原「かしこまりました。明日には報告書を作成しますから」
 善場「ありがとうございます。また何かありましたら、すぐに御連絡ください」
 愛原「承知致しました」

 私は電話を切った。
 しばらくオーナーを待っていたが、事情聴取が長引いているのか、なかなか戻ってこない。
 リサはさっさとおかわりのシャーリー・テンプルを飲み終わり、おつまみも食べ終わてしまった。
 そして、待っているのに飽きたのか、壁際に置いてあるスロットマシーンやピンボールゲームで遊び始めた。

 リサ「先生も一緒にやろうよ!」
 愛原「そうだな」

 トランプ台にはトランプもあるので、それでトランプでもして時間を潰すという事もあり得るだろう。
 私はマティーニやピーナッツを口に運んだ。
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