報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「愛原の記憶」

2025-01-14 21:25:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月20日21時00分 天候:雨 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階リビング]

 愛原「うー……そこそこ……」
 リサ「ここ?ここがいいの?」
 愛原「そうそう……」

 私はリビングのカウチソファに横になり、リサからマッサージを受けていた。
 体操服の下は、学校用の緑ブルマを穿いている。

 リサ「また……血の中の老廃物ちょうだいね!先生の血……でへへへへ……!」

 リサがのしっと私の背中の上に馬乗りになる。
 人食い鬼に捕まった人間だな。

 愛原「あいよ。それで終わった後、血液がサラサラになっているんなら、安いもんだ」
 リサ「でしょ?でしょ?」
 愛原「まあな」
 リサ「それより、いつ旅行に連れて行ってくれるの!?」
 愛原「ん?」
 リサ「夕方、善場さんとしていた話だよ!」
 愛原「もちろん、今月中に行くさ。ところで、今学期末のテストって、いつからだ?」
 リサ「来週からだね」
 愛原「……それが終わってからの方がいいな」
 リサ「やっぱりそうかぁ……」
 愛原「こっちは一般の旅行客を装って行くんだ。予約してすぐに行くというのも怪しいだろうし、列車が取れるかどうかも怪しい。テスト期間が終わってからの土日にしよう」 
 リサ「すると、先生と同じ部屋だね!」
 愛原「あ、ああ……。どうなんだろ」
 リサ「夫婦なんだから当然だっちゃ!」
 愛原「いやいや……」
 リサ「『アレ』や『コレ』しようね!」
 愛原「『ナニ』をするつもりかな……?それ目的じゃなくて、五十嵐元社長から情報を聞き出すだけだから!」

 本当に情報を握っているのだろうか?
 もしそうなら、『コネクション』が消しそうな気がするが……。

 愛原「明日予約入れてみて、それから電車のキップを買おう。全車指定席だから、席が空いてるといいがな」
 リサ「フムフム」
 愛原「そもそも交通の便があまり良くないので、鉄道利用がいいのかも分からんから、そういう所から調べないと」
 リサ「どういう所なの?」
 愛原「マッサージが終わったら見てみよう」

 リサのマッサージが終わると、私は共用のパソコンを開いて、それで公式サイトらしき所にアクセスした。

 リサ「ペンション『いたち草』?変わった名前だね」

 愛原「ああ。外観が古い洋館風だ。いかにも、中でゾンビが徘徊してそうだ」
 リサ「オリジナルの大先輩もいそうだね。クランク持って行く?」
 愛原「本当にいたら、本人から借りたら?」
 リサ「ええ~?ぶん殴られるよぉ~?」
 愛原「そ、そうかな?」

 そこで私は、ふと気づいた。

 愛原「リサ、例の白い仮面、まだ持っているか?」
 リサ「もちろん!」
 愛原「このペンションに行く時、その仮面も持って行こう。五十嵐元社長がシラ切る恐れがある。そんな時、本人が現れたら吐かざるを得ない」

 もっとも、裁判では、リサ達の事は白井伝三郎が全ての責任者ということであり、五十嵐元社長はリサ達への人体実験はおろか、実験体確保の為の拉致・誘拐なども命令していない、そもそも知らないという話で通した。
 そしてその証拠が無かった為に、この部分での立件は見送られた。

 リサ「持って行くよ!」
 愛原「ついでに、セーラー服も着るか?日本アンブレラのリサ・トレヴァー達はセーラー服を着せられていたんだ」
 リサ「ヤだよ」

 さすがにそれは譲れないようだ。
 いくら小柄なリサでも、小学生当時に着ていたセーラー服など、さすがにサイズが合わなくて着れない。
 白い仮面については、出所が天長会だと分かったので、上野利恵に頼んで、今のリサの顔のサイズに合う仮面を作り直してもらった。
 目の部分に横長の切れ目が入っているだけの、シンプルな白い仮面だった。

 愛原「ダメかぁ……」
 リサ「ブレザーならいいよ。……まあ、もう夏だから着れないけど」
 愛原「要は学校の制服ってことだろ?それじゃなぁ……」

 でもまあ、悪くはないか。

 リサ「このまま予約しちゃったら?」
 愛原「いや、ダメだ。このペンション、電話予約しかできない」
 リサ「今時!?」
 愛原「個人営業のホテルやペンションだと、たまに、まだそういう所があるよ」
 リサ「へえ……」
 愛原「とにかく、明日予約してみるから」
 リサ「分かった……」

[6月21日10時00分 天候:雨 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 私はペンションのチェックアウト時間が過ぎた辺りを狙って、予約の電話を入れてみた。

 男「お電話ありがとうございます。ペンション『いたち草』でございます」

 電話口には、壮年の男が出た。
 思わず、『五十嵐元社長ですか?』と聞きそうになるが、それをグッと呑み込む。

 男「もしもし?」
 愛原「あっ、えー……すいません!宿泊の予約を取りたいのですが、宜しいでしょうか?」
 男「ご予約でございますか?ありがとうございます。お日にちと何泊されますか?」
 愛原「7月の1日と2日の1泊、大人2名でお願いしたいのですが?」
 男「7月1日と2日……土曜日と日曜日の御1泊ですね。かしこまりました。ツインのお部屋が空いてございます」

 やはり、ツインか……。

 愛原「シングルとかは無いんですよね?」
 男「シングルでございますか?申し訳ございませんが、当ペンションはダブルとツイン、ファミリールームの3種類となってございます」

 すると、1人客はダブルルームの部屋に泊まることになるわけか。

 男「あいにくですが、ダブルの方は既に満室となってございまして……」

 まあ、週末だからな。

 愛原「あー、大丈夫です。ツインルームでお願いします」

 男「宜しいですか?では、お客様の御名前とご住所、電話番号をお願いします」
 愛原「はい。予約者名並びに宿泊者代表は愛原学。住所は東京都墨田区菊川2丁目【以下略】」

 チェックイン時間は15時から。
 チェックアウト時間は10時とのこと。
 素泊まりもあるようだが、一応、食事付きのプランにした。
 それから、アクセスを聞く。

 愛原「……電車で行こうとすると、どんなルートがよろしいですか?」
 男「はい。当ペンションの最寄り駅は、JR吾妻線の岩島駅なのですが、そこはタクシー乗り場がございません。また、送迎も行っておりませんので、町の中心駅である群馬原町駅からタクシーでお越しになることをオススメします」

 その群馬原町駅とて、今では無人駅となり、特急通過駅となってしまった。

 愛原「なるほど……」

 不便な場所にあることは間違いない。
 しかし、よくそんな所でペンションをやろうと思ったものだ。
 予約が完了した私は電話を切ると、今度は電車のキップを買いに事務所をあとにした。
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“私立探偵 愛原学” 「面会の後で」

2025-01-14 11:42:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月20日09時30分 天候:晴 東京都葛飾区小菅 東京拘置所]

 高橋との面会が終わった。
 高橋は、日本アンブレラの五十嵐皓貴元社長の事は話しても、その情報を何故知っているのかまでは教えてくれなかった。

 高橋「すいません、先生。俺、しばらく出てこれないかもれません」

 と、最後に言っていたのが気になった。

 善場「まだまだ余罪があるようですね」

 面会室を出て駐車場に戻る道すがら、善場係長が言った。

 愛原「どうして隠しているのでしょう?どうせもう拘置所にいるのですから、洗いざらい喋った方がいいのでは?」
 善場「理由は2つ考えられます。1つは、彼が隠している最大の罪が殺人であり、これが立件されれば、死刑になってしまうからというのがあるから。もう1つは、余罪を小出しすれば、その分、彼の拘束期間は増えます。拘置所内は安全です。特に、未決拘禁者は基本的に独居房に入りますから。より一層、安全が確保されます」
 愛原「なるほど……。でも後者の場合、セーフハウスなるものを用意して下さるんですよね?」
 善場「そのつもりなんですが、高橋被告は、拘置所にいることを選択したようですね」
 愛原「そのようで……」
 善場「そろそろ彼の裁判も始まる頃でしょうから、そちらの傍聴もされますか?」
 愛原「そのつもりです」

 そんな話をしながら車に戻る。

 愛原「明日、早速、東吾妻町に行って、現地調査をしてこようと思いますが、宜しいでしょうか?」
 善場「少し、お待ちください。今度はさすがに、1人で行かれるのは危険かもしれません。また、例えあの日本アンブレラの元社長とはいえ、刑期を終えて出所していて、今の所まだ余罪などの疑いが無い以上は、警察も動かせませんし、BSAAも動かせません」
 愛原「そう、ですかね……」
 善場「こちらでも、帰所した後に会議で決めますので、しばらくお待ちください」
 愛原「五十嵐元社長が住んでいるという、洋館風の建物の場所くらいは確認しましょうか。大きな町ではないでしょうから、そんな所に洋館風の建物なんか建てたら、目立つでしょうから」
 善場「それはお願いします」

 私達は車に乗り込むと、東京拘置所をあとにした。

[同日10時10分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 事務所まで車で送ってもらう。

 善場「お疲れ様でした。恐らく、これから高橋被告からの手紙などが届くと思いますので、それらにも十分注意してください」
 愛原「手紙?」
 善場「はい。直接口では言えないことは、手紙でしたら書ける事も多々あります」
 愛原「でもそれなら、とっくに書いているのでは?」
 善場「書くのをそれまで躊躇していたものが、我々が直接出向いたことで決心するということもあり得ます」
 愛原「なるほど。そういうもんですか。検閲に引っ掛かったりしませんかね?」
 善場「それは大丈夫でしょう。被告が意図的に、そういう書き方をしない限りは……」
 愛原「分かりました」
 善場「それでは、また依頼がある時は宜しくお願い致します」
 愛原「宜しくお願いします」

 私は車を降りると、事務所へ向かうエレベーターへと乗り込んだ。

 愛原「ただいまァ」
 パール「お帰りなさい」
 愛原「高橋は元気だったぞ。明日、パールが面会に行くのを楽しみにしていた」
 パール「それは……嬉しいですね。マサは、先生が望まれる通りの答えを言いましたか?」
 愛原「100パーではないな」
 パール「100パーではありませんでしたか」
 愛原「よっぽど組織から命を狙われているのかねぇ……」
 パール「そうかもしれません」

 リサは学校に行っている。

 愛原「どれ、新たな仕事の依頼は?」
 パール「今のところございません」
 愛原「マジか……。そう簡単には行かないな」

 とはいえ、こっちには栗原家が所有放棄した金塊があるからな……。
 しばらく、生活に困ることはないだろう。

[同日16時00分 天候:曇 同地区内 愛原学探偵事務所2階]

 善場「度々申し訳ございません」

 善場係長がまた事務所を訪ねてくれた。

 善場「例の東吾妻町への調査ですが、正式に依頼させてください」
 愛原「かしこまりました。御依頼、ありがとうございます」

 デイライト内で、何か決まったのだろうか?

 善場「但し、1つ条件があります」
 愛原「条件?」
 善場「今のところ、五十嵐元社長には、裁判で立件されたもの以外の疑惑がありません」

 もちろん、それまで、数多くの疑惑はあった。
 しかし、社長として立場上の責任は追及できたものの、内容そのものは現場の独断だったということで、立件が見送られてしまった。
 日本の司法では、1度立件を断念された物について、再び立件することは許されていない。

 愛原「今のところは、刑期を終えて出所したばかりのまともな人という扱いなわけですね」
 善場「そうです」

 つまり、五十嵐元社長を犯罪者のような態度で接するなということだな。
 そもそもが、日本アンブレラとは、アメリカのアンブレラ製薬の『光』の部分の象徴として設立された現地法人だ。
 五十嵐元社長は、そのお飾りとして雇われた、雇われ社長に過ぎない。

 愛原「ちゃんと、相手は『普通の人』として接しますよ」
 善場「もう1つ、条件があります」
 愛原「何でしょう?」
 善場「護衛と、カムフラージュとして、リサを同行させてください」
 愛原「リサを!?」
 善場「あくまでも、旅行客として向かうというテイですので」
 愛原「なるほど……。やはり、あのペンションが例の洋館でしたか」
 善場「そうなんです」

 実は私、今日はネットで、五十嵐元社長が住んでいるという別荘について色々と調べてみた。
 群馬県東吾妻町は、そんなに大きな町ではない。
 だから、すぐにヒットした。
 当初は別荘として建てられたものであったが、今ではペンションに転用されていると。
 では、また五十嵐元社長はそれを人手に渡して、また引っ越しをしたのだろうかと思ったが、そうでもないらしい。
 経営者の名義が、本人のままになっているからだ。
 もしかすると、五十嵐元社長は残った財産で、本当にペンションなんか始めちゃったのかもしれない。
 そういう所に1人で泊まっても良いのだろうが、やはり目立つだろう。
 そこで、リサと一緒に泊まることで、親子客を装えということらしい。

 リサ「夫婦客の間違いでしょ!」

 と、学校から帰って来て、話を聞いていたリサが文句を言っていたが。
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