報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「歌に隠された意味」

2017-03-24 13:39:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月14日17:00.天候:曇 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 初音ミクが今一度、“オホーツク旅情歌”を歌う。
 この歌詞の中に、大きな秘密が隠されているということだが……。
 敷島達は会議室の中にいた。
 白いスクリーンに映し出されているのは、北海道の地図である。

 シンディ:「『宇登呂(ウトロ)の浜辺に旅人がきたよ』という意味ですが、これだけでは何の意味もありません」
 敷島:「どういうことだ?」
 シンディ:「2番の歌詞、『日暮れの沙留(さるる)に旅人がきたよ』という意味と対を成して初めて意味が通じるのです」
 敷島:「? まだよく分からん」
 シンディ:「こういうことです」

 シンディは北海道の地図を動かした。
 具体的には歌詞に登場した地名の部分、つまり道東部分を拡大した。
 沙留と呼ばれた地名のある場所を点で光らせ、更に宇登呂と呼ばれた部分も点で光らせる。
 そして、互いに沙留から東へ宇登呂から北へ線を走らす。
 すると、その交点部分には……。

 敷島:「海……みたいだな」
 シンディ:「はい。この交点の底には、『初音ミク』が沈められています」
 敷島:「……は?」
 シンディ:「分かりませんか?ボーカロイドを開発したのは、エミリーを製造した南里博士なんですよ?ボーカロイドも、本来は兵器なんです。私達と同じように」
 敷島:「エミリー、シンディの言ってることは本当か?」
 エミリー:「本当です。どうしてそのヒントを音楽家が知っていたのか、どうしてそれを歌詞にしたのか、どうしてそれを最高顧問は御存知だったのかは存じません」
 敷島:「あの海の底を……探せというのか?」

 するとエミリーは首を横に振った。

 エミリー:「探しても無駄です。何も見つかりません」
 敷島:「どうしてそう言い切れる?部品だけでも……」
 エミリー:「私が回収したからです」
 敷島:「……っ!ますますワケが分からんぞ!?どういうことなんだ!?」
 エミリー:「南里博士は……『聴けば人間の脳幹を停止させる』という恐ろしい兵器を開発してしまいました。それが初音ミクです。分かりませんか?ボーカロイドが、どうして人間のアイドルとはまた別に多くのファンを魅了するのか……。あの者達の歌唱機能には、脳幹を停止させるまでは無いにせよ、人間の心情に巧みに訴える効果があるからなんですよ。平賀博士が、『研究の余地はあるから、せめて危険ではない程度に改良し、稼働テストを行ってみては?』と進言したので、南里博士も乗ったんですよ。だけども、やはり危険であるという懸念は拭えなくて……。それで、私に破壊命令を出されたんです」
 敷島:「それがあのフィールドテストだったのか!?」
 エミリー:「社長が面白いまでに私の追跡をミクと一緒に交わしてくれたので、南里博士も面白がりましてね。それで急遽、初音ミクの稼働を許可したんですよ。私の製作者でもありますが、ほんと、変わった人でしたね」
 敷島:「俺だけが知らなかったとは……!」
 シンディ:「私はウィリアム博士から聞いてましたよ。今から思えば、確かに南里博士より狂っていたウィリアム博士の、初音ミク破壊命令も至極妥当だったんですね」
 敷島:「今のミクは危険じゃないだろう!?」
 エミリー&シンディ:「危険ですよ」
 エミリー:「ただ、社長のおかげで安全に稼働できているんです。だからあなたは、究極にして至高のアンドロイドマスターなんです」
 シンディ:「他の人間がミクのユーザーだったら、とっくに死人が出ていましたよ?」
 敷島:「……!……!!」
 シンディ:「前期型の私の動きを、たかが歌で止めるほどです。お気づきにならなかったのですか?」
 敷島:「俺は……!」
 エミリー:「シンディ、その言い方は失礼だぞ」
 シンディ:「ゴメンなさーい」
 敷島:「ミクには『鉄腕アトム』の歌は歌わせなければいいんだな?」
 エミリー:「今のところは……。ただ、他にも歌わせれば危険な歌があるかもしれません」
 敷島:「大丈夫だ。ミクは歌で人間の心を癒せる優秀なボーカロイドだ。絶対に稼働停止にはさせんぞ」
 シンディ:「社長がお使いになっている間は大丈夫だと思いますが……」
 敷島:「とにかく、話を戻そう。つまり、今の『オホーツク旅情歌』の歌詞は何の意味も持たないということだな?」
 エミリー:「そういうことになります。実際にあの交点から回収した私が断言します」
 敷島:「分かった。それじゃ……」

 と、その時だった。

〔ファンフォン♪ファンフォン♪ファンフォン♪ こちらは、防災センターです。ただいま、地下2階で火災警報が作動しました。係員が確認しておりますので、しばらくお待ちください〕

 敷島:「な、何だ?火事か!?」
 シンディ:「地下2階と言いますと、地下駐車場のあるフロアですね」
 エミリー:「あと地下商店街です」

 防災センターは地下1階にある。

 敷島:「何だか物騒だな。いつでも避難できるように準備しておくか」
 エミリー:「はい」

〔ビューッ♪ビューッ♪ビューッ♪ 火災発生、火災発生。こちらは、防災センターです。只今の警報は、地下2階で火災が発生したものです。1階から地下階の皆様は、お近くの階段から、落ち着いて避難してください。それ以外のフロアの皆様は、避難指示が出るまで、その場でしばらくお待ちください。尚、エレベーターは使用しないでください。避難に際して、介助を御希望の方は……〕

 敷島:「おいおいおい!何があったんだ!?」
 シンディ:「何がって、火事ですわね」

 敷島達は会議室を出た。

 井辺:「社長、どうやら地下駐車場に止めてあった車が炎上したらしいです」
 敷島:「うちで借りてるリース車じゃないだろうな!?」
 井辺:「いえ、業務用駐車場に止められていた工事業者の車だそうで……」
 敷島:「地下駐車場だから高層階のここまで火の手が来るとは思えないが、一応避難できる準備はしておこう。事務所にいるボーカロイドを非常階段の近くに誘導してくれ」
 井辺:「はい!」
 敷島:「ミクもだ!イザとなったら俺達と一緒に避難するぞ!」
 初音ミク:「はい」

 無人となった会議室。
 その時、どういうわけだかプロジェクターが勝手に動いた。
 線と点が移動したのだ。
 それまではオホーツク海を指していたのだが、その反対側に移動したのだ。
 具体的には沙留から東へ伸びていた線が南へ移動し、宇登呂から北へ伸びていた線が西へ移動した。
 そして、北海道内にそれら2つの線が交差する。
 そこにできた交点が点滅し、吹き出しが現れる。
 その吹き出しには、こう記されていた。

 『マルチタイプ0号機、隠避地点』と。

 だが、火災が車1台の全焼だけで済んだことで避難せずに済み、再び敷島達が会議室に戻ってきた時は、その表示は消えて無くなっていたのである。
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“Gynoid Multitype Cindy” 「社葬」

2017-03-23 21:04:43 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月14日13:00.天候:雪 東京都港区南青山 東京都青山葬儀所]

 大手総合芸能事務所、四季グループを裸一貫で立ち上げ、業界でも1、2を争う規模にまでした敷島孝之亟。
 その社葬は青山葬儀所を使うほどであった。
 僧侶の読経や焼香、献花や弔辞だけが行われたわけではない。

 司会:「それではこれより、敷島孝之亟様に対する弔歌がございます。弔歌を行いますのは、四季グループ関連会社の1つでございます敷島エージェンシーの所属タレント、ボーカロイド1号機の初音ミク様でございます」

 ミクは敷島の隣に座っていた。
 名前が呼ばれると、ミクはスッと立ち上がった。
 今のミクはいつもの衣装を着ていない。
 設定年齢16歳に相応しく、黒いブレザーに黒いスカート、そして黒いネクタイを着けていた。
 ミクが孝之亟の大きな遺影の前に置かれたマイクスタンドの前に立った。

 司会:「曲名は『オホーツク旅情歌』でございます」

 ミクが弔歌を歌うという時点で、少し場内がざわついた。
 四季グループには、アイドル部門を抱える四季エンタープライズというグループの屋台骨的な会社があり、そこに所属している有名タレントも告別式に参加していた。
 それを差し置いて子会社のタレントが弔歌を歌うことに、賛否両論の声が上がっていた。
 もっとも、ミクだって今やトップアイドルの部類なのではあるが、未だに人間のアイドルを差し置いてロボットが上に立つとは何事だとの声は業界内部でも出ている。
 そして司会がタイトルを読み上げると、更にざわついた。
 確かにその曲名はミクの持ち歌の1つである。
 昭和の歌謡曲的な歌をプロデュースする音楽家がおり、そこから楽曲を頂戴したものだ。

 司会:「この曲は敷島孝之亟様がご危篤になる直前、口ずさんだものとされております。孝之亟様にとっては、とても思い出深い歌だったのだと予想されます。従いまして、この曲を弔歌にさせて頂いたとの敷島孝夫社長のコメントがございます。それでは初音ミク様、お願いします」

 オホーツク旅情歌(作曲:彩木雅夫 作詞:鈴木宗俊 編曲:HIROMU)

 初音ミク:「恋の翼痛めた♪鴎のように♪宇登呂の浜辺に♪旅人が来たよ〜♪果てなき〜広さよ〜♪空と海の蒼さよ〜♪やさ〜しく抱きし〜めて♪迎えておやりよ〜♪」

 歌のジャンルはバラードになるだろう。
 そんなに長い歌ではないが、スローテンポなこともあって2〜3分ほどである。
 ミクの歌で、場内に更に哀しみの渦が巻き起こる。
 だがそんな中で、敷島は1番冷静だった。

 敷島:(北海道の歌と最高顧問と、何の関係があるんだ?)

 孝之亟が倒れる直前、シンディに対して口ずさんでいた歌だったから、弔歌に相応しいと、こうしてミクに歌わせたのは事実だ。
 元々この歌は、四季エンタープライズに所属するシンガーソングライターがリリースするはずだった。
 それを孝之亟が、何故か敷島エージェンシーの誰かにと無理を言って持ち歌にさせたものだ。
 大人の感じがしたから、MEIKOか巡音ルカの持ち歌にしようと思ったが、孝之亟がミクを指定した次第だ。
 最初は大人へなりかけている少女の設定年齢であるミクに歌わせるミスマッチを狙ったものだろうと思ったが、どうも違うような気がした。

 敷島:「エミリー?どうした?」

 会場の警備をしているマルチタイプ姉妹だが、そのうちの1人、エミリーが傍にやってきた。
 しかもそのエミリー、両目が緑色に鈍く点滅していた。

 エミリー:「あの歌には、重要な意味が含まれています。私達の秘密、そしてボーカロイドの秘密に迫る内容がです」
 敷島:「何だって?」

 初音ミク:「……騒ぐな海鳥〜♪波よ船を揺らすな♪今夜はぐっすりと♪寝かせて〜おやりよ〜♪」

 歌い終わったミクは孝之亟の遺影に深々と頭を下げ、それから場内の弔問客に頭を下げた。

 司会:「…………。はっ、これは失礼しました。えー、ありがとうございました。とても素晴らしい歌声でした。それでは次は……」

[同日15:00.天候:曇 青山葬儀所・ロビー]

 敷島:「ミク、お疲れさま」
 ミク:「わたし、上手く歌えたでしょうか?」
 敷島:「素晴らしかったよ。泣いてなかった客も、あの歌で泣いたくらいだ」
 ミク:「そうですか。ありがとうございます」
 敷島:「ところでミク、ちょっと聞きたいんたが……」
 ミク:「はい?」
 敷島:「歌っている時、自分の中で何かが起きていたりしていなかったか?」
 ミク:「えっ?いえ、別に……。何かあったんですか?」
 敷島:「いや、無いならいいんだが……」

 敷島はエミリーの方を見た。
 エミリーは弔問客の見送りを行っている。

 敷島:「エミリー、ちょっと来てくれ」
 エミリー:「はい、何でしょう?」
 敷島:「お前、ミクが歌っている時、何か俺に言ったよな?」
 エミリー:「? 何も申し上げておりませんが……?」
 敷島:「ウソつくなよ。俺ん所に来て、ミクの歌に重要な意味があるとか言ったじゃないか?シンディも見てたよな?」
 シンディ:「えっ?ええ……」

 シンディは気まずそうであった。

 敷島:「シンディ、お前も何か知ってるんだな?そうなんだろ?」
 シンディ:「ええ……そうです。でも、ここでお話しできません」
 敷島:「分かった。俺も、もうすぐ会社に戻る。その時、話してもらおうじゃないか」
 シンディ:「でも私、マスターの所に行きませんと……」
 敷島:「25億円もポーンと出してくれた上客が急逝したってのに、弔問にすら来ないとは……」
 エミリー:「最高顧問から頭金として、半額しか支払われていない状態で亡くなられました。デイジーのマスターとなるべき御方を急に亡くされたので、DCJ様としても混乱しているのでしょう」
 敷島:「それにしたってさぁ……。とにかくシンディ、アリスの護衛にはマリオとルイージがいるからいいの。それより、さっきの話、聞かせてもらうぞ」
 シンディ:「はい」
 エミリー:「今、お車を手配しますので……」
 敷島:「その心配は無い」
 エミリー:「は?」

 そこへ敷島のケータイが鳴る。
 取るとその相手は井辺だった。

 井辺:「お疲れさまです。井辺ですが、今、駐車場に到着しました」
 敷島:「お疲れさん。今から行くよ」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「今日、渋谷でMEGAbyteが109バレンタインイベントに出ることになっててね、ついでに寄ってもらった」
 シンディ:「さすがは社長……」
 敷島:「じゃ、帰ったら話聞かせてもらうぞ」
 シンディ:「はい」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「別れ」

2017-03-22 21:19:27 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月12日02:46.天候:晴 埼玉県秩父市・白久温泉 旅館客室内]
(シンディの一人称です)

 何も見えない。何も聞こえない。
 でも朧気に見えるこの光景は何……?
 姉さんや社長、マスターのアリス博士達が騒いでいる。

 エミリー:「……!……で、………け!………!…………だ!!」

 姉さんが私の両肩を掴んで、何か言ってる。
 なに……?何を言ってるの……?
 どうして……?視界が歪む……。
 どうして歪むの……?私の目……カメラ……レンズが濡れてるから……?
 どうして濡れてるの……?

(三人称に戻ります)

 エミリー:「何をフリーズしてるのだ!?シンディ!しっかりしろ!!」
 敷島:「エミリー、もういい!シンディは放っとけ!最高顧問!しっかりしてください!!」
 支配人:「孝ちゃん!しっかりしろ!……お客様、いま救急車呼びましたから!」
 敷島:「敷島一族の老害だけれども、まだ死んじゃダメだ!」
 アリス:「エミリー、AEDやって!できるでしょ!?」
 エミリー:「……っ!分かりました」

 エミリーは本来、アリスの命令は聞かない。
 だが、今はそんな時ではないとさすがのエミリーも判断した。
 長年培われてきたAIの学習能力が、そういう判断をさせたのだ。

 エミリー:「電圧、AED仕様に切替!」

 エミリーは意識と呼吸の無い孝之亟の左胸と右脇腹に両手を置いた。
 ……そう、孝之亟は今、生死の境をさ迷っていた。
 シンディの膝枕で眠った孝之亟。
 実は眠ったのではなく、眠るように息を引き取り掛けたのだ。
 シンディはそれに気づかず、自分も充電コードを接続して眠りに就いた。
 そして充電が終わった時、タイマーのセット不備によって目を覚ましたシンディは、姉のエミリーに敷島達の起床時間を聞こうと起き上がった。
 その際、孝之亟の生命反応が無いことに気づいたのである。
 シンディの半狂乱ぶりに、隣の部屋から飛び込んだ敷島達は一瞬、シンディが暴走したのかと思ったくらいだった。

 敷島:「年寄りだから、内臓のあちこちが弱っていることは聞いていたが、まさか旅行中にこんなことが……!」
 エミリー:「電気を流します!離れていてください!」
 敷島:「よっしゃ!」

 エミリー、即席のAEDを放つ。
 だが、何も起こらない。

 エミリー:「心臓マッサージを続けます」
 敷島:「頼むぞ!」
 シンディ:「私……私……」

 ガクガクと震えるシンディ。

 シンディ:「私のせい……私のせい……」
 敷島:「! シンディ、お前のせいかどうかは後でメモリーを見させてもらうさ。とにかく、お前はエミリーを手伝え!」

 だが、ユーザーの命令もシンディには聞こえないようだった。
 エミリーは絶望の表情を浮かべると、両手で頭を抱え、壁を背に脱力してしまった。

[同日03:30.天候:曇 同旅館内]

 救急車が旅館前に到着し、孝之亟はそれで市内の総合病院に搬送された。
 敷島とエミリーが救急車に同乗し、アリスとシンディは後からタクシーで向かうことになった。

 アリス:「シンディ、どう?気分は?」

 アリスはシンディを再起動するなどして、どうにか感情を落ち着かせた。

 シンディ:「マスター。申し訳ありませんでした。取り乱したりして……」
 アリス:「いいのよ。それより、最高顧問が大変なことになって、今は救急車で病院に運ばれているわ」
 シンディ:「はい」
 アリス:「私もこれから病院へ行くけど、あなたも行く?」
 シンディ:「はい、行きます……」

 シンディは再びあふれ出してきた涙を拭った。

 支配人:「失礼します。タクシーが到着しましたので、もしよろしければ御一緒に……」
 アリス:「ありがとうございます。シンディ、行くよ」
 シンディ:「はい……」

 旅館の外にタクシーが止まっていた。
 支配人は助手席に、アリスとシンディはリアシートに座った。

 支配人:「秩父病院までお願いします」
 運転手:「はい」

 タクシーが走り出す。

 支配人:「シンディさん」
 シンディ:「はい?」
 支配人:「なるほど。確かに、孝ちゃんが捜していた女性によく似ておいでです。恐らく、再会があまりにも嬉しかったので、それまでの老いの症状が出てしまったんでしょう」
 シンディ:「私の……せいですよね」
 支配人:「いやいや、私も孝ちゃんも、どうせ老い先短い身です。どうせ死ぬのだったら、未練だったものを達成できてからの方がいい。きっと孝ちゃんも、待っていると思いますよ」
 シンディ:「……!」

[同日04:00.天候:雪 埼玉県秩父市 秩父病院]

 タクシーが救急外来の入口に到着する。

 敷島:「アリス、遅かったじゃないか!」
 アリス:「しょうがないでしょ!シンディの再起動とかで忙しかったんだから!」
 敷島:「とにかく、最高顧問は向こうだ!」

 敷島達は集中治療室に向かった。

 敷島:「虫の息なんだ……。もう……ダメなんだ……」

 シンディは室内に入り、孝之亟の手を取った。

 シンディ:「どうしてですか……。私は……デイジーじゃ、ありません……。せめて……デイジーを………。あんまりです……!」
 孝之亟:「デイジー……」
 シンディ:「はっ……!」
 孝之亟:「守ってあげれんで……すまなかった……」

 半開きにようやく目を開けた孝之亟の目には、シンディが生きているデイジーに見えたのだろう。
 シンディは孝之亟の手を握って、ただ涙を流すだけしか無かった。

 医師:「御臨終です」
 エミリー:「……シンディ、出よう。もう、分かっていたことだ……」

 エミリーは涙は流していなかったが、明らかにそれを堪えていたことは分かった。
 妹機の肩に手を置いた。

 敷島:「……はい。真に残念ですが、最高顧問は先ほどを持ちまして、他界されました。私がついていながら、真に申し訳ありません」

 敷島は現在の親会社の会長など、関係各所に連絡を行っていた。

 シンディ:「私が……異常に気づかなかったから……」
 アリス:「あなたのせいじゃないわ」
 支配人:「そうですよ。孝ちゃんの顔を見て御覧なさい。何とも、満足気な顔をしています。あなたのせいではなく、むしろあなたのおかげですよ。例え偽者とはいえ、過去の後悔を清算できたのですから、孝ちゃんも本望だったでしょう」

 支配人はシンディを慰めるように言った。
 だが、霊安室に運ばれた孝之亟に対し、耳元でこう囁いたのだった。

 支配人:「あのな、デイジーは生きてるぜ。あんたとは10歳違いだから、70代半ばくらいか?だけどな、ありゃもうダメだ。若い頃、ヤク中になったせいで廃人になるのが早かったし、今でも植物状態だ。例えあんたが駆け付けたところで、もうあんたのことなんざ見えやしないし、聞こえやしねぇよ。だったらよ、例え偽者のそっくりさんであっても、ちゃんと話を聞いてくれる娘に疑似的でも相手にしてもらうのが幸せってもんだ。心配すんな。本物のデイジーも、すぐにあんたの後を追うことになるだろうよ」

 霊安室の外に出ると、堰を切って泣きじゃくるシンディの姿があった。

 支配人:「孝ちゃんはデイジーという女性を失ってから、ずっと孤独を生きて来た男でした。それが最後の最期で、彼女によく似た女性であるあなたに添い寝してもらいました。それだけで満足だったのでしょう。ですからどうか、お気をしっかり……」
 エミリー:「申し訳ありません。妹のことを心配して頂いて……」
 支配人:「いえいえ。デイジーにも、あなたのようなお姉さんがいれば、また少し違った人生になっていたのかもしれませんな」
 エミリー:「? はい」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「孝之亟の思い出」

2017-03-21 19:22:07 | アンドロイドマスターシリーズ
[1967年2月23日21:00.天候:晴 東京都台東区某所・某ヌード劇場]
(孝之亟の一人称です)

 敷島孝之亟:「いらっしゃいませ、いらっしゃいませ。本日はようこそ当劇場にお越しくださいまして、真にありがとうございます。紳士の社交場、娯楽の殿堂ミュージックホール四季、本日のプログラムは錦糸町フランス座よりお招き致しましたゆりやま洋子、ゆりやま恵子の姉妹による大熱愛ショーでございます。女体の神秘、悦楽の境地をどうぞ心ゆくまでお楽しみくださいませ。尚、上演に先駆けまして、お客様方に一言ご注意を申し上げます。上演中、場内の写真撮影並びに踊り子さんのお肌、衣装などには絶対にお手を触れることのないよう、固く固くお断わり致します。それではトップバッターより、張り切って参りましょ〜!レッツゴー・ミュージック!」
 観客A:「いよーっ!」
 観客B:「待ってました!」
 観客C:「洋子ちゃーん!!」

 当時の私はある経緯により、1つの劇場を任されていた。
 私は他の業界人の見よう見まねで運営に当たっていたが、幸い運営は軌道に乗っていた。

 孝之亟:「ありがとうございました、ありがとうございました。これにて第3部は終了でございますが、続く第4部をそのままのお席でご覧頂けます。当劇場は終日入れ替え無しで、お客様方にサービス致しております。安いお値段、溢れるお色気、ミュージックホール四季、来月1日からのプログラムは、『あなたのスター、私のスター』関西ヌードの女王・鈴蘭ひかる、デイジー・ローズ、その他豪華絢爛なるゲストをお招きして、寂しがり屋の殿方を優しく慰める、その名も『スキスキ大好き!ピンクショー』、どうぞ皆様お誘い合わせの上、お越しくださいませ。ありがとうございました、ありがとうございました、ありがとうございました」

 ある日のことだった。
 全てのプログラムが終わり、私がバックヤードに引き上げていると……。

 孝之亟:「ふう……。ん?」
 デイジー:「敷島さん」
 孝之亟:「あっ、デイジー!どうした?上演は来月からじゃ?」
 デイジー:「他のミュージックバーからの帰りなの」

 デイジーは他のヌードダンサーとは一線を隔していた。
 昼はカフェなどで歌を歌い、夜はヌードダンサーとして夜の街を歩いていた。

 デイジー:「私ね、この劇場が1番好き。ここで働くのが1番安心するわ」
 孝之亟:「はっはっはーっ!またまたぁ!どうせ他でも同じこと言ってるんだろう?」
 デイジー:「そんなことないわよ。本当に、ここの専属女優として働きたいくらいなの」
 孝之亟:「専属って、うちはまだそんな専属女優を抱えられるほど大きい劇場じゃないから……」
 デイジー:「分かってる。でも絶対この劇場は大きくなれるわ。その時は私を専属女優にしてね」
 孝之亟:「分かったよ」

 無論、その時の私はただの売り込みに過ぎんと思っていた。
 似たようなことを言ってくる女優は他にもいたからだ。
 しかし私はデイジーの公演を見ているうちに、段々と他のダンサーとは光の輝き方が違うことに気づいた。

 孝之亟:「はい、拍手、拍手〜。沢山の拍手をお願い致します。拍手をすればするほど、踊り子さんがハッスル致します。はい、沢山の拍手をお願い致します。えー、それでは皆様の興奮が冷めやらぬ前に皆様お待ちかね、デイジー・ローズの眩しいダンスをご覧頂きます。小屋に高鳴るミュージック、デイジー・ローズの神をも恐れぬその艶めかしい肢体、どうぞ皆様虜になってくださいませ。それでは、おあとがよろしいようで……」

 だが、事件は起きた。
 またある日の夜のことだった。

 デイジー:「敷島さん、助けて!」
 孝之亟:「どうした、デイジー!?」
 デイジー:「私、騙された!事務所はお金に困って私を売ったの!テレビの契約と偽って、私に借金の契約書にサインを……!もうおしまいよ!」
 孝之亟:「落ち着け!2人でどこかへ逃げよう!」

 私は劇場を投げ打ってでもデイジーを守りたいと思った。
 こんな天涯孤独な男を愛してくれたのだし、私も……。

 チンピラA:「いたぞ!あそこだ!」

 しかし、見つかってしまった。

 孝之亟:「よせ!デイジーに何をする!?」
 チンピラB:「うるせぇ!この女はよ、借金のカタなんだよ、ああッ!?お前が払うとでも言うのかよっ、ああっ!?」
 チンピラC:「あきらめな!」

 バキィッ!

 孝之亟:「ぐぉっ……!!」

 チンピラの拳が顔面に迫って来たと思うと、私の意識が飛んでしまった。
 気がつくと、私は繁華街の場末のゴミ捨て場にそのまま捨てられていた。
 私は……好きになった女1人すら守れん弱虫だったのだ……。
 私はすぐに彼女の足取りを辿ろうとしたのだが……。

 某バーのマスター:「ああ、あの女?確かあの女は……どこの国だったか忘れたが、外国に売られたって話だぜ」
 孝之亟:「そんな……!うわあああああああ!!」

[2017年2月11日23:30.天候:晴 埼玉県秩父市・白久温泉 旅館客室内]
(再び三人称に戻ります)

 孝之亟:「それから何年もして、ようやくある程度の財を築いた私は、外国へデイジーの捜索に行くことができた」
 シンディ:「再会は……叶いましたか?」

 孝之亟は布団の中で首を横に振った。

 孝之亟:「残念ながら、死んでいた。病死ということじゃったが、何の病気なのか、いや、それ以前に、本当に病気だったのか、今となってはさっぱり分からん」
 シンディ:「そうですか……」
 孝之亟:「わしが芸能事務所を立ち上げたのはな、もしかしたら似たような境遇のタレントを集めていれば、いずれはデイジーの生まれ変わりにでも会えるのではないかと思ったのと、もう2度とデイジーのように、夢を食い潰される者が出ないようにという思いもあった。今ではその方が強いがな」
 シンディ:「しかし、残念ですが……」
 孝之亟:「ま、しかし世の中、そう甘くはないものじゃな。そんな時、私はボーカロイドの初音ミクの話を聞きつけた。あの孝夫がプロデューサーとして売り出しているという話を聞いてな。まさか、あそこまで人間に酷似したアイドルが造れるようになったのかと驚いた」

 そして紆余曲折を経て、孝之亟は自身にとって重大な決断をすることにした。

 孝之亟:「わしの私財全てを投げ打ってでも、もう1度デイジーに会いたい。今のロボット技術なら造れるはずじゃと……」
 シンディ:「9号機を見て、どう思われましたか?」
 孝之亟:「完璧だ。少なくとも見た感じは」
 シンディ:「私達はオーナー様のお望み通りのことをさせて頂いております。最高顧問がデイジーに、思い出の女性のように振る舞わせることも可能です。どうか、お楽しみに……」
 孝之亟:「恋の翼痛めた♪かもめのように♪ウトロの浜辺に♪旅人が来たよ♪」
 シンディ:「ミクの持ち歌、『オホーツク旅情歌』の一節ですね」
 孝之亟:「元々は……デイジーがショーパブで歌っていたものじゃよ……。わしが音楽家に頼んで、ボーカロイドの誰かに歌ってもらおうと思ってな……」
 シンディ:「申し訳ありません。私達は何でもできるマルチタイプのくせに、歌だけは歌えないのです。申し訳……ありません」
 孝之亟:「良い良い……。すまんの。年寄りの昔話に付き合わせてしまって……」
 シンディ:「いいえ……」

 シンディは起き上がると、孝之亟を膝枕にした。

 シンディ:「私は……年老いた製作者をこの手で殺してしまいました。私の生みの親を、です。最高顧問のお世話をさせて頂いていると、まるで私の製作者のお世話をしているようで……私も幸せです」
 孝之亟:「そうか。こんなわしで良かったら、これからもよろしく頼むぞ」
 シンディ:「はい……」
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“Gynoid Multitype Cindy” 「秩父紀行」 2

2017-03-21 12:58:57 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月11日18:00.天候:晴 埼玉県秩父市・白久温泉 旅館客室]

 敷島:「お、これはイケる!」
 アリス:「これも美味しいわよ」

 夕食の時間になり、敷島達の宿泊している部屋に夕食が運ばれてくる。
 固形燃料に火が点けられ、その上で鍋がグツグツと煮立っていた。
 エミリーとシンディは孝之亟の酒を注いだり、アリスのご飯のお代わりを持ってきたり……。

 敷島:「コンパニオンと変わらんなw」
 孝之亟:「シースルーの衣装でも着させて、ピンクコンパニオンでもさせるかね?それともチャイナドレスか?メイド服も流行っておるらしいのぅ?」
 敷島:「そんな衣装無いし。スリットの深いロングスカートの時点で半分チャイナドレスみたいなものですし、メイド服がいいならメイドロイド連れてくればいいんですよ」
 エミリー:「お望みでしたら、衣装を御用意して頂ければ着替えますが?」
 敷島:「いや、いいから!……最高顧問なら、いつも会食でコンパニオン付きって感じなのに、何やってんスか」
 孝之亟:「何を言うとる。読者が誤解するではないか。あくまでも、付き合いの時じゃぞ」
 敷島:「政財界の人達と?」
 孝之亟:「しょうがないじゃろう。中にはそういうのが好きな人もおるんじゃから……」
 敷島:「昔の『ノーパンしゃぶしゃぶ』もロイドにやらせりゃいいんだよ。そしたら合法(※)ですよ」
 孝之亟:「なに?そうなのか。さすがはわしの遠い孫じゃ。検討材料とさせてもらおう」

 ※税金を使って酒池肉林の接待をしていたことも大問題になっていたはずだが……。

 孝之亟:「どうじゃね、アリス君や?」
 アリス:「は、はい!?」

 いきなり振られたアリスは少しびっくりした。

 孝之亟:「2人目は女の子が良いと思うが、どうかね?」
 アリス:「は、はい。検討材料とさせて頂きます」
 孝之亟:「この少子高齢化の世の中、曽孫が増えるのは爺冥利じゃのぅ!」
 敷島:「まだ作ってもいないからな、爺さん?なに皮算用して……いでっ!?」
 アリス:「……!!(だったら『材料』寄越せよ)」

 アリス、無言で隣のダンナの背中をつねる。

 敷島:「いってーな!」

[同日20:00.天候:晴 同旅館内]

 シンディ:「外をお歩きになるのですか?」
 孝之亟:「うむ。暫し、付き合ってくれんか?」
 シンディ:「お付きするのは構いませんが、外はとても寒いので、お体に障らぬ程度でお願いします」
 孝之亟:「分かっておる。今日は久しぶりに痛飲したでな、少し酔い覚ましじゃ」

 孝之亟はサンダルを履いて、旅館の中庭に出た。
 2月も半ばに差し掛かったこの時期、秩父の山には雪が積もり、寒風が時折吹いてくる。

 孝之亟:「うむ。今日は月がきれいじゃ」
 シンディ:「ほぼ、満月に近い状態ですね」
 孝之亟:「雪見酒と月見酒が両方できる、縁起の良い夜じゃ」
 シンディ:「まだ飲まれるのですか?」
 孝之亟:「はは(笑)、冗談冗談。花札、こいこいの役のことじゃよ」
 シンディ:「ああ、なるほど。これは失礼しました」

 その時、シンディのメモリーに一瞬『異常』が起きる。
 人間でいうフラッシュバックのことで、白黒画面である一場面が出て来た。

 ドクターウィリー:「はは(笑)、冗談冗談。ブラックジャックでは、よくあることじゃよ」
 シンディ(前期型):「ああ、なるほど。これは失礼しました」

 シンディの手に持つ大型ナイフは血で染まり、その周りにはウィリーを捕獲しに来た特殊部隊員達が全滅していた。
 その死体の山にはトランプの札が散乱している……。

 シンディ(後期型):「………………………」
 孝之亟:「シンディ、シンディ?どうしたね?シンディ!」
 シンディ:「……はっ!」
 孝之亟:「どうかしたのかね?」
 シンディ:「い、いえ、何でもありません。失礼しました」
 孝之亟:「ふむ。では、そろそろ戻ろうかの。今日は何だか、いつもより冷えるわい」
 シンディ:「そうですね」
 孝之亟:「ま、秩父じゃから当たり前か」
 シンディ:「さようで……」

[同日20:30.天候:晴 同旅館内]

 孝之亟:「酔いも少し覚めたことじゃし、もう1回風呂に入ってこようかの」
 シンディ:「はい」

 部屋に戻る孝之亟とシンディ。
 しかし、部屋には誰もいなかった。
 室内に布団は敷かれていたが。

 孝之亟:「うむ?あの若夫婦はどこにおる?」
 シンディ:「少々お待ちください。……どうやら、先にお風呂に入っておられるようですね」
 孝之亟:「そうか。考えることは同じじゃな。じゃあ、わしも……」
 シンディ:「ちょっと待ってください。……姉の話によると、お2人で『貸切露天風呂』に入られているとのことです」
 孝之亟:「ほお……。『材料』を『仕込み中』か。それはそれは……。デイジーが先に稼働するじゃろうが、2人目の曽孫にも期待が持てそうじゃな」
 シンディ:「はい。最高顧問は如何いたしましょう?」
 孝之亟:「部屋風呂に入ろう。湯を沸かしてくれんか?」
 シンディ:「かしこまりました」

[同日22:00.天候:晴 同旅館客室内]

 二間続きの客室内。
 襖で仕切って、孝之亟とシンディが同じ部屋に入っている。

 孝之亟:「うー……そこじゃ、そこ」
 シンディ:「ここですか?この筋ですか?」
 孝之亟:「そうじゃそうじゃ。うー……チミはマッサージも上手いな」
 シンディ:「ありがとうございます。……私の製作者もお歳を召していらしたので、よくマッサージをしていたものです」
 孝之亟:「なるほどな。孝夫から聞いておるよ」
 シンディ:「……あの、1つお伺いしてもよろしいでしょうか?」
 孝之亟:「何かね?」
 シンディ:「どうして私をお気に召して頂けたのでしょうか?」
 孝之亟:「聞きたいかね?」
 シンディ:「差し支えなければ……」
 孝之亟:「デイジーじゃよ」
 シンディ:「デイジー?9号機の……ですか?」
 孝之亟:「わしの鞄を持ってきてくれんか?」
 シンディ:「はい」

 シンディは部屋の片隅に置いてある孝之亟の鞄を持ってきた。

 孝之亟:「すまんの」

 孝之亟は鞄の中から1枚の写真を取り出した。
 それは白黒写真で、そこに映っていたのは若かりし頃の孝之亟と……。

 シンディ:「……私にそっくり!」
 孝之亟:「デイジーじゃ。デイジー・ローズ」

 この後、孝之亟の口から驚きの(?)過去が語られる。
コメント (3)
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