報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「学校であった怖い話2022」 1

2022-09-05 11:03:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月17日15:30.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校1F新聞部部室]

 予定通り、放課後、リサは新聞部の部室に向かった。

 栗原:「リサ」
 リサ:「あっ、鬼斬り先輩」
 栗原:「その呼び方はやめなって何度も言ってるだろ。本当に斬るよ?」
 リサ:「ゴメンなさーい」

 さすがに今のリサは、学校の夏制服をちゃんと着ている。
 栗原は片足が義足の為、歩く度にカチャカチャと金属音が鳴っている。
 霧生市出身で、霧生市のバイオハザード事件に巻き込まれた際、リサと同種の『日本版リサ・トレヴァー』に片足を食い千切られた過去を持つ。
 尚、『2番』たる愛原リサは、栗原の片足を食い千切った『1番』の存在は当然知っていて、あの日、真っ先に研究所を脱走したのも知ってはいたが、栗原にそんなことをしていたのは知らなかった。
 『2番』のリサが研究所から脱走しなかったのは、逃げても意味が無いことを知っていたからだと本人は言う。
 だが、おかげでこうして生き延びていられいるのだから、良い判断だっただろう。
 尚、ここでは栗原が3年生、リサが2年生なので、先輩後輩の関係である。

 リサ:「先輩は何を話すの?」
 栗原:「色々と考えてる。昨年あった話とかね」
 リサ:「あれは、わたしも考えてのに……」
 栗原:「まあ、私はさっさと神田さんに負けちゃって気絶していたから、あなたが話すのが1番かもね」
 リサ:「うん、かもね」
 栗原:「そういうリサは?」
 リサ:「んーとね、わたしは“花子さん”かな」
 栗原:「教育資料館の?リサならでの話かもね」
 リサ:「そうだよね」

 新聞部の部室に入ると、既に他の語り部が何人か来ていた。
 あいにくと、やはり見たことの無い顔ぶればかりだ。
 今年からは座る席が決まっており、長机には所属と名前が書かれた札が置かれている。

 栗原:「私はここね」

 『3年3組 栗原蓮華』という名札が置かれた席に座る栗原。
 リサには、もちろん『2年5組 愛原リサ』という札が置かれていた。
 他に見ると、3年生や2年生はもちろん、1年生もいるのが分かった。

 2年生男子:「失礼しまーす」
 3年生男子:「ちゃス」

 リサ:「やっぱり聞き手の新聞部員は、1年生っぽいですね」
 栗原:「何でも、昔からこの担当は1年生が行うという伝統ができたみたいだよ。伝説の1995年と2008年の回の時なんか特にね」
 2年生男子:「あ、それ、知ってます!実は自分、それを話そうと思うんで、よろしくオナシャス!」
 リサ:「昨年の回も、なかなか伝説じゃなかった?」
 栗原:「かもね」

 しばらくして、最後に新聞部員が入って来た。
 今年の担当は1年生男子のようだ。

 坂上修二:「皆さん、本日はお忙しい中、お集まり頂いて、ありがとうございます。僕は新聞部の坂上修二と申します。まだ、1年生です。よろしくお願いします」
 リサ:「坂上……?坂上先生の関係?」
 坂上:「あ、坂上先生は僕の叔父さんです」
 リサ:「親戚!?……坂上先生は、あなたがこの回に出ること、了承したの?」
 坂上:「実は話していません」
 リサ:「やっぱり……」
 栗原:「やっぱりね……」
 坂上:「何か知ってるんですか?」
 リサ:「伝説の1995年の回、その時の新聞部の担当って、坂上先生だったんだよ」

 その時、リサの担任の坂上の修一の年齢からすると、現在の年齢がバレてしまう。

 2年生男子:「はい!この事は自分が詳しいんで、自分がトップバッターで話させて頂きたいんですけど、いいですか!?」
 坂上修二:「はい、それではよろしくお願いします。話の前に、自己紹介からお願いします」
 2年生男子:「はい!自分、2年1組の新堂徹って言います!さっきチラッて言ってた1995年の回なんですけど、実はその時の語り部の1人が自分の叔父さんで、その叔父さんから聞いた話なんですけど……」

 こうして、『学校の七不思議特集2022』もまた滞りなく開始された。
 滞りなく開始されたのは、伝説の回の1つとなってしまった2021年も同じである。
 だから、まだ油断はできない。

[同日16:30.天候:曇 新聞部部室]

 栗原:「……というお話でした」

 栗原は第4話目を担当した。
 因みに席は決まるようになったが、誰が何話目を話すのかは決められていない。
 担当の新聞部員がランダムに語り部を指名していく、という伝統に基づくものである。

 坂上:「ありがとうございました。昨年、この新聞部で、そんな恐ろしいことがあったんですね」

 栗原は予告通り、2021年の回が伝説回にノミネートされた所以を話した。
 神田拓郎という、かつてこの学校の3年生だった男子が、恋敵に自殺に見せかけて殺されたこと。
 死に至った際に頭が潰れたせいで、首無し死体の幽霊としてこの部室にやってきたこと。
 そして、恋敵の首と胴体を捩じり切ったものの、また、幽霊と化した恋敵に復讐される形で2人とも消えていったことを話した。

 栗原:「一応、私の宗派で塔婆供養はしましたので、もう幽霊として現れることはないと思いますけど」
 坂上:「ありがとうございました。それでは、次の5話目は愛原リサさんにお願いします」
 リサ:「わ、分かりました」

 部室内には、ただならぬ空気が漂っている。
 七不思議の集まりで、1人1話話す形式であるのだから、語り部は7人いないとおかしい。
 だが、何かの手違いなのか、今は6人しかいなかった。
 これは、伝説の回となるジンクスであることを意味している。
 1995年の回も2008年の回も、そして昨年である2021年の回も、6人しか集まらなかったのだ!
 そして、今年!
 まさか、2年連続で伝説の回となるのだろうか。

 リサ:「わたしは2年5組の愛原リサと言います。私がこれからお話しするのは、代替修学旅行であった話です」
 栗原:「へえ?教育資料館の話をするんじゃないんだ?」
 リサ:「もしわたしが6話目を話すことになるんでしたら、そうしてました。ただ、それには教育資料館に移ってもらう必要があるので、今回はやめておきます」

 リサは代替修学旅行であった話を話した。
 コロナ禍で、リサの世代は中等部時代の修学旅行ができなかった。
 そこで今から数ヶ月前、スキー合宿も兼ねた中等部代替修学旅行が行われた。

 リサ:「わたし達が乗った電車には、もう1つ、別の学校が乗っていました。六本木にある聖クラリス女学院です」
 3年生男子:「おおっ!あの美少女揃いの女子校!」

 リサは聖クラリス女学院の梅田美樹の話をした。

 リサ:「……ヤツは人喰いをする為に、同級生達を寒空の中、まっぱにして、それから……」

 話しているうちに、リサも、

 リサ:(わたしも食べたい!血肉が欲しい!)

 と、思うようになった。
 悪い意味での食性も、元に戻ったということである。
 リサの活躍を正直に語ると、リサ自身の正体もバレてしまうので、そこは脚色した。
 リサ自身も梅田美樹の凶行を目撃してしまったことで、自分も食い殺されそうになったが、寸での所でBSAAが駆け付けてきたことで命拾いしたということにしておいた。

 リサ:「……こんな感じです」
 坂上:「あの代替修学旅行で、そんなことがあったんですね。分かりました。ありがとうございます。それでは、次の6話目は……」

 まだ7人目は部室に来ていない。
 これからも来ないようなら、実質的に次の語り部がトリとなる。
 全員が、トリとなるかもしれない語り部に目をやった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「リサ... | トップ | “愛原リサの日常” 「学校で... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事