[12月31日 23:50. 埼玉県さいたま市中央区ユタの実家 稲生ユウタ&威吹邪甲]
〔「ほぉたーるのーひーかーり♪窓の雪ー♪」〕
「やっと1年が終わるね」
ユタはリビングではなく、威吹が寝泊まりしている和室で紅白を観ていた。
テレビはユタが持ち込んだノートPCのワンセグで見ている。
威吹の部屋にはコタツがある。
「そうかぁ……。もう年越しか」
威吹にとっては、あっという間の1年だったようだ。
「もっとも、威吹が封印前の江戸時代とは暦は違うけどね」
ユタは片目を瞑った。
「お待たせしました」
そこへ入って来る男が1人いた。
「年越しそばです」
「おおー」
「待ってました!料理までできて、さすがだな、カンジ君は!」
「いえ。弟子入りしたからには、これくらい当然です」
ユタが手を叩いて喜ぶと、カンジと呼ばれた男は微笑を浮かべるだけだった。
「キツネそばなところも、妖狐らしい」
「妖狐ですから」
コタツのテーブルの上に丼を置く。
カンジはユタより1つ年下の19歳。妖狐であるが、人間界で生まれ育ったこともあって、思考はどちらかというと人間臭い。
彼が威吹に弟子入りを志願してきたのは今月1日。しかし弟子など取る気が無かった威吹は断っていたが、狐ならではの執念深さ熱心なアピールにより、押しかけ弟子となった次第。
生真面目でクールな性格で、ユタに対しても師匠の“獲物”ということで丁寧な態度で接することから、威吹も追い出す気は失せたらしい。
威吹の剣技と、S級の霊力を持つユタを“獲物”にしたことに感銘を受けての弟子入り志願だと本人は言うが、完全に威吹やユタを納得させる理由には至っていない(妖狐の里に行けば、威吹より強い剣客がゴロゴロいる)。
「先生の強さの秘訣を教えて頂けるのなら、オレは何でもします」
ビシッと正座して威吹を見据えるカンジ。
「そ、そうか。まあ、とにかく食べよう」
「いただきまーす」
ズズズと麺を啜る。
「うん、美味い」
「さすがだな。逆にオレが料理の腕を教わりたいくらいだ」
「はははは!」
威吹の発言にユタは笑った。
「僕んちは両親が多忙で常に留守だからね。正直、僕と威吹しかいない時は出前とか外食ばっかりだったもんな」
「恐れ入ります」
[1月1日 00:05. 同場所 ユタ、威吹、カンジ]
「ごちそうさま」
「美味かったぞ」
「恐れ入ります。先生、今年こそは先生の強さの秘訣を教えてください」
「そ、そうだな。考えておこう」
威吹は爪楊枝を口に入れながら答えた。正直、秘訣を教えろといったところで、何も無い。
剣術は我流だし、ユタを“獲物”にしたきっかけの出会いも偶然だし、それだって毎日家を訪問して頼み込んだくらいしか方法は無かった。
「……ん、今年?」
「もう、年明けましたよ」
「おおっ、そうか!」
「威吹、明けましておめでとう」
「こちらこそ、おめでとう」
威吹は正座して、ユタに三本指をついた。カンジも急いでそれに倣う。
「今年もよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ」
「後片付けをして、風呂沸かしてきます」
カンジはそういうと、丼を下げに行った。
「見た目は怖いけど、真面目な子だね」
人間界で生まれ育ったせいか、金色の髪は妖狐にありがちな長髪ではなく、今時の短髪だし、両耳にピアスまで着けている。
これだけ見るとチャラ男のように見えるが、中身は結構カタい。
「教えろって言われてもなぁ……」
威吹はポットからお茶を入れた。
「昔の徒弟制度みたいに、『技は師匠から盗め』みたいにやるしかないね」
ユタも事情を知ってか、苦笑に近い笑みを浮かべた。
「うーむ……」
「見た目は普通そうなのに、中身はチャラ男のキノよりマシだと思うよ」
「はははは!あいつが弟子なら、尚更お断りだなー」
[同日同時刻 JR大宮駅・埼京線電車内 栗原江連&蓬莱山鬼之助]
「ヘクショッ!!」
大きなクシャミを3回したキノ。
「大丈夫?」
隣に座る江連はキノの顔を覗き込んだ。
「あー、くそっ!イブキのヤツ、オレの悪口言ってやがんな」
「……考え過ぎじゃね?」
〔「ご案内致します。この電車は1時13分発、埼京線、りんかい線直通の各駅停車、新木場行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
埼京線も終夜運転線区の対象である。
「何でこんな時間に、オレらここにいるんだ?」
「今からお寺に初詣に行くんじゃん?」
「行くんじゃんって、オマ……こんな真夜中によぉ……」
「顕正会員だってこんな時間から大宮公園にいるんだから、法華講のウチらが行かなくてどうすんの」
「熱心だなぁ……」
「きっと稲生さん達、とっくにいると思うよ?それできっと、『キノ達来ねぇなぁ』ってウワサしてたんだよ」
「そ、そうか?」
[同日00:30.ユタの家 ユタ&威吹]
「お湯加減どうですか、先生?」
「ああ、ちょうどいいよ」
「どうぞごゆっくり」
広い湯船に浸かるユタと威吹。
「寺に初詣はいいのかい?」
「いいよ。午後行くから」
「ははっ、そうか。じゃあ、午前中は寝正月だな」
「そういうこと。おせち料理はさすがにムリだろうけど、出前以外に年越しそばが食べられて良かったな」
「まあ、ユタが喜んでくれたのなら、ボクも弟子入りを許可した甲斐があったってもんだ」
その時、ガラガラと扉を開けて入って来る者がいた。
浴衣の袖をたすき掛けにし、裾も捲り上げてねじり鉢巻きをしたカンジであった。
「先生、お体お流し致します」
「いいから、お前はおせち料理でも作ってろ!」
「そんな、僕達に気を使わなくていいから」
「はあ……。では一応、“タマ洗い”はここに置いておきますので」
カンジはすごすごと退出した。
「タマ洗い?」
ユタは見たことも無い道具を目にした。言葉では言い表せない、独特な形状をしていた。
「そのまんまだよ」
威吹は舌打ちをして、そのタマ洗いを手に取った。
「こうして使うんだ」
「マジで!?」
威吹はその道具で、自分の下半身の【ぴー】を洗った。結構いい泡立ちである。
「妖狐はそんなもんわざわざ作って【ぴー】を洗ってるのかい?」
「そうだよ。最近は妖狐族でも男女平等の風潮が出て来たらしく、女用にマ【ぴー】洗いなんて道具もできたらしい。いや、ボクは見たことないけど」
「それらの道具の存在意義は、本当にあるのかい?」
[同日02:15.日蓮正宗・正証寺 エレン、キノ、藤谷春人]
「はーい、丑寅勤行に参加の方はこちらー!」
班長として参詣者の整理に当たる藤谷。
「イブキとユタが先に来ていると聞いてきたんだがな……いねーじゃねーかよっ!ああッ!?」
憤慨するキノ。江連は、
「意外。てか、うるさい」
「あれ?2人とも、ちゃんと丑寅来たんだ。ご苦労さんね」
藤谷はエレン達の姿を見つけると、にこやかに言った。
「この体の持ち主が、どうしても行きたくてしょうがないみたいなんだ。ま、アタシもこの体をもらったからには、持ち主の希望をソンチョーしないとね」
栗原江連の体を使用しているのは、栗原江連ではない。
彼女が死んで魂だけが現世からいなくなり、そこへ30年前に地獄界に堕ちたスケバングループのリーダーであった川井ひとみが栗原江連に融合する形で使用している。
栗原江連は熱心な信徒だったので、しょうがなく川井ひとみも栗原江連として生きる以上は、それを踏襲しているという。
「イブキとユタはどこだ!?」
「今頃風呂入って寝てるんじゃないの?あいつら、稲生君が顕正会員だった頃から初詣は午後イチだってよ?」
と、藤谷はどうしてキノが憤慨しているのか分からないといった顔で答えた。
「こ、このっ……!」
「正月から暑苦しいねぇ……」
「おかげで、部屋の暖房はいらんのです。さすが八熱地獄の獄卒」
「そうか。じゃあ、本堂もちょっと寒いから温かくしてくれよ?」
「オレはストーブじゃねぇ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
因みにフィクションですので、悪しからず。
実は私、鉄ヲタであるものの、何を隠そう、終夜運転中の電車に乗ったことが無いという。だって眠いんだもーん。
というわけで、明日からコミケ逝ってきますw
〔「ほぉたーるのーひーかーり♪窓の雪ー♪」〕
「やっと1年が終わるね」
ユタはリビングではなく、威吹が寝泊まりしている和室で紅白を観ていた。
テレビはユタが持ち込んだノートPCのワンセグで見ている。
威吹の部屋にはコタツがある。
「そうかぁ……。もう年越しか」
威吹にとっては、あっという間の1年だったようだ。
「もっとも、威吹が封印前の江戸時代とは暦は違うけどね」
ユタは片目を瞑った。
「お待たせしました」
そこへ入って来る男が1人いた。
「年越しそばです」
「おおー」
「待ってました!料理までできて、さすがだな、カンジ君は!」
「いえ。弟子入りしたからには、これくらい当然です」
ユタが手を叩いて喜ぶと、カンジと呼ばれた男は微笑を浮かべるだけだった。
「キツネそばなところも、妖狐らしい」
「妖狐ですから」
コタツのテーブルの上に丼を置く。
カンジはユタより1つ年下の19歳。妖狐であるが、人間界で生まれ育ったこともあって、思考はどちらかというと人間臭い。
彼が威吹に弟子入りを志願してきたのは今月1日。しかし弟子など取る気が無かった威吹は断っていたが、
生真面目でクールな性格で、ユタに対しても師匠の“獲物”ということで丁寧な態度で接することから、威吹も追い出す気は失せたらしい。
威吹の剣技と、S級の霊力を持つユタを“獲物”にしたことに感銘を受けての弟子入り志願だと本人は言うが、完全に威吹やユタを納得させる理由には至っていない(妖狐の里に行けば、威吹より強い剣客がゴロゴロいる)。
「先生の強さの秘訣を教えて頂けるのなら、オレは何でもします」
ビシッと正座して威吹を見据えるカンジ。
「そ、そうか。まあ、とにかく食べよう」
「いただきまーす」
ズズズと麺を啜る。
「うん、美味い」
「さすがだな。逆にオレが料理の腕を教わりたいくらいだ」
「はははは!」
威吹の発言にユタは笑った。
「僕んちは両親が多忙で常に留守だからね。正直、僕と威吹しかいない時は出前とか外食ばっかりだったもんな」
「恐れ入ります」
[1月1日 00:05. 同場所 ユタ、威吹、カンジ]
「ごちそうさま」
「美味かったぞ」
「恐れ入ります。先生、今年こそは先生の強さの秘訣を教えてください」
「そ、そうだな。考えておこう」
威吹は爪楊枝を口に入れながら答えた。正直、秘訣を教えろといったところで、何も無い。
剣術は我流だし、ユタを“獲物”にしたきっかけの出会いも偶然だし、それだって毎日家を訪問して頼み込んだくらいしか方法は無かった。
「……ん、今年?」
「もう、年明けましたよ」
「おおっ、そうか!」
「威吹、明けましておめでとう」
「こちらこそ、おめでとう」
威吹は正座して、ユタに三本指をついた。カンジも急いでそれに倣う。
「今年もよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ」
「後片付けをして、風呂沸かしてきます」
カンジはそういうと、丼を下げに行った。
「見た目は怖いけど、真面目な子だね」
人間界で生まれ育ったせいか、金色の髪は妖狐にありがちな長髪ではなく、今時の短髪だし、両耳にピアスまで着けている。
これだけ見るとチャラ男のように見えるが、中身は結構カタい。
「教えろって言われてもなぁ……」
威吹はポットからお茶を入れた。
「昔の徒弟制度みたいに、『技は師匠から盗め』みたいにやるしかないね」
ユタも事情を知ってか、苦笑に近い笑みを浮かべた。
「うーむ……」
「見た目は普通そうなのに、中身はチャラ男のキノよりマシだと思うよ」
「はははは!あいつが弟子なら、尚更お断りだなー」
[同日同時刻 JR大宮駅・埼京線電車内 栗原江連&蓬莱山鬼之助]
「ヘクショッ!!」
大きなクシャミを3回したキノ。
「大丈夫?」
隣に座る江連はキノの顔を覗き込んだ。
「あー、くそっ!イブキのヤツ、オレの悪口言ってやがんな」
「……考え過ぎじゃね?」
〔「ご案内致します。この電車は1時13分発、埼京線、りんかい線直通の各駅停車、新木場行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕
埼京線も終夜運転線区の対象である。
「何でこんな時間に、オレらここにいるんだ?」
「今からお寺に初詣に行くんじゃん?」
「行くんじゃんって、オマ……こんな真夜中によぉ……」
「顕正会員だってこんな時間から大宮公園にいるんだから、法華講のウチらが行かなくてどうすんの」
「熱心だなぁ……」
「きっと稲生さん達、とっくにいると思うよ?それできっと、『キノ達来ねぇなぁ』ってウワサしてたんだよ」
「そ、そうか?」
[同日00:30.ユタの家 ユタ&威吹]
「お湯加減どうですか、先生?」
「ああ、ちょうどいいよ」
「どうぞごゆっくり」
広い湯船に浸かるユタと威吹。
「寺に初詣はいいのかい?」
「いいよ。午後行くから」
「ははっ、そうか。じゃあ、午前中は寝正月だな」
「そういうこと。おせち料理はさすがにムリだろうけど、出前以外に年越しそばが食べられて良かったな」
「まあ、ユタが喜んでくれたのなら、ボクも弟子入りを許可した甲斐があったってもんだ」
その時、ガラガラと扉を開けて入って来る者がいた。
浴衣の袖をたすき掛けにし、裾も捲り上げてねじり鉢巻きをしたカンジであった。
「先生、お体お流し致します」
「いいから、お前はおせち料理でも作ってろ!」
「そんな、僕達に気を使わなくていいから」
「はあ……。では一応、“タマ洗い”はここに置いておきますので」
カンジはすごすごと退出した。
「タマ洗い?」
ユタは見たことも無い道具を目にした。言葉では言い表せない、独特な形状をしていた。
「そのまんまだよ」
威吹は舌打ちをして、そのタマ洗いを手に取った。
「こうして使うんだ」
「マジで!?」
威吹はその道具で、自分の下半身の【ぴー】を洗った。結構いい泡立ちである。
「妖狐はそんなもんわざわざ作って【ぴー】を洗ってるのかい?」
「そうだよ。最近は妖狐族でも男女平等の風潮が出て来たらしく、女用にマ【ぴー】洗いなんて道具もできたらしい。いや、ボクは見たことないけど」
「それらの道具の存在意義は、本当にあるのかい?」
[同日02:15.日蓮正宗・正証寺 エレン、キノ、藤谷春人]
「はーい、丑寅勤行に参加の方はこちらー!」
班長として参詣者の整理に当たる藤谷。
「イブキとユタが先に来ていると聞いてきたんだがな……いねーじゃねーかよっ!ああッ!?」
憤慨するキノ。江連は、
「意外。てか、うるさい」
「あれ?2人とも、ちゃんと丑寅来たんだ。ご苦労さんね」
藤谷はエレン達の姿を見つけると、にこやかに言った。
「この体の持ち主が、どうしても行きたくてしょうがないみたいなんだ。ま、アタシもこの体をもらったからには、持ち主の希望をソンチョーしないとね」
栗原江連の体を使用しているのは、栗原江連ではない。
彼女が死んで魂だけが現世からいなくなり、そこへ30年前に地獄界に堕ちたスケバングループのリーダーであった川井ひとみが栗原江連に融合する形で使用している。
栗原江連は熱心な信徒だったので、しょうがなく川井ひとみも栗原江連として生きる以上は、それを踏襲しているという。
「イブキとユタはどこだ!?」
「今頃風呂入って寝てるんじゃないの?あいつら、稲生君が顕正会員だった頃から初詣は午後イチだってよ?」
と、藤谷はどうしてキノが憤慨しているのか分からないといった顔で答えた。
「こ、このっ……!」
「正月から暑苦しいねぇ……」
「おかげで、部屋の暖房はいらんのです。さすが八熱地獄の獄卒」
「そうか。じゃあ、本堂もちょっと寒いから温かくしてくれよ?」
「オレはストーブじゃねぇ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
因みにフィクションですので、悪しからず。
実は私、鉄ヲタであるものの、何を隠そう、終夜運転中の電車に乗ったことが無いという。だって眠いんだもーん。
というわけで、明日からコミケ逝ってきますw