報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスター”&“ユタと愉快な仲間たち”、有馬記念ショートストーリー

2013-12-22 19:42:00 | 日記
[12月22日15:40.埼玉県さいたま市中央区 稲生家 稲生ユウタ&威吹邪甲]

 家で競馬中継を見ているユタと威吹。
〔「さあ、各馬一斉にスタートしました!」〕
「現代はこんな娯楽があるのか……」
「そうだよ」
「だいぶ前、拾った10万円は藤谷班長に没収されてしまったが、今度は大丈夫なのかい?」
「うん。今度は自分で買ったから。信用できる予想屋さんの情報だから、絶対だよ」
「何だか不安だなぁ……」
 威吹は首を傾げた。
「予想マンこと、HNポテンヒットさんの絶対威力による予想だ」
「当たったら、旅に出るのか?」
「そうだね。まあ、お寺に御供養してもいいけど……」
「博打のあぶく銭を布施にしてもいいのかい?」

〔「オルフェーブルの圧勝!有終の美を飾りました!」〕

「ええーっ!?」
「やっぱり……」
 威吹は溜め息をついた。
「このポテンヒットとやら、妖狐の妖術で居場所を突き止めてオレが……!」
 威吹は金色の瞳を赤色に光らせて、妖刀と脇差を腰に差した。

[同日同時刻 JRAウインズ銀座3F 藤谷春人&佐藤公一]

〔「オルフェーブルの圧勝!有終の美を飾りました!」〕

「ああっ、くそっ!ハズした!何だよー!ポテンヒットのヤツ!全然当たんねーじゃんかよ!」
 藤谷は馬券を床に投げつけた。
「しょうがねぇから、阪神の最終で……ん?」
 藤谷の隣にいる男は、顔面蒼白だった。
「おい、アンタ、大丈夫か?」
 ↑佐藤公一の顔と名前を知らない藤谷。
「…………」
 バタッ!(←泡吹いて倒れた)
「お、おい!ちょっと!係員さーん!」
「どうしました!?」
 緑色の制服を着た整理員が3名ほど駆けつける。
「何か急に倒れて……」
「お客さん、大丈夫ですか!?」
「おい、救急車を呼べ!」
「了解!」
「って、ああっ!」
 藤谷はサトーが持っていた馬券を見た。
「うわ!こいつもポテンヒット予想の馬券、10万ずつ買ってやがる!バカじゃねーの!」

[同日同時刻 JRAウインズ銀座外周部 作者]

{「整理本部より緊急連絡!3階で急病人発生!119番通報実施!救急車到着の際、北口に誘導せよ!以上、整理本部!」}
「警備、了解」(by隊長)
「車通りまーす!ご注意くださーい!」
「おい、【作者の本名】君。救急車が来るから、来たら誘導の方頼む」
「了解しました!」
 隊長に敬礼する作者。
(ポテンヒットさんの予想、ハズレたな。まさか俺のブログ見て、そのまま買う人はいないだろうが……)

[同日同時刻 宮城県仙台市内の2DKマンション 敷島孝夫&エミリー]

〔「オルフェーブルの圧勝!有終の美を飾りました!」〕

「あれー!?マジかよ!?」
 思わぬ結果に目を丸くする敷島。
「何だよ!せっかく競馬に詳しいポテンヒットさんって人が、いい予想してたと思って、その通りに買ってみたのに……」
 するとエミリーは、両目をハイビームに光らせた。
「イエス。敷島さん」
「何が?」
「この・HNポテンヒットの・住所を調べ、私が・敷島さんの・仇を討ちます」
「おい、ちょっと待て!俺は死んでないって!死んだのは馬券……こら、右手をマシンガンに変形するなっ!ジェットエンジンの起動もやめい!ちょっと!おーい!」

[同日同時刻 石川県金沢市内の一戸建て住宅 十条伝助&キール・ブルー]

〔「オルフェーブルの圧勝!有終の美を飾りました!」〕

「は、博士?」
 キールは訝しげな顔で十条を見た。
「う、む……。どうやらこのポテンヒット氏とやら、予想を外したようじゃの」
「博士。当方の損害額は……」
「いい!計算するな。却って空しくなる」
「は?ははっ。さればこのポテンヒットとやら、住居を調べ上げ、この私めが博士を無念を晴らしたく存じます。何卒、ご命令を!」
「……何をする気かね?」
「この私めの左目に搭載されたレーザービーム。これをもって、ヤツの……」
「お前のレーザービームは、わしの護衛用とお前の護身用に搭載したものであって、暗殺目的に搭載した覚えは無いのじゃがな。今度の最終レースは、お前の予想に任そう。それで取り戻せば良い」
「かしこまりました」
 その時、十条はふと思い出した。
「ところでこの予想、仙台の敷島君も買ったのか?」
「はい。そのように伺っております」
「……お前、エミリーの“恋人”としてどう思う?」
「は?」
「エミリーは敷島君が予想を外したことで、どんな行動をすると思うかね?」
「あくまでも、1番確率の高い予想でありますが……」
「構わん」
「恐らくは私と同様、ポテンヒット氏の住居を調べ上げ、機銃掃射をしに行くものと思われます」
「……敷島君、止められるかの?」
「確率は……50.00パーセントです」
「すぐにエミリーに連絡して、『敷島君の命令に従え』と伝えろ!」
「か、かしこまりました!」

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 何だか明日もレースがあるようである。もっとも、私は閑静なビルの警備に戻るのだが。
 因みに明日は記念品の配布があるそうなので、お求めはお早目に。
 ってか、稲生ユウタと藤谷とサトー、競馬やってないで折伏やれよw(←自分のことは棚に上げる作者)
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サークルメンバーとの会合

2013-12-21 22:13:04 | 日記
 サークルメンバーと言っても、OB会のことである。現役メンバーは冬コミの準備があるので、我々OBは先に忘年会をやって、現役達を高見の見物というわけだ。
 もっとも私の場合、今の会社に入社してから、仕事でコミケに行くのが定番となっており、必ずしも他のOB達のように高見の見物というわけでもない。ただ、来場者の視点とは明らかに違う視点で“物語”は進むので、それもまたオツなものだと思っている。
 しかしOB連中もまたヲタクらしく、寂しいクリスマスを過ごすことになるようだ。中にはプロのクリエイターとして私の年収の2倍は稼いでいるのもいるというのに、ヲタメンが祟ってか、まともに女性と話す機会すら恵まれない者もいる(どことなく特盛くんに似ている)。
 まあ、クリエイターというのは職種にもよるが、半分引きこもりのような仕事もあるから、仕方ない面もあるにはあるのだが。作家であればネタ探しに外に出るので、出会いが無いわけでもないと思うのだが……。まあ、大石寺くらいまで足を運ばないとダメか。
 私もポテンヒットさんにさんざんっぱら祝辞を受けていながら、結局フラれてしまった。しょうがないので、日帰り温泉の計画でも立ててみたりする。おかげさまで、ネタは何とか練られたけどね。クリエイターとしては、良い正月を迎えられそうである。

 同じ鉄ヲタのF先輩と、2次会に行った。氏は私より5つ年上で、サークル立ち上げメンバーである。
 大宮駅東口の、何だか治安の悪そうな場所だったが、氏は慣れた様子で行き付けのバーに行った。私がフラれたことを気にしてくれたらしいが、別に心配して頂くほどのものでもない。
 少なくとも、1月の締め切りに間に合いそうなくらいのネタは仕入れることができた。私も、転んでタダで起き上がるほどの根性無しではない。そう言ったのだが、F先輩が言いたいのはそういうことではなかったらしい。
 それにしても……正直言わせてもらうと、世法の人に相談した方がよっぽど実用的な気がする。こんなのお寺で相談したところで、世法で実用性があるのか全く疑問なのだが。というか、御僧侶も迷惑だなw
 あ、因みに顕正会員が上長に相談するのは全くお勧めしない。理由は【お察しください】。
 まあ、私の信仰の姿勢に問題があるのだろう。
 F先輩は“ユタと愉快な仲間たち”の藤谷春人のモデルになった人物だ。見た目だけね。女嫌いというわけじゃないよ。この人、結婚してるから。
「大丈夫だ。あと18年ある」
 とのこと。
「18年?」
 つまり私が50歳になった時か。50歳と言えば、この時点で1度も結婚したことない男女は生涯独身者に認定される年齢だ。それがどうしたというのだろう?
「40過ぎのバツイチを狙え。子持ちなら尚可!」
 だという。はあ?どういうことだ???
 F先輩は色々話してくれたが、まあ、要は前のクソ旦那を見ているから、それよりちょっとでもいい所を見せればそれだけで条件クリアになるから、ハードル低いんだと。で、顔や年収で選んで失敗したクチだから、今更もうそんな条件で選ばないんだと。更に、親権を別れた旦那ではなく、自分が取れたということは、それなりに自分で稼いでいるし、少なくとも自分の不倫が原因での離婚でないことは明らかである。だから安心・安全だと。
 そういうもんかなぁ……。
「血統は断絶するが、連れ子がいれば、家はその子に継がせられるから、最悪パターンのお家断絶は免れることができる」
 という。ふむ。確かに戦国時代とかであれば、必ずしも嫡子が家督を継いでいたとは限らない。

 まあ、色々な選択肢はあるということだな。だから私は言った。
「特定アジアの関係以外ならいいですよ」
「まあ、特定アジアでなくても、相手がガイジンだと色々大変だけどな」
 うん、知ってる。実は“新人魔王の奮闘記”の新生アルカディア王国の女王様のモデルって、F先輩の奥さんだから。

 ま、自分への慰めとして、コミケでコスプレイヤーでも眺めてくるさ。趣味と実益を叶えて、私の1年は終わるw
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“アンドロイドマスター”より、ボツネタ公開

2013-12-21 15:12:14 | 日記
[12月20日 13:00.仙台市青葉区 葛岡霊園 敷島孝夫、エミリー、平賀太一、平賀(旧姓、赤月)奈津子]

 寒風が吹きすさぶ霊園に、かつての南里研究所メンバーが集まっていた。
「あれからもう5年ですか。月日が経つのは早いものですな」
 平賀は線香に火を点けながら言った。
「いや、全く」
 敷島は供え物の菓子と酒を墓石の前に並べた。
「先生方は、これからニューヨークへお戻りですか?」
「いや、今回は年始までゆっくりできそうです」
「そりゃいい。ボーカロイド達も喜びますよ」
 敷島も歓喜の声を上げた。
「念願の東京ドームでのライブですか。彼女達も有名になりましたねぇ……」
 平賀はかつての師匠の墓に向かって手を合わせた。
「ほらっ、あなた達!先生のお墓に手を合わせなさい!」
 母親になった平賀奈津子は、遊び回る幼い姉弟達に言った。姉弟達は素直に墓の前に並ぶ。
(双子じゃないものの、どことなくリン・レンみたいだな……)
 敷島は心の中で微笑を浮かべた。
「!」
 エミリーは更に墓参者がいることに気付いて振り向いた。
「ドクター十条。キール」
 財団理事の十条と、彼の傑作の執事ロボット、キールだった。
「よおっ!」
 十条は山高帽とステッキが特徴だ。今回は山高帽を取って、ブンブンと右手を振った。
「あっ、十条先生」
 平賀太一が眼鏡を掛け直して、意外そうに十条を見た。
「今年も来てたか。いやあ、感心感心」
 80代とは思えぬ足取りで敷島達に近づいてくる(オリジナル版では70代)。
「まさか、十条先生までおいでになるとは……」
「なぁに、今しがた別の悪友の墓参りに行ってきたところじゃ。何ともない」
 その悪友とは、ドクター・ウィリーに他ならないことは知っていた。
「さすがにそこまではキミ達は……キミ達どころか、誰も行ってやらんから、しょうがなくかつての悪友たるわしが墓参りに行ってやってるだけのことじゃがな」
「ええ……」
 平賀太一は曖昧な返事をした。さすがにかつての師匠を殺された恨みは、例え死んでも忘れようはずはなかった(リメイク版では、南里はウィリーの使役するシンディに殺されている)。
 十条は仲違いした南里と十条の橋渡し役を担っていた。元々この3人は大学時代の同窓生で、南里とウィリーのことを1番近くで見ていた貴重な人物だった。
「シンディはわしが地獄に送っておいた。悪友のささやかな復讐じゃ」
 バッテリーの切れたシンディを確保した財団。理事会でその処遇が諮られたが、十条がほぼ強引に処分の方向へ持って行ったという。
「エミリーが最後の一体になってしまったが、なぁに、心配いらん。ボーカロイド・プロジェクトがほぼ成功が確定した以上、これをバネに新たなプロジェクトが立ち上がるじゃろう」
「と、言いますと?」
「おっと。ここでは言えん。本部からの通知を待てといったところじゃ」
「ところで先生は、初音ミク達の東京ドームライブは行かれます?」
 平賀奈津子が聞いた。
「いや、わしはマサチューセッツ(工科大学)に行かねばならん。南里とウィリーの“隠し財産”を探しにな」
「“隠し財産”!?」

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 オリジナル版では南里は敷島に憤死させられたのが秋頃。リメイク版のボツネタでは、クリスマス前にエミリーの姉妹機シンディによって殺されている。リメイク版のOKネタでは、12月24日が命日となっている。
 “ダイ・ハード”並みのアクションシーンの最中、南里はエミリーの隙を突いたシンディに刺殺されている。
 
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キナ臭い話

2013-12-21 00:30:24 | 日記
車内に現金百数十万円=恨みの可能性強まる―「王将」社長射殺・京都府警(時事通信) - goo ニュース

 ポテンヒットさんから、上記事件絡みについてコメントを頂戴した。
 飲食店チェーンなんて、どこもブラックのようなものだろう。因みに私の所属寺院の近くにも王将があって、実はよく行っていた。けして不味い所では無かったのだが、非常に残念である。

 ところで、北朝鮮でナンバー2とされていた政権幹部が粛清されたことは記憶に新しい。夕刊フジの記事で恐縮だが、その粛清された張氏の派閥や部下などもまた粛清対象なのだという。氏は偽名を使って何度も日本国内に出入りしていたらしく、金正恩第一書記は日本に潜伏している張氏直轄の工作員達をも粛清させんと、日本国内に暗殺部隊を送り込んだとのことである。……ホントかなぁ???
 で、その直後に大東社長が射殺されたもんだから、ネットや何かでは、その社長が実は張氏直属の工作員で、日本国内での粛清第一号では?などと噂されている。で、これまた絶妙なタイミングで、北九州でもまた射殺事件があったもんだから、ますますネット掲示板を騒がせているようである。
 仮に夕刊フジの内容が本当だとすれば、それは日本国に対する主権の侵害であるし、今後ともそういった射殺事件が相次ぐ事となる。本当に工作員だけが殺されるのならまだしも、高い確率で勘違い発砲や、生粋の日本人が巻き添えになるということも十分に考えられる。最低限それだけは避けて頂きたいものだ。

 ところで、私は工作員だけが粛清対象だと思っていたが、ネットでは尾ヒレが付いたか、在日朝鮮人全員が暗殺部隊の射殺対象だとかいう投稿も散見される。帰化人も対象だから心せよ、なんて……。ま、さすがにそれはオーバーだと思う。
 で、例えば芸能界にもそれ系の人種は多くいる。それが急にテレビとかで見かけなくなったら……【お察しください】ということか。
 もしかして、特定秘密保護法がスピード可決されたのって……【自主規制致します】。
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駄作“アンドロイドマスター”より、ボツネタ。

2013-12-19 17:17:26 | 日記
[12月17日14:00. 日本アンドロイド研究開発財団 仙台支部 敷島孝夫&初音ミク]

「そうか。ついに東京ドームでライブを……」
 敷島は感無量といった感じだった。
「はい。お世話になったたかおさんに、わたし達のライブを見てもらいたくて……」
 ミクも嬉しそうだった。
「エミリーも御一緒に」
 ミクが渡してきたチケットを見ると、
「なに、関係者席なの?」
 敷島が一瞬驚いた顔になると、ミクは首を傾げた。
「わたし達は財団管理ですよ?たかおさんはその財団の職員さんなんですから」
「ああ、そうか」
 敷島がボーカロイド・プロデューサーから外れて、5年の月日が経っていた。

[同日15:00.同場所。敷島孝夫&エミリー]

 そもそも東京ドームでクリスマスライブをやるという話はネットでも話題になっていたものの、肝心の財団事務所では何の告知もしていないという体たらく。
「あのー、敷島君から来てから、何となく空気がダラけてるんですけど……」
 総務部長が笑いながら、かつこめかみには血管を浮かべて突っ込んでいた。
「あ、部長……」
「ライブ1ヶ月前にはポスターが来てたのに、貼り忘れるとはな!」
「す、すいません。いやー、南里研究所時代はボカロ達が自主的にやっててくれたもんで」
「言い訳はいいから、早くやれっ!」
「はーい!」
 敷島はボーカロイド達が全員集合している写真が特徴のA1サイズのポスターを共用部に貼るべく、ビル内を奔走するハメになった。
「まず最初に貼る所は?」
「各エレベーターホールです」
 エミリーは片手で、ポスターの入っているダンポール箱を抱えていた。
 A1サイズのポスターが何十枚と入っている箱だから、それなりに重量があるはずだが、彼女は何らそんな顔はしない。何しろ本気を出せば、ビルの壁に穴を軽々と空けられるくらいの腕力を持っているのだ。
「各エレベーターホールぅ!?」
「イエス」
 エミリーのメモリーには、掲示場所が全て入っている。そこは優秀なガイノイド(女性型アンドロイド)だ。効率よく回れるルートをしっかり検索している。
「それと、エレベーター全機カゴ内です」
「……どんだけ俺、発注したんだよ?」
 因みに今の財団事務所が入っているビルは、地上20階建ての高層ビルである。敷島が脱力しかけると、
「ボーカロイド達の・更なる・躍進の・為です。頑張りましょう」
 エミリーの励ましに、敷島の脳裏にミクの笑顔が浮かんだ。
「よ、よっしゃあ……」
「エレベーター関係は・それに・乗りながら、作業できます」
「そ、そうか」
 さすがエミリーだと敷島は思った。

[同日18:00.同場所 敷島孝夫&エミリー]

「だいぶ一段落したかな?」
「イエス」
 敷島は自販機コーナーで、缶コーヒーを買った。
「お疲れさまです。メイド長」
「お疲れさま」
 ビル内を清掃するは清掃会社から派遣されている清掃員ではなく、メイドロボットである。
 因みにエミリーはメイドロボット達からは、『メイド長』と呼ばれている。エミリーは分類上メイド専門ロボットではないが、ボーカロイド以外のジャンルを全てこなすことができることから、マルチタイプに分類されている。その為か、
「オ疲れさまデス。総隊長」
「お疲れ様」
 館内を巡回している警備ロボットからも、『総隊長』と呼ばれている。尚、何故かここの警備ロボット達は、“スターウォーズ”のR2-D2によく似ている。明らかにそれをモデルに設計しただろとツッコミを入れたくなるほどだ。
 いかついなりをした警備ロボットもいるにはいるが、R2-D2タイプの方がコミカルで人類に受け入れられやすいと考えられたのだろう。
 尚、工場などでは“21エモン”に登場するゴンスケみたいなのがいるという。
「お前達。敷島さんにも・挨拶せよ」
 エミリーはメイドロボットと警備ロボットに突っ込んだ。
「あ……」
「ア……」
「俺……ここに来てから、存在感無くなったな。主人公なのに……」
 敷島は肩を落とした。

[同日19:00.同場所 敷島&エミリー]

「これでもう終わりか?疲れたな……。いや、これ、残業代出るかなぁ……?」
「? 一本・余りました」
 エミリーが首を傾げながら言った。
「なに?何でだ?」
「検索・してみます」
 エミリーは軽く目を瞑った。
「一本余計に発注しちゃったかな……???」
 敷島も腕組みをして虚空を仰ぐ。
「B3F駐車場・身障者トイレです」
「あっ、そうか!あそこ忘れてたな!」
 敷島はポンと手を叩いた。
 ビルのオーナーからは許可が出ていたのだが、いかんせん地下3階の身障者用トイレというのは最近になって設置された真新しいトイレである。
 駐車場の利用者から要望があって設置したとのこと。まあ、入り口近くに身障者用駐車スペースがあるのに、トイレは無いという不思議な話ではあったが。
 エミリーのメモリーにも、ビルの図面に新しいトイレの記載が無かったため、エミリーでも忘れていたというものだ。そこはロボットらしいと言える。
「よし、行くぞ。あんまり残業がおすと部長がキレる」
「イエス」

[同日19:15.財団仙台支部B3F駐車場 敷島孝夫&エミリー]

 駐車場といっても、財団やその他テナント専用というわけではない。仙台市の市街地に立地していることもあって、一般の時間貸や月極契約も需要がある。
〔ピンポーン♪地下3階です〕
「ここだ、ここ」
 後付けしたこともあって、従来からある男女トイレから少し離れた場所にあった。できることなら身障者用駐車スペースの近くにあるのが理想だが、ビルの構造上、ちょっと無理があったらしい。
 まあ、車から降りてほぼ段差無く利用できるので(途中にスロープはある)、バリアフリーと言えばそんな気もするが、何だかよく分からない。
「大風呂敷広げて、『共用部全部に1枚ずつ貼らせてください』と言ったのが運のツキだったか」
 敷島は苦笑いをした。確かにビル管理会社の担当者が訝しげな顔をしていたのを覚えているが……。
 エレベーターを降りて正面と左に駐車場に出るドアがある。右に曲がると、既設の男女トイレがある。
「ありゃ?『使用中』になってんな……」
 その男女トイレを越えて、一旦エレベーターホールの外に出る。元は倉庫があった場所を改築したのが、新しい身障者用トイレだ。駐車スペースからも分かるように、車路やエレベーターホールに向かって、先客の有無を表示している。
「しょうがねぇ。出てくるまで待つか」
 敷島は再びエレベーターホール内の自販機に行き、飲み物を買おうとした。
(駐車スペースに・車がいない)
 エミリーは目(カメラ)を動かした。
(サーモグラフィ・起動)
 エミリーはサーモグラフィを使って、身障者用トイレの中を検索した。
 人の気配はあった。
 しかし、あまり熱は感じられなかった。
「!」
「おい、エミリー!何してるんだ!?」
 エミリーは施錠されているトイレのドアをこじ開けた。
「大丈夫・ですか!?」
「ああっ!?」
 室内には倒れている老婆がいた。
 敷島はエレベーターホールに舞い戻り、内線電話を取った。
「もしもし!防災センターですか!?財団総務参事の敷島です。地下3階の身障者用トイレで、傷病者発見!直ちに119番通報を!」

 エミリーによる発見が早かったことと、敷島の素早い通報処置により、老婆は一命を取り留めたそうである。

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 前作“ポーロカロイドマスター”ではタイトル通り、初音ミクを中心とするボーカロイド達の躍進を描く二次創作だったが、今作はエミリーなどにスポットを当てた話となっている。上記の通り、彼女が活躍するシーンが多い。
 人間の主人公は敷島なのだが、本人の言の通り、確かに目立つ存在ではないかもしれない。
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